不動産の遺産分割はどうすれば良い?4つの方法と注意点

投稿 更新
Category:
遺産

contents section

不動産の遺産分割はどうすれば良い?4つの方法と注意点
シェアボタン
この記事は約10分で読めます。

遺産分割の中でも、どうすれば良いのか悩みがちなのが「不動産」です。親族間トラブルを避けるためには、どう分ければ良いのでしょうか。4つの方法とそれぞれの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。相続人同士、納得して手続きできる方法を見つけましょう。

1.不動産をそのままの形で「現物分割」

1.不動産をそのままの形で「現物分割」
1.不動産をそのままの形で「現物分割」

現物分割とは、不動産をそのままの形で相続する方法を指します。どう分けるのかによって、さまざまなパターンが考えられるでしょう。

・相続人のうち1人だけが、家や土地をそのまま受け継ぐ
・相続人の人数で土地を分筆し、それぞれの名義とする

このほかにも、複数の相続人の中から2~3人のみが、分筆した土地を受け継ぐというケースも考えられます。相続対象となる不動産が複数ある場合には、誰がどの不動産を受け継ぐのか検討することになるでしょう。

ちなみに土地の分筆とは、もともとは1つの土地を法的に分ける作業を指します。分筆すればそれぞれで登記が可能ですから、理論上は「不動産を現金のようにしてきっちり分ける」ことも可能となるでしょう。ただし、分筆には各地で特別なルールが課せられている可能性も。中には「分筆不可」というケースもありますから、相続手続きの前にはしっかりとリサーチしておきましょう。

「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」場合、相続手続きはいたってシンプルです。ただし相続財産の中でも、不動産は高額になりがち。現金や預金といったその他の遺産が豊富にあればバランスを取りやすいですが、そうではない場合、不公平感が生じてしまう恐れもあります。不動産を相続する人に対して「ずるい」という感情が生まれれば、遺産分割協議がなかなかまとまらない可能性もあるでしょう。

2.そのほかの相続人に代償を支払う「代償分割」

先ほどお伝えした「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」という場合の、不公平感を軽減できるのが「代償分割」です。家や土地を受け継ぐ相続人は1人ですが、その1人がその他の相続人に対して代償金を支払い、相続の公平性を保ちます。

たとえば親名義の不動産で長男夫婦が同居していた場合、親の亡き後、長男夫婦が自宅に住み続けるためには、家や土地を相続する必要があるでしょう。仮に長男以外に次男・三男がいたとしたら、それぞれに相応のお金を支払います。不動産の価値が3,000万円なら、次男と三男それぞれの取り分は1,000万円ずつ。これを長男が、自分の財布から出すことになります。

代償分割のデメリットは、不動産を受け継ぐ人の金銭的負担が大きくなってしまう点です。経済的に余裕があれば良いですが、そうではない場合、「そもそも代償分割を選択できない」という可能性もあります。

一方で、マイホームでそのまま暮らしつつ、その他の相続人との間で公平に財産を分け合える点はメリットと言えるでしょう。相続対象の土地が分筆不可能であっても、代償分割なら相続人同士の争いごとが起きる可能性は低くなります。

3.不動産を売却してお金に換える「換価分割」

換価分割は、不動産を売却してお金に換えた上で、そのお金を相続人同士で分け合うスタイルを指します。マイホームは手元に残らないものの、相続人同士で平等に分配できるというメリットが期待できるでしょう。

不動産を換価分割する場合、相続手続きがスタートした後に、できるだけ早く手続きを進めていくことが大切です。対象の不動産がすぐに売れるとは限りませんし、時間に余裕がなくなれば、安い金額で手放さなくてはならなくなる可能性も高いでしょう。換価分割の場合、「不動産をできるだけ高く売ること」が重要なポイントに。そのための工夫は、ぜひ取り入れてみてください。

不動産を売却するためにはさまざまな手数料が発生します。相続時には、売却益から手数料を差し引いた上で、各相続人が自身の取り分を受け取ります。仮に不動産が3,000万円で売れたとしても、そのすべてが相続の対象になるわけではありません。手数料が300万円なら、残りの2,700万円を法定相続割合に応じて分配しましょう。

この方法であれば、代償分割とは違い、金銭的な余裕はなくても不動産を公平に分配できます。全員が「現金で受け取る」ため、差が生じにくく揉めごとに発展しにくいと言えるでしょう。ただし不動産を手元に残せないため、「被相続人が暮らしていた思い出の家や土地」を手放すことになります。同居していた親族がいれば、引越しを余儀なくされてしまうでしょう。

換価分割する場合には、遺産分割協議書にその旨と分配割合を記載するようにしてください。記載がないと、税金が二重に課せられてしまう恐れがあります。また誰がどういった形で登記し、売却手続きを進めていくのかについても考えなくてはいけません。そのあたりさえクリアできれば、全員が納得して進めやすい分割方法と言えるでしょう。

