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2022年12月の記事一覧

  • 妻に残すビデオメッセージは意味がないって本当?正しく遺言を残すために

    妻に残すビデオメッセージは意味がないって本当?正しく遺言を残すために

    スマートフォンで誰でも手軽にビデオメッセージを残せるようになった今、「自身の最期の思いを映像で届けたい」と考えるからも増えてきています。特に長年連れ添った妻に対するメッセージは、「形式的な遺言書ではあじけない…」と感じる方も多いようです。とはいえ、「妻に残すビデオメッセージには意味がない」という意見を見かけるのも事実。ビデオメッセージや遺言が持つ意味、そして正しい形式について確認しておきましょう。 妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない 妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない ビデオメッセージでは、画像を見ている人に対して、自身の言葉で直接語りかけられます。自身の口から発せられる言葉や、その表情や雰囲気など、さまざまな情報をダイレクトに届けられるでしょう。しかし残念ながら、ビデオメッセージに法的な効力は発生しません。ビデオメッセージの中で、たとえ本人が「妻に全財産を相続させたい」と発言したとしても、そこに法的な拘束力は存在しないのです。妻以外の相続人がその内容を認めなければ、自身の遺志を相続に反映させるのは難しいでしょう。 そもそも遺言書とは、自身が亡くなったあとの相続について、希望を伝えるための正式な書類です。法的に有効な形で遺言書が残されていた場合、その内容は他の何よりも優先されます。たとえば、法定相続人以外を相続人として指定したり、法定相続分に囚われない相続割合を指定したりすることも可能に。しかし、このような強い効力を持つ書類だからこそ、「法的に有効」と認められるためにはさまざまな条件をクリアする必要があるのです。残念ながら、ビデオメッセージではその条件をクリアできません。 インターネットで「遺言」について調べてみると、「妻や家族に遺言としてビデオメッセージを残しても、意味がない」という意見を目にする機会もあるでしょう。これは、その法的根拠に注目した意見だと言えます。自身のメッセージに法的拘束力を持たせたいのであれば、ビデオメッセージではなく、正式な形式で作成された遺言書を活用してみてください。 ビデオメッセージは相続トラブル予防に効果的 先ほどもお伝えしたとおり、妻に残すビデオメッセージに法的な意味はありません。しかし、以下のような側面から見ると、ビデオメッセージの作成は非常に効果的です。 ・親族間の相続トラブルを予防したい・直接伝えられなかった素直な気持ちを届けたい・自身の死後、必要な情報をわかりやすく伝えたい ビデオメッセージの有用性として、もっとも注目されているのが相続トラブルの予防効果です。遺言書の内容を補完するための情報として、ぜひビデオメッセージを活用してみてください。 遺言書においては、被相続人の遺志を最大限に反映した内容を記すことが可能。とはいえ、遺言内容によっては、親族間で不満が噴出してしまう可能性もあるでしょう。「妻に全財産を相続させる」という内容を記した場合、遺産を受け取れない相続人が出てくるはずです。遺言書の内容に沿って遺産分割した場合でも、その後の関係性に溝が生じてしまうケースは少なくありません。 ここで活躍するのが、ビデオメッセージです。なぜそのような内容の遺言を残したのか、自身の言葉で直接語り掛けましょう。遺言書とは違い、ビデオメッセージなら、自分の言葉で素直な思いを届けられます。たとえ自身に不利な内容の遺言であっても、「そこに込められた思いや理由が明らかになれば納得しやすい」と感じる方は多いものです。ぜひ映像の強みを最大限に活用してみてください。 また相手が妻となると、「お互いに照れくさくて、なかなか素直な気持ちを伝えられていない」という方も多いのではないでしょうか。最後に残すビデオメッセージは、素直な思いを残すチャンスでもあります。直接言うのが恥ずかしい言葉も、ぜひ素直に語りかけてみてください。自分が亡くなったあとの、妻の生活を支える力になってくれるでしょう。 最後に、「必要な情報をわかりやすく伝えられる」という意味でも、ビデオメッセージは非常に効果的です。人が亡くなったあと、さまざまな雑務が発生するもの。そのために必要な情報を、ぜひビデオメッセージで残しておいてください。貴重品が保管されている場所や、連絡してほしい相手、遺言書のありかなど、手紙では伝えにくい点も、言葉でならわかりやすく伝えられるはずです。 このように、法的な拘束力はなくても、ビデオメッセージを残すことには意味があります。遺言書が「法律面」で自身の死後の手続きをサポートしてくれる存在なら、ビデオメッセージは「感情面」で遺族を支える柱になってくれるでしょう。それぞれが持つ意味をしっかりと把握した上で、状況に合わせて併用するのがおすすめです。 ビデオメッセージの作成方法・残し方は? 妻や家族に残すビデオメッセージは、自身の好きなスタイルで作成できます。自分のスマートフォンを使って撮影するだけでも、心のこもったメッセージになるでしょう。より本格的なメッセージを作成したい場合には、プロに依頼するのもおすすめです。カメラ写りや編集にまでこだわった、特別な「作品」として残せるでしょう。自分で作成する場合と比較してコストは高くなってしまいますが、プロのアドバイスを受けられるというメリットもあります。 実際にビデオメッセージを作成したら、ぜひその残し方にも気を配ってみてください。せっかくビデオメッセージを作成しても、自身の死後、動画が発見されなければ意味がありません。確実に動画を見てもらえるよう、以下の方法を検討してみてください。 ・自身が亡くなったあと、指定先に動画を転送してくれるサービスを利用する・わかりやすい場所に動画を保存し、エンディングノート等でそのありかを伝える・作成からお届けまで、ワンストップサービスを提供してくれる業者を利用する どの方法にもメリットとデメリットがあります。ぜひ、自身の思いをより確実に届けるための対策を取り入れてみてください。 妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を 妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を 「妻に残すビデオメッセージに意味がない」という意見を目にすると、「だとしたら残しても残さなくても同じ」「遺言書だけで十分」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、自身の言葉と表情で直接思いを届けられるビデオメッセージが持つメリットは、決して少なくありません。たとえ法的な意味はなくても、遺言書とともに活用し、親族間の相続トラブル予防のために役立てることをおすすめします。 ビデオメッセージの残し方や保管方法もさまざまです。まずはどのような形でどんなメッセージを残したいか、考えるところからスタートしてみてください。終活の一歩と言えるでしょう。

  • 婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    夫婦が離婚する場合に、行われるのが財産分与です。婚姻中に築き上げた財産を分け合うことを指しますが、「何をどこまで財産分与するのか?」で悩む方は少なくありません。今回紹介するのは、「婚姻中に親から相続した遺産」の取り扱いについてです。財産分与の対象になるケースやならないケース、頭に入れておきたい基礎知識を解説します。 相続した遺産は基本的に「特有財産」 相続した遺産は基本的に「特有財産」 財産分与について、まず頭に入れておきたいのが以下の2つです。 ・共有財産・特有財産 共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産のこと。一方で特有財産とは、夫婦どちらかのみに帰属している財産を指します。 たとえば、結婚している最中に増えた貯金や、購入した不動産は共有財産に含まれるでしょう。これらの共有財産は、離婚によって夫婦それぞれに分与されます。一方で特有財産は、財産分与の対象にはなりません。たとえ婚姻中に得た財産であっても、配偶者とは無関係であり、「形成されるのに夫婦間の協力はなかった」と判断されるためです。 婚姻中に自身の親が亡くなり、遺産を受け継いだ場合、その財産は「特有財産」と判断されます。よって、遺産相続後に離婚することになっても、基本的に財産分与の対象には含まれません。財産分与の話は、夫婦間で「何が共有財産にあたるのか?」を確認した上で、遺産相続とは別に進めていく必要があるでしょう。 ちなみに、特有財産に含まれるのは、相続した遺産だけではありません。 ・独身時代に貯めたお金・自身の親から援助された住宅資金・別居後に取得した財産 これらの財産も特有財産と判断されるため、財産分与の対象外となります。 遺産相続で得た財産も「共有財産」とみなされる可能性がある? 遺産相続で得た財産も、状況によっては共有財産とみなされるケースもあります。この場合、もちろん遺産も財産分与の対象となるため注意しましょう。具体的には、「遺産相続で得た財産が、配偶者の協力のもとで価値が向上した場合」がこちらにあたります。 たとえば、遺産相続で受け継いだお金を運用し、その金額が大幅にアップしている場合、「遺産に対して配偶者の貢献がある」とみなされる可能性があります。住宅を受け継ぎ、リフォーム等でその価値が向上している場合も含まれるでしょう。配偶者の貢献がどの程度あるのかによって、財産分与の割合は違ってきます。法律で明確な基準が設定されているわけではないため、状況に応じて、事例ごとに判断されるでしょう。 また遺産相続で得た財産が、夫婦の共有財産と混ざってしまっている場合にも注意が必要です。すでに「家計の一部」として、生活費が出たり入ったりしていれば、やはりそれも共有財産としてみなされてしまう可能性があります。財産分与を望まないのであれば、遺産として受け継いだお金を生活費の口座に入れておくのは危険です。 何をどこまで共有財産とみなすのかは、財産分与をする際に揉めやすいポイントです。遺産相続と財産分与、両者に関連したトラブルを避けるためには、共有財産と特有財産、それぞれの性質を理解した上で適切に管理する必要があるでしょう。 相続財産を財産分与しなくても良い具体的な事例とは? 相続した財産が財産分与の対象になるのかどうか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、相続した財産が財産分与の対象にならないケースを2つ具体的に紹介します。ぜひ参考にしてみてください。 ★相続した遺産を共有口座で管理していた場合 まだ離婚を検討していない時期、一方が相続した財産を、夫婦共有の口座で管理するケースは決して珍しくありません。この場合、「夫婦共有口座のお金であること」を理由に、財産分与の対象になるのでは?と不安に思う方も多いのではないでしょうか。 相続した遺産を共有口座にて管理していた場合でも、「遺産として受け継いだ分の特有財産」と判別できる状態であれば、財産分与の対象にはなりません。あくまでも「夫婦の生活費と混ざっておらず、特有財産として独立した存在である」と示せることが重要です。遺産相続分がどれだけなのか、きちんと把握できる状態であれば、共有口座かどうかは問題にはなりません。 ★相続した不動産で暮らしていた場合 夫婦どちらかが相続した家で暮らしていた場合、ただ暮らしていただけであれば、「配偶者の貢献によって価値が上昇した」とは考えられません。よって、財産分与の対象にはならないと考えられます。相続後にリフォームや大規模修繕を行っている場合を除き、財産分与の対象にする必要はないでしょう。 遺産の財産分与を希望する場合は? ここまで解説してきたとおり、遺産相続で受け継いだ遺産は、基本的に財産分与の対象にはなりません。相続手続きが婚姻期間中に行われた場合でも、この原則には変わりがないという点を、頭に入れておきましょう。 一方で、「遺産相続と財産分与の基本を知ってはいるが、相続した遺産も財産分与の対象にしたい」という方もいるのではないでしょうか。この場合、夫婦間の合意のもとで、一方の特有財産である遺産を、財産分与の対象として加えることも可能です。 特有財産を財産分与の対象外とするのは、民法の基本。しかし夫婦間の合意のもとで財産分与について決定する場合、その対象や割合については、原則にかかわらず、夫婦間で自由に決定できるという特徴があります。 「せっかく自分が受け継いだ遺産を財産分与するなんて…」と感じるケースも多いでしょうが、夫婦が離婚に至るまでの事情はさまざまです。「一刻も早く離婚したいのに、財産分与について揉めて、なかなか話が進んでいかない…」という場合には、遺産として受け継いだ分も含めて財産分与することで、手続きをスムーズに進めていける可能性もあるでしょう。 自分にとって何を優先したいのか、はっきりさせた上で手続きを進めていくのがおすすめです。 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 婚姻期間中に遺産を相続した場合、その財産は夫婦どちらかのみに帰属する「特有財産」と判断されます。離婚する場合でも、基本的に財産分与の対象には含まれないため、まずは安心してください。 ただし相続後の遺産の取り扱い方や、管理方法によっては財産分与の対象と判断されてしまうケースもあります。万が一の場合に備え、「特有財産である」ことを明確にして、維持・管理していくと良いでしょう。 また離婚する際の状況によっては、遺産も含めて財産分与した方が良いケースもあります。自分にとってのメリット・デメリットが気になったら、ぜひ一度専門家に相談してみてください。相続した遺産と財産分与について、適切なアドバイスを受けられるのではないでしょうか。

  • 遺産相続でよくあるトラブル…連絡が取れない相続人がいる場合はどうする?

    遺産相続でよくあるトラブル…連絡が取れない相続人がいる場合はどうする?

