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2022年11月の記事一覧

  • 妻に残す資産を守りたい!相続対策としてやっておくべきこととは?

    妻に残す資産を守りたい!相続対策としてやっておくべきこととは?

    自身の老後について考えたとき、「自分が亡くなったあと、人生を共に過ごしたパートナーの行く末が不安」と語る方は少なくありません。特に男性の場合、自宅や土地の名義が自分自身になっているケースも多いもの。「自分が亡くなったあと、妻は同じ家に住み続けられるのだろうか…」と不安を感じることもあるでしょう。 妻に残す資産を守るため、生前からできることはあるのでしょうか。配偶者の今後の生活のため、相続対策としてやっておくべき行動を紹介します。 まずは相続の基本について学ぼう! まずは相続の基本について学ぼう! 自分の死後、妻に財産を残すためには、まず相続の基本について学んでおく必要があります。被相続人の財産を受け継ぐのは、相続人です。無条件に相続人になれるのが配偶者であり、その他の相続人については、以下の順位に沿って決定されます。 第1順位 被相続人の子ども第2順位 被相続人の親第3順位 被相続人の兄弟姉妹 妻と子どもがいる人が被相続人になれば、相続人は配偶者である妻と、第1順位である子どもがなります。子どもがすでに亡くなっている場合、その子どもの子ども、つまり孫に相続権が発生します。これを代襲相続と言いますが、第1順位と第2順位について、代数制限はありません。第3順位の兄弟姉妹においても、1世代限りとはいえ代襲相続が認められています。 つまり、法律に則って自身の財産を相続させる場合、自身の甥や姪までが相続人になる可能性があるのです。「妻のもとにできるだけ多くの財産を残したい」と思う方にとっては、想定外の事態と言えるのではないでしょうか。 特に妻との間に子どもを設けていない場合や、子どもがいても相続させたくない場合には、注意が必要です。法律の基本知識を身につけた上で、適切な準備を整えておきましょう。 「妻に全財産を譲る」旨の遺言書だけでは不十分 自身の死後、相続に遺志を反映させるための方法として、有効なのが遺言書です。法的に有効な遺言書を残し、そこに「妻に全財産を譲る」とさえ記載すれば大丈夫!と思っている方も多いのかもしれません。しかし実際には、この対策だけでは不十分です。 なぜなら相続人のうち、直系卑属である子どもと直系尊属である親には遺留分が認められているから。遺留分とは、相続人が受け取れる最低限の遺産の取り分を示したものです。遺留分を侵害する内容であっても、遺言そのものが無効になるわけではありません。一方で、兄弟姉妹以外の法定相続人から遺留分を請求されれば、支払わないわけにはいかないのです。 たとえば、相続する財産のほとんどが「自宅+土地」であった場合、遺留分請求によって、妻が自宅を手放さなければならない可能性も出てきます。妻の生活は、大きく変わってしまうでしょう。 妻に多くの財産を相続させたい旨の遺言書を残す場合、その他の相続人への丁寧な説明が鍵となるでしょう。突然遺言書で「妻のみが財産を相続する」と告げられるよりは、「なぜそうしたいのか?」を含めて、自身の思いをしっかりと説明しておいた方が、受け入れる側の気持ちも変わります。 また相続人が妻と子どもの場合、いったん妻がすべてを相続したとしても、妻が亡くなった段階で、それらの財産は子どものもとへと受け継がれます。こうした事情を丁寧に説明すれば、理解を得られるケースも多いのではないでしょうか。 「終活=遺言」と考える方は多いですが、実際にはそれだけではありません。遺言を残すことも大切ですが、自身が遺産相続についてどのように考えているのか、周囲との意思疎通も重要視してみてください。 ちなみに、夫婦の間に子どもがおらず、自身の両親もすでに亡くなっている場合、兄弟姉妹に遺留分は認められていません。この場合は、「妻に全財産を残す」と記せば、自身の思いをそのまま反映できるでしょう。 この場合、「法的に有効な遺言書を残せるかどうか?」が非常に重要なポイントになります。専門家のサポートのもとで、公正証書遺言を残しておくのがおすすめです。 贈与税の配偶者控除の活用も検討してみて 妻に残したい資産のうち、特に不動産について不安を抱えているなら、贈与税の配偶者控除を利用するのも良いでしょう。この制度を使えば、夫名義の住まいを、妻に非課税で贈与できます。以下の条件を満たしているかどうか、ぜひチェックしてみてください。 ・妻との婚姻期間が20年以上であること・自宅の価値が2,110万円以下であること 2,110万円という数字は、贈与税の基礎控除110万円に、特別控除2,000万円をプラスしたもの。贈与が完了したら、翌年の3月15日までに贈与税の申告書を提出しましょう。 この制度を使って生前贈与が完了していれば、自分が亡くなっても、自宅は妻の名義です。当然、相続財産には含まれません。その他の相続人との間で争いが起きる恐れもありませんし、妻が住まいを失うリスクもなくなるでしょう。婚姻期間が20年以上であれば、ぜひ検討してみてください。 法律上の妻ではない場合の対処法は? ひと言で「妻に残す資産を守りたい」と言っても、その実態はさまざまです。中でも、「別れた妻に財産を譲りたい」「法律上は夫婦と認められていない、内縁の妻に残す資産を守りたい」という場合、相続はよりいっそう複雑になるでしょう。 この場合、法律上の夫婦ではない妻は、法定相続人とはみなされないので注意が必要です。妻を相続人に指定するためには、その旨を記した遺言書を確実に残しておいてください。 ただし、全財産を妻に残せるかどうかは、その他の相続人によって異なるでしょう。たとえ「全財産を妻(元妻)に譲る」と記載した遺言書を残しても、その他の相続人には遺留分が認められます。請求される可能性は高く、支払わなければ訴訟に発展してしまいます。最初から遺留分に配慮した遺言を残しつつ、なぜ内縁の妻や元妻に財産を残したいのか丁寧に説明し、理解を求めるのがおすすめです。 すべての資産を残すのは難しくても、できる限りの相続対策を実践してみてください。自身の死後の、トラブル予防にも役立つはずです。 妻に残す資産を守りたいなら…しっかりと生前対策を! 妻に残す資産を守りたいなら…しっかりと生前対策を! 老後の生活が見えてきたとき、配偶者の今後の生活についても、きちんと考えておきたいところです。特に不動産の名義がどちらか一方になっている場合、遺産相続トラブルから、住む場所を失ってしまう恐れもあります。生前にしっかりと対策をしておくことで、こうしたリスクを低減できるでしょう。 具体的に何から始めれば良いのか悩んだときには、まず相続の専門家に相談してみるのもおすすめです。妻に残す資産を守るため、今の自分に何ができるのか、より具体的な情報も得られるでしょう。

  • 公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    近年、「遺言書を残して遺産トラブルを回避しよう」と考える方が増えてきています。自身が残した遺産を巡って、大切な人たちが争うとしたら…これほど悲しいことはありません。なんとかして回避したいと思うのは、当然だと言えるでしょう。 しかし実際には、故人が失くした遺言書をきっかけに、さらなるトラブルが発生してしまう事例も存在しています。遺産トラブルを防ぐのに有効なスタイル、「公正証書遺言」について、わかりやすく解説します。 なぜ遺言書を残しても遺産トラブルが発生するの? 終活を意識し始め、各種情報サイトをチェックしてみると、「遺産トラブルを予防するためには遺言書が有効」という情報を目にする機会も多いのではないでしょうか。確かに遺言書が残されていれば、故人の思いに沿った相続が可能に。親族間のトラブルを予防するため、一定の効果が期待できるでしょう。 しかし実際には、遺言書が残されていても、遺産トラブルに発展してしまう事例は決して少なくありません。その理由は以下のとおりです。 ★1.遺言書が法的に有効と認められないから 遺言書にはいくつかのタイプがあり、いつでも好きなときに、自分の手で書き残せるものもあります。しかしこの場合、遺言書に必要な要件を満たしておらず、「法的に無効」と判断されてしまうケースも少なくありません。 遺言書が残されていても、法的に有効だと認められなければ意味がありません。相続人はあらためて遺産分割協議を行い、遺産相続の詳細を決定しなければならないのです。遺言書で遺産を多くもらえるように指定されていた人は、当然「故人の遺志」を尊重するよう求めるでしょう。一方で、その他の人は法定相続分に沿った手続きを求める可能性が高いです。法的に無効な遺言書によって、故人の遺志を確認できてしまうが故のトラブルだと言えるでしょう。 ★2.遺言書に記された内容が遺留分を侵害しているから 法的に認められる形で遺言書が残されていた場合でも、油断は禁物です。その内容によっては、やはり親族間のトラブルが発生してしまう恐れがあります。中でも注意しなければならないのが、遺留分についてでしょう。 遺留分とは、相続人が相続財産の中から最低限相続できる財産のこと。たとえ「全財産を○○に譲る」という内容が残されていたとしても、その他の相続人は遺留分を請求できます。最低限の財産を相続できるとはいえ、「いったいなぜこのような遺言が残されたのか?」という点で、トラブルが発生する恐れもあります。 ★3.遺言書に本人の意思が反映されているとは限らないから 被相続人が自分一人で作成し、自宅で保管されていた遺言書の場合、その内容の信ぴょう性がもとで、トラブルに発展するケースもあります。 ・認知能力が低下した状況で、誰かに書かされたのではないか?・すでに内容が改ざんされているのではないか? もしも本当に、遺言の強制や誘導、改ざんといった事実があれば、そこに故人の遺志は反映されていないことに。その信ぴょう性を巡って、騒動に発展する事例も決して少なくありません。 公正証書遺言とは?トラブル回避に有効な理由 上で説明したようなトラブルは、遺言の残し方に工夫することで予防できます。ぜひ公正証書遺言に注目してみてください。 公正証書遺言とは、公証人関与のもとで遺言書を作成する方法を言います。作成段階から専門家に手を貸してもらえば、 ・遺言書が法的に無効と判断されるリスクを防ぐ・遺言の内容についても事前に専門家に相談に乗ってもらえる・あとで内容が改ざんされる恐れがない といったメリットが発生します。遺言書にはさまざまな種類がありますが、公正証書遺言は「もっとも確実性の高い遺言」と言われているのです。 公正証書遺言は、第三者である「公証人」が作成します。出来上がった遺言書は、公文書として扱われ、いざ遺言が執行される瞬間まで厳重に管理されるでしょう。遺言を残した時点での故人の「意思」が、争点になる可能性も低くなります。 ただし公正証書遺言を作成するためには、相応の手数料を支払う必要があります。また作成までには、それなりの時間がかかってしまうでしょう。遺言書を残したいと思ったら、できるだけ早く行動に移すよう注意してくださいね。 公正証書遺言の残し方や費用を解説 公正証書遺言の残し方や費用を解説 ではここからは、実際に公正証書遺言を残すための流れや費用をチェックしていきましょう。公正証書遺言を作成するための手順は、以下のとおりです。 1.公証人との間で事前打ち合わせを行う2.証人になってくれる人を2人探す3.証人2人と共に公証役場に行き、遺言書を作成する4.同じ内容の公正証書遺言を3通作成し、1通を公証役場に保管する 公正証書遺言を作成する場合に、最初にやらなければならないのが公証人との打ち合わせです。公証役場に出向いたからといって、その場ですぐに遺言を作成できるわけではありません。遺言に残す内容など、事前の打ち合わせを済ませておきましょう。 また証人には、未成年や将来相続人になると推定される人は指定できません。また公証人の配偶者や、四親等以内の血族も指定できないというルールがあります。 信用できる人物2人に依頼するのが一番ですが、手間を省きたいなら専門家に依頼するのもおすすめです。事前打ち合わせや公証役場での手続きについても、専門家がしっかりとサポートしてくれるでしょう。遺留分についても、トラブルになりにくい遺言の残し方をアドバイスしてもらえるはずです。 公証役場では、公証人の本人確認や遺言内容の確認、公証人の筆記・読み聞かせといった手続きが行われます。遺言者と証人2名、さらに公証人が署名捺印することで、正式な遺言として認められるでしょう。 公証役場での手続きに必要な時間は、およそ30分前後です。また公正証書遺言を作成するためには、公証役場に手数料を支払わなければいけません。遺言の価格に応じて手数料の金額が変わってくるため、注意してください。 財産が100万円以下であれば手数料は5,000円です。一方で財産の価額が5,000万より上で1億円以下の場合の手数料は4万3,000円です。自身の財産の金額に合わせて、どれだけ必要になるのかあらかじめチェックしておきましょう。 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産相続について、「まさか我が家でトラブルなんて…」と考える方は少なくありません。しかし実際には、相続に関して割り切れない思いを抱く人は多いもの。非常に根の深い、親族間トラブルの原因になる可能性もあるのです。将来のトラブルを予防するために、ぜひ公正証書遺言についても検討してみてください。 作成時に手間はかかっても、「法律的にほぼ確実な遺言書が残せる」というメリットは非常に大きいと言えるでしょう。トラブル回避を目的に遺言書を残すのであれば、ぜひ積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