4.複数名義で引き継ぐ「共有分割」

不動産そのものを残したい一方で、不平等な分配は望まず、また代償分割も難しい場合に、選択肢として考えられるのが「共有」です。こちらの分割方法では、不動産を分割したり売却したりすることはありません。あくまでもそのままの形で引き継ぎ、相続人同士が複数人で不動産を所有します。

この場合、それぞれの持ち分は法定相続割合によって決められます。不動産の形はそのままに、「とりあえず今のままの形を維持できる」という点で、優れた分割方法と言えるでしょう。

ただし、一つの不動産を複数人で所有すれば、後々のトラブルにつながりやすくなります。たとえば物件のリフォームや売却を希望する場合でも、全員の許可が必要になるでしょう。また今回は相続人であった人が、いずれ被相続人になることも考えなくてはいけません。当然、共有分割した不動産の持ち分も相続財産に数えられますから、物件を取り巻く状況はさらに複雑になってしまいます。

一時的にはメリットがあっても、将来的に見ればトラブルの種。できる限り、その他3つの方法での分割を検討してみてください。

不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を

不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を
不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を


不動産相続で、どう分ければ良いのか悩む方は多いものです。一概にどれが正解とは言えませんから、自分たちにとってより良い方法を検討してみてください。

どれを選ぶべきか悩んだときには、専門家に相談したり、実際に不動産査定を受けてみたりするのもおすすめです。不動産相続の注意点や、相続対象となる物件の価値がわかれば、これから先どうしたいのか、相続人としての選択肢も見えてくるのではないでしょうか。

Category:
遺産
シェアボタン

この記事を書いた人

writer

profile img

大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

related post

関連記事

  • 「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知っ

    ひと言で「遺産」と言ってもその実態はさまざまで、状況によっては「できれば受け取りたくない…」と考える方もいるでしょう。こんなとき、あらかじめ知っておきたいのが遺産を放棄するための手続きについてです。 このコラムでは、遺産を放棄するための手続き、「遺産放棄」について詳しく解説します。混同されやすい「相続放棄」との違いについても紹介するので、ぜひ今後の参考にしてみてください。 遺産放棄(

  • 学資保険の契約者が死亡するとどうなる?必要な手続きや相続に関する事前知識を身につけよう

    学資保険の契約者が死亡するとどうなる?必

    子どもが生まれたら、加入を検討したい学資保険。「将来の学費を賄うため」というイメージも強いですが、実際には「契約者である親に万が一のことがあった場合の備えとして」という意味合いも持っています。学資保険に加入する段階で知っておきたい、「契約者が死亡した場合の手続きや相続」について解説します。基本的な情報を把握した上で、学資保険を検討してみてください。 学資保険とは?契約者が死亡した場合に発生

  • 遺族厚生年金とは?特徴・受給資格・受け取り方法など…基礎知識を学ぼう!

    遺族厚生年金とは?特徴・受給資格・受け取

    会社員や公務員として働いていた家族が亡くなったら、残された遺族は遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。遺族年金の特徴や受給資格、受け取り方法など、基本的な知識を解説します。遺族厚生年金を受給する際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 遺族厚生年金とは? 遺族厚生年金とは? 遺族厚生年金とは、厚生年金保険に加入していた方が亡くなった際に、その人によって生計を維

  • 小規模企業共済で受け取った財産はどう扱われる?メリット・デメリット

    小規模企業共済で受け取った財産はどう扱わ

    小規模企業の個人事業主、会社役員の方にとって、メリットも大きい小規模企業共済。共済契約者死亡によって家族が共済金を受け取る場合、その財産が相続上、どのように扱われるのかについて、詳しく解説します。相続対策としても有効と言われる小規模企業共済の基本とともに、メリット・デメリットについても確認してみてください。 小規模企業共済とは? 小規模企業共済とは? 小規模企業共済は、「経営者

  • 終活セミナー。もし相続が起こったら?何から始める?大切な家族を守る相続対策

    無料オンライン終活セミナー

    セミナー動画のURLはこちらから https://kotodama-post.com/seminar ~何から始める~大切な家族を守る相続対策 2023年6月20日(火)開催いたしました。 【無料オンライン終活セミナー】~何から始める~大切な家族を守る相続対策 近年、終活というキーワードはメディアでも取り上げられ、自身の終末や遺産、相続に関する準備や検討を行うことが

  • 死亡保険の受取人に指定できるのは?トラブルを避けるためのコツを紹介

    死亡保険の受取人に指定できるのは?トラブ

    自分に万が一のことがあった場合に、残された人々の生活の支えになるように…との思いから、死亡保険への加入を検討する方は少なくありません。自身が死亡した際に、保険金が支払われる仕組みの保険ですが、誰を受取人にするのかが非常に重要なポイントになるでしょう。 そもそも死亡保険の受取人として指定できるのはどのような人なのでしょうか。詳しく説明すると共に、トラブルを避けるためのポイントについても紹介し

コトダマのバナー