    遺産相続では、相続人が遺産分割協議を行い、誰が何をどの程度相続するのか決定する必要があります。できるだけスムーズに手続きを進めていきたいところですが、中には「相続人のうちの1人とどうしても連絡が取れない!」といったトラブルに巻き込まれてしまう事例も。このような場合には、いったいどう対処すれば良いのでしょうか?具体的な対処法や、知っておきたい基礎知識をまとめます。 遺産相続の基本…特定の相続人を除外した協議は無効 遺産相続の基本…特定の相続人を除外した協議は無効 まずは遺産相続手続きの、基本についておさらいしましょう。遺言書が残されていない場合の遺産相続は、相続人同士の協議によって、相続の内容が決定されます。相続人が全員納得した上で、話を進めていくのが前提です。 相続人になるのは、亡くなった人の配偶者および血族です。配偶者は常に相続人になりますが、血族には優先順位が定められています。優先順位がもっとも高い人のみが、相続人になる仕組みです。第1順位に当てはまるのは、亡くなった人の子どもおよびその代襲相続人です。第1順位に当てはまる人がいない場合は、第2順位である両親等の直系尊属に相続権が移ります。第2順位もいなければ、亡くなった人の兄弟姉妹およびその代襲相続人が第3順位と判断されるでしょう。 たとえば、亡くなった人に子どもや両親がいなかった場合、第3順位にあたる兄弟姉妹に相続権が発生します。しかしその兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合、その子どもたち、つまり亡くなった人から見て甥や姪にあたる人物が相続人になる仕組みです。親族間の交流がほとんどなければ、「相続人であっても連絡先がわからない」「どれだけ電話しても出てもらえない」といった事態も、決して珍しくはないでしょう。 さて、相続人のほとんどに連絡がついていて、「あと1人だけ連絡できない」という場合、「その人のみを除いて遺産分割協議を進めてしまおう」と思うケースもあるかもしれません。しかし残念ながら、「連絡が取れない」という理由のみで、遺産分割協議から特定の相続人を除外することは認められていません。協議そのものはできても、残念ながらその結果は「無効」と判断されてしまうでしょう。 ・口座を解約して現金を引き出す・不動産の名義変更をする このような相続手続きは、一切進められなくなってしまいます。 連絡が取れない理由と対処法は? 「遺産相続において、相続人と連絡が取れない」という事実の裏には、さまざまな理由が隠されているでしょう。具体的にどう対処すれば良いのかは、この理由によって違ってきます。3つのパターンと対処法をそれぞれ具体的に解説するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★パターン1「相続の発生や、自身が相続人であるという事実を知らない」 被相続人と相続人の関係性によっては、 ・相続人自身が相続発生の事実を知らない・相続人自身に、その自覚がない といったケースも考えられます。相続権を持っているものの、被相続人の存在すら知らず、まったく別の世界で生きる人も少なくありません。この場合、その他の相続人が連絡を取ろうとしたところで、「知らない人が、何かよくわからない話をしている」程度にしか感じられないでしょう。特段に自分の方から行動を起こす必要を感じられず、結果として「無視」になってしまう恐れがあります。 この場合は、まず相手の状況について、丁寧に説明し理解を求める必要があるでしょう。被相続人と相続人との関係性はもちろん、相続手続きを無視した場合のリスクやデメリットについてもしっかりと説明してみてください。 相続人の連絡先がわからない場合、戸籍の附票から住所をたどれます。手紙を出しても反応がない場合は、直接出向いてみるのもおすすめの方法です。 ★パターン2「相続人である事実を知っていてあえて無視している」 2つ目のパターンは、自身が相続人である事実を知っていても、あえて連絡を無視しているケースです。被相続人や、その他の相続人との関係が悪化している場合に、陥りやすいケースと言えるでしょう。 この場合も、まずはなんとか、自分自身で連絡を取ろうと努力するのが第一歩です。電話・郵便・訪問と、あらゆる手段を講じてみてください。もしそれでも駄目なら、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。 遺産分割調停とは、相続人だけでは遺産分割協議が進まない場合に、家庭裁判所が「調停」という形で介入することを言います。調停を申し立てれば、あえて無視している相続人のもとにも、家庭裁判所から連絡がいきます。もちろん、家裁からの連絡も無視されてしまう恐れもありますが、そうした事実を踏まえた上で遺産分割審判へと移行。裁判官が遺産分割方法を指定することで、遺産相続手続きを進められるようになります。 ★パターン3「行方不明になっている」 相続が発生した事実を知らせようにも、相続人が行方不明になってしまっているケースもあります。先ほどもお伝えしたとおり、戸籍の附票から調査すれば相続人の住所特定は可能。しかし、相続人がその住所にいなかった場合、居場所をたどる方法はありません。 行方不明になっている相続人がいる場合、家庭裁判所にて「不在者財産管理人」を選任してもらいましょう。不在者財産管理人は、行方不明になっている相続人の代理人として、遺産分割協議に参加します。また行方不明になってからすでに7年以上が経過している場合、家庭裁判所から失踪宣告を出してもらう方法もあります。こちらは、すでに亡くなっている可能性が高いと思われる場合に、行方不明者を死亡したものとみなす制度です。失踪宣告が出れば、連絡がつかない相続人を「亡くなったもの」とみなして、相続手続きを進めていけるようになります。 専門家に相談するのもおすすめ 専門家に相談するのもおすすめ 遺産相続において、「相続人の中に連絡が取れない人がいる」というのは、よくあるトラブルのひとつです。住所をたどったり、なんとか連絡を取ろうと努力したり…時間も手間もかかってしまうでしょう。だからこそ、弁護士や司法書士といった専門家に相談し、サポートを依頼するのもおすすめです。 親族間の関係性が悪化している場合や、相続人がそもそも何も知らない場合、第三者である専門家の介入は、決して悪いことではありません。むしろ冷静に、相続手続きを無視するメリット・デメリットについて考えられるのではないでしょうか。ぜひ積極的に検討してみてください。 連絡が取れない場合の流れを知って素早い対処を 相続人の中に連絡が取れない人がいると、手続き全体がストップしてしまいます。さまざまな不利益を被る可能性もあるため、速やかに対処しましょう。なぜ連絡が取れないのか、状況を把握した上で、今回紹介した対処法も実践してみてください。

  • 遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの期間は?注意点も解説

    遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの期間は?注意点も解説

    身近な人が亡くなった際に発生するのが「相続」です。何かと不安も多い時期。いつ遺産相続が終了するのか、また実際にお金を受け取れるまでにどの程度の時間がかかるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。今回は、遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの期間の目安について解説します。見落としがちな注意点についてもまとめて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 実際にお金が手に入るのは遺産相続手続き後 実際にお金が手に入るのは遺産相続手続き後 身近な人が亡くなり、相続が発生したとき、各種遺産を受け取るための手続きを遺産相続手続きと言います。遺産であるお金が相続人の手元に入ってくるのは、基本的に遺産相続手続きをすべて終えたあととなるでしょう。では遺産相続手続きは、どのように進められていくのでしょうか。基本的な流れは以下のとおりです。 1.相続人の調査と確定2.相続財産の調査と確定3.遺産分割協議と遺産分割協議書の作成4.協議書をもとにした、遺産分割にかかわる各種手続き 遺産を相続するためには、誰が何をどの程度受け継ぐのかを決定しなければいけません。法定相続人が一人とは限りませんし、被相続人のみだけが知る相続人が存在している可能性も。誰に遺産を相続する権利があるのか、被相続人の戸籍をたどって調査する必要があります。また相続する遺産についても、調査が必要です。被相続人がどういった財産を保有していて、何が相続対象に含まれるのか、こちらも幅広い調査が求められるでしょう。 こうして得られた情報をもとに、相続人同士が「誰が何をどの程度相続するのか?」を決定するのが遺産分割協議です。協議が難航すれば、その分手続きにかかる期間は長くなってしまうでしょう。全員が合意に至ったら、その内容を協議書にまとめます。 ここまで来たら、相続手続きはあと一歩です。協議書をもとに、具体的な手続きを進めていきましょう。被相続人の口座の解約やお金の分配、不動産の相続登記といった手続きが挙げられます。お金が入るのは、このあとのタイミングです。具体的な時期が気になるのも当然ですが、相続人や相続財産の調査、そして遺産分割協議がどの程度スムーズに運ぶのかによって、お金が入る時期も大きく変わってくるでしょう。 相続人や相続財産がシンプルな場合、相続発生後1~2ヶ月で実際にお金を手にできる可能性もあります。一方で遺産分割協議が難航し調停や裁判にまで発展してしまった場合、実際にお金が手に入るまで1年以上の時間がかかってしまう恐れもあるのです。 お金が手に入るまでの期間が比較的短いケースとは? 遺産相続がスタートしてから実際にお金が手に入るまでの時間は、それぞれのケースで異なるもの。比較的短期間で済むのは、「法的に有効な遺言書が残されているケース」です。 遺言書とは、故人が生前に「誰に何をどれだけ受け継いでもらいたいか」という意思を記した書類のこと。相続が発生した際に、法的に有効と認められる遺言書が残されていれば、そこに記された内容に沿って、相続手続きを進めていく流れになります。 遺言書を作成する段階で、相続人や遺産に関する調査はすでに終了しています。また遺言書があれば、わざわざ遺産分割協議を行う必要もありません。遺言書が公開されれば、その後の手続きを一気に進められるため、時間短縮にもつながるでしょう。 ただし残されていた遺言書が「自筆証書遺言」である場合、内容を確認する前に検認の手続きをする必要があります。自筆証書遺言とは、自宅にて一人で作成できる遺言形式のこと。検認は、遺言書の存在を相続人に知らせ、書類の偽造や変造を予防するための手続きです。自宅から自筆証書遺言が発見されたら、まずは家庭裁判所に申し立てを行いましょう。検認手続きを経て、ようやく遺言の中身を確認できるようになります。 検認手続きにかかる期間は、申し立てから約1ヶ月です。残念ながらこの期間は、相続手続きを進められません。 ちなみに、残されていた遺言書が自筆証書遺言であっても、自宅ではなく法務局で保管されていた場合、検認手続きは不要となります。きちんとした場所で保管されていて、偽造や変造の恐れがないとわかっているためです。この場合は、自筆証書遺言であっても、スムーズに相続手続きを進めていけるでしょう。 手続きを終えたあと、実際に振り込まれるまでの期間と注意点 遺産分割協議を終え、遺産相続の具体的な手続きがスタートした際に、具体的にお金が振り込まれる時期は、金融機関によって異なります。早いところでは、手続きのあと、最短即日で振り込んでもらえるでしょう。手続きに時間がかかる場合でも、1ヶ月程度見ておけば大丈夫です。 「葬儀費用を賄うため」など、遺産相続手続きが終了するまで待っていられない場合には、「口座凍結前にATMにて預貯金を事前に引き出しておく」という方法があります。ただしこの場合、「遺産に勝手に手をつけた」と思われないよう、万全の準備を整えておく必要があるでしょう。具体的にいくら引き出し、葬儀にいくらかかったのか、あとから見てすぐにわかるようにしておいてください。 「葬儀費用のため」といった理由もなく「ただ単純に自分のために使ってしまった」という場合、そのお金に手をつけたことを理由に、「相続を単純承認した」とみなされてしまいます。遺産調査の結果マイナスの資産が発覚した場合でも、いったん単純承認した遺産の受け取りを拒否することはできません。負債もすべて受け入れなければならなくなるため、十分に注意しましょう。 「遺産相続手続きが長引いているため、先に現金を引き出したい」という場合には、金融機関に仮払いを請求するのがおすすめです。払い戻し可能額に一定の制限はあるものの、金融機関の窓口で直接手続きすれば、遺産のお金を引き出せるでしょう。何らかの事情で「実際に振り込まれるまでの期間が待てない…」という場合には、ぜひこちらの制度もチェックしてみてください。 遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの時間で不安を感じたら 遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの時間で不安を感じたら 遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの期間について、不安を感じてしまうケースは決して少なくありません。実際にお金を手にできるのは、相続手続きが完了したあと。つまり、少しでも早くお金を手にするためには、相続手続きそのものをスムーズに進めていく必要があるのです。 遺言書が残されていない場合、相続人や相続財産の調査からスタートする必要があり、手間も時間もかかってしまうでしょう。相続問題に強い専門家を頼ることで、手続きをスムーズに進めやすくなるはずです。まずは一度、相談してみてはいかがでしょうか。

  • 遺産相続をサポートしてくれる専門家を探そう!行政書士に依頼するメリット・注意点

    遺産相続をサポートしてくれる専門家を探そう!行政書士に依頼するメリット・注意点

    遺産相続の手続きを滞りなく進めるため、また余計なトラブルを回避するためには、専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。とはいえ、具体的に誰に何をお願いすれば良いのか、悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。今回は、遺産相続をサポートしてくれる専門家として「行政書士」を紹介します。行政書士とはどのような専門家で、具体的に何をどうサポートしてくれるのでしょうか。行政書士に遺産相続の合サポートを依頼する場合のメリットや注意点を解説します。 行政書士とは? 行政書士とは、各種書類の作成をサポートしてくれる専門家です。官公庁に提出するために必要な書類や、権利や義務に関する書類、事実を公的に証明するための書類など…私たちの身の回りには、作成方法に困る書類が少なくありません。作成方法を間違えれば、手続きそのものが滞ってしまう恐れもあるでしょう。こうした場面で、専門知識をもとに作成サポートしてくれるのが行政書士なのです。 遺産相続に関連する書類としては、遺言書や相続関係説明図、遺産分割協議書などが挙げられます。これらの書類の作成については、ぜひ行政書士に相談してみてください。 遺産相続に関する相談を行政書士にするメリットとは? 遺産相続に関する相談を行政書士にするメリットとは? 遺産や相続に関連する内容を行政書士に相談するメリットは、以下のとおりです。 ★各種手続きの事前準備からお願いできる 遺言作成においても、遺産相続手続きにおいても、物事を適切な形で進めていくためには、さまざまな事前準備が必要となります。たとえば法的に有効な形で遺言を残そうとした場合、相続人の特定や相続財産の調査といった作業が必須に。作業結果を遺言内容に反映させる必要があるでしょう。行政書士にサポートを依頼すれば、この特定・調査の段階から、面倒な作業を代行してもらえます。 またいざ相続が発生した際にも、相続人や遺産に関する調査は必須です。それ以外にも、役所での戸籍謄本の収集や各金融機関での残高証明の取得など、さまざまな手続きが必要になります。これらの手続きを行政書士に代行してもらえれば、「平日昼間は仕事で忙しい」という方でも、安心して相続を進めていけるでしょう。手間を省き、相続や遺言に関する手続きが楽になります。 ★正確で間違いのない遺言を残せる 終活ブームの今、将来のために遺言を残す方は決して少なくありません。しかし実際には、「遺言書に法的な有効性が認められず、相続手続きには反映されなかった」という事例も多く見られます。 行政書士に遺言書作成サポートを依頼した場合、正しい形式で遺言を残せているかどうか、形式についてアドバイスをもらえます。せっかく書いた遺言書が「法的に無効」と判断されてしまうリスクを、少なくできるでしょう。 ただし遺言に含まれる「法律」の部分は、行政書士では専門外の業務となります。遺言の内容について法的なアドバイスを求めたり、内容について相談したりするのは難しいでしょう。「遺言に書きたい内容はすでに決まっていて、あとはそれを正しい形で書類として残したいだけ」という場合におすすめの相談先です。 ★弁護士と比較すると相談しやすい 遺産相続や遺言に関する相談を受け付けてくれる専門家は、行政書士だけではありません。「弁護士の方が先に頭に浮かんでくる」という方も多いのではないでしょうか。遺産相続や遺言について行政書士に依頼した場合、弁護士よりも報酬金額が安くなります。金銭面でのメリットを感じやすいでしょう。 また行政書士の数は弁護士よりもずっと多いため、身近な場所で相談しやすいという特徴があります。わざわざ遠くまで出向かなくても、地域内で相談先を見つけられるでしょう。遺言や相続に関する各種サポートには、きめ細やかな対応が必要です。身近な場所で相談できる行政書士であれば、何でも気軽に話しやすいのではないでしょうか。 行政書士に依頼する場合の注意点は? 行政書士に依頼する場合の注意点は? 行政書士は、遺産相続や遺言について、相談に乗ってくれる相手です。しかし残念ながら、どのような相談内容にも対応できるというわけではありません。行政書士に依頼するなら、「何に対応できて何ができないのか?」を正しく把握しておくことが大切です。 先ほどもお伝えしたとおり、行政書士は「書類」の専門家ではありますが、「法律相談」に関しては専門外です。遺言や相続、遺産の「法律面」で何か困った事態が発生したときには、弁護士事務所を頼るようにしましょう。 また行政書士は、すでに相続問題で争いが生じている案件を扱うことはできません。親族間でなんらかのトラブルが発生している場合に、代理人として各種交渉に応じたり、裁判を担当したりできるのは弁護士だけです。行政書士にサポートを依頼していて、手続きの過程で何らかのトラブルが生じてしまった場合、あらためて弁護士に相談する必要があるでしょう。トラブルが発生する可能性があると思われる場合には、最初から弁護士に相談しておくのもおすすめです。 もう一点頭に入れておきたいのが、不動産相続に関する注意点です。遺産の中に、土地や建物といった不動産が含まれるケースは少なくありません。この場合、不動産の名義変更(相続登記)の手続きが必要になります。行政書士は、この相続登記の申請を代理で行う権利を有していません。相続登記の代理申請を行えるのは、司法書士もしくは弁護士のみです。 相続放棄について検討している場合も、司法書士もしくは弁護士に相談した方が良いでしょう。相続放棄に関する手続きを依頼できるのも、司法書士もしくは弁護士のみです。相談についても同様なので、依頼先を間違えないようにしてください。相続放棄の手続きができる期間は限られています。時間を無駄にしないよう、注意しましょう。 行政書士はトラブルがない遺産相続の強い味方 遺産相続手続きにおいて、行政書士が対応できる分野は限られています。とはいえその分、身近な場所で相談でき、また手ごろな価格で問題を解決しやすいというメリットも期待できるでしょう。たとえば、 ・相続人が限られている・遺産相続の形がシンプルである・相続問題で揉め事が起きる可能性が低い といった場合には、行政書士のサポートで十分と考えられます。 遺産や相続について行政書士に依頼する場合には、話しやすくフットワークの軽い事務所を選択するのがおすすめです。面倒な書類作成やそのための調査にすぐに着手してもらえれば、遺産相続手続きそのものを、スムーズに進めやすくなるでしょう。メリット・デメリット・注意点等をしっかりと把握した上で、相談先選びの参考にしてみてくださいね。