  • 遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    40代~50代になると、いつか発生するであろう「相続」について、気になる方も多いのではないでしょうか。実家の親が亡くなれば、子どもはほぼ確実に法定相続人に数えられます。いざ相続が発生しても、「具体的に何をどう手続きすれば良いかわからない…」と悩む方は少なくありません。 遺産相続の手続きは、具体的にどう進めていけば良いのでしょうか。自分で手続きする場合の流れや注意点について解説します。 遺産相続とは?大まかな流れ 遺産相続とは、亡くなった人が所有していた財産を、相続人で分け合う手続きを言います。具体的にどういった流れになるのか、把握しておきましょう。遺産相続の流れは、「故人が遺言書を残しているかどうか?」によって、大きく違ってきます。 遺言書が残っている場合と、残っていない場合、それぞれについて大まかな流れをチェックしてみましょう。 ★遺言書が残されている場合 故人の遺言書が見つかった場合の流れは、以下のとおりです。 1.必要に応じて家庭裁判所にて検認の手続きをする2.遺言書の中身を確認する3.遺言書の内容に沿って、遺産を分割する4.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書とは、故人の最期の思いを記した正式な書類です。法的効力を持つ正式な遺言書であれば、そこに記された内容に沿って相続手続きを進めていくのが基本。たとえ遺言書に記されていた内容が法定相続分とは異なっていても、遺言書の方が優先されます。 親族間で協議する必要がないため、争いごとを避けられる可能性も高いでしょう。また相続が発生してから、慌てて相続財産の調査をする必要もありません。 ただし遺言書が自宅で発見された「自筆証書遺言」の場合、家庭裁判所による「検認」と呼ばれる手続きが必要です。封がしてあるものを勝手に開けて中身を確認してしまうと、偽造や変造を疑われる原因に。5万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意してください。 遺言書の検認には、家庭裁判所への申し立てが必要です。以下の必要書類を揃えて手続きしてください。 ・申立書・遺言者の戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本(出生時から死亡時までのすべてを揃えて提出)・相続人の戸籍謄本(全員分) 検認には、少なくても1ヶ月以上の時間が必要になります。検認が必要な遺言書が発見されたら、できるだけ素早く申し立てを行いましょう。 ちなみに、残されていた遺言が公正証書遺言であったり、自筆証書遺言であっても法務局にて保管されていたりした場合には、検認は不要です。偽造や変造の疑いがないため、すぐに内容を確認し、その後の手続きを進めていけます。 ★遺言書が残されていない場合 遺言書が残されていない場合は、遺産相続について、相続人が協力して決定する必要があります。こちらの場合の大まかな流れは以下のとおりです。 1.相続人に関する調査を行い、確定する2.相続財産に関する調査を行い、確定する3.遺産分割協議を行う4.協議の内容に基づき、遺産分割協議書を作成する5.遺産分割協議書に基づいて、遺産を分割する6.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書が残されていない場合、「誰が相続人になるのか?」「何が相続対象に含まれるのか?」を明らかにするところからスタートします。必要に応じて、専門家の手を借りることも検討してみてください。こうして調査された内容をもとに、遺産分割協議を行います。誰が何を相続するのか、この協議にて確定しましょう。あとはその内容に基づいて相続を完了させます。 言葉にすると非常にシンプルですが、実際には遺産分割協議がまとまらない事例や、話がこじれて訴訟にまで発展してしまう事例も少なくありません。ひとつひとつの問題を、丁寧に解決していく必要があるでしょう。 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産相続の手続きを自分で進めていく場合、注意したいポイントのひとつが、相続放棄についてです。相続する財産の状況によっては、放棄した方が良いのかどうか、ぜひ冷静に検討してみてください。 遺産相続では、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も対象になります。相続する遺産を調査した結果、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いようであれば、相続放棄を検討した方が良いでしょう。相続放棄には、「相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内」という期限が存在しています。 遺言書の検認手続きや遺言書が残されていない場合の財産の調査は、相続放棄する可能性についても考慮した上で、時間に余裕を持って進めていくのがおすすめです。 相続放棄の手続きも、家庭裁判所にて進めていきます。申し立てが認められれば、「最初から相続人ではなかった」と法律的にも認められるでしょう。 ただし相続放棄すれば、これから先も含めて、すべての財産を相続する権利を一切失うことになります。また、もし自分よりも低順位の相続人がいれば、相続人は次の順位へと移っていくでしょう。こちらも考慮する必要があります。 遺産分割協議書の作成方法は? 遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書に記します。自分で手続きする場合、以下の点に注意してください。 ・相続人や財産を、正確に記載・相続人全員分の、実印での捺印が必要 遺産分割協議書は、預貯金の解約や相続登記などで使用する正式な書類です。内容が不十分であれば、後々トラブルに発展する可能性も。協議で決まった内容を、正確に記載してください。また相続人全員分の実印が必要になる点も、早めに確認しておきましょう。 忘れてはいけない相続税の申告 相続手続きが完了したあとに、忘れてはいけないのが相続税の申告についてです。相続税の申告には、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があります。申告が必要な場合には、忘れないように注意しましょう。 相続する財産の総額が、相続税の基礎控除額に収まる場合は、相続税を申告する必要はありません。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求められます。 【相続税の基礎控除額 =3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】 亡くなった配偶者の遺産を受け継ぐ場合など、基礎控除額に収まらない場合でも、相続税が発生しないケースは多々あります。ただしこの場合、「相続税を申告した結果、ゼロ円になった」と判断されるため、申告手続きそのものは必要になるため、注意してください。 相続財産の調査の段階で、「相続税の基礎控除額を超えそうだ」と判断した場合、相続税の申告についても余裕を持って進めていきましょう。 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 比較的シンプルな遺産相続であれば、自分自身で手続きを進めていくことは十分に可能です。それぞれの手続きの期限を意識しつつ、ひとつずつ確実にこなしていきましょう。一方で、以下のような場合は、専門家の手を借りることをおすすめします。 ・仕事が忙しく、平日昼間に動けない・面倒な手続きが苦手・遺産分割協議で揉める可能性が高い 自分で進めていく場合には、ぜひ今回紹介した情報を参考にしてみてくださいね。

