遺族厚生年金とは?特徴・受給資格・受け取り方法など…基礎知識を学ぼう!

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遺族厚生年金とは?特徴・受給資格・受け取り方法など…基礎知識を学ぼう!
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会社員や公務員として働いていた家族が亡くなったら、残された遺族は遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。遺族年金の特徴や受給資格、受け取り方法など、基本的な知識を解説します。遺族厚生年金を受給する際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

遺族厚生年金とは?

遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金とは?


遺族厚生年金とは、厚生年金保険に加入していた方が亡くなった際に、その人によって生計を維持されていた家族に支給される年金のことです。厚生年金制度と言えば、「老後の備え」と感じている方も多いのではないでしょうか?しかし実際には、老後を迎える前に亡くなった場合でも、残された家族の生活をサポートしてくれるというメリットがあります。

遺族厚生年金は、遺族基礎年金にプラスして支払われるものです。遺族基礎年金が支給の対象外であっても、遺族厚生年金は支給されるケースは珍しくありません。特に「厚生年金に加入していた夫が亡くなった妻」という立場では、遺族厚生年金を受給できる可能性は高いと言えるでしょう。遺族年金制度について正しく理解し、適切に手続きを進めていきましょう。

遺族厚生年金を受け取れる人とは?


遺族厚生年金を受け取れる人の基本的な条件は、以下のとおりです。

・死亡した人と同居していた人
・死亡した人によって生計を維持されていた人
・遺族厚生年金の受給順位がもっとも高い人

まず、遺族厚生年金の受給資格を持つのは、亡くなった人と同居していた人。ただし学業や仕事など、一定の条件で別居していた場合は「同居」と判断され、受給資格を有します。また遺族厚生年金は、条件を満たしたすべての人が受給できるわけではありません。亡くなった人との関係別に受給順位が定められていて、対象者の中でもっとも順位が高い人のみが受け取れる仕組みです。

遺族厚生年金の受給順位は、以下のように定められています。

第一順位 → 配偶者と子(※子を持つ妻・子を持つ夫>子ども>子のいない妻・子のいない夫の順で優先度が高い)
第二順位 → 亡くなった人の両親(※亡くなった時点で55歳以上)
第三順位 → 亡くなった人の孫
第四順位 → 亡くなった人の祖父母(※亡くなった時点で55歳以上)

ここで言う「子」や「孫」とは、18歳の年度末を迎えていない、もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1・2級を持つことが条件になります。また注意しなければならないのが、「夫」の立場で遺族厚生年金を受給するケースです。

もともとは「夫を亡くした妻」を助ける目的が強かった遺族厚生年金ですが、共働き世帯が増えている今、状況は変化。「妻を亡くした夫」も遺族厚生年金を受給できるよう、ルールが変更されています。ただしこの場合、妻が亡くなった時点での夫の年齢が、「55歳以上」という区切りがあるので注意してください。

「夫を亡くした妻」の場合、特に年齢制限はありません。ただし、夫の死亡時に妻の年齢が30歳未満で子どもがいない場合、5年間のみの支給となります。

また亡くなった人の生前の厚生年金保険加入状況が、一定の条件を満たしていなければ、そもそも遺族厚生年金は支給されません。以下のいずれかの条件を満たしているか、事前にチェックしておきましょう。

・死亡した人の厚生年金保険料納付済期間が、加入期間の2/3以上である
・死亡した日に65歳未満であり、要は死亡月の2ヶ月前までの1年間で保険料を滞納していないこと

1つ目の条件については、保険料の免除期間は「納付済み期間」として扱われます。2つ目の条件については、保険料を納付しなくても良い月は対象外と判断されます。過去に滞納の経験がある方は、事前に確認しておくと安心ですね。

遺族厚生年金の受け取り方法は?


遺族厚生年金は、年金事務所や年金相談センターへの必要書類提出によって申請できます。必要書類は以下のとおりです。

・年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)様式第105号
・死亡した人の年金手帳
・住民票の写し(世帯全員分)
・亡くなった人の住民票の除票
・死亡診断書
・収入確認書類
・振込先情報がわかる書類(通帳やキャッシュカードなど)
・資格喪失届(※厚生年金保険加入中に亡くなった場合)
・年金受給権者死亡届(※厚生年金受給中に亡くなった場合)

遺族厚生年金を申請するためには、まず保険に加入している人、もしくは年金を受け取っている人が亡くなったことを知らせなければいけません。両者の書類は同時に提出できますから、必要書類を集めた上で、年金事務所もしくは年金相談センター窓口を訪れましょう。年金請求書は、各窓口で入手できるほか、ウェブサイトからダウンロードし、印刷することも可能です。

また世帯全員分の住民票の写しや収入確認書類については、マイナンバーの記入によって省略可能です。書類を用意する手間が省けるので、ぜひ活用してみてください。

遺族厚生年金を受け取る際の注意点

遺族厚生年金を受け取る際の注意点
遺族厚生年金を受け取る際の注意点


遺族厚生年金の請求や受け取りで注意しなければならないのが、時効についてです。遺族厚生年金を受け取る資格を有していても、請求しなければ支給はされません。またそのまま状況を放置すれば、死亡の翌日から5年経過で「遺族厚生年金を請求する権利」が時効を迎え消滅してしまうのです。

身近な人が亡くなった場合、当分の間はバタバタするでしょう。たとえば、死亡の翌日から3年後に遺族厚生年金受給の手続きを行った場合、過去3年分をさかのぼって請求可能です。一方で死亡の6年後に同じ手続きを行った場合、時効を迎えた分については請求できません。過去5年分までしか支給されないため、注意してください。葬儀や法要など、最初の忙しい時期を乗り越えたら、忘れないうちに手続きするのがおすすめです。

また以下のような状況になった場合は、遺族厚生年金を受け取る権利は失われます。

・受給者本人が亡くなった場合
・受給者が別の人と婚姻した場合 など
たとえば夫が亡くなったあと妻が遺族厚生年金を受給し、その妻も亡くなった場合、妻の受給権は失われます。ただし夫と妻の間に子どもがいれば、親の死亡と共に、子ども自身の受給権が復活します。「遺族年金受給権者支給停止事由消滅届」を提出し、適切な手続きをとれば、子ども自身が遺族厚生年金の受け取り手になれるでしょう。

遺族厚生年金についてもしっかりと理解を


厚生年金保険に加入している人とその家族にとって、遺族厚生年金は、大黒柱死亡後の生活の支えになってくれるでしょう。特に子どもがいる場合の支給額は大きく、生活困窮を防いでくれます。時効もあるため、できるだけ早めに手続きしましょう。

遺族厚生年金を受け取るためには、制度の基礎についてしっかりと学んでおく必要があります。まずは現在の加入状況をチェックし、支給要件を満たせているかどうか、確認するところからスタートしてみてはいかがでしょうか。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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