  • 遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    子育てがひと段落すると、自分たちの老後について漠然とした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。遺産に関する不安も、その中の一つです。「将来のトラブルリスクを回避するため、具体的な対策をスタートしたい」と思いつつ、まず何からすれば良いのかわからない…と悩む方も少なくありません。法律に関連するお悩みの相談先として有名なのが「法テラス」ですが、遺産についても相談できるのでしょうか?法テラスでできることや、利用するメリットについて解説します。 そもそも法テラスとは? そもそも法テラスとは? 法テラスの正式名称は、日本司法支援センターと言います。国が設立した機関で、「法的トラブルを抱えている方に解決の道を示すための総合案内所」という役割を担っています。 法的なトラブルを抱えてしまった際に、「誰に相談すれば良いのかわからない…」「法律によって解決できる道があるのかどうかさえはっきりしない」と感じる方は少なくありません。法律による支援にたどり着けないまま、どんどん状況を悪化させてしまう方も多いものです。だからこそ法テラスでは、以下のような業務を行っています。 ・トラブル解決のための情報提供・問題を解決するための具体的な相談窓口・無料法律相談の提供や弁護士・司法書士費用等の立て替え 日常生活の中、何らかのトラブルを抱えてしまった場合でも、まずは一度法テラスに相談するのがおすすめです。トラブルを解決するため、具体的にどういった手段を検討できるのか、専門家によるアドバイスを受けられるでしょう。より具体的なサポートをしてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらうことも可能です。 また一定の収入・資産要件を満たしている人向けに、無料で法律相談を実施したり、専門家費用を立て替えたりする制度も用意されています。法テラスは基本無料で利用できる機関なので、ぜひ活用してみてください。 法テラスを活用して遺言や遺産に関する疑問を解消 遺産や遺言には、法律が深く関わってきます。法律の知識がないまま自己流で終活を進めた場合、後々トラブルにつながってしまう可能性も。さまざまな不安を解消するため、また法的な基礎知識を身につけるため、ぜひ法テラスを活用してみてください。法テラスで相談できる内容の具体例は、以下のとおりです。 ★将来の遺産相続のために遺言書を残したい 終活ブームの今、「遺産相続にまつわるトラブルを防ぐためには遺言書が有効」という情報は広く知れ渡っています。しかし本当にトラブルを防ぎたいなら、単純に「遺言を残しておけばOK」とだけ考えるのは危険。「法律知識をもとに、適切な形で残された法的に有効な遺言書」を用意しておく必要があります。遺留分や法定相続人の範囲など…適切な知識がないまま遺言を残しても、かえってトラブルを招く結果になってしまうでしょう。 法テラスに相談すれば、正しい形で遺言を残すために必要な、法制度に関する情報を提供してもらえます。また「自分だけでは不安…」という場合には、より具体的な相談を受け付けてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらえるでしょう。専門家に相談しつつ、自分にあった遺言書を残せるはずです。 ★両親の遺産を相続する際に、親族間で争いが起きている 子育てがひと段落する年代は、自分自身が相続人になる機会も多い時期です。両親の遺産を相続する際に、すでに親族間で争いが起きてしまっているような場合も、法テラスにて相談が可能。相続に関する法律知識を提供してもらえるほか、自身の代理人となって動いてくれる、弁護士の紹介も受けられます。 親族間で直接やりとりすると、遺産相続問題は泥沼化してしまう恐れも。第三者である専門家の手を借りることで、話し合いをスムーズに進めていける可能性も高まるでしょう。 ★相続放棄をしたいが、何からすれば良いのかわからない 相続放棄の手続きは、相続が発生してから、一定期間内に適切に行わなければいけません。まず自分が何をするべきなのか、いつまでにどういった手続きを終えなければならないのか、法テラスにて相談に乗ってもらえます。もちろんこの場合も、専門家事務所の紹介を受けることが可能。相続放棄以外にも、「親が亡くなり、借金を代わりに返済するよう言われてしまった…」といった状況でも、適切に対処できるでしょう。 法テラスを利用するメリット3つ 初めての法律相談を、ためらう方は少なくありません。法テラスを利用するメリットを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★基本無料で気軽に相談できる 法テラスへの相談は、基本無料で利用できます。個別の事例に対して、具体的なアドバイスはもらえませんが、法律に関する基本的な情報提供を受けることは可能。相談は何度でもできますから、法律に関する知識を、少しずつ深めていけるのではないでしょうか。 法テラスへの相談は匿名でできますし、また電話やメール、直接相談など、さまざまな相談形式が整っています。自分に合った相談スタイルで気軽に利用できる点が、メリットだと言えます。 ★相続に強い専門家につないでもらえる 遺産相続に関する各種手続きを専門家にサポートしてもらう場合、依頼先の専門家は、「遺産や相続に強い人」を選ぶ必要があります。もともとのツテでもない限り、誰に相談すれば良いのか悩む方も多いでしょう。法テラスに状況を伝えて相談窓口を紹介してもらえば、相続問題に強い専門家とつながれるはずです。 「自分で相談先事務所を選べない」という点は、法テラスを利用するデメリットとも言われています。一方で、「相続問題に強い専門家を自分自身で見つけ出す自信がない…」という場合には、非常に大きなメリットとなるでしょう。 ★無料相談や費用の立て替え制度を利用できる 法テラスには、収入や保有資産が少ない方に対する扶助制度も用意されています。「遺産相続について困っているが、収入がなく、専門家にサポートを依頼するのが難しい…」といった場合でも、法テラスなら無料相談や費用の立て替えに応じてもらえます。 法テラスの民事扶助制度の利用を希望する場合、収入や資産に関する要件を満たしていることを示すための書類が必要です。まずは一度、法テラスの相談窓口に問い合わせをしてみてください。自身が要件を満たしているか、またどのような書類を用意すれば良いのか、具体的な情報をもらえるでしょう。 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産や相続、遺言に関するお悩み事を抱えている際に、誰に相談すれば良いかわからず、悩んでしまう方は少なくありません。法テラスなら、誰でも無料で気軽に相談できますから、ぜひ活用してみてください。法律に関する情報を提供してもらったり、相談先窓口を紹介してもらったりすれば、これから自分が何をするべきか、具体的に見えてくるのではないでしょうか。

  • 生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

    生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

    相続税対策のため、遺産にまつわる親族間トラブルを避けるため、有効だと言われているのが「生前贈与」です。具体的にどのような制度で、どういったメリットが期待できるのでしょうか。注意点も踏まえて解説します。遺言による遺贈との違いや、どちらにするべきか悩んだ場合の考え方も紹介。相続に関する不安を解消するため、ぜひ参考にしてみてください。 そもそも生前贈与とは?3つのメリット解説 生前贈与とは、将来相続財産になる見込みの遺産を、生前に贈与することを言います。贈与をする側と受ける側が贈与契約を結び、財産をやりとりする方法です。生前贈与のメリットは、以下を参考にしてみてください。 ★メリット1「自身の意思を明確にできる」 先ほどもお伝えしたとおり、生前贈与とは、自身が生きている間に相手を指定し、自分の財産を受け取ってもらう方法です。自身の意思を明確に示せるため、死後に発生する相続よりも、親族間トラブルが発生しにくいというメリットがあります。たとえば、「よく世話をしてくれている長男の嫁に財産を残してやりたい」といった場面においても、自らの口で状況を説明可能。その他の親族にも、納得してもらいやすいでしょう。 また遺言書を残さないまま亡くなってしまった場合、被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つのは、法定相続人のみです。先ほどの「長男の嫁」や「孫」、「内縁の妻」など、相続権を持たない人に財産を残すことが難しくなってしまいます。 生前贈与なら、このような縛りは発生しません。誰にどれだけの財産を受け継いでほしいのか、自身の意思で判断できます。 ★メリット2「相続税対策に有効である」 被相続人が亡くなった際に、相続人に対して課せられるのが相続税です。相続財産の総額が一定以上になれば、税金を支払わなくてはいけません。生前贈与で事前に財産を渡しておけば、その分相続財産は減らせるでしょう。相続税を少なくする節税効果が見込めるのです。 もちろん、生前贈与の場合も、一定金額以上を超えれば贈与税が発生します。贈与税の基礎控除額は毎年110万円。この範囲内で生前贈与を繰り返していけば、贈与税を発生させず、相続税を減らす効果が期待できるでしょう。1年に110万円でも、10年継続できれば1,100万円になります。この110万円という控除額は「1人当たり」の数字ですから、生前贈与する相手が増えれば、その分相続財産を減らすスピードも速くなるはずです。 ★メリット3「自分の好きなタイミングで財産を渡せる」 相続の場合、財産を渡せるのは自身の死後となります。残念ながら、そのタイミングを自分自身で決定するのは難しいでしょう。その点生前贈与であれば、自分の住金タイミングで実行できるというメリットがあります。 たとえば、 ・孫の進学費用のため・子どものマイホーム資金援助として・お祝い金として など、お金が必要になったタイミングで援助してあげられるでしょう。孫の進学費用や住宅資金援助といった目的の場合、非課税で渡せる金額も大きくなります。 生前贈与の行い方と注意点 生前贈与の行い方と注意点 上で解説したとおり、生前贈与にはさまざまなメリットがあります。しかし実際に行う際には、いくつか注意点もあるので頭に入れておきましょう。生前贈与の具体的なやり方とともに紹介します。 ★1.誰にどのような目的でいくら贈与するのか決定する 生前贈与を決めたら、まずは誰にどのような目的で、いくら贈与するのかを決定しましょう。相手との関係性や目的、そして金額によって、利用できる非課税制度が違ってきます。相手と目的が決まったら、ぜひ利用できる制度がないかどうか確認してみてください。その上で、「非課税で贈与できるぎりぎりの金額」を狙ってみるのもおすすめです。 ★2.贈与税の課税方式を決定する 一定金額を超えた贈与契約に対して発生する贈与税。その課税方式は2パターン用意されており、自分自身で選択できます。 1つめのパターンは「暦年贈与」。1年間で贈与された金額の合計から基礎控除額(110万円)を引いて、超過分に対して贈与税が課せられる方式です。2つめのパターンは「相続時精算課税制度」と言い、2,500万円までを限度に贈与税が非課税になるかわりに、相続が発生した際に相続税が発生する仕組みです。 どちらにもメリット・デメリットがあるため、贈与する側・される側にとって、より良い方式を選んでください。 ★3.贈与契約書を作成する 贈与そのものは「あげる」「もらう」といった行為のみで完結しますが、財産の移動に関する証明がなければ、税務署に対して適切に説明できません。税務署からの指摘にしっかりとした説明ができなければ、余計なトラブルを招いてしまう恐れがあります。いつ誰が誰にどんな財産を贈与したのか、契約書にして残しておきましょう。 ★4.状況に応じて贈与税の申告を行う 贈与を受けた側は、状況に応じて贈与税の申告を行います。暦年贈与で110万円を超える贈与を受けたときや、相続時精算課税制度を選択した場合は、忘れないように申告してください。 ★生前贈与の注意点 生前贈与で暦年贈与を選択した場合、「死亡日より前の3年間に行われた暦年贈与は、相続税の対象に含まれる」というルールがあります。生前贈与加算と呼ばれるルールで、亡くなるタイミングによっては、生前贈与のメリットがなくなってしまう恐れもあるでしょう。こちらについても、ぜひ頭に入れておいてください。 遺言による遺贈と生前贈与、迷ったときはどうすれば良い? 遺言による遺贈と生前贈与は、どちらも「相続に自分の意思を反映させるための方法」と言えます。どちらが良いのか悩む方もいるでしょうが、両方をうまく組み合わせていくのがおすすめです。 現金や有価証券といった財産は、比較的生前贈与に向いています。誰に何をどの程度分配するのか決まっているのであれば、ぜひ生前贈与も積極的に検討してみてください。一方で土地やマイホームといった不動産は、暦年贈与の基礎控除を利用するのが難しく、生前贈与には注意が必要と言えるでしょう。 遺贈と生前贈与は、どちらの方が優れているというわけではありません。悩んだときには、遺産の性質に合わせて、専門家に相談しながら検討していくのがおすすめです。 生前贈与について正しく知り活用を 生前贈与について正しく知り活用を 生前贈与をうまく使えば、相続に関する各種トラブルを軽減できる可能性があります。終活について検討し始めたら、ぜひ生前贈与についても考えてみてください。「遺書」だけではなく、生前贈与まで視野に入れることで、「誰にどう財産を残すのか?」という視点は広がるはずです。ぜひ後悔のない相続について、検討してみてください。