  • 「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    ひと言で「遺産」と言ってもその実態はさまざまで、状況によっては「できれば受け取りたくない…」と考える方もいるでしょう。こんなとき、あらかじめ知っておきたいのが遺産を放棄するための手続きについてです。 このコラムでは、遺産を放棄するための手続き、「遺産放棄」について詳しく解説します。混同されやすい「相続放棄」との違いについても紹介するので、ぜひ今後の参考にしてみてください。 遺産放棄(財産放棄)とは具体的にどういうこと? 遺産放棄(財産放棄)とは、相続権を持っているにもかかわらず、「遺産を相続しない」という立場を表明することを言います。被相続人が亡くなり相続がスタートすると、まずは遺言書の有無が確認されるでしょう。遺言がなければ、その遺産は遺産分割協議によって、どう分けられるのか決定されます。この遺産分割協議にて、「財産を相続しない」と表明すれば、それが遺産放棄(財産放棄)に当たります。 遺産放棄は、法律で明確に定められた手続きではありません。よって事前に特別な準備をする必要もなく、その他の相続人に自身の決意を伝えればOKです。遺産分割協議でその希望が受け入れられれば、無事に遺産を放棄できるでしょう。 また遺産放棄を宣言したからといって、相続人としての立場を失うわけではありません。他の相続人との話し合いにはなるものの、「この遺産は放棄したいが、こちらだけは相続したい」など、柔軟な対応も可能です。後になって新たな遺産が見つかったときにも、またあらためて、相続人としての立場で話し合いに参加できるでしょう。 相続放棄との違いは? 遺産を受け取らない道を考えたとき、もう一つ検討したい道が「相続放棄」です。遺産放棄とよく似た言葉ではありますが、両者の意味合いは大きく異なります。それぞれの意味を正しく把握して、自身の思いに沿った方を選択しましょう。 相続放棄とは、相続人としての権利、つまり相続権そのものを放棄するための法的手続きです。法的にも自身の立場を明確にするため、一定期間内に家庭裁判所にて、必要な手続きを済ませる必要があります。家庭裁判所にて相続放棄が認められれば、その人は「最初から相続人ではなかった」とみなされるでしょう。相続順位は次の人に回され、今後何があっても、相続人としての権利を主張することはできなくなります。 相続放棄の手続きができる期間は、「相続を知った日から3ヶ月間」です。この期間を過ぎると、相続放棄の手続きは選択できなくなりますから、十分に注意してください。 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 遺産放棄が他の相続人に自身の意思を伝えるだけでOKであるのに対して、相続放棄するためには、家庭裁判所への申し立てが必須です。「どちらにしても財産を受け取らないのだから、より簡単な遺産放棄で十分なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、この考えは非常に危険です。 なぜなら、被相続人が残す「遺産」とは、常にプラスであるとは限らないからです。万が一、マイナスの財産が相続財産に含まれれば、遺産放棄の意思表明だけでは不十分です。債権者は、相続人に対しても借金を返済するよう求める権利が認められています。法律的にも「自分は相続人ではない」と明らかにしなければ、被相続人の代わりに、自身が借金を背負ってしまうでしょう。 いくら「自分は遺産を受け取っていないので」と説明しても、債権者には通用しません。法律をもとに動いている債権者の取り立ては、そのまま継続してしまいます。 プラスの財産とマイナスの財産の両方が残されている場合には、遺産放棄で十分なのか、それとも相続放棄の手続きを取らなければならないのか、特に慎重に判断する必要があります。遺産分割協議においても、「どうせ財産を相続しないから」と安易に考えるのは辞めましょう。どの遺産を誰がどのように引き継ぐのかを明らかにした上で、自身の立場を明確にするのがおすすめです。 遺産放棄を選んだ方が良いケースとは? 遺産放棄にも相続放棄にも、メリットとデメリットの両方があります。相続放棄のメリットは、相続人としての権利を放棄したという事実を、法的にも認められる点です。一方で、柔軟な対応が難しいというデメリットがあります。以下のようなケースでは、相続放棄よりも遺産放棄を選んだ方が、メリットが大きくなると予想されます。ぜひじっくり検討してみてください。 ★1.基本的には遺産を放棄しつつ、一部のみ受け取りたい場合 遺言書が残されていない場合の遺産相続では、法定相続分に沿って遺産を分配します。しかし、常に遺産を等分に分けられるとは限りません。特に、遺産に土地や建物といった不動産が含まれている場合、相続割合は非常に複雑になるでしょう。 たとえば、「不動産は要らないが、現金だけは受け取りたい」という場合、遺産放棄が有効です。不動産についてのみ遺産放棄をして、その他の財産については受け取りましょう。遺産放棄の手続きを上手に活用すれば、親族間の余計なトラブルを防止できる可能性があります。 ★2.将来的にさらに遺産が発見される可能性がある場合 被相続人が亡くなったあと、一定期間経ってから新たな遺産が発見されるケースもあります。この場合、最初の相続で相続放棄の手続きをすると、後で見つかった遺産についても相続する権利を失ってしまうでしょう。 「今現在明らかになっている遺産は受け取らない」と決めていても、将来的に状況が変化する可能性はゼロではありません。わざわざ相続放棄をするメリットがないのであれば、遺産放棄に留めておくのがおすすめです。将来遺産が発見された場合に、あらためて相続するのか、遺産放棄をするのか、それとも相続放棄をするのか、その時点の状況を考慮して決断できるでしょう。 ★3.相続権を次の順位に回したくない場合 相続放棄をしても遺産放棄をしても、「自分が遺産を受け取らない」という結果に変わりはありません。しかし「誰が相続人になるのか?」という視点で考えると、2つの手続きには非常に大きな差があるのです。 遺産放棄を選択する場合、自分自身が相続人として、「遺産を受け取らない」と決断することに。相続権は、当然自分のもとに残ります。一方で相続放棄をすれば、相続権は次の順位へと移っていきます。相続順位が移り、相続人の範囲が広がれば、さらなるトラブルを引き起こしてしまうケースもあるでしょう。 こうしたトラブルを防ぎたい場合も、「相続人の立場のまま遺産だけを受け取らない」遺産放棄には、意味があります。 今回紹介した3つのケースは、どれも「相続財産に負債が含まれていない場合」を想定しています。まずは負債がないかどうかを確認し、その上で、遺産放棄するべきかどうか、検討してみてくださいね。 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 自身の終活について考え始める時期は、身近な人からの相続について考え始めるべき時期でもあります。「遺産を受け取らない」という選択肢についても、ぜひ慎重に検討してみてください。 遺産放棄と相続放棄は、言葉は似ていますが、もたらす結果は大きく違ってきます。それぞれの基礎知識を身につけた上で、自分にとって必要な手続きを選択するのがおすすめです。

  • 兄弟姉妹の立場で遺産は受け取れる?知っておくべき注意点も

    兄弟姉妹の立場で遺産は受け取れる?知っておくべき注意点も

    自身の老後について考え始めたら、遺産や相続について正しい知識を身につけるところからスタートしましょう。相続とは、いつやってくるかわからないもの。きちんとした知識を持っていれば、いざそのときに慌てなくて済むでしょう。 遺産と言えば「親から受け継ぐもの」というイメージを抱いている人も多いかもしれませんが、状況によっては兄弟姉妹の遺産を受け取るケースもあります。兄弟姉妹の立場で、どうなった場合に遺産が受け取れるのか、わかりやすく解説します。 相続の基本!相続順位について学ぼう 相続の基本!相続順位について学ぼう 被相続人が亡くなったとき、その財産は相続人へと受け継がれていきます。故人と血縁関係にある人が相続人なるイメージですが、現実には「血縁関係にある人すべて」が相続人になれるわけではありません。相続には「相続順位」が定められており、この順位がもっとも高い人が相続人になれるのです。 被相続人が亡くなった際に、無条件で相続人になれるのは「配偶者」です。故人に夫や妻、法律上の配偶者がいれば、どのような状況であっても相続人として認められます。相続順位が定められているのは、この配偶者以外の相続人についてです。 相続順位がもっとも高いのは、故人の子どもです。子どもが複数人いれば、全員が相続人になります。相続順位2位は、故人の両親。そして第3順位に当てはまるのが、故人の兄弟姉妹です。相続順位1位から3位の人々は、常に相続人になれるわけではありません。相続順位が高い方から順番が回り、当てはまる人が見つかった段階で、それ以降の順位の人には相続権が発生しない仕組みになっています。 兄弟姉妹が亡くなった際に、故人が結婚していて子どもを設けている場合、配偶者とその子どもが財産を受け継ぐでしょう。故人の兄弟姉妹が相続人になるケースとして考えられるのは、「故人に子どもがおらず、両親もすでに亡くなっている場合」です。 ちなみに、故人には子どもがいたものの、すでにその子どもが亡くなっている場合、相続権は子どもの子ども、つまり孫へと受け継がれます。この場合も、故人の両親や兄弟姉妹が財産を相続することはできません。第2順位の父母が亡くなっている場合、祖父母に相続権が発生します。兄弟姉妹に相続権が発生するものの、すでに亡くなっている場合はその子どもたち、つまり故人にとっての甥や姪が相続権を持ちます。 兄弟姉妹が法定相続人になった場合の相続割合は? 兄弟姉妹の立場で相続人になると決定した場合、どのくらいの財産を受け継ぐのか気になる方もいるでしょう。兄弟姉妹が相続人となるケースは、以下の2パターンしかありません。 ・故人の配偶者と共に、兄弟姉妹が相続人になる・兄弟姉妹のみが相続人になる 下のケースは非常にシンプルで、相続人となる兄弟姉妹ですべての財産を受け継ぎます。兄弟姉妹が複数人いる場合には、財産をそれぞれで等分することになるでしょう。 一方で、故人に配偶者がいる場合、相続財産の4分の3を配偶者が受け継ぎます。兄弟姉妹の法定相続分は全体の4分の1で、相続人が複数人いる場合には、その4分の1をさらに等分に分けてください。 兄弟姉妹が法定相続人になる場合に覚えておきたい3つのポイント 兄弟姉妹が法定相続人になる場合に覚えておきたい3つのポイント 兄弟姉妹が法定相続人になるケースは、決して少なくありません。兄弟姉妹が亡くなった際には、法定相続人になる可能性があるという点を、頭に入れておきましょう。兄弟姉妹の立場で、頭に入れておきたいポイントを3つ紹介します。 ★1.子どもや親が相続放棄する可能性がある 上で解説したとおり、亡くなった兄弟姉妹に配偶者や子どもがいれば、兄弟姉妹の立場で法定相続人になるケースは少ないでしょう。その時点で、「自分には関係ないこと」と捉えてしまう方も多いのではないでしょうか。ここに注意が必要です。 遺産相続とは、プラスの財産のみを受け継ぐ行為ではありません。もし故人が負債を抱えていたとしたら、そのマイナスの財産も相続財産としてみなされるでしょう。この場合、相続順位第1位である故人の子どもたちや、第2位の父母が、そろって相続放棄の手続きを取る可能性も。相続放棄の手続きを取った相続人は「最初からいないもの」として扱われ、相続順位は次に回されます。つまり、第3順位である兄弟姉妹が、相続人になる可能性もあるのです。 相続放棄の手続きには、期限が設定されています。「自分には関係ないだろう」と思い込み、手続きのチャンスを逃さないよう注意してください。 ★2.故人の兄弟姉妹の代襲相続は一代のみ 代襲相続とは、相続権を持つ人がすでに亡くなっていた場合に、その相続権が下の世代(もしくは上の世代)にどんどん受け継がれていくことを言います。 故人の子どもが亡くなっていれば、その子どもが、その子どもも亡くなっていればまたその子どもに相続権が発生します。第2順位の両親についても同様で、両親が亡くなっていればそのまた両親、さらにその先の両親と、どんどん遡っていくのです。その範囲は定められておらず、該当する人が存在するなら、どこまででも辿っていけるという特徴があります。 ただし兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続は一代のみと決められています。兄弟姉妹が亡くなっていれば甥や姪が相続権を持ちますが、すでに甥や姪が亡くなっている場合、その子どもに相続権が渡ることはありません。 ★3.兄弟姉妹に遺留分は認められない もう一点忘れてはいけないのが、遺留分に関する注意点です。遺留分とは、法定相続人が相続できる最低限度の相続分のこと。たとえば故人が遺言書で「○○に全財産を譲る」と言った内容を残していても、法定相続人であれば、遺留分だけは確保できるという特徴があります。 兄弟姉妹の立場で法定相続人になる場合、遺留分は認められていません。故人の遺言は法定相続よりも優先されますから、「配偶者に全財産を譲る」といった内容が残されていれば、兄弟姉妹が遺産を受け取ることはできないのです。 トラブルになりやすいポイントですから、事前に頭に入れておきましょう。 兄弟姉妹が財産を相続する場合の特徴を知ってトラブルを防ごう 兄弟姉妹の立場で、被相続人の遺産を受け取れる可能性はあります。故人に子どもがおらず、すでに両親も亡くなっている場合、相続権が回ってくる可能性が高いと言えるでしょう。 しかし実際に兄弟姉妹の立場で法定相続人になる場合、相続人の範囲が広がり、トラブルに悩まされるケースも少なくありません。相続に関する基礎知識をきちんと身につけ、トラブルを避けられるように準備しておきましょう。相続順位を知っておくだけでも、事前の心構えができるはずです。