  • 厚生年金が財産分与の対象になるって本当?離婚時の基礎知識

    厚生年金が財産分与の対象になるって本当?離婚時の基礎知識

    老後の生活を支えてくれる厚生年金。自身の将来を考える上で、非常に重要な年金だからこそ、実際に年金を受け取る前から正しい知識を身につけておくことが大切です。今回は、夫婦が離婚した場合の厚生年金の扱い方について解説します。「離婚したら厚生年金も財産分与の対象になると聞いたけれど…本当なのか?」といった疑問を、すっきり解消していきましょう。 厚生年金そのものは財産分与の対象にならない! 厚生年金そのものは財産分与の対象にならない! 長年連れ添った夫婦が離婚する際に、トラブルの原因になりやすいのが財産分与です。婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産は、離婚するにあたって、夫と妻の間で公平に分配されます。「名義がどちらにあるのか」ではなく、「実質的に二人が協力して築き上げてきた財産かどうか?」が重視されます。 たとえば、サラリーマンの夫と専業主婦の妻という家族構成であった場合、「家や土地は夫名義である」というご家庭も多いのではないでしょうか。しかし婚姻中に得た不動産は、夫のみの努力で購入できたわけではありません。夫の財布の裏には、妻の支えがあったと考えられるでしょう。たとえ夫名義であっても、夫だけが家や不動産を100%手に入れるわけではありません。財産分与では、夫婦が公平に財産を分配できるようになっています。もちろん財産分与の対象は、婚姻中に使用していた家具や家財はもちろん、預貯金や自動車、有価証券に保険解約返戻金と多岐にわたります。お互いの退職金さえも、財産分与の対象になり得るのです。 ここで気になるのが、老後に受け取る厚生年金についてです。サラリーマンの夫と専業主婦の妻という家族構成の場合、当然妻は、厚生年金に加入していません。しかしその加入実績は「夫婦が協力して築き上げた財産」とも捉えられます。妻側が、「だとしたら財産分与の対象になるのでは?」と考えるのは、ある意味で当然のことと言えるのかもしれません。 厚生年金は、現役期間の加入実績をもとに、将来受け取る金額が変動する仕組みです。残念ながら、この「将来受け取れる厚生年金そのもの」が財産分与の対象になるわけではありません。離婚する夫婦で分け合えるのは、「婚姻期間中に納めた年金保険料の納付記録」です。この制度を、年金分割と言います。 婚姻期間中に収めた年金保険料を夫婦間で分割すれば、専業主婦の妻であっても「厚生年金に保険料を納めている」と判断されます。年金分割をしなければ基礎年金のみが支給されるところを、納付保険料に応じた厚生年金を受給できるのです。「夫に支給される厚生年金そのものの2分の1が受け取れる」というわけではありませんが、年金分割を利用すれば、結果として年金を分け合う形を実現できるでしょう。 年金分割の注意点は? 離婚時に年金分割をする場合、以下の3点に注意してください。 ★請求期限は離婚してから2年以内 夫婦が離婚した際の、厚生年金の年金分割請求には、請求期限が設けられています。基本的には、離婚した日の翌日から2年以内です。期限を過ぎると請求できなくなってしまうので、注意してください。 ちなみに年金分割請求は、事実婚状態にあった人でも可能。たとえ事実婚であっても、一方の厚生年金加入歴は、もう一方の協力あってこそのものだと判断できるためです。ただしこの場合、「具体的にいつからいつまでが婚姻期間であったのか?」が不明確になってしまいがちです。事実婚をしている間に「国民年金の第3号被保険者資格」を取得していた場合、その喪失日を「事実婚を解消した日」と証明できます。その翌日から2年以内に請求手続きをしてください。 ★分割制度は2種類 年金分割で問題になりやすいのが、分割割合についてです。どちらにどのくらいの厚生年金記録が割り当てられるのかは、以下の2つの方法によって決定されます。 ・合意分割・3号分割 合意分割とは、当事者間の合意によって分割割合を決定できる制度のこと。一方が希望しても他方が同意しなければ、分割は認められません。この場合、裁判手続きを経て妥当と思われる分割割合が決定されます。分け与えられる側の割合の上限は2分の1です。 3号分割制度は、平成20年4月1日以後の婚姻期間中に、第3号被保険者期間がある方向けの分割制度です。第3号被保険者であった期間に、相手方の厚生年金の保険料納付記録があれば、2分の1ずつ強制的に分割されます。この場合、相手の合意は必要ありません。 離婚による年金分割を検討する場合、自分がどちらに該当するのかしっかりと確認しておきましょう。「自分ではよくわからない…」という場合には、請求期間内に年金事務所等で相談するのがおすすめです。 ★分割の対象になるのは厚生年金のみ 年金にはさまざまな種類がありますが、年金分割できるのは、厚生年金および共済年金のみという決まりがあります。国民年金はもちろん、企業年金や個人年金の保険料納付記録を分け合うことはできません。 また年金分割は、離婚する夫婦間の格差を是正するための制度です。「夫から妻に無条件に年金加入期間を分け与える制度」というわけではないので注意しましょう。たとえば、夫よりも妻の方が厚生年金を多く納めている場合、年金分割によって妻の保険料納付記録が夫の方へと分け与えられます。手続きによって、将来受け取る年金額が少なくなってしまう可能性についても、事前に考慮してみてください。 年金分割の申請方法とは 年金分割の申請方法とは 離婚時に年金分割を希望する場合、自分自身で手続きする必要があります。「何もしなくても離婚と同時に分割される」というわけではないため、注意してください。請求先は厚生労働大臣で、年金事務所を経由して手続きします。 年金分割をするためには、まずは双方の厚生年金加入状況をはっきりさせる必要があります。標準報酬総額や按分割合の範囲など、分割のために必要な情報を開示してもらえるよう、「年金分割のための情報提供請求書」を使って請求しましょう。交付された「年金分割のための情報通知書」をもとに、按分割合を決定し合意します。合意内容は、合意書や公正証書といった正式な書面に残しておきましょう。 その正式な書面と標準報酬改定請求書、年金手帳や戸籍謄本などを年金事務所に提出すれば、年金分割が実行されます。 厚生年金と財産分与について正しい知識を身につけよう 離婚を考える際に、「将来の生活が不安…」と感じる方は少なくありません。将来受け取る厚生年金そのものが財産分与の対象になるわけではありませんが、きちんと手続きすれば年金分割は可能。将来受け取る年金額をアップできる可能性もあります。一方で、手続きしたことによって、自分が将来受け取る年金額が減少してしまう恐れもあります。厚生年金と財産分与、そして年金分割について、正しい知識を身につけた上で、より良い道を選択しましょう。

  • 「小規模企業共済」とは?受け取り方法やタイミング・注意点など

    「小規模企業共済」とは?受け取り方法やタイミング・注意点など

    小規模企業共済法に基づいて運用される「小規模企業共済」は、自営業者や経営者等にとっての「退職金制度」のようなものとして認知されています。具体的にどういった制度で、どういったメリット・デメリットがあるのでしょうか。受け取り方法やおすすめのタイミング、あらかじめ知っておきたい注意点などをわかりやすくまとめます。 小規模企業共済とは?メリット・デメリットを解説 サラリーマンとして会社に勤める人の多くは、勤め先を辞める際に「退職金」を手にします。ある程度まとまった金額の退職金は、その後の生活を支える金銭的な要と言えるでしょう。 しかし退職金とは、誰もが当たり前にもらえるお金ではありません。自営業として仕事をしている人や、自分自身で会社を経営している人、退職金制度を運営するのが難しい小規模企業に勤めている人にとって、退職時にある程度まとまった金額を手にするのは、決して簡単なことではないのです。 こうした人々の退職後の生活を支えるため、用意されているのが小規模企業共済制度です。運営元は国の機関である中小機構。加入者それぞれが掛け金を積み立てていくことで、廃業時や退職時にまとまった金額を受け取れる仕組みになっています。 掛け金の月額は、1,000円から7万円までの範囲内であれば、500円単位で自由に設定可能です。支払った掛け金は、全額所得控除の対象にできる点も、非常に大きなメリットと言えるでしょう。たとえば、毎月最高額の7万円ずつ積み立てた場合、1年間で84万円の所得控除を受けられます。また掛け金は、加入後に自由に増減可能なため、経営状況に沿った運用が可能です。 一方で小規模企業共済にもデメリットはあります。掛け金納付月数が12カ月に満たない場合、共済金等が一部受け取り不可能と判断される可能性も。また加入年数が20年未満の場合、受け取る金額が掛け金の合計額を下回る、いわゆる「元本割れ」の状態になってしまいます。加入状況によっては、かえって損をする可能性もあるという点を、頭に入れておきましょう。 小規模企業共済の受け取り方法とタイミング 小規模企業共済の受け取り方法とタイミング 小規模企業共済では、受け取り方法を自分自身で決定できます。具体的には、 ・一括・分割・一括と分割の併用 の3つの種類から選択することになるでしょう。選択した受け取り方法によって、課税方式が変わってくるので注意してください。 小規模企業共済を一括で受け取る場合、受け取ったお金は「退職所得」として扱われます。退職所得には、勤続年数に応じた退職所得控除額が定められており、勤続年数20年以下であれば「40万円×勤続年数」が控除。一方で、勤続20年以上の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」が控除される仕組みです。小規模企業共済で受け取った金額から退職所得控除額を引き、さらにそれを2分の1にすると、課税退職所得金額が求められます。ここに所得税率を掛け合わせ、控除額を引いたら、実際の納税額を求められるでしょう。 一方で、小規模企業共済を分割で受け取る場合、受け取るお金は「公的年金等の雑所得」として扱われます。そのほかの公的年金と合わせて各種控除を行い、控除しきれなかった分に対して、課税される仕組みです。一括と分割を併用する場合については、一括受け取り分については「退職所得」として、分割受け取り分については「公的年金等の雑所得」として扱われます。 ちなみに、小規模企業共済に「満期」や「満額」といった概念は存在しません。 ・個人事業を廃止した・経営する株式会社を解散した・小規模企業共済に加入する企業の役員を退職した このようなタイミングで共済を解約し、解約手当金を受け取る制度です。解約タイミングによって、受け取る金額が変わってくる点に注意しましょう。 現在受け取れる共済金(解約手当金)がいくらになるのかは、中小機構の「定型書類の自動発送サービス」にてチェックできます。「042-567-3308」に電話して共済契約者番号を入力し、「共済金等試算表」の書類番号である「998」を指定しましょう。約1週間でシミュレーション結果が自宅に届きます。 小規模企業共済の受け取り方法は? 小規模企業共済の共済金を受け取るためには、以下の手続きが必要となります。個人事業を廃業した場合の手続きの流れを解説します。 ★1.書類を用意する 小規模企業共済の共済金を受け取るためには、必要書類を準備した上で、決められた手続きを取る必要があります。まずは以下の書類を準備しましょう。 ・個人事業の廃業届・印鑑登録証明書・マイナンバー確認書類・共済金等請求書・退職所得申告書・共済契約締結証書 個人事業の廃業届は、税務署に届け出た際の書類のコピーを用意してください。廃業年月日が明確に記載されていること、また税務署の受付印が押されていることが条件となります。印鑑登録証明書は、コピーではなく原本を。3ヶ月以内に発行されたものが必要です。 共済金等請求書や退職所得申告書については、中小機構ホームページよりダウンロード可能です。共済契約締結証書は契約時に発行される書類ですが、紛失した場合は中小機構から発行された、共済契約者番号を確認できる書類で代用可能です。 ★2.必要書類に記入し提出する 必要書類を用意したら、自身の情報を記入していきましょう。記入が求められるのは共済金等請求書と退職所得申告書ですが、どちらもホームページに記入例が公開されています。ぜひ参考にしてみてください。 必要書類が揃ったら、中小機構の窓口へと送付しましょう。共済金等請求書には、事前に受取口座のある金融機関で確認印を押してもらう必要がある点にだけ、注意してください。 ★3.審査と受け取り 中小機構の窓口に書類が到着したら、申請内容に対して審査が行われます。申請内容に不備や問題がないことが確認されれば、指定口座へと共済金が振り込まれます。申請から受け取りまでは、約3週間を見ておきましょう。 受け取り方法までイメージして小規模企業共済の活用を 受け取り方法までイメージして小規模企業共済の活用を 自営業として仕事をしている人や、中小企業を経営している人にとって、小規模企業共済は非常に助かる制度です。ぜひ受け取り方法までしっかりとイメージして、活用を検討してみてください。 ここまで解説してきたとおり、小規模企業共済という制度にはメリットもあればデメリットもあります。自分にとってはどちらの方が大きくなりそうか、事前に確認しておくと良いでしょう。気になる点があれば、まずは中小機構の共済相談室を利用してみるのもおすすめですよ。不安を解消し、自身の老後のために何ができるのか、より具体的に検討できるのではないでしょうか。

  • 死亡共済金は相続対象に含まれる?相続対策を考える上での注意点も解説

    死亡共済金は相続対象に含まれる?相続対策を考える上での注意点も解説

    自分に万が一のことがあったときのため、共済に入っている方も多いのではないでしょうか。遺族の手元に入るお金は、今後の生活の支えになってくれるでしょう。とはいえ、より多くのお金を家族のために残したいなら、「相続」についての注意点も知っておくことが大切です。死亡共済金の扱いや、相続対策を考える上で知っておきたい注意点について解説します。ぜひ参考にしてみてください。 死亡共済金は相続対象に含まれない 死亡共済金は相続対象に含まれない まず頭に入れておきたいのが、「死亡共済金は相続対象に含まれない」という事実です。死亡共済金受取人の順位は、共済の規約によって定められています。また契約者が、事前に受取人を指定しているケースもあるでしょう。死亡共済金を受け取る権利は、受取人に固有の権利として判断されます。 身近な人が亡くなった際に、財産は相続人に受け継がれます。預貯金や不動産など、ありとあらゆる財産が相続対象に含まれるでしょう。しかし死亡とともに発生した死亡共済金は、これらの相続財産に含まれません。相続手続きは、死亡共済金を除いて進められていきます。 一般的な相続の考え方として、父親が亡くなり、その配偶者と子ども3人が相続人になる場合を例にあげましょう。この場合、父親が残した3,000万円の財産を法定相続分に沿って分配する場合、配偶者が1,500万円、3人の子どもがそれぞれ500万円ずつ受け取る計算になります。 では、この父親が生命共済に加入していて、1,000万円の死亡共済金を配偶者が受け取る場合について考えてみましょう。配偶者は1,500万円の遺産に加えて、死亡共済金1,000万もそのまま受け取る計算になります。子ども3人が、「自分たちにも受け取る権利がある」と主張することはできません。 「みなし相続財産」として相続税が課税される場合がある 上で解説したとおり、死亡共済金は相続財産には含まれませんが、税制上の公正を期すため、「みなし相続財産」として判断されます。 つまり、「一般の相続財産のように分配する必要はないが、相続税の対象にはなる」ということ。死亡共済金や相続財産には、その性質を考慮して、十分な非課税枠が用意されています。しかし相続する財産が一定ラインを越えると、相続税が発生する可能性もあるのです。 死亡共済金の非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」という計算式で求められます。先ほどの家族を例にあげると、相続人の数は「配偶者+子ども3人」の合計4人。2,000万円までの死亡共済金であれば、相続税を課税されずに受け取れるでしょう。 仮に死亡共済金が2,500万円の場合、500万円分は非課税枠に入りきりません。この場合、入りきらない分をその他の相続財産と合わせて、相続税の金額が決定される仕組みです。 ただし死亡共済金以外の相続財産についても、「基礎控除額」が定められており、この範囲内であればやはり相続税は課税されません。相続税の基礎控除額は、「基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数」という数式で求められます。再度先ほどの例で考えるなら、相続税の基礎控除額は5,400万円です。仮に死亡共済金の非課税枠に入りきらない分が出たとしても、その他の相続財産と合わせて5,400万円までであれば、相続税は発生しません。 一方で、その他の財産と合わせて5,400万円を超えてしまうのであれば、死亡共済金であっても相続税が発生します。非課税枠に入りきらなかった500万円分については、きちんと税金を納める必要があるので注意しましょう。 共済保険で相続対策する場合の3つの注意点 平成27年より、相続税に関する制度が改正され、基礎控除枠が減額されました。これにより、「ごく一般的な家庭」であっても相続税が課税されるケースも増えてきています。以前は「相続対策=お金持ちがするもの」というイメージもありましたが、現在はそういうわけでもありません。より多くの人にとって、持続対策が重要な意味を持つようになってきています。 こうした状況の中で、共済保険も具体的な相続対策の一つとして注目されるように。この場合、以下の3つのポイントに注意してみてください。 ★共済の自由度は低い 相続対策で共済保険の活用を考える場合、その自由度の低さについて、あらかじめ頭に入れておきましょう。 一般的な生命保険の場合、死亡時の保障をいくら用意するのかは、比較的自由に設定できます。10万円単位で指定できるような保険商品も、決して少なくありません。一方で共済の場合は、200万円・500万円・1,000万円などあらかじめ金額が決められたコースの中から、選んで加入するスタイルが一般的です。自身のニーズに合わせて変更するのは難しいでしょう。 ★受取金額も低め 先ほどもお伝えしたとおり、死亡共済金や死亡保険金には、手厚い非課税枠が用意されています。まず、死亡共済金独自の非課税枠を計算し、さらにそこに含まれない分についても、相続税の基礎控除枠を活用できる仕組みです。相続対策を考えるなら、この非課税枠や控除額を、できるだけ無駄なく使い切ることが重要だと言えるでしょう。 共済の場合、死亡時に受け取れる金額は比較的低めに設定されています。相続対策として検討するなら、より高額な保険金を受け取れる、生命保険を検討するのがおすすめです。 死亡共済金や死亡保険金の非課税枠は、法定相続人の数によって違ってきます。法定相続人の数が少ない場合は共済でも十分ですが、法定相続人の数が多く、非課税枠も多い場合には、より充実した生命保険を検討すると良いでしょう。 ★契約者と受取人の関係によって税金は変わる! 先ほど、「死亡共済金にも相続税が発生するケースがある」とお伝えしましたが、契約時の各種条件によっては、相続税ではなく所得税や贈与税の対象になる可能性もあります。 契約者自身が死亡共済金を受け取る場合、発生する税金は所得税です。夫が妻を被共済者として契約を結び、夫を死亡共済金の受取人に設定した場合がこちらにあたります。契約者と被共済者、そして受取人がそれぞれ別の人の場合(夫が妻を被共済者として契約を結び、死亡共済金を子どもが受け取る場合など)には、贈与税が発生します。 契約時には、これらの注意点についてもしっかりと頭に入れておきましょう。 共済に加入するなら相続も見据えて検討を 共済に加入するなら相続も見据えて検討を 将来のために、共済への加入を検討する方も多いのではないでしょうか。将来の相続についても見据えて決断することで、余計なトラブルを避けられるでしょう。誰が受取人になるのか、また相続時にどういったトラブルが発生する可能性があるのか、事前に検討した上で検討するのがおすすめですよ。

  • 妻に残すビデオメッセージは意味がないって本当?正しく遺言を残すために

    スマートフォンで誰でも手軽にビデオメッセージを残せるようになった今、「自身の最期の思いを映像で届けたい」と考えるからも増えてきています。特に長年連れ添った妻に対するメッセージは、「形式的な遺言書ではあじけない…」と感じる方も多いようです。とはいえ、「妻に残すビデオメッセージには意味がない」という意見を見かけるのも事実。ビデオメッセージや遺言が持つ意味、そして正しい形式について確認しておきましょう。 妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない 妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない ビデオメッセージでは、画像を見ている人に対して、自身の言葉で直接語りかけられます。自身の口から発せられる言葉や、その表情や雰囲気など、さまざまな情報をダイレクトに届けられるでしょう。しかし残念ながら、ビデオメッセージに法的な効力は発生しません。ビデオメッセージの中で、たとえ本人が「妻に全財産を相続させたい」と発言したとしても、そこに法的な拘束力は存在しないのです。妻以外の相続人がその内容を認めなければ、自身の遺志を相続に反映させるのは難しいでしょう。 そもそも遺言書とは、自身が亡くなったあとの相続について、希望を伝えるための正式な書類です。法的に有効な形で遺言書が残されていた場合、その内容は他の何よりも優先されます。たとえば、法定相続人以外を相続人として指定したり、法定相続分に囚われない相続割合を指定したりすることも可能に。しかし、このような強い効力を持つ書類だからこそ、「法的に有効」と認められるためにはさまざまな条件をクリアする必要があるのです。残念ながら、ビデオメッセージではその条件をクリアできません。 インターネットで「遺言」について調べてみると、「妻や家族に遺言としてビデオメッセージを残しても、意味がない」という意見を目にする機会もあるでしょう。これは、その法的根拠に注目した意見だと言えます。自身のメッセージに法的拘束力を持たせたいのであれば、ビデオメッセージではなく、正式な形式で作成された遺言書を活用してみてください。 ビデオメッセージは相続トラブル予防に効果的 先ほどもお伝えしたとおり、妻に残すビデオメッセージに法的な意味はありません。しかし、以下のような側面から見ると、ビデオメッセージの作成は非常に効果的です。 ・親族間の相続トラブルを予防したい・直接伝えられなかった素直な気持ちを届けたい・自身の死後、必要な情報をわかりやすく伝えたい ビデオメッセージの有用性として、もっとも注目されているのが相続トラブルの予防効果です。遺言書の内容を補完するための情報として、ぜひビデオメッセージを活用してみてください。 遺言書においては、被相続人の遺志を最大限に反映した内容を記すことが可能。とはいえ、遺言内容によっては、親族間で不満が噴出してしまう可能性もあるでしょう。「妻に全財産を相続させる」という内容を記した場合、遺産を受け取れない相続人が出てくるはずです。遺言書の内容に沿って遺産分割した場合でも、その後の関係性に溝が生じてしまうケースは少なくありません。 ここで活躍するのが、ビデオメッセージです。なぜそのような内容の遺言を残したのか、自身の言葉で直接語り掛けましょう。遺言書とは違い、ビデオメッセージなら、自分の言葉で素直な思いを届けられます。たとえ自身に不利な内容の遺言であっても、「そこに込められた思いや理由が明らかになれば納得しやすい」と感じる方は多いものです。ぜひ映像の強みを最大限に活用してみてください。 また相手が妻となると、「お互いに照れくさくて、なかなか素直な気持ちを伝えられていない」という方も多いのではないでしょうか。最後に残すビデオメッセージは、素直な思いを残すチャンスでもあります。直接言うのが恥ずかしい言葉も、ぜひ素直に語りかけてみてください。自分が亡くなったあとの、妻の生活を支える力になってくれるでしょう。 最後に、「必要な情報をわかりやすく伝えられる」という意味でも、ビデオメッセージは非常に効果的です。人が亡くなったあと、さまざまな雑務が発生するもの。そのために必要な情報を、ぜひビデオメッセージで残しておいてください。貴重品が保管されている場所や、連絡してほしい相手、遺言書のありかなど、手紙では伝えにくい点も、言葉でならわかりやすく伝えられるはずです。 このように、法的な拘束力はなくても、ビデオメッセージを残すことには意味があります。遺言書が「法律面」で自身の死後の手続きをサポートしてくれる存在なら、ビデオメッセージは「感情面」で遺族を支える柱になってくれるでしょう。それぞれが持つ意味をしっかりと把握した上で、状況に合わせて併用するのがおすすめです。 ビデオメッセージの作成方法・残し方は? 妻や家族に残すビデオメッセージは、自身の好きなスタイルで作成できます。自分のスマートフォンを使って撮影するだけでも、心のこもったメッセージになるでしょう。より本格的なメッセージを作成したい場合には、プロに依頼するのもおすすめです。カメラ写りや編集にまでこだわった、特別な「作品」として残せるでしょう。自分で作成する場合と比較してコストは高くなってしまいますが、プロのアドバイスを受けられるというメリットもあります。 実際にビデオメッセージを作成したら、ぜひその残し方にも気を配ってみてください。せっかくビデオメッセージを作成しても、自身の死後、動画が発見されなければ意味がありません。確実に動画を見てもらえるよう、以下の方法を検討してみてください。 ・自身が亡くなったあと、指定先に動画を転送してくれるサービスを利用する・わかりやすい場所に動画を保存し、エンディングノート等でそのありかを伝える・作成からお届けまで、ワンストップサービスを提供してくれる業者を利用する どの方法にもメリットとデメリットがあります。ぜひ、自身の思いをより確実に届けるための対策を取り入れてみてください。 妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を 妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を 「妻に残すビデオメッセージに意味がない」という意見を目にすると、「だとしたら残しても残さなくても同じ」「遺言書だけで十分」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、自身の言葉と表情で直接思いを届けられるビデオメッセージが持つメリットは、決して少なくありません。たとえ法的な意味はなくても、遺言書とともに活用し、親族間の相続トラブル予防のために役立てることをおすすめします。 ビデオメッセージの残し方や保管方法もさまざまです。まずはどのような形でどんなメッセージを残したいか、考えるところからスタートしてみてください。終活の一歩と言えるでしょう。

  • 婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    夫婦が離婚する場合に、行われるのが財産分与です。婚姻中に築き上げた財産を分け合うことを指しますが、「何をどこまで財産分与するのか?」で悩む方は少なくありません。今回紹介するのは、「婚姻中に親から相続した遺産」の取り扱いについてです。財産分与の対象になるケースやならないケース、頭に入れておきたい基礎知識を解説します。 相続した遺産は基本的に「特有財産」 相続した遺産は基本的に「特有財産」 財産分与について、まず頭に入れておきたいのが以下の2つです。 ・共有財産・特有財産 共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産のこと。一方で特有財産とは、夫婦どちらかのみに帰属している財産を指します。 たとえば、結婚している最中に増えた貯金や、購入した不動産は共有財産に含まれるでしょう。これらの共有財産は、離婚によって夫婦それぞれに分与されます。一方で特有財産は、財産分与の対象にはなりません。たとえ婚姻中に得た財産であっても、配偶者とは無関係であり、「形成されるのに夫婦間の協力はなかった」と判断されるためです。 婚姻中に自身の親が亡くなり、遺産を受け継いだ場合、その財産は「特有財産」と判断されます。よって、遺産相続後に離婚することになっても、基本的に財産分与の対象には含まれません。財産分与の話は、夫婦間で「何が共有財産にあたるのか?」を確認した上で、遺産相続とは別に進めていく必要があるでしょう。 ちなみに、特有財産に含まれるのは、相続した遺産だけではありません。 ・独身時代に貯めたお金・自身の親から援助された住宅資金・別居後に取得した財産 これらの財産も特有財産と判断されるため、財産分与の対象外となります。 遺産相続で得た財産も「共有財産」とみなされる可能性がある? 遺産相続で得た財産も、状況によっては共有財産とみなされるケースもあります。この場合、もちろん遺産も財産分与の対象となるため注意しましょう。具体的には、「遺産相続で得た財産が、配偶者の協力のもとで価値が向上した場合」がこちらにあたります。 たとえば、遺産相続で受け継いだお金を運用し、その金額が大幅にアップしている場合、「遺産に対して配偶者の貢献がある」とみなされる可能性があります。住宅を受け継ぎ、リフォーム等でその価値が向上している場合も含まれるでしょう。配偶者の貢献がどの程度あるのかによって、財産分与の割合は違ってきます。法律で明確な基準が設定されているわけではないため、状況に応じて、事例ごとに判断されるでしょう。 また遺産相続で得た財産が、夫婦の共有財産と混ざってしまっている場合にも注意が必要です。すでに「家計の一部」として、生活費が出たり入ったりしていれば、やはりそれも共有財産としてみなされてしまう可能性があります。財産分与を望まないのであれば、遺産として受け継いだお金を生活費の口座に入れておくのは危険です。 何をどこまで共有財産とみなすのかは、財産分与をする際に揉めやすいポイントです。遺産相続と財産分与、両者に関連したトラブルを避けるためには、共有財産と特有財産、それぞれの性質を理解した上で適切に管理する必要があるでしょう。 相続財産を財産分与しなくても良い具体的な事例とは? 相続した財産が財産分与の対象になるのかどうか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、相続した財産が財産分与の対象にならないケースを2つ具体的に紹介します。ぜひ参考にしてみてください。 ★相続した遺産を共有口座で管理していた場合 まだ離婚を検討していない時期、一方が相続した財産を、夫婦共有の口座で管理するケースは決して珍しくありません。この場合、「夫婦共有口座のお金であること」を理由に、財産分与の対象になるのでは?と不安に思う方も多いのではないでしょうか。 相続した遺産を共有口座にて管理していた場合でも、「遺産として受け継いだ分の特有財産」と判別できる状態であれば、財産分与の対象にはなりません。あくまでも「夫婦の生活費と混ざっておらず、特有財産として独立した存在である」と示せることが重要です。遺産相続分がどれだけなのか、きちんと把握できる状態であれば、共有口座かどうかは問題にはなりません。 ★相続した不動産で暮らしていた場合 夫婦どちらかが相続した家で暮らしていた場合、ただ暮らしていただけであれば、「配偶者の貢献によって価値が上昇した」とは考えられません。よって、財産分与の対象にはならないと考えられます。相続後にリフォームや大規模修繕を行っている場合を除き、財産分与の対象にする必要はないでしょう。 遺産の財産分与を希望する場合は? ここまで解説してきたとおり、遺産相続で受け継いだ遺産は、基本的に財産分与の対象にはなりません。相続手続きが婚姻期間中に行われた場合でも、この原則には変わりがないという点を、頭に入れておきましょう。 一方で、「遺産相続と財産分与の基本を知ってはいるが、相続した遺産も財産分与の対象にしたい」という方もいるのではないでしょうか。この場合、夫婦間の合意のもとで、一方の特有財産である遺産を、財産分与の対象として加えることも可能です。 特有財産を財産分与の対象外とするのは、民法の基本。しかし夫婦間の合意のもとで財産分与について決定する場合、その対象や割合については、原則にかかわらず、夫婦間で自由に決定できるという特徴があります。 「せっかく自分が受け継いだ遺産を財産分与するなんて…」と感じるケースも多いでしょうが、夫婦が離婚に至るまでの事情はさまざまです。「一刻も早く離婚したいのに、財産分与について揉めて、なかなか話が進んでいかない…」という場合には、遺産として受け継いだ分も含めて財産分与することで、手続きをスムーズに進めていける可能性もあるでしょう。 自分にとって何を優先したいのか、はっきりさせた上で手続きを進めていくのがおすすめです。 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 婚姻期間中に遺産を相続した場合、その財産は夫婦どちらかのみに帰属する「特有財産」と判断されます。離婚する場合でも、基本的に財産分与の対象には含まれないため、まずは安心してください。 ただし相続後の遺産の取り扱い方や、管理方法によっては財産分与の対象と判断されてしまうケースもあります。万が一の場合に備え、「特有財産である」ことを明確にして、維持・管理していくと良いでしょう。 また離婚する際の状況によっては、遺産も含めて財産分与した方が良いケースもあります。自分にとってのメリット・デメリットが気になったら、ぜひ一度専門家に相談してみてください。相続した遺産と財産分与について、適切なアドバイスを受けられるのではないでしょうか。

  • 遺産相続でよくあるトラブル…連絡が取れない相続人がいる場合はどうする?