  • 親が亡くなり遺言が見つかった!相続の進め方を解説

    親が亡くなり遺言が見つかった!相続の進め方を解説

    終活ブームの今、遺言書を残して亡くなる方も多くなっています。とはいえ、いざ自分の親が亡くなり、遺言書が発見された場合にどう行動すれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。 今回は遺言書が残されている場合の相続の進め方について解説します。何からすれば良いのかわからない…というときには、ぜひ参考にしてみてください。 まずは「開封」に注意! 遺言書とは、被相続人の最期の思いが詰まった書類です。法的拘束力を持ち、相続人は遺言書の内容に沿って、相続手続きを進めていくことになります。そんな遺言書には、以下のような種類があります。それぞれで取り扱い方法が異なりますから、注意しましょう。 ・自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言 自筆証書遺言の場合、自宅で発見されるケースも少なくありません。身近な人が亡くなりバタバタしている中で、「少しでも早く内容を確認したい!」と思う方も多いのではないでしょうか。しかし封がしてある自筆証書遺言を勝手に開封すると、5万円以下の過料が科される恐れがあります。また「内容を改ざんしたのでは…」と疑われるきっかけにもなりかねないでしょう。 中身を確認するために、必要になるのが家庭裁判所による「検認」の手続きです。検認とは、遺言書の偽造や改ざんを防ぐためのシステムです。未開封の状態で、いったん家庭裁判所に提出しなければいけません。裁判所に指定された日時に、あらためて行われる検認に立ち会いましょう。 検認後に発行される「検認済証明書」は、この先の相続手続きを進めていくために必須です。手続きには少し時間がかかるため、遺言書を発見したら、できるだけ早く家庭裁判所への申し立てを行ってください。 ちなみに、同じ遺言でも公正証書遺言であれば、家庭裁判所による検認の必要はありません。また自筆証書遺言の場合でも、「自筆証書遺言書保管制度」を使い法務局内で保管されていたものであれば、やはり検認は必要ありません。 遺言執行者を確認しよう 遺言執行者を確認しよう 遺言書の内容を確認できたら、まずチェックしたいのが遺言執行者についてです。遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するための手続きを進めていく人のこと。遺言書で指定されていたら、まずはその人が役割を担ってくれるか確かめなければいけません。特に指定されていない場合は、家庭裁判所に選任してもらえます。 家庭裁判所に選任してもらう場合でも、相続人が信頼できる遺言執行者を指定できます。「家庭裁判所に勝手に指定されたくない」という場合には、事前に許可をもらった上で、信頼できる相手を遺言執行者として指定できるよう準備しておきましょう。法律上の知識が必要で、相応の責任を求められるため、士業を営む専門家に依頼するのがおすすめです。 遺言執行者が決定したら、その事実を相続人に通知します。いよいよここから、相続の具体的な手続きがスタートします。 遺言執行者による遺言の執行 遺言執行者が決まったら、遺言書の内容に沿って手続きが進められていきます。具体的には、 ・相続財産の引き渡しや管理・相続財産に関係する書類の引き渡しや管理・妨害している者がいれば、その排除・遺言執行に必要な訴訟行為・遺言に基づく財産の処分や売買など といった作業が含まれます。遺言執行者を士業の専門家に依頼した場合、その指示にしたがって手続きを進めていけば大丈夫です。スムーズに遺言を執行できるでしょう。 自分たちで遺言を執行する場合の手続きとは? 遺書の内容が遺贈や遺産分割方法の指定のみで、非常にシンプルな形式の場合、必ずしも遺言執行者は必要ありません。この場合、遺言で指定された内容に沿って、相続人全員が協力して手続きを進めていくことになります。遺言をもとに相続人それぞれの相続割合を明らかにして、遺産の分配を実行しましょう。 必要であれば、登記申請や金銭の取り立ても行います。相続財産を不法に占有している人がいれば明け渡しを求め、移転するよう請求してください。遺言書のとおりに遺産を分配できれば、相続手続きは完了です。 遺言書が見つかった場合の注意点3つ 遺言書が見つかった場合の注意点3つ 遺言書を残す目的のひとつは、相続に関する親族間トラブルの予防です。とはいえ、遺言書が残されていればそれですべて安心というわけではないので、注意してください。具体的な注意点を3つ紹介します。 ★遺言書は本当に有効か? 親が亡くなり遺言書が発見されたとしても、常にその内容が有効とは限りません。遺言書の内容に沿って相続手続きを進めていく前に、その中身が法律的に見て本当に有効なのかどうかを判断しましょう。 専門家のサポートのもとで作られている公正証書遺言の場合、法的効力を持たない恐れはほぼないでしょう。一方で自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、書式や内容の不具合が原因で「法的効力を持たない」と判断される事例も少なくありません。 不意に遺言が見つかったら、その内容が気になるのは当然のこと。しかし実際には、内容だけではなく「本当に遺言書としての効力を持っている書類なのか?」を確かめる必要があります。 万が一、残された遺言書に法的効力がないと判断された場合、その内容も無効に。相続人全員で遺産分割協議を行い、相続手続きを進めていくことになります。 ★遺言書に記載されていない財産はないか? 遺言書が法的に有効だと判断される場合でも、すべての相続財産がもれなく記載されているとは限りません。この場合、遺言書に記載されていない相続財産について、遺産分割協議が必要になります。 ★遺言の内容に納得できない場合はどうなる? 遺言書が法的に有効な形で残されていれば、被相続人はその相続に自身の遺志を最大限反映できます。法定相続分を無視して、特定の人にのみ財産を相続させることもできるでしょう。また本来であれば相続権を持たない人が、財産を相続することもできます。 とはいえ、法定相続とは異なる内容の遺言であればあるほど、「その内容に納得できない…」と感じる人が出てくる可能性もあるでしょう。残念ながら、正しい形で残された遺言の内容は、相続人には覆せません。 ただし兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺留分が認められています。これは、法律で最低限保障されている相続分のこと。遺言書のとおりに遺産が分配された場合でも、遺留分が侵害されていれば請求の上で取り戻せるでしょう。弁護士に相談の上で、適切に対処してください。 遺言書が見つかったらまずは落ち着いて行動を 親が亡くなり遺言書が発見されたら、驚く方も多いのではないでしょうか。勝手に開封するのではなく、まずは落ち着いて行動しましょう。 遺言書を家庭裁判所で検認してもらうためには、1ヶ月以上の時間が必要です。だからといって相続手続きに定められている各種期限が延長されるわけでないので、注意してください。できるだけ早めに、必要な手続きを進めていきましょう。