    遺産相続では、相続人が遺産分割協議を行い、誰が何をどの程度相続するのか決定する必要があります。できるだけスムーズに手続きを進めていきたいところですが、中には「相続人のうちの1人とどうしても連絡が取れない!」といったトラブルに巻き込まれてしまう事例も。このような場合には、いったいどう対処すれば良いのでしょうか?具体的な対処法や、知っておきたい基礎知識をまとめます。 遺産相続の基本…特定の相続人を除外した協議は無効 遺産相続の基本…特定の相続人を除外した協議は無効 まずは遺産相続手続きの、基本についておさらいしましょう。遺言書が残されていない場合の遺産相続は、相続人同士の協議によって、相続の内容が決定されます。相続人が全員納得した上で、話を進めていくのが前提です。 相続人になるのは、亡くなった人の配偶者および血族です。配偶者は常に相続人になりますが、血族には優先順位が定められています。優先順位がもっとも高い人のみが、相続人になる仕組みです。第1順位に当てはまるのは、亡くなった人の子どもおよびその代襲相続人です。第1順位に当てはまる人がいない場合は、第2順位である両親等の直系尊属に相続権が移ります。第2順位もいなければ、亡くなった人の兄弟姉妹およびその代襲相続人が第3順位と判断されるでしょう。 たとえば、亡くなった人に子どもや両親がいなかった場合、第3順位にあたる兄弟姉妹に相続権が発生します。しかしその兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合、その子どもたち、つまり亡くなった人から見て甥や姪にあたる人物が相続人になる仕組みです。親族間の交流がほとんどなければ、「相続人であっても連絡先がわからない」「どれだけ電話しても出てもらえない」といった事態も、決して珍しくはないでしょう。 さて、相続人のほとんどに連絡がついていて、「あと1人だけ連絡できない」という場合、「その人のみを除いて遺産分割協議を進めてしまおう」と思うケースもあるかもしれません。しかし残念ながら、「連絡が取れない」という理由のみで、遺産分割協議から特定の相続人を除外することは認められていません。協議そのものはできても、残念ながらその結果は「無効」と判断されてしまうでしょう。 ・口座を解約して現金を引き出す・不動産の名義変更をする このような相続手続きは、一切進められなくなってしまいます。 連絡が取れない理由と対処法は? 「遺産相続において、相続人と連絡が取れない」という事実の裏には、さまざまな理由が隠されているでしょう。具体的にどう対処すれば良いのかは、この理由によって違ってきます。3つのパターンと対処法をそれぞれ具体的に解説するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★パターン1「相続の発生や、自身が相続人であるという事実を知らない」 被相続人と相続人の関係性によっては、 ・相続人自身が相続発生の事実を知らない・相続人自身に、その自覚がない といったケースも考えられます。相続権を持っているものの、被相続人の存在すら知らず、まったく別の世界で生きる人も少なくありません。この場合、その他の相続人が連絡を取ろうとしたところで、「知らない人が、何かよくわからない話をしている」程度にしか感じられないでしょう。特段に自分の方から行動を起こす必要を感じられず、結果として「無視」になってしまう恐れがあります。 この場合は、まず相手の状況について、丁寧に説明し理解を求める必要があるでしょう。被相続人と相続人との関係性はもちろん、相続手続きを無視した場合のリスクやデメリットについてもしっかりと説明してみてください。 相続人の連絡先がわからない場合、戸籍の附票から住所をたどれます。手紙を出しても反応がない場合は、直接出向いてみるのもおすすめの方法です。 ★パターン2「相続人である事実を知っていてあえて無視している」 2つ目のパターンは、自身が相続人である事実を知っていても、あえて連絡を無視しているケースです。被相続人や、その他の相続人との関係が悪化している場合に、陥りやすいケースと言えるでしょう。 この場合も、まずはなんとか、自分自身で連絡を取ろうと努力するのが第一歩です。電話・郵便・訪問と、あらゆる手段を講じてみてください。もしそれでも駄目なら、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。 遺産分割調停とは、相続人だけでは遺産分割協議が進まない場合に、家庭裁判所が「調停」という形で介入することを言います。調停を申し立てれば、あえて無視している相続人のもとにも、家庭裁判所から連絡がいきます。もちろん、家裁からの連絡も無視されてしまう恐れもありますが、そうした事実を踏まえた上で遺産分割審判へと移行。裁判官が遺産分割方法を指定することで、遺産相続手続きを進められるようになります。 ★パターン3「行方不明になっている」 相続が発生した事実を知らせようにも、相続人が行方不明になってしまっているケースもあります。先ほどもお伝えしたとおり、戸籍の附票から調査すれば相続人の住所特定は可能。しかし、相続人がその住所にいなかった場合、居場所をたどる方法はありません。 行方不明になっている相続人がいる場合、家庭裁判所にて「不在者財産管理人」を選任してもらいましょう。不在者財産管理人は、行方不明になっている相続人の代理人として、遺産分割協議に参加します。また行方不明になってからすでに7年以上が経過している場合、家庭裁判所から失踪宣告を出してもらう方法もあります。こちらは、すでに亡くなっている可能性が高いと思われる場合に、行方不明者を死亡したものとみなす制度です。失踪宣告が出れば、連絡がつかない相続人を「亡くなったもの」とみなして、相続手続きを進めていけるようになります。 専門家に相談するのもおすすめ 専門家に相談するのもおすすめ 遺産相続において、「相続人の中に連絡が取れない人がいる」というのは、よくあるトラブルのひとつです。住所をたどったり、なんとか連絡を取ろうと努力したり…時間も手間もかかってしまうでしょう。だからこそ、弁護士や司法書士といった専門家に相談し、サポートを依頼するのもおすすめです。 親族間の関係性が悪化している場合や、相続人がそもそも何も知らない場合、第三者である専門家の介入は、決して悪いことではありません。むしろ冷静に、相続手続きを無視するメリット・デメリットについて考えられるのではないでしょうか。ぜひ積極的に検討してみてください。 連絡が取れない場合の流れを知って素早い対処を 相続人の中に連絡が取れない人がいると、手続き全体がストップしてしまいます。さまざまな不利益を被る可能性もあるため、速やかに対処しましょう。なぜ連絡が取れないのか、状況を把握した上で、今回紹介した対処法も実践してみてください。

  • 遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの期間は?注意点も解説

    身近な人が亡くなった際に発生するのが「相続」です。何かと不安も多い時期。いつ遺産相続が終了するのか、また実際にお金を受け取れるまでにどの程度の時間がかかるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。今回は、遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの期間の目安について解説します。見落としがちな注意点についてもまとめて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 実際にお金が手に入るのは遺産相続手続き後 実際にお金が手に入るのは遺産相続手続き後 身近な人が亡くなり、相続が発生したとき、各種遺産を受け取るための手続きを遺産相続手続きと言います。遺産であるお金が相続人の手元に入ってくるのは、基本的に遺産相続手続きをすべて終えたあととなるでしょう。では遺産相続手続きは、どのように進められていくのでしょうか。基本的な流れは以下のとおりです。 1.相続人の調査と確定2.相続財産の調査と確定3.遺産分割協議と遺産分割協議書の作成4.協議書をもとにした、遺産分割にかかわる各種手続き 遺産を相続するためには、誰が何をどの程度受け継ぐのかを決定しなければいけません。法定相続人が一人とは限りませんし、被相続人のみだけが知る相続人が存在している可能性も。誰に遺産を相続する権利があるのか、被相続人の戸籍をたどって調査する必要があります。また相続する遺産についても、調査が必要です。被相続人がどういった財産を保有していて、何が相続対象に含まれるのか、こちらも幅広い調査が求められるでしょう。 こうして得られた情報をもとに、相続人同士が「誰が何をどの程度相続するのか?」を決定するのが遺産分割協議です。協議が難航すれば、その分手続きにかかる期間は長くなってしまうでしょう。全員が合意に至ったら、その内容を協議書にまとめます。 ここまで来たら、相続手続きはあと一歩です。協議書をもとに、具体的な手続きを進めていきましょう。被相続人の口座の解約やお金の分配、不動産の相続登記といった手続きが挙げられます。お金が入るのは、このあとのタイミングです。具体的な時期が気になるのも当然ですが、相続人や相続財産の調査、そして遺産分割協議がどの程度スムーズに運ぶのかによって、お金が入る時期も大きく変わってくるでしょう。 相続人や相続財産がシンプルな場合、相続発生後1~2ヶ月で実際にお金を手にできる可能性もあります。一方で遺産分割協議が難航し調停や裁判にまで発展してしまった場合、実際にお金が手に入るまで1年以上の時間がかかってしまう恐れもあるのです。 お金が手に入るまでの期間が比較的短いケースとは? 遺産相続がスタートしてから実際にお金が手に入るまでの時間は、それぞれのケースで異なるもの。比較的短期間で済むのは、「法的に有効な遺言書が残されているケース」です。 遺言書とは、故人が生前に「誰に何をどれだけ受け継いでもらいたいか」という意思を記した書類のこと。相続が発生した際に、法的に有効と認められる遺言書が残されていれば、そこに記された内容に沿って、相続手続きを進めていく流れになります。 遺言書を作成する段階で、相続人や遺産に関する調査はすでに終了しています。また遺言書があれば、わざわざ遺産分割協議を行う必要もありません。遺言書が公開されれば、その後の手続きを一気に進められるため、時間短縮にもつながるでしょう。 ただし残されていた遺言書が「自筆証書遺言」である場合、内容を確認する前に検認の手続きをする必要があります。自筆証書遺言とは、自宅にて一人で作成できる遺言形式のこと。検認は、遺言書の存在を相続人に知らせ、書類の偽造や変造を予防するための手続きです。自宅から自筆証書遺言が発見されたら、まずは家庭裁判所に申し立てを行いましょう。検認手続きを経て、ようやく遺言の中身を確認できるようになります。 検認手続きにかかる期間は、申し立てから約1ヶ月です。残念ながらこの期間は、相続手続きを進められません。 ちなみに、残されていた遺言書が自筆証書遺言であっても、自宅ではなく法務局で保管されていた場合、検認手続きは不要となります。きちんとした場所で保管されていて、偽造や変造の恐れがないとわかっているためです。この場合は、自筆証書遺言であっても、スムーズに相続手続きを進めていけるでしょう。 手続きを終えたあと、実際に振り込まれるまでの期間と注意点 遺産分割協議を終え、遺産相続の具体的な手続きがスタートした際に、具体的にお金が振り込まれる時期は、金融機関によって異なります。早いところでは、手続きのあと、最短即日で振り込んでもらえるでしょう。手続きに時間がかかる場合でも、1ヶ月程度見ておけば大丈夫です。 「葬儀費用を賄うため」など、遺産相続手続きが終了するまで待っていられない場合には、「口座凍結前にATMにて預貯金を事前に引き出しておく」という方法があります。ただしこの場合、「遺産に勝手に手をつけた」と思われないよう、万全の準備を整えておく必要があるでしょう。具体的にいくら引き出し、葬儀にいくらかかったのか、あとから見てすぐにわかるようにしておいてください。 「葬儀費用のため」といった理由もなく「ただ単純に自分のために使ってしまった」という場合、そのお金に手をつけたことを理由に、「相続を単純承認した」とみなされてしまいます。遺産調査の結果マイナスの資産が発覚した場合でも、いったん単純承認した遺産の受け取りを拒否することはできません。負債もすべて受け入れなければならなくなるため、十分に注意しましょう。 「遺産相続手続きが長引いているため、先に現金を引き出したい」という場合には、金融機関に仮払いを請求するのがおすすめです。払い戻し可能額に一定の制限はあるものの、金融機関の窓口で直接手続きすれば、遺産のお金を引き出せるでしょう。何らかの事情で「実際に振り込まれるまでの期間が待てない…」という場合には、ぜひこちらの制度もチェックしてみてください。 遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの時間で不安を感じたら 遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの時間で不安を感じたら 遺産相続で実際にお金を受け取れるまでの期間について、不安を感じてしまうケースは決して少なくありません。実際にお金を手にできるのは、相続手続きが完了したあと。つまり、少しでも早くお金を手にするためには、相続手続きそのものをスムーズに進めていく必要があるのです。 遺言書が残されていない場合、相続人や相続財産の調査からスタートする必要があり、手間も時間もかかってしまうでしょう。相続問題に強い専門家を頼ることで、手続きをスムーズに進めやすくなるはずです。まずは一度、相談してみてはいかがでしょうか。

  • 遺産相続をサポートしてくれる専門家を探そう!行政書士に依頼するメリット・注意点

    遺産相続の手続きを滞りなく進めるため、また余計なトラブルを回避するためには、専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。とはいえ、具体的に誰に何をお願いすれば良いのか、悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。今回は、遺産相続をサポートしてくれる専門家として「行政書士」を紹介します。行政書士とはどのような専門家で、具体的に何をどうサポートしてくれるのでしょうか。行政書士に遺産相続の合サポートを依頼する場合のメリットや注意点を解説します。 行政書士とは? 行政書士とは、各種書類の作成をサポートしてくれる専門家です。官公庁に提出するために必要な書類や、権利や義務に関する書類、事実を公的に証明するための書類など…私たちの身の回りには、作成方法に困る書類が少なくありません。作成方法を間違えれば、手続きそのものが滞ってしまう恐れもあるでしょう。こうした場面で、専門知識をもとに作成サポートしてくれるのが行政書士なのです。 遺産相続に関連する書類としては、遺言書や相続関係説明図、遺産分割協議書などが挙げられます。これらの書類の作成については、ぜひ行政書士に相談してみてください。 遺産相続に関する相談を行政書士にするメリットとは? 遺産相続に関する相談を行政書士にするメリットとは? 遺産や相続に関連する内容を行政書士に相談するメリットは、以下のとおりです。 ★各種手続きの事前準備からお願いできる 遺言作成においても、遺産相続手続きにおいても、物事を適切な形で進めていくためには、さまざまな事前準備が必要となります。たとえば法的に有効な形で遺言を残そうとした場合、相続人の特定や相続財産の調査といった作業が必須に。作業結果を遺言内容に反映させる必要があるでしょう。行政書士にサポートを依頼すれば、この特定・調査の段階から、面倒な作業を代行してもらえます。 またいざ相続が発生した際にも、相続人や遺産に関する調査は必須です。それ以外にも、役所での戸籍謄本の収集や各金融機関での残高証明の取得など、さまざまな手続きが必要になります。これらの手続きを行政書士に代行してもらえれば、「平日昼間は仕事で忙しい」という方でも、安心して相続を進めていけるでしょう。手間を省き、相続や遺言に関する手続きが楽になります。 ★正確で間違いのない遺言を残せる 終活ブームの今、将来のために遺言を残す方は決して少なくありません。しかし実際には、「遺言書に法的な有効性が認められず、相続手続きには反映されなかった」という事例も多く見られます。 行政書士に遺言書作成サポートを依頼した場合、正しい形式で遺言を残せているかどうか、形式についてアドバイスをもらえます。せっかく書いた遺言書が「法的に無効」と判断されてしまうリスクを、少なくできるでしょう。 ただし遺言に含まれる「法律」の部分は、行政書士では専門外の業務となります。遺言の内容について法的なアドバイスを求めたり、内容について相談したりするのは難しいでしょう。「遺言に書きたい内容はすでに決まっていて、あとはそれを正しい形で書類として残したいだけ」という場合におすすめの相談先です。 ★弁護士と比較すると相談しやすい 遺産相続や遺言に関する相談を受け付けてくれる専門家は、行政書士だけではありません。「弁護士の方が先に頭に浮かんでくる」という方も多いのではないでしょうか。遺産相続や遺言について行政書士に依頼した場合、弁護士よりも報酬金額が安くなります。金銭面でのメリットを感じやすいでしょう。 また行政書士の数は弁護士よりもずっと多いため、身近な場所で相談しやすいという特徴があります。わざわざ遠くまで出向かなくても、地域内で相談先を見つけられるでしょう。遺言や相続に関する各種サポートには、きめ細やかな対応が必要です。身近な場所で相談できる行政書士であれば、何でも気軽に話しやすいのではないでしょうか。 行政書士に依頼する場合の注意点は? 行政書士に依頼する場合の注意点は? 行政書士は、遺産相続や遺言について、相談に乗ってくれる相手です。しかし残念ながら、どのような相談内容にも対応できるというわけではありません。行政書士に依頼するなら、「何に対応できて何ができないのか?」を正しく把握しておくことが大切です。 先ほどもお伝えしたとおり、行政書士は「書類」の専門家ではありますが、「法律相談」に関しては専門外です。遺言や相続、遺産の「法律面」で何か困った事態が発生したときには、弁護士事務所を頼るようにしましょう。 また行政書士は、すでに相続問題で争いが生じている案件を扱うことはできません。親族間でなんらかのトラブルが発生している場合に、代理人として各種交渉に応じたり、裁判を担当したりできるのは弁護士だけです。行政書士にサポートを依頼していて、手続きの過程で何らかのトラブルが生じてしまった場合、あらためて弁護士に相談する必要があるでしょう。トラブルが発生する可能性があると思われる場合には、最初から弁護士に相談しておくのもおすすめです。 もう一点頭に入れておきたいのが、不動産相続に関する注意点です。遺産の中に、土地や建物といった不動産が含まれるケースは少なくありません。この場合、不動産の名義変更(相続登記)の手続きが必要になります。行政書士は、この相続登記の申請を代理で行う権利を有していません。相続登記の代理申請を行えるのは、司法書士もしくは弁護士のみです。 相続放棄について検討している場合も、司法書士もしくは弁護士に相談した方が良いでしょう。相続放棄に関する手続きを依頼できるのも、司法書士もしくは弁護士のみです。相談についても同様なので、依頼先を間違えないようにしてください。相続放棄の手続きができる期間は限られています。時間を無駄にしないよう、注意しましょう。 行政書士はトラブルがない遺産相続の強い味方 遺産相続手続きにおいて、行政書士が対応できる分野は限られています。とはいえその分、身近な場所で相談でき、また手ごろな価格で問題を解決しやすいというメリットも期待できるでしょう。たとえば、 ・相続人が限られている・遺産相続の形がシンプルである・相続問題で揉め事が起きる可能性が低い といった場合には、行政書士のサポートで十分と考えられます。 遺産や相続について行政書士に依頼する場合には、話しやすくフットワークの軽い事務所を選択するのがおすすめです。面倒な書類作成やそのための調査にすぐに着手してもらえれば、遺産相続手続きそのものを、スムーズに進めやすくなるでしょう。メリット・デメリット・注意点等をしっかりと把握した上で、相談先選びの参考にしてみてくださいね。

  • 遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    子育てがひと段落すると、自分たちの老後について漠然とした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。遺産に関する不安も、その中の一つです。「将来のトラブルリスクを回避するため、具体的な対策をスタートしたい」と思いつつ、まず何からすれば良いのかわからない…と悩む方も少なくありません。法律に関連するお悩みの相談先として有名なのが「法テラス」ですが、遺産についても相談できるのでしょうか?法テラスでできることや、利用するメリットについて解説します。 そもそも法テラスとは? そもそも法テラスとは? 法テラスの正式名称は、日本司法支援センターと言います。国が設立した機関で、「法的トラブルを抱えている方に解決の道を示すための総合案内所」という役割を担っています。 法的なトラブルを抱えてしまった際に、「誰に相談すれば良いのかわからない…」「法律によって解決できる道があるのかどうかさえはっきりしない」と感じる方は少なくありません。法律による支援にたどり着けないまま、どんどん状況を悪化させてしまう方も多いものです。だからこそ法テラスでは、以下のような業務を行っています。 ・トラブル解決のための情報提供・問題を解決するための具体的な相談窓口・無料法律相談の提供や弁護士・司法書士費用等の立て替え 日常生活の中、何らかのトラブルを抱えてしまった場合でも、まずは一度法テラスに相談するのがおすすめです。トラブルを解決するため、具体的にどういった手段を検討できるのか、専門家によるアドバイスを受けられるでしょう。より具体的なサポートをしてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらうことも可能です。 また一定の収入・資産要件を満たしている人向けに、無料で法律相談を実施したり、専門家費用を立て替えたりする制度も用意されています。法テラスは基本無料で利用できる機関なので、ぜひ活用してみてください。 法テラスを活用して遺言や遺産に関する疑問を解消 遺産や遺言には、法律が深く関わってきます。法律の知識がないまま自己流で終活を進めた場合、後々トラブルにつながってしまう可能性も。さまざまな不安を解消するため、また法的な基礎知識を身につけるため、ぜひ法テラスを活用してみてください。法テラスで相談できる内容の具体例は、以下のとおりです。 ★将来の遺産相続のために遺言書を残したい 終活ブームの今、「遺産相続にまつわるトラブルを防ぐためには遺言書が有効」という情報は広く知れ渡っています。しかし本当にトラブルを防ぎたいなら、単純に「遺言を残しておけばOK」とだけ考えるのは危険。「法律知識をもとに、適切な形で残された法的に有効な遺言書」を用意しておく必要があります。遺留分や法定相続人の範囲など…適切な知識がないまま遺言を残しても、かえってトラブルを招く結果になってしまうでしょう。 法テラスに相談すれば、正しい形で遺言を残すために必要な、法制度に関する情報を提供してもらえます。また「自分だけでは不安…」という場合には、より具体的な相談を受け付けてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらえるでしょう。専門家に相談しつつ、自分にあった遺言書を残せるはずです。 ★両親の遺産を相続する際に、親族間で争いが起きている 子育てがひと段落する年代は、自分自身が相続人になる機会も多い時期です。両親の遺産を相続する際に、すでに親族間で争いが起きてしまっているような場合も、法テラスにて相談が可能。相続に関する法律知識を提供してもらえるほか、自身の代理人となって動いてくれる、弁護士の紹介も受けられます。 親族間で直接やりとりすると、遺産相続問題は泥沼化してしまう恐れも。第三者である専門家の手を借りることで、話し合いをスムーズに進めていける可能性も高まるでしょう。 ★相続放棄をしたいが、何からすれば良いのかわからない 相続放棄の手続きは、相続が発生してから、一定期間内に適切に行わなければいけません。まず自分が何をするべきなのか、いつまでにどういった手続きを終えなければならないのか、法テラスにて相談に乗ってもらえます。もちろんこの場合も、専門家事務所の紹介を受けることが可能。相続放棄以外にも、「親が亡くなり、借金を代わりに返済するよう言われてしまった…」といった状況でも、適切に対処できるでしょう。 法テラスを利用するメリット3つ 初めての法律相談を、ためらう方は少なくありません。法テラスを利用するメリットを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★基本無料で気軽に相談できる 法テラスへの相談は、基本無料で利用できます。個別の事例に対して、具体的なアドバイスはもらえませんが、法律に関する基本的な情報提供を受けることは可能。相談は何度でもできますから、法律に関する知識を、少しずつ深めていけるのではないでしょうか。 法テラスへの相談は匿名でできますし、また電話やメール、直接相談など、さまざまな相談形式が整っています。自分に合った相談スタイルで気軽に利用できる点が、メリットだと言えます。 ★相続に強い専門家につないでもらえる 遺産相続に関する各種手続きを専門家にサポートしてもらう場合、依頼先の専門家は、「遺産や相続に強い人」を選ぶ必要があります。もともとのツテでもない限り、誰に相談すれば良いのか悩む方も多いでしょう。法テラスに状況を伝えて相談窓口を紹介してもらえば、相続問題に強い専門家とつながれるはずです。 「自分で相談先事務所を選べない」という点は、法テラスを利用するデメリットとも言われています。一方で、「相続問題に強い専門家を自分自身で見つけ出す自信がない…」という場合には、非常に大きなメリットとなるでしょう。 ★無料相談や費用の立て替え制度を利用できる 法テラスには、収入や保有資産が少ない方に対する扶助制度も用意されています。「遺産相続について困っているが、収入がなく、専門家にサポートを依頼するのが難しい…」といった場合でも、法テラスなら無料相談や費用の立て替えに応じてもらえます。 法テラスの民事扶助制度の利用を希望する場合、収入や資産に関する要件を満たしていることを示すための書類が必要です。まずは一度、法テラスの相談窓口に問い合わせをしてみてください。自身が要件を満たしているか、またどのような書類を用意すれば良いのか、具体的な情報をもらえるでしょう。 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産や相続、遺言に関するお悩み事を抱えている際に、誰に相談すれば良いかわからず、悩んでしまう方は少なくありません。法テラスなら、誰でも無料で気軽に相談できますから、ぜひ活用してみてください。法律に関する情報を提供してもらったり、相談先窓口を紹介してもらったりすれば、これから自分が何をするべきか、具体的に見えてくるのではないでしょうか。

  • 生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

    相続税対策のため、遺産にまつわる親族間トラブルを避けるため、有効だと言われているのが「生前贈与」です。具体的にどのような制度で、どういったメリットが期待できるのでしょうか。注意点も踏まえて解説します。遺言による遺贈との違いや、どちらにするべきか悩んだ場合の考え方も紹介。相続に関する不安を解消するため、ぜひ参考にしてみてください。 そもそも生前贈与とは?3つのメリット解説 生前贈与とは、将来相続財産になる見込みの遺産を、生前に贈与することを言います。贈与をする側と受ける側が贈与契約を結び、財産をやりとりする方法です。生前贈与のメリットは、以下を参考にしてみてください。 ★メリット1「自身の意思を明確にできる」 先ほどもお伝えしたとおり、生前贈与とは、自身が生きている間に相手を指定し、自分の財産を受け取ってもらう方法です。自身の意思を明確に示せるため、死後に発生する相続よりも、親族間トラブルが発生しにくいというメリットがあります。たとえば、「よく世話をしてくれている長男の嫁に財産を残してやりたい」といった場面においても、自らの口で状況を説明可能。その他の親族にも、納得してもらいやすいでしょう。 また遺言書を残さないまま亡くなってしまった場合、被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つのは、法定相続人のみです。先ほどの「長男の嫁」や「孫」、「内縁の妻」など、相続権を持たない人に財産を残すことが難しくなってしまいます。 生前贈与なら、このような縛りは発生しません。誰にどれだけの財産を受け継いでほしいのか、自身の意思で判断できます。 ★メリット2「相続税対策に有効である」 被相続人が亡くなった際に、相続人に対して課せられるのが相続税です。相続財産の総額が一定以上になれば、税金を支払わなくてはいけません。生前贈与で事前に財産を渡しておけば、その分相続財産は減らせるでしょう。相続税を少なくする節税効果が見込めるのです。 もちろん、生前贈与の場合も、一定金額以上を超えれば贈与税が発生します。贈与税の基礎控除額は毎年110万円。この範囲内で生前贈与を繰り返していけば、贈与税を発生させず、相続税を減らす効果が期待できるでしょう。1年に110万円でも、10年継続できれば1,100万円になります。この110万円という控除額は「1人当たり」の数字ですから、生前贈与する相手が増えれば、その分相続財産を減らすスピードも速くなるはずです。 ★メリット3「自分の好きなタイミングで財産を渡せる」 相続の場合、財産を渡せるのは自身の死後となります。残念ながら、そのタイミングを自分自身で決定するのは難しいでしょう。その点生前贈与であれば、自分の住金タイミングで実行できるというメリットがあります。 たとえば、 ・孫の進学費用のため・子どものマイホーム資金援助として・お祝い金として など、お金が必要になったタイミングで援助してあげられるでしょう。孫の進学費用や住宅資金援助といった目的の場合、非課税で渡せる金額も大きくなります。 生前贈与の行い方と注意点 生前贈与の行い方と注意点 上で解説したとおり、生前贈与にはさまざまなメリットがあります。しかし実際に行う際には、いくつか注意点もあるので頭に入れておきましょう。生前贈与の具体的なやり方とともに紹介します。 ★1.誰にどのような目的でいくら贈与するのか決定する 生前贈与を決めたら、まずは誰にどのような目的で、いくら贈与するのかを決定しましょう。相手との関係性や目的、そして金額によって、利用できる非課税制度が違ってきます。相手と目的が決まったら、ぜひ利用できる制度がないかどうか確認してみてください。その上で、「非課税で贈与できるぎりぎりの金額」を狙ってみるのもおすすめです。 ★2.贈与税の課税方式を決定する 一定金額を超えた贈与契約に対して発生する贈与税。その課税方式は2パターン用意されており、自分自身で選択できます。 1つめのパターンは「暦年贈与」。1年間で贈与された金額の合計から基礎控除額(110万円)を引いて、超過分に対して贈与税が課せられる方式です。2つめのパターンは「相続時精算課税制度」と言い、2,500万円までを限度に贈与税が非課税になるかわりに、相続が発生した際に相続税が発生する仕組みです。 どちらにもメリット・デメリットがあるため、贈与する側・される側にとって、より良い方式を選んでください。 ★3.贈与契約書を作成する 贈与そのものは「あげる」「もらう」といった行為のみで完結しますが、財産の移動に関する証明がなければ、税務署に対して適切に説明できません。税務署からの指摘にしっかりとした説明ができなければ、余計なトラブルを招いてしまう恐れがあります。いつ誰が誰にどんな財産を贈与したのか、契約書にして残しておきましょう。 ★4.状況に応じて贈与税の申告を行う 贈与を受けた側は、状況に応じて贈与税の申告を行います。暦年贈与で110万円を超える贈与を受けたときや、相続時精算課税制度を選択した場合は、忘れないように申告してください。 ★生前贈与の注意点 生前贈与で暦年贈与を選択した場合、「死亡日より前の3年間に行われた暦年贈与は、相続税の対象に含まれる」というルールがあります。生前贈与加算と呼ばれるルールで、亡くなるタイミングによっては、生前贈与のメリットがなくなってしまう恐れもあるでしょう。こちらについても、ぜひ頭に入れておいてください。 遺言による遺贈と生前贈与、迷ったときはどうすれば良い? 遺言による遺贈と生前贈与は、どちらも「相続に自分の意思を反映させるための方法」と言えます。どちらが良いのか悩む方もいるでしょうが、両方をうまく組み合わせていくのがおすすめです。 現金や有価証券といった財産は、比較的生前贈与に向いています。誰に何をどの程度分配するのか決まっているのであれば、ぜひ生前贈与も積極的に検討してみてください。一方で土地やマイホームといった不動産は、暦年贈与の基礎控除を利用するのが難しく、生前贈与には注意が必要と言えるでしょう。 遺贈と生前贈与は、どちらの方が優れているというわけではありません。悩んだときには、遺産の性質に合わせて、専門家に相談しながら検討していくのがおすすめです。 生前贈与について正しく知り活用を 生前贈与について正しく知り活用を 生前贈与をうまく使えば、相続に関する各種トラブルを軽減できる可能性があります。終活について検討し始めたら、ぜひ生前贈与についても考えてみてください。「遺書」だけではなく、生前贈与まで視野に入れることで、「誰にどう財産を残すのか?」という視点は広がるはずです。ぜひ後悔のない相続について、検討してみてください。