  • 初めての遺言作成ならぜひ検討を!遺言にまつわる便利なサービス

    初めての遺言作成ならぜひ検討を!遺言にまつわる便利なサービス

    子育てがひと段落すると、自分たち夫婦の未来が気になるものです。「そろそろ老後の準備を始めようかな…」と思っている方におすすめなのが、遺言の作成です。自身の最期のメッセージを大切な人たちに届け、また自身の思いを相続に反映させられるでしょう。 終活ブームを迎えている今、遺言作成をサポートしてくれる便利なサービスが多数登場しています。初めての遺言作成で利用したいサービスを紹介するので、ぜひチェックしてみてください。 デジタル遺言サービス デジタル遺言サービス デジタル遺言サービスとは、近年特に注目されているサービスのひとつです。自身の遺言をオンライン上に残しておき、タイミングと相手を事前に指定。自身が設定した条件を満たした段階で、相手のもとにメッセージを届けられます。法的拘束力は持たないものの、自身の思いをより手軽に伝えるための方法として、高く注目されています。 デジタル遺言サービスを利用するメリットは、以下のとおりです。 ・自宅のパソコンやスマートフォンから、いつでも手軽に遺言を残せる・内容を変更する際の手間がかからない・動画でメッセージを伝えられる・オンライン上のログイン情報の管理がしやすい 終活を検討し始めたばかりの方にとって、「遺言は具体的に」と言われても、何をどうすれば良いか戸惑うケースも多いのではないでしょうか。デジタル遺言サービスなら、いつでもどこでも、好きなときに手軽に遺言を残せます。「やっぱり内容を変更したい」と思ったときでも、自分で手間なく作業できるでしょう。自身の思いをまとめるのにも役立つはずです。 また各種SNSやオンラインバンキングなど、自分に万が一のことがあったときのため、「ログイン情報をまとめておきたい」と思う方にも役立ちます。デジタル遺言サービスは、こうした情報の管理・伝達とも相性が良いでしょう。 一方で、デジタル遺言サービスにもデメリットはあります。先ほどもお伝えしたとおり、法的な効力を持たないため、オンライン上に保管されたメッセージが正式な「遺言書」として認められるわけではないのです。デジタル遺言サービスを通じて、正式な遺言書を残したいと思ったときには、また別のサービスの利用が必要になるでしょう。 デジタル遺言サービスには、無料で利用できるものも少なくありません。将来的に正式な遺言書を残したくなった場合に、作成をサポートする機能を備えているところもありますから、自身のニーズに合わせて利用先を検討してみてください。 遺言書案文イメージの無料作成サービス 遺言書案文イメージの無料作成サービス 「どうせなら法的拘束力を持った遺言書を作成したいが、わざわざ専門家に相談するのはちょっと…」と思う方におすすめなのが、遺言書案文イメージの無料作成サービスです。オンライン上で遺言内容に関する質問に回答していくと、その内容を反映した案文イメージを作成。イメージをもとに自身の手で清書すれば、自筆証書遺言が作成できます。 自筆証書遺言とは、遺言作成者が自筆で残す遺言書のこと。自分一人で、自宅でも作成できる遺言書として、近年注目を集めています。費用がかからない点も、自筆証書遺言のメリットと言えるでしょう。 一方で、専門家の手を経ずに作成できるため、内容の不備によるトラブルがあとを絶たないのも事実です。自筆証書遺言の有効性が認められなければ、メッセージとして残せはしても、法的な効力は持たせられません。相続に自身の遺志を反映させるのも難しくなってしまうでしょう。 遺言書案文イメージの無料作成サービスを使えば、自身の希望に沿った内容の案文イメージを手軽に入手できます。あとは自分自身の手で書き写すだけですから、ミスが発生するリスクも少なくなるでしょう。難しいことを考えなくても自筆証書遺言を作れるというメリットもあります。法定相続人の遺留分チェックを受けられるサービスを利用すれば、「親族間に憤りや悲しみを残さない遺言書内容」を作成しやすくなるでしょう。 ただしあくまでも無料サービスのため、対応できる範囲には限界があります。比較的シンプルな内容の遺言には対応できても、そうではない場合、自身の思いを反映させるのが難しくなってしまう恐れも。遺言書作成の初期段階で、自身の思いをはっきりさせるためのステップとして活用するのもおすすめです。 専門家事務所による遺言作成支援サービス 複雑な内容の遺言書を、より確実な形で残したいと思う場合には、専門家の手を借りるのが一番です。遺言書の作成支援サービスは、司法書士事務所や行政書士事務所、弁護士事務所や信託銀行などでも提供されています。 専門家事務所の遺言作成支援サービスを利用した場合、以下のようなサポートを受けられるでしょう。 ・相続財産の調査・法定相続人に関する調査・個別の状況を把握した相談・遺言内容のチェック・遺言書の保管・遺言の執行 実際にどういったサポートを受けられるのかは、依頼先の専門家事務所によって異なります。サービス内容によって専門家報酬の金額は変わってきますから、正式依頼前にしっかりとチェックしておきましょう。 コストはかかりますが、「できるだけ素早く、確実な遺言を残しておきたい」と思う方にはぴったりのサービスです。遺言書作成に強い専門家を探してみてください。 国が提供するサービスにも注目してみよう! 初めて遺言を作成するなら、ぜひ国が提供しているサービスにも注目してみてください。法務局では2020年7月より、自筆証書遺言書保管制度をスタートしています。自分で作成した自筆証書遺言を、法務局にて保管してもらえるサービスです。 自宅で手軽に残せる自筆証書遺言ですが、 ・長い保管期間中に内容を改ざんされてしまう・相続が発生しても発見されない といったリスクがあります。作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらえば、改ざんや紛失の恐れはなく、また相続開始と共により確実に相続人のもとへ届けられるでしょう。また相続が発生した際に、家庭裁判所の検認が不要であるというメリットもあります。 こちらのサービスを利用するためには保管申請手数料として3,900円支払う必要がありますが、原本は遺言者死亡後50 年間、またその画像データは遺言者死亡後150年間と、長期にわたって確実に保管され続けます。自筆証書遺言を検討するなら、安心安全のためにも、ぜひこちらのサービスもセットで検討してみてください。 便利なサービスも活用して初めての遺言作成を! 初めての遺言作成では、何をどうすれば良いかわからない方も多いはず。最初の一歩を踏み出すためには、今回紹介した便利サービスを利用するのもおすすめです。情報を整理し、自身の思いを見つめ直すきっかけにもなるのではないでしょうか。無料で利用できるサービスも多いので、ぜひ検討してみてくださいね。

  • 死亡保険は相続税の課税対象?遺産分割は?覚えておきたい基礎知識

    死亡保険は相続税の課税対象?遺産分割は?覚えておきたい基礎知識

    結婚して子どもが生まれ、家族が増えると気になるのが「死亡保険」についてです。自分に万が一のことがあったときでも、残された家族の生活を守れるように…と、死亡保険の加入を検討する方も少なくありません。 とはいえ、死亡保険に加入する際には、将来の「相続税」や「遺産分割」についても意識したいところです。事前に基礎知識を身につけておけば、余計なトラブルも防げるでしょう。 今回は、死亡保険と相続の関係性について解説します。死亡保険にも相続税はかかるのか、また妻を受取人に指定した保険金を、遺産分割しなければならないのか。これらの疑問を解消しましょう。 死亡保険金は受取人の「固有財産」 死亡保険に加入する場合、契約時に受取人を指定します。被保険者が亡くなったときに、この受取人が死亡保険金を受け取れる仕組みです。 死亡保険金の基礎知識として、まず頭に入れておきたいのは、死亡保険金とは受取人の固有財産であるという事実です。相続財産には含まれず、当然遺産分割の対象にもなりません。事前に指定されていた受取人のみが、死亡保険金のすべてを受け取る仕組みになっています。 一般的に、死亡保険金の受取人には、配偶者や子どもなどが指定されているケースが多いでしょう。死亡保険金の受取人が、法定相続人の一人であるという事例も、決して珍しくはありません。この場合、保険金の受取人でもあり、また法定相続人でもあるその人は、「保険金」と「相続分の遺産」の両方を受け取れるのです。 【例】家族構成:両親と子ども2人(A、B)の4人家族相続財産:不動産や現金など合計2,000万円死亡保険:夫が子どもAを受取人に指定した2,000万円の死亡保険に加入 夫が死亡した場合の法定相続分妻:1,000万円子どもA:500万円子どもB:500万円 死亡保険金子どもA:2,000万円 合計妻:1,000万円子どもA:2,500万円子どもB:500万円 このような計算式になります。 死亡保険金は相続財産に含まれないため、たとえ相続放棄の手続きを行った場合でも、それとは別に死亡保険金の受け取りが可能です。 ただし受取人に指定されていた人がすでに亡くなっている場合、受取人に指定されていた人の相続人が死亡保険金を受け取ります。この場合、死亡保険金を相続人の頭数で割り、それぞれが等分ずつ受け取る仕組みです。 ただし「みなし相続財産」として相続税の課税対象に! ただし「みなし相続財産」として相続税の課税対象に! 先ほどお伝えしたとおり、死亡保険金は相続財産には含まれません。しかし、「みなし相続財産」として扱われる点にだけは注意しましょう。これは、「相続財産として遺産分割する必要はないが、相続税の課税対象には含まれる」という事実を示しています。死亡保険金は金額が大きくなりやすいため、特に注意が必要です。 とはいえ死亡保険金とは、被保険者が亡くなった後の身近な人たちの生活を支えるためのもの。その目的に配慮して、以下のような非課税枠が用意されています。 【死亡保険非課税枠】500万円×法定相続人の数 先ほどの4人家族の例を挙げるなら、500万円×3人で1,500万円が非課税枠として計算されます。残った500万円は遺産の総額に含まれますが、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)や債務控除(被相続人が生前に残した借金や葬儀費用)を適用できます。 また死亡保険金の受取人が「配偶者」であった場合、課税対象となる相続財産が1億6,000万円以下であれば相続税が課せられない、配偶者控除が利用できます。よほど大きな保険に加入していないかぎり、相続税が課せられる可能性は低いと言えるでしょう。 ちなみに、死亡保険金の受取人が法定相続人以外に指定されている場合は、やや注意が必要です。死亡保険非課税枠は、「相続人が死亡保険金を受け取った場合にのみ利用できる」もの。相続税が課せられる可能性も高まるという点は、頭に入れておいてください。 死亡保険金が所得税や贈与税の対象になるケースとは? 死亡保険金が所得税や贈与税の対象になるケースとは? ここまで、死亡保険金と相続税について解説してきました。しかしそもそもの保険加入の仕方によっては、相続税ではなく所得税や贈与税を課せられる可能性も。いったいどういった場合に相続税以外の税が対象となるのか、こちらも知っておきましょう。 死亡保険金やみなし相続財産として扱われるのは、死亡保険の契約者と被保険者が、被相続人であった場合です。たとえば、夫自身が契約者となり、自身を対象とした死亡保険に加入。妻を受取人に指定した場合、妻が受け取る死亡保険金は相続税の対象になるでしょう。 一方で、妻が契約者となり夫を対象とした死亡保険に加入。受取人も妻であった場合、妻が受け取る死亡保険金は所得税の対象になります。「妻が加入した保険金を妻自身が受け取る」と判断されますから、死亡保険金は「妻の所得」となるわけです。 所得税には、相続税のような充実した非課税枠や控除制度は用意されていません。死亡保険金を一括で受け取った場合には「一時所得」と判断されます。受け取った保険金から払い込んだ分の保険料を引き、特別控除額50万円を超えた分に自身の所得を合わせて所得税が計算されます。年金方式で受け取った場合には「雑所得」と判断されるでしょう。こちらの場合、特別控除は利用できません。 死亡保険金の受け取りが贈与とみなされるのは、契約者と被保険者、そして受取人のすべてに別々の人物が指定されている場合です。たとえば、妻が契約者となり、夫が被保険者となる死亡保険を契約。死亡保険金の受取人を子どもに指定した場合、死亡保険金は妻から子への贈与とみなされます。 契約者・被保険者・受取人の指定は、保険加入時に決定するもの。誰をどのように指定するのかによって、将来受け取る死亡保険金の課税金額が大きく変わってくる可能性もあるでしょう。死亡保険金に関する基礎知識をしっかりと身につけ、受取時に余計な問題が発生しないよう注意してください。 死亡保険金に関する理解を深めよう! 死亡保険金は、受取人の固有財産としてみなされ、遺産分割の対象にはなりません。「特定の人にのみ財産を多く残したい」と思う場合、非常に有効な手段と言えるでしょう。 たとえ「全財産を○○に譲る」という内容の遺言を残した場合でも、法定相続人には遺留分の請求が認められています。死亡保険金であれば、遺留分を請求される恐れもありません。また、「法定相続人以外に多くのお金を残してあげたい」という場合にもおすすめの方法です。 とはいえ死亡保険金に関する無理解が、被保険者の死後、親族間の争いの火種になってしまうケースも決して少なくありません。残された家族の生活を助け、また余計な争いを避けるためには、事前にしっかりと基礎知識を身につけておくことが重要です。今回紹介した内容も参考にしながら、保険の加入について検討してみてくださいね。

  • 学資保険に入るなら受け取り方法を予習しよう!タイミングや注意点は?

    学資保険に入るなら受け取り方法を予習しよう!タイミングや注意点は?

    子どもが生まれたら、検討したいのが学資保険についてです。学資保険の大きな目的は、将来の進学への備え。とはいえ、まだまだ小さなわが子の姿から、保険金受取時を明確にイメージするのは難しいかもしれません。 学資保険でより確実に子どもの将来のために備えるのであれば、受け取り方法について予習した上で、加入を検討することが大切です。受け取りタイミングや注意点など、知っておきたい情報をまとめます。 学資保険とは?どうやって受け取る? 学資保険とは?どうやって受け取る? 学資保険は、子どもの進学時にお金が受け取れるよう、計算して加入するタイプの保険です。受け取ったお金は、子どもの学費や一人暮らし費用に充てるご家庭が多いでしょう。「学資保険」という名称から、「子どものためにしか使えないのでは…」と思う方もいるかもしれませんが、これは誤解です。 学資保険の使い道は自由で、進学費用以外に利用しても大丈夫です。たとえば、「進学費用が無事に賄えたので住宅ローンの繰り上げ返済へ」「子どもに車を買ってやりたい」「事業費用の補填として」など、さまざまな使い道を自由に選択できるのです。 では実際に、学資保険はどのようにして受け取るのでしょうか。 学資保険の被保険者は「子ども」であり、子どもの年齢によって満期時期が設定されています。満期を迎えるころになると、保険会社から知らせが届きます。あとはその知らせに沿って手続きすればOKです。 学資保険で注意したい受け取りタイミング 学資保険とは?どうやって受け取る? 学資保険の満期返戻金を受け取るのにベストな時期は、「何を目的にして保険に加入するのか?」によって異なるでしょう。 たとえば、大学入学費用を賄うつもりで加入するのであれば、子どもの年齢が17歳もしくは18歳に達したときに満期返戻金を受け取れるのがベストです。一方で、大学在学中の費用を賄いたいなら20歳前後、大学院進学費用を想定して加入するなら、22歳に設定すると良いでしょう。 子どもが何歳で満期を迎えるのかは、保険商品の種類によって変わってきます。学資保険に加入するタイミングで、将来のビジョンをはっきりさせておく必要があるでしょう。加入する保険を間違えれば、「せっかく学資保険に加入していたのに、必要な時期にお金を受け取れなかった…」という事態にもなりかねません。 学資保険の満期でもっとも多いタイプは、やはり「大学進学時(18歳)」に多額のお金を受け取れる保険でしょう。多くの子どもが大学に進学する中、進学費用の負担は決して少なくありません。たとえ大学進学しなかったとしても、専門学校への入学準備や就職準備、結婚準備など、お金があって困ることはないでしょう。 ただしこちらのタイプを選ぶ場合にも、注意したいポイントがあります。それは、子どもの年齢と支払い時期の関係性です。子どもが18歳になったときに満期返戻金を受け取る場合、それ以前に必要となる進学費用は賄えません。 たとえば子どもの誕生日が3月31日であれば、満期返戻金を受け取れるタイミングもこの日以降に。もっともお金が必要なタイミングに、保険金を使えない計算になってしまいます。特に子どもが早生まれの場合は注意しましょう。満期年齢を17歳に設定し、保険金受取から進学費用支払いまでのスケジュールに余裕を持たせておくのもおすすめです。 学資保険の受け取りに関する注意点2つ 子どもの将来のために備える学資保険。学資保険に加入するタイミングで押さえておきたい注意点は、以下の2つです。こちらもぜひチェックしてみてください。 ★何度もお祝い金が受け取れるタイプはお得? 近年、学資保険のバリエーションは非常に豊富です。中でも人気なのは、子どもの成長の節目で、何度も「お祝い金」を受け取れるタイプでしょう。18歳を満期に設定していても、小学校入学時・中学校入学時・高校入学時など、さまざまなタイミングでお祝い金が支給されるタイプを指します。 何度もお金を受け取れるわけですから、「非常にお得」と感じるかもしれません。しかし、何度も受け取るお祝い金とは、あくまでも自分自身が積み立てている保険金の一部。つまり満期返戻金の一部を「前払い」しているに過ぎないのです。 確かに、子どもの成長の節目にお祝い金を受け取れれば「助かる!」と思う場面もあるでしょう。しかしお祝い金を受け取れば受け取るほど、本来の目的であった「大学進学時に受け取れるお金」は少なくなってしまいます。 また保険会社にとって、何度もお祝い金を支給するにはコストがかかります。このため、満期返戻金を一括で受け取るタイプの学資保険と比較して、「返戻率が低くなりやすい」という特徴があります。本当にお得なのかどうか、しっかりと検討するのがおすすめです。 ★学資保険の満期返戻金にも税金がかかる可能性がある! 学資保険の満期返戻金を受け取る際にも、忘れてはいけないのが税金についてです。具体的にどういった税金が課せられるのかは、学資保険の契約者と受取人の関係性によって違ってくるでしょう。 もっとも多いのは、契約者と受取人が同一であるケースです。「子どもの父親が契約者となり保険金を支払い、子どもの父親が満期返戻金を受け取り、子どもの学費を支払う」という事例ですね。この場合、一括で受け取った学資保険の満期返戻金は「一時所得」と判断され、「所得税」の対象になります。 ただし一時所得には50万円の特別控除が用意されており、年間の一時所得金額がこの範囲に収まっていれば、所得税は課せられません。学資保険の受取額の平均は200~300万円程度と言われていますが、過去に収めた保険金は差し引きできます。50万円以上の、いわゆる「儲け」が出るケースは稀だと言えるでしょう。 ちなみに、学資保険のお金を毎年1回、継続して受け取る場合は「雑所得」と判断されます。やはりこちらも、所得税の対象になるため注意してください。雑所得には、一時所得のような特別控除額が存在しません。お祝い金を受け取れば、その金額に応じて所得税の課税額が増えるという点を頭に入れておきましょう。 また、学資保険の受取人を契約者以外に設定した場合、満期返戻金は贈与税の対象になります。こちらも注意してください。 学資保険に加入するなら将来へのビジョンをはっきりさせよう! 子どもが生まれたら、なんとなく学資保険を…と考える方も多いのではないでしょうか。学資保険は、将来の進学費用を賄うための方法の一つです。後悔なく受け取るためには、加入する段階で、将来へのビジョンをある程度はっきりさせておく必要があるでしょう。 ・どのタイミングでお金を受け取るのか?・いくら受け取れるようにするのか?・誰を契約者と受取人に設定するのか? これらの点を明らかにしておくだけで、失敗リスクも減らせるはずです。子どものための保険だからこそ、ぜひ準備はしっかりと整えておきましょうね。

  • 不動産相続の基礎知識|相続財産の評価方法を学ぼう

    不動産相続の基礎知識|相続財産の評価方法を学ぼう

    不動産を相続する際に、気になるのが相続税についてです。実際に相続税が発生するかどうかは、相続対象の不動産の評価額によって決定されます。とはいえ、不動産の評価額をどのように決めれば良いのか、悩む方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、不動産相続の基本として、評価方法の種類や特徴を解説します。ぜひ参考にしてみてください。 不動産を評価するための方法とは? 不動産を評価するための方法とは? 土地や建物といった不動産には、金銭的にどの程度の価値があるのかわかりにくいという特徴があります。評価方法も非常に複雑なので、慎重な対応を心掛けましょう。 相続税は、相続する財産の「課税遺産総額」をもとに計算されます。相続する財産が「現金のみ」であれば、話は簡単ですが、実際にはそうした事例ばかりではありません。このため国税庁では、「財産評価基本通達」というルールを提示し、それにのっとって各種相続財産の評価を行うよう求めています。土地や住宅と言った不動産も、例外ではありません。 土地の相続税評価方法は、以下の2つです。 ・路線価方式・倍率方式 どのエリアの土地を相続するのかによって、適用される方式が異なってきます。 一方で家屋の相続税評価は、固定資産税評価額をもとに計算されます。次項目からは、土地と建物、それぞれの相続税評価方法について、より詳しく掘り下げていきましょう。 土地の相続税評価方法は2つ!それぞれの特徴や違い まずは土地の相続税評価方法について見ていきましょう。路線価方式と倍率方式のそれぞれについて、解説していきます。 *路線価方式とは?路線価方式とは、年に1度国が発表する「路線価」をもとに、相続対象となる土地の評価額を算出する方法です。多くの人が居住する、市街地にて採用されています。 路線価方式で相続税評価額を求める際の計算式は、以下のとおりです。 【相続税評価額=路線価×土地の面積(× 補正率)】 路線価は、国税庁が公表している路線価図からチェックできます。そこに相続する土地の面積を掛け合わせて求めましょう。もしも土地に、「形がいびつである」「間口が狭い」といった問題があれば、定められた補正率をさらに掛け合わせてください。 主な補正としては、以下のような内容が挙げられます。 ・不整形地補正(旗竿地や三角形の土地など)・間口狭小補正(普通住宅地区において道路に面している間口が8メートルに満たないなど)・奥行長大補正(間口の長さよりも奥行きの長さが大幅に広い)・がけ地補正(斜面の角度が30度以上の急傾斜地がある) それぞれの補正率は、土地の状態によって細かく定められています。当てはまりそうな点がある場合、国税庁サイトなどで、補正が認められるための条件について確認しておきましょう。 補正率さえ明らかにできれば、計算は決して難しくありません。相続税評価額を求められます。 *倍率方式とは? 一方で倍率方式とは、国税庁が公表している評価倍率という数値を使って求めます。路線価図が公開されているサイトにてチェックできますから、ぜひ確認してみてください。こちらは主に、路線価が設定されていないエリアで用いられる手法です。 相続する土地の評価倍率は、エリアによってさまざまです。サイトでチェックした数値に、固定資産税評価額を掛け合わせて求めます。 【相続税評価額=固定資産税評価額×エリア別の倍率】 たとえば、固定資産税評価額が1,000万円でエリア別の倍率が1.1であった場合、相続税評価額は1,100万円と算出されます。 *土地を貸していた・借りていた場合の計算方法は?被相続人が、生前誰かに土地を貸していて、その土地を相続することになった場合、「貸宅地の評価方法」が適用されます。誰にも貸していなかった土地と比べて、相続税評価額が下がるでしょう。 人に貸していた土地の相続税評価額を求める計算式は、以下のとおりです。 【貸宅地の相続税評価額=土地評価額×(1-借地権割合)】 借地権割合は国税庁のホームページで確認しておきましょう。借地権割合の分だけ、評価額が下がる仕組みです。 住宅の相続税評価額の計算はシンプル 住宅の相続税評価額の計算はシンプル 家屋を相続する場合の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0を掛け合わせて求められます。つまり固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になりますから、非常にシンプルな計算だと言えるでしょう。 一方で、相続する物件が賃貸住宅の場合、計算式はやや複雑になります。 【建物の相続税評価額=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)】 借地権割合とは、借主側の権利のことで、その割合は一律30%と定められています。賃貸割合とは、全体の床面積のうち、どの程度を人に貸しているのかを示す割合です。200平方メートルのうち、100平方メートルを人に貸していた場合、賃貸割合は50%、つまり0.5で計算されます。 賃貸住宅を相続する場合、被相続人が亡くなった際に入居している人がいたかどうかで、相続税評価額が大きく変わってくる可能性も。複雑でわからないときには、専門家に相談してみてください。 人から借りた土地に建つ住宅を相続する場合はどうなる? 不動産相続にまつわる具体的な状況は、個々で異なるもの。「第三者から借りた土地に建っている建物を相続した」場合には、相続税評価額はどのように計算すれば良いのでしょうか。 まず大前提として知っておきたいのが、「借地権は相続財産に含まれる」という点です。建物が被相続人名義で、土地が第三者名義であった場合、「土地は相続対象ではない」と思う方がほとんどでしょう。もちろん他人名義の土地を相続することはできませんが、その土地を借りて使用する権利(借地権)は相続財産の一種であり、相続税の課税対象になるのです。 借地権の相続税評価額は、以下の計算式で求められます。 【自用地評価額×借地権割合=借地権の相続税評価額】 借りている土地の評価額に、国税庁ホームページで確認できる「借地権割合」を掛け合わせましょう。土地の分の相続税評価額が求められます。 困ったときの相談先は? 不動産の相続税評価額は、計算式の情報と必要な情報さえそろっていれば、自力で計算可能です。相続の話し合いをする上でも、極めて重要な情報の一つですから、ぜひ早めに計算しておきましょう。 とはいえ、土地の形がいびつであったり、何らかの問題を抱えていたりする場合には、専門家への相談によって相続税評価額が変わってくる可能性も。不動産の相続税評価額は、ちょっとしたことで数百万円違ってくる可能性もあるので、十分に注意してください。 不動産の相続税評価額について困ったら、ぜひ相続問題に強い税理士に相談してみてください。このほか、自治体等が設置している相続税の相談窓口を利用するのもおすすめですよ。

  • 妻に残す資産を守りたい!相続対策としてやっておくべきこととは?

    自身の老後について考えたとき、「自分が亡くなったあと、人生を共に過ごしたパートナーの行く末が不安」と語る方は少なくありません。特に男性の場合、自宅や土地の名義が自分自身になっているケースも多いもの。「自分が亡くなったあと、妻は同じ家に住み続けられるのだろうか…」と不安を感じることもあるでしょう。 妻に残す資産を守るため、生前からできることはあるのでしょうか。配偶者の今後の生活のため、相続対策としてやっておくべき行動を紹介します。 まずは相続の基本について学ぼう! まずは相続の基本について学ぼう! 自分の死後、妻に財産を残すためには、まず相続の基本について学んでおく必要があります。被相続人の財産を受け継ぐのは、相続人です。無条件に相続人になれるのが配偶者であり、その他の相続人については、以下の順位に沿って決定されます。 第1順位 被相続人の子ども第2順位 被相続人の親第3順位 被相続人の兄弟姉妹 妻と子どもがいる人が被相続人になれば、相続人は配偶者である妻と、第1順位である子どもがなります。子どもがすでに亡くなっている場合、その子どもの子ども、つまり孫に相続権が発生します。これを代襲相続と言いますが、第1順位と第2順位について、代数制限はありません。第3順位の兄弟姉妹においても、1世代限りとはいえ代襲相続が認められています。 つまり、法律に則って自身の財産を相続させる場合、自身の甥や姪までが相続人になる可能性があるのです。「妻のもとにできるだけ多くの財産を残したい」と思う方にとっては、想定外の事態と言えるのではないでしょうか。 特に妻との間に子どもを設けていない場合や、子どもがいても相続させたくない場合には、注意が必要です。法律の基本知識を身につけた上で、適切な準備を整えておきましょう。 「妻に全財産を譲る」旨の遺言書だけでは不十分 自身の死後、相続に遺志を反映させるための方法として、有効なのが遺言書です。法的に有効な遺言書を残し、そこに「妻に全財産を譲る」とさえ記載すれば大丈夫!と思っている方も多いのかもしれません。しかし実際には、この対策だけでは不十分です。 なぜなら相続人のうち、直系卑属である子どもと直系尊属である親には遺留分が認められているから。遺留分とは、相続人が受け取れる最低限の遺産の取り分を示したものです。遺留分を侵害する内容であっても、遺言そのものが無効になるわけではありません。一方で、兄弟姉妹以外の法定相続人から遺留分を請求されれば、支払わないわけにはいかないのです。 たとえば、相続する財産のほとんどが「自宅+土地」であった場合、遺留分請求によって、妻が自宅を手放さなければならない可能性も出てきます。妻の生活は、大きく変わってしまうでしょう。 妻に多くの財産を相続させたい旨の遺言書を残す場合、その他の相続人への丁寧な説明が鍵となるでしょう。突然遺言書で「妻のみが財産を相続する」と告げられるよりは、「なぜそうしたいのか?」を含めて、自身の思いをしっかりと説明しておいた方が、受け入れる側の気持ちも変わります。 また相続人が妻と子どもの場合、いったん妻がすべてを相続したとしても、妻が亡くなった段階で、それらの財産は子どものもとへと受け継がれます。こうした事情を丁寧に説明すれば、理解を得られるケースも多いのではないでしょうか。 「終活=遺言」と考える方は多いですが、実際にはそれだけではありません。遺言を残すことも大切ですが、自身が遺産相続についてどのように考えているのか、周囲との意思疎通も重要視してみてください。 ちなみに、夫婦の間に子どもがおらず、自身の両親もすでに亡くなっている場合、兄弟姉妹に遺留分は認められていません。この場合は、「妻に全財産を残す」と記せば、自身の思いをそのまま反映できるでしょう。 この場合、「法的に有効な遺言書を残せるかどうか?」が非常に重要なポイントになります。専門家のサポートのもとで、公正証書遺言を残しておくのがおすすめです。 贈与税の配偶者控除の活用も検討してみて 妻に残したい資産のうち、特に不動産について不安を抱えているなら、贈与税の配偶者控除を利用するのも良いでしょう。この制度を使えば、夫名義の住まいを、妻に非課税で贈与できます。以下の条件を満たしているかどうか、ぜひチェックしてみてください。 ・妻との婚姻期間が20年以上であること・自宅の価値が2,110万円以下であること 2,110万円という数字は、贈与税の基礎控除110万円に、特別控除2,000万円をプラスしたもの。贈与が完了したら、翌年の3月15日までに贈与税の申告書を提出しましょう。 この制度を使って生前贈与が完了していれば、自分が亡くなっても、自宅は妻の名義です。当然、相続財産には含まれません。その他の相続人との間で争いが起きる恐れもありませんし、妻が住まいを失うリスクもなくなるでしょう。婚姻期間が20年以上であれば、ぜひ検討してみてください。 法律上の妻ではない場合の対処法は? ひと言で「妻に残す資産を守りたい」と言っても、その実態はさまざまです。中でも、「別れた妻に財産を譲りたい」「法律上は夫婦と認められていない、内縁の妻に残す資産を守りたい」という場合、相続はよりいっそう複雑になるでしょう。 この場合、法律上の夫婦ではない妻は、法定相続人とはみなされないので注意が必要です。妻を相続人に指定するためには、その旨を記した遺言書を確実に残しておいてください。 ただし、全財産を妻に残せるかどうかは、その他の相続人によって異なるでしょう。たとえ「全財産を妻(元妻)に譲る」と記載した遺言書を残しても、その他の相続人には遺留分が認められます。請求される可能性は高く、支払わなければ訴訟に発展してしまいます。最初から遺留分に配慮した遺言を残しつつ、なぜ内縁の妻や元妻に財産を残したいのか丁寧に説明し、理解を求めるのがおすすめです。 すべての資産を残すのは難しくても、できる限りの相続対策を実践してみてください。自身の死後の、トラブル予防にも役立つはずです。 妻に残す資産を守りたいなら…しっかりと生前対策を! 妻に残す資産を守りたいなら…しっかりと生前対策を! 老後の生活が見えてきたとき、配偶者の今後の生活についても、きちんと考えておきたいところです。特に不動産の名義がどちらか一方になっている場合、遺産相続トラブルから、住む場所を失ってしまう恐れもあります。生前にしっかりと対策をしておくことで、こうしたリスクを低減できるでしょう。 具体的に何から始めれば良いのか悩んだときには、まず相続の専門家に相談してみるのもおすすめです。妻に残す資産を守るため、今の自分に何ができるのか、より具体的な情報も得られるでしょう。

  • 公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    近年、「遺言書を残して遺産トラブルを回避しよう」と考える方が増えてきています。自身が残した遺産を巡って、大切な人たちが争うとしたら…これほど悲しいことはありません。なんとかして回避したいと思うのは、当然だと言えるでしょう。 しかし実際には、故人が失くした遺言書をきっかけに、さらなるトラブルが発生してしまう事例も存在しています。遺産トラブルを防ぐのに有効なスタイル、「公正証書遺言」について、わかりやすく解説します。 なぜ遺言書を残しても遺産トラブルが発生するの? 終活を意識し始め、各種情報サイトをチェックしてみると、「遺産トラブルを予防するためには遺言書が有効」という情報を目にする機会も多いのではないでしょうか。確かに遺言書が残されていれば、故人の思いに沿った相続が可能に。親族間のトラブルを予防するため、一定の効果が期待できるでしょう。 しかし実際には、遺言書が残されていても、遺産トラブルに発展してしまう事例は決して少なくありません。その理由は以下のとおりです。 ★1.遺言書が法的に有効と認められないから 遺言書にはいくつかのタイプがあり、いつでも好きなときに、自分の手で書き残せるものもあります。しかしこの場合、遺言書に必要な要件を満たしておらず、「法的に無効」と判断されてしまうケースも少なくありません。 遺言書が残されていても、法的に有効だと認められなければ意味がありません。相続人はあらためて遺産分割協議を行い、遺産相続の詳細を決定しなければならないのです。遺言書で遺産を多くもらえるように指定されていた人は、当然「故人の遺志」を尊重するよう求めるでしょう。一方で、その他の人は法定相続分に沿った手続きを求める可能性が高いです。法的に無効な遺言書によって、故人の遺志を確認できてしまうが故のトラブルだと言えるでしょう。 ★2.遺言書に記された内容が遺留分を侵害しているから 法的に認められる形で遺言書が残されていた場合でも、油断は禁物です。その内容によっては、やはり親族間のトラブルが発生してしまう恐れがあります。中でも注意しなければならないのが、遺留分についてでしょう。 遺留分とは、相続人が相続財産の中から最低限相続できる財産のこと。たとえ「全財産を○○に譲る」という内容が残されていたとしても、その他の相続人は遺留分を請求できます。最低限の財産を相続できるとはいえ、「いったいなぜこのような遺言が残されたのか?」という点で、トラブルが発生する恐れもあります。 ★3.遺言書に本人の意思が反映されているとは限らないから 被相続人が自分一人で作成し、自宅で保管されていた遺言書の場合、その内容の信ぴょう性がもとで、トラブルに発展するケースもあります。 ・認知能力が低下した状況で、誰かに書かされたのではないか?・すでに内容が改ざんされているのではないか? もしも本当に、遺言の強制や誘導、改ざんといった事実があれば、そこに故人の遺志は反映されていないことに。その信ぴょう性を巡って、騒動に発展する事例も決して少なくありません。 公正証書遺言とは?トラブル回避に有効な理由 上で説明したようなトラブルは、遺言の残し方に工夫することで予防できます。ぜひ公正証書遺言に注目してみてください。 公正証書遺言とは、公証人関与のもとで遺言書を作成する方法を言います。作成段階から専門家に手を貸してもらえば、 ・遺言書が法的に無効と判断されるリスクを防ぐ・遺言の内容についても事前に専門家に相談に乗ってもらえる・あとで内容が改ざんされる恐れがない といったメリットが発生します。遺言書にはさまざまな種類がありますが、公正証書遺言は「もっとも確実性の高い遺言」と言われているのです。 公正証書遺言は、第三者である「公証人」が作成します。出来上がった遺言書は、公文書として扱われ、いざ遺言が執行される瞬間まで厳重に管理されるでしょう。遺言を残した時点での故人の「意思」が、争点になる可能性も低くなります。 ただし公正証書遺言を作成するためには、相応の手数料を支払う必要があります。また作成までには、それなりの時間がかかってしまうでしょう。遺言書を残したいと思ったら、できるだけ早く行動に移すよう注意してくださいね。 公正証書遺言の残し方や費用を解説 公正証書遺言の残し方や費用を解説 ではここからは、実際に公正証書遺言を残すための流れや費用をチェックしていきましょう。公正証書遺言を作成するための手順は、以下のとおりです。 1.公証人との間で事前打ち合わせを行う2.証人になってくれる人を2人探す3.証人2人と共に公証役場に行き、遺言書を作成する4.同じ内容の公正証書遺言を3通作成し、1通を公証役場に保管する 公正証書遺言を作成する場合に、最初にやらなければならないのが公証人との打ち合わせです。公証役場に出向いたからといって、その場ですぐに遺言を作成できるわけではありません。遺言に残す内容など、事前の打ち合わせを済ませておきましょう。 また証人には、未成年や将来相続人になると推定される人は指定できません。また公証人の配偶者や、四親等以内の血族も指定できないというルールがあります。 信用できる人物2人に依頼するのが一番ですが、手間を省きたいなら専門家に依頼するのもおすすめです。事前打ち合わせや公証役場での手続きについても、専門家がしっかりとサポートしてくれるでしょう。遺留分についても、トラブルになりにくい遺言の残し方をアドバイスしてもらえるはずです。 公証役場では、公証人の本人確認や遺言内容の確認、公証人の筆記・読み聞かせといった手続きが行われます。遺言者と証人2名、さらに公証人が署名捺印することで、正式な遺言として認められるでしょう。 公証役場での手続きに必要な時間は、およそ30分前後です。また公正証書遺言を作成するためには、公証役場に手数料を支払わなければいけません。遺言の価格に応じて手数料の金額が変わってくるため、注意してください。 財産が100万円以下であれば手数料は5,000円です。一方で財産の価額が5,000万より上で1億円以下の場合の手数料は4万3,000円です。自身の財産の金額に合わせて、どれだけ必要になるのかあらかじめチェックしておきましょう。 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産相続について、「まさか我が家でトラブルなんて…」と考える方は少なくありません。しかし実際には、相続に関して割り切れない思いを抱く人は多いもの。非常に根の深い、親族間トラブルの原因になる可能性もあるのです。将来のトラブルを予防するために、ぜひ公正証書遺言についても検討してみてください。 作成時に手間はかかっても、「法律的にほぼ確実な遺言書が残せる」というメリットは非常に大きいと言えるでしょう。トラブル回避を目的に遺言書を残すのであれば、ぜひ積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

  • 遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    40代~50代になると、いつか発生するであろう「相続」について、気になる方も多いのではないでしょうか。実家の親が亡くなれば、子どもはほぼ確実に法定相続人に数えられます。いざ相続が発生しても、「具体的に何をどう手続きすれば良いかわからない…」と悩む方は少なくありません。 遺産相続の手続きは、具体的にどう進めていけば良いのでしょうか。自分で手続きする場合の流れや注意点について解説します。 遺産相続とは?大まかな流れ 遺産相続とは、亡くなった人が所有していた財産を、相続人で分け合う手続きを言います。具体的にどういった流れになるのか、把握しておきましょう。遺産相続の流れは、「故人が遺言書を残しているかどうか?」によって、大きく違ってきます。 遺言書が残っている場合と、残っていない場合、それぞれについて大まかな流れをチェックしてみましょう。 ★遺言書が残されている場合 故人の遺言書が見つかった場合の流れは、以下のとおりです。 1.必要に応じて家庭裁判所にて検認の手続きをする2.遺言書の中身を確認する3.遺言書の内容に沿って、遺産を分割する4.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書とは、故人の最期の思いを記した正式な書類です。法的効力を持つ正式な遺言書であれば、そこに記された内容に沿って相続手続きを進めていくのが基本。たとえ遺言書に記されていた内容が法定相続分とは異なっていても、遺言書の方が優先されます。 親族間で協議する必要がないため、争いごとを避けられる可能性も高いでしょう。また相続が発生してから、慌てて相続財産の調査をする必要もありません。 ただし遺言書が自宅で発見された「自筆証書遺言」の場合、家庭裁判所による「検認」と呼ばれる手続きが必要です。封がしてあるものを勝手に開けて中身を確認してしまうと、偽造や変造を疑われる原因に。5万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意してください。 遺言書の検認には、家庭裁判所への申し立てが必要です。以下の必要書類を揃えて手続きしてください。 ・申立書・遺言者の戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本(出生時から死亡時までのすべてを揃えて提出)・相続人の戸籍謄本(全員分) 検認には、少なくても1ヶ月以上の時間が必要になります。検認が必要な遺言書が発見されたら、できるだけ素早く申し立てを行いましょう。 ちなみに、残されていた遺言が公正証書遺言であったり、自筆証書遺言であっても法務局にて保管されていたりした場合には、検認は不要です。偽造や変造の疑いがないため、すぐに内容を確認し、その後の手続きを進めていけます。 ★遺言書が残されていない場合 遺言書が残されていない場合は、遺産相続について、相続人が協力して決定する必要があります。こちらの場合の大まかな流れは以下のとおりです。 1.相続人に関する調査を行い、確定する2.相続財産に関する調査を行い、確定する3.遺産分割協議を行う4.協議の内容に基づき、遺産分割協議書を作成する5.遺産分割協議書に基づいて、遺産を分割する6.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書が残されていない場合、「誰が相続人になるのか?」「何が相続対象に含まれるのか?」を明らかにするところからスタートします。必要に応じて、専門家の手を借りることも検討してみてください。こうして調査された内容をもとに、遺産分割協議を行います。誰が何を相続するのか、この協議にて確定しましょう。あとはその内容に基づいて相続を完了させます。 言葉にすると非常にシンプルですが、実際には遺産分割協議がまとまらない事例や、話がこじれて訴訟にまで発展してしまう事例も少なくありません。ひとつひとつの問題を、丁寧に解決していく必要があるでしょう。 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産相続の手続きを自分で進めていく場合、注意したいポイントのひとつが、相続放棄についてです。相続する財産の状況によっては、放棄した方が良いのかどうか、ぜひ冷静に検討してみてください。 遺産相続では、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も対象になります。相続する遺産を調査した結果、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いようであれば