  • 厚生年金が財産分与の対象になるって本当?離婚時の基礎知識

    老後の生活を支えてくれる厚生年金。自身の将来を考える上で、非常に重要な年金だからこそ、実際に年金を受け取る前から正しい知識を身につけておくことが大切です。今回は、夫婦が離婚した場合の厚生年金の扱い方について解説します。「離婚したら厚生年金も財産分与の対象になると聞いたけれど…本当なのか?」といった疑問を、すっきり解消していきましょう。 厚生年金そのものは財産分与の対象にならない! 厚生年金そのものは財産分与の対象にならない! 長年連れ添った夫婦が離婚する際に、トラブルの原因になりやすいのが財産分与です。婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産は、離婚するにあたって、夫と妻の間で公平に分配されます。「名義がどちらにあるのか」ではなく、「実質的に二人が協力して築き上げてきた財産かどうか?」が重視されます。 たとえば、サラリーマンの夫と専業主婦の妻という家族構成であった場合、「家や土地は夫名義である」というご家庭も多いのではないでしょうか。しかし婚姻中に得た不動産は、夫のみの努力で購入できたわけではありません。夫の財布の裏には、妻の支えがあったと考えられるでしょう。たとえ夫名義であっても、夫だけが家や不動産を100%手に入れるわけではありません。財産分与では、夫婦が公平に財産を分配できるようになっています。もちろん財産分与の対象は、婚姻中に使用していた家具や家財はもちろん、預貯金や自動車、有価証券に保険解約返戻金と多岐にわたります。お互いの退職金さえも、財産分与の対象になり得るのです。 ここで気になるのが、老後に受け取る厚生年金についてです。サラリーマンの夫と専業主婦の妻という家族構成の場合、当然妻は、厚生年金に加入していません。しかしその加入実績は「夫婦が協力して築き上げた財産」とも捉えられます。妻側が、「だとしたら財産分与の対象になるのでは?」と考えるのは、ある意味で当然のことと言えるのかもしれません。 厚生年金は、現役期間の加入実績をもとに、将来受け取る金額が変動する仕組みです。残念ながら、この「将来受け取れる厚生年金そのもの」が財産分与の対象になるわけではありません。離婚する夫婦で分け合えるのは、「婚姻期間中に納めた年金保険料の納付記録」です。この制度を、年金分割と言います。 婚姻期間中に収めた年金保険料を夫婦間で分割すれば、専業主婦の妻であっても「厚生年金に保険料を納めている」と判断されます。年金分割をしなければ基礎年金のみが支給されるところを、納付保険料に応じた厚生年金を受給できるのです。「夫に支給される厚生年金そのものの2分の1が受け取れる」というわけではありませんが、年金分割を利用すれば、結果として年金を分け合う形を実現できるでしょう。 年金分割の注意点は? 離婚時に年金分割をする場合、以下の3点に注意してください。 ★請求期限は離婚してから2年以内 夫婦が離婚した際の、厚生年金の年金分割請求には、請求期限が設けられています。基本的には、離婚した日の翌日から2年以内です。期限を過ぎると請求できなくなってしまうので、注意してください。 ちなみに年金分割請求は、事実婚状態にあった人でも可能。たとえ事実婚であっても、一方の厚生年金加入歴は、もう一方の協力あってこそのものだと判断できるためです。ただしこの場合、「具体的にいつからいつまでが婚姻期間であったのか?」が不明確になってしまいがちです。事実婚をしている間に「国民年金の第3号被保険者資格」を取得していた場合、その喪失日を「事実婚を解消した日」と証明できます。その翌日から2年以内に請求手続きをしてください。 ★分割制度は2種類 年金分割で問題になりやすいのが、分割割合についてです。どちらにどのくらいの厚生年金記録が割り当てられるのかは、以下の2つの方法によって決定されます。 ・合意分割・3号分割 合意分割とは、当事者間の合意によって分割割合を決定できる制度のこと。一方が希望しても他方が同意しなければ、分割は認められません。この場合、裁判手続きを経て妥当と思われる分割割合が決定されます。分け与えられる側の割合の上限は2分の1です。 3号分割制度は、平成20年4月1日以後の婚姻期間中に、第3号被保険者期間がある方向けの分割制度です。第3号被保険者であった期間に、相手方の厚生年金の保険料納付記録があれば、2分の1ずつ強制的に分割されます。この場合、相手の合意は必要ありません。 離婚による年金分割を検討する場合、自分がどちらに該当するのかしっかりと確認しておきましょう。「自分ではよくわからない…」という場合には、請求期間内に年金事務所等で相談するのがおすすめです。 ★分割の対象になるのは厚生年金のみ 年金にはさまざまな種類がありますが、年金分割できるのは、厚生年金および共済年金のみという決まりがあります。国民年金はもちろん、企業年金や個人年金の保険料納付記録を分け合うことはできません。 また年金分割は、離婚する夫婦間の格差を是正するための制度です。「夫から妻に無条件に年金加入期間を分け与える制度」というわけではないので注意しましょう。たとえば、夫よりも妻の方が厚生年金を多く納めている場合、年金分割によって妻の保険料納付記録が夫の方へと分け与えられます。手続きによって、将来受け取る年金額が少なくなってしまう可能性についても、事前に考慮してみてください。 年金分割の申請方法とは 年金分割の申請方法とは 離婚時に年金分割を希望する場合、自分自身で手続きする必要があります。「何もしなくても離婚と同時に分割される」というわけではないため、注意してください。請求先は厚生労働大臣で、年金事務所を経由して手続きします。 年金分割をするためには、まずは双方の厚生年金加入状況をはっきりさせる必要があります。標準報酬総額や按分割合の範囲など、分割のために必要な情報を開示してもらえるよう、「年金分割のための情報提供請求書」を使って請求しましょう。交付された「年金分割のための情報通知書」をもとに、按分割合を決定し合意します。合意内容は、合意書や公正証書といった正式な書面に残しておきましょう。 その正式な書面と標準報酬改定請求書、年金手帳や戸籍謄本などを年金事務所に提出すれば、年金分割が実行されます。 厚生年金と財産分与について正しい知識を身につけよう 離婚を考える際に、「将来の生活が不安…」と感じる方は少なくありません。将来受け取る厚生年金そのものが財産分与の対象になるわけではありませんが、きちんと手続きすれば年金分割は可能。将来受け取る年金額をアップできる可能性もあります。一方で、手続きしたことによって、自分が将来受け取る年金額が減少してしまう恐れもあります。厚生年金と財産分与、そして年金分割について、正しい知識を身につけた上で、より良い道を選択しましょう。

  • 「小規模企業共済」とは?受け取り方法やタイミング・注意点など

    小規模企業共済法に基づいて運用される「小規模企業共済」は、自営業者や経営者等にとっての「退職金制度」のようなものとして認知されています。具体的にどういった制度で、どういったメリット・デメリットがあるのでしょうか。受け取り方法やおすすめのタイミング、あらかじめ知っておきたい注意点などをわかりやすくまとめます。 小規模企業共済とは?メリット・デメリットを解説 サラリーマンとして会社に勤める人の多くは、勤め先を辞める際に「退職金」を手にします。ある程度まとまった金額の退職金は、その後の生活を支える金銭的な要と言えるでしょう。 しかし退職金とは、誰もが当たり前にもらえるお金ではありません。自営業として仕事をしている人や、自分自身で会社を経営している人、退職金制度を運営するのが難しい小規模企業に勤めている人にとって、退職時にある程度まとまった金額を手にするのは、決して簡単なことではないのです。 こうした人々の退職後の生活を支えるため、用意されているのが小規模企業共済制度です。運営元は国の機関である中小機構。加入者それぞれが掛け金を積み立てていくことで、廃業時や退職時にまとまった金額を受け取れる仕組みになっています。 掛け金の月額は、1,000円から7万円までの範囲内であれば、500円単位で自由に設定可能です。支払った掛け金は、全額所得控除の対象にできる点も、非常に大きなメリットと言えるでしょう。たとえば、毎月最高額の7万円ずつ積み立てた場合、1年間で84万円の所得控除を受けられます。また掛け金は、加入後に自由に増減可能なため、経営状況に沿った運用が可能です。 一方で小規模企業共済にもデメリットはあります。掛け金納付月数が12カ月に満たない場合、共済金等が一部受け取り不可能と判断される可能性も。また加入年数が20年未満の場合、受け取る金額が掛け金の合計額を下回る、いわゆる「元本割れ」の状態になってしまいます。加入状況によっては、かえって損をする可能性もあるという点を、頭に入れておきましょう。 小規模企業共済の受け取り方法とタイミング 小規模企業共済の受け取り方法とタイミング 小規模企業共済では、受け取り方法を自分自身で決定できます。具体的には、 ・一括・分割・一括と分割の併用 の3つの種類から選択することになるでしょう。選択した受け取り方法によって、課税方式が変わってくるので注意してください。 小規模企業共済を一括で受け取る場合、受け取ったお金は「退職所得」として扱われます。退職所得には、勤続年数に応じた退職所得控除額が定められており、勤続年数20年以下であれば「40万円×勤続年数」が控除。一方で、勤続20年以上の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」が控除される仕組みです。小規模企業共済で受け取った金額から退職所得控除額を引き、さらにそれを2分の1にすると、課税退職所得金額が求められます。ここに所得税率を掛け合わせ、控除額を引いたら、実際の納税額を求められるでしょう。 一方で、小規模企業共済を分割で受け取る場合、受け取るお金は「公的年金等の雑所得」として扱われます。そのほかの公的年金と合わせて各種控除を行い、控除しきれなかった分に対して、課税される仕組みです。一括と分割を併用する場合については、一括受け取り分については「退職所得」として、分割受け取り分については「公的年金等の雑所得」として扱われます。 ちなみに、小規模企業共済に「満期」や「満額」といった概念は存在しません。 ・個人事業を廃止した・経営する株式会社を解散した・小規模企業共済に加入する企業の役員を退職した このようなタイミングで共済を解約し、解約手当金を受け取る制度です。解約タイミングによって、受け取る金額が変わってくる点に注意しましょう。 現在受け取れる共済金(解約手当金)がいくらになるのかは、中小機構の「定型書類の自動発送サービス」にてチェックできます。「042-567-3308」に電話して共済契約者番号を入力し、「共済金等試算表」の書類番号である「998」を指定しましょう。約1週間でシミュレーション結果が自宅に届きます。 小規模企業共済の受け取り方法は? 小規模企業共済の共済金を受け取るためには、以下の手続きが必要となります。個人事業を廃業した場合の手続きの流れを解説します。 ★1.書類を用意する 小規模企業共済の共済金を受け取るためには、必要書類を準備した上で、決められた手続きを取る必要があります。まずは以下の書類を準備しましょう。 ・個人事業の廃業届・印鑑登録証明書・マイナンバー確認書類・共済金等請求書・退職所得申告書・共済契約締結証書 個人事業の廃業届は、税務署に届け出た際の書類のコピーを用意してください。廃業年月日が明確に記載されていること、また税務署の受付印が押されていることが条件となります。印鑑登録証明書は、コピーではなく原本を。3ヶ月以内に発行されたものが必要です。 共済金等請求書や退職所得申告書については、中小機構ホームページよりダウンロード可能です。共済契約締結証書は契約時に発行される書類ですが、紛失した場合は中小機構から発行された、共済契約者番号を確認できる書類で代用可能です。 ★2.必要書類に記入し提出する 必要書類を用意したら、自身の情報を記入していきましょう。記入が求められるのは共済金等請求書と退職所得申告書ですが、どちらもホームページに記入例が公開されています。ぜひ参考にしてみてください。 必要書類が揃ったら、中小機構の窓口へと送付しましょう。共済金等請求書には、事前に受取口座のある金融機関で確認印を押してもらう必要がある点にだけ、注意してください。 ★3.審査と受け取り 中小機構の窓口に書類が到着したら、申請内容に対して審査が行われます。申請内容に不備や問題がないことが確認されれば、指定口座へと共済金が振り込まれます。申請から受け取りまでは、約3週間を見ておきましょう。 受け取り方法までイメージして小規模企業共済の活用を 受け取り方法までイメージして小規模企業共済の活用を 自営業として仕事をしている人や、中小企業を経営している人にとって、小規模企業共済は非常に助かる制度です。ぜひ受け取り方法までしっかりとイメージして、活用を検討してみてください。 ここまで解説してきたとおり、小規模企業共済という制度にはメリットもあればデメリットもあります。自分にとってはどちらの方が大きくなりそうか、事前に確認しておくと良いでしょう。気になる点があれば、まずは中小機構の共済相談室を利用してみるのもおすすめですよ。不安を解消し、自身の老後のために何ができるのか、より具体的に検討できるのではないでしょうか。

  • 死亡共済金は相続対象に含まれる?相続対策を考える上での注意点も解説

    自分に万が一のことがあったときのため、共済に入っている方も多いのではないでしょうか。遺族の手元に入るお金は、今後の生活の支えになってくれるでしょう。とはいえ、より多くのお金を家族のために残したいなら、「相続」についての注意点も知っておくことが大切です。死亡共済金の扱いや、相続対策を考える上で知っておきたい注意点について解説します。ぜひ参考にしてみてください。 死亡共済金は相続対象に含まれない 死亡共済金は相続対象に含まれない まず頭に入れておきたいのが、「死亡共済金は相続対象に含まれない」という事実です。死亡共済金受取人の順位は、共済の規約によって定められています。また契約者が、事前に受取人を指定しているケースもあるでしょう。死亡共済金を受け取る権利は、受取人に固有の権利として判断されます。 身近な人が亡くなった際に、財産は相続人に受け継がれます。預貯金や不動産など、ありとあらゆる財産が相続対象に含まれるでしょう。しかし死亡とともに発生した死亡共済金は、これらの相続財産に含まれません。相続手続きは、死亡共済金を除いて進められていきます。 一般的な相続の考え方として、父親が亡くなり、その配偶者と子ども3人が相続人になる場合を例にあげましょう。この場合、父親が残した3,000万円の財産を法定相続分に沿って分配する場合、配偶者が1,500万円、3人の子どもがそれぞれ500万円ずつ受け取る計算になります。 では、この父親が生命共済に加入していて、1,000万円の死亡共済金を配偶者が受け取る場合について考えてみましょう。配偶者は1,500万円の遺産に加えて、死亡共済金1,000万もそのまま受け取る計算になります。子ども3人が、「自分たちにも受け取る権利がある」と主張することはできません。 「みなし相続財産」として相続税が課税される場合がある 上で解説したとおり、死亡共済金は相続財産には含まれませんが、税制上の公正を期すため、「みなし相続財産」として判断されます。 つまり、「一般の相続財産のように分配する必要はないが、相続税の対象にはなる」ということ。死亡共済金や相続財産には、その性質を考慮して、十分な非課税枠が用意されています。しかし相続する財産が一定ラインを越えると、相続税が発生する可能性もあるのです。 死亡共済金の非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」という計算式で求められます。先ほどの家族を例にあげると、相続人の数は「配偶者+子ども3人」の合計4人。2,000万円までの死亡共済金であれば、相続税を課税されずに受け取れるでしょう。 仮に死亡共済金が2,500万円の場合、500万円分は非課税枠に入りきりません。この場合、入りきらない分をその他の相続財産と合わせて、相続税の金額が決定される仕組みです。 ただし死亡共済金以外の相続財産についても、「基礎控除額」が定められており、この範囲内であればやはり相続税は課税されません。相続税の基礎控除額は、「基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数」という数式で求められます。再度先ほどの例で考えるなら、相続税の基礎控除額は5,400万円です。仮に死亡共済金の非課税枠に入りきらない分が出たとしても、その他の相続財産と合わせて5,400万円までであれば、相続税は発生しません。 一方で、その他の財産と合わせて5,400万円を超えてしまうのであれば、死亡共済金であっても相続税が発生します。非課税枠に入りきらなかった500万円分については、きちんと税金を納める必要があるので注意しましょう。 共済保険で相続対策する場合の3つの注意点 平成27年より、相続税に関する制度が改正され、基礎控除枠が減額されました。これにより、「ごく一般的な家庭」であっても相続税が課税されるケースも増えてきています。以前は「相続対策=お金持ちがするもの」というイメージもありましたが、現在はそういうわけでもありません。より多くの人にとって、持続対策が重要な意味を持つようになってきています。 こうした状況の中で、共済保険も具体的な相続対策の一つとして注目されるように。この場合、以下の3つのポイントに注意してみてください。 ★共済の自由度は低い 相続対策で共済保険の活用を考える場合、その自由度の低さについて、あらかじめ頭に入れておきましょう。 一般的な生命保険の場合、死亡時の保障をいくら用意するのかは、比較的自由に設定できます。10万円単位で指定できるような保険商品も、決して少なくありません。一方で共済の場合は、200万円・500万円・1,000万円などあらかじめ金額が決められたコースの中から、選んで加入するスタイルが一般的です。自身のニーズに合わせて変更するのは難しいでしょう。 ★受取金額も低め 先ほどもお伝えしたとおり、死亡共済金や死亡保険金には、手厚い非課税枠が用意されています。まず、死亡共済金独自の非課税枠を計算し、さらにそこに含まれない分についても、相続税の基礎控除枠を活用できる仕組みです。相続対策を考えるなら、この非課税枠や控除額を、できるだけ無駄なく使い切ることが重要だと言えるでしょう。 共済の場合、死亡時に受け取れる金額は比較的低めに設定されています。相続対策として検討するなら、より高額な保険金を受け取れる、生命保険を検討するのがおすすめです。 死亡共済金や死亡保険金の非課税枠は、法定相続人の数によって違ってきます。法定相続人の数が少ない場合は共済でも十分ですが、法定相続人の数が多く、非課税枠も多い場合には、より充実した生命保険を検討すると良いでしょう。 ★契約者と受取人の関係によって税金は変わる! 先ほど、「死亡共済金にも相続税が発生するケースがある」とお伝えしましたが、契約時の各種条件によっては、相続税ではなく所得税や贈与税の対象になる可能性もあります。 契約者自身が死亡共済金を受け取る場合、発生する税金は所得税です。夫が妻を被共済者として契約を結び、夫を死亡共済金の受取人に設定した場合がこちらにあたります。契約者と被共済者、そして受取人がそれぞれ別の人の場合(夫が妻を被共済者として契約を結び、死亡共済金を子どもが受け取る場合など)には、贈与税が発生します。 契約時には、これらの注意点についてもしっかりと頭に入れておきましょう。 共済に加入するなら相続も見据えて検討を 共済に加入するなら相続も見据えて検討を 将来のために、共済への加入を検討する方も多いのではないでしょうか。将来の相続についても見据えて決断することで、余計なトラブルを避けられるでしょう。誰が受取人になるのか、また相続時にどういったトラブルが発生する可能性があるのか、事前に検討した上で検討するのがおすすめですよ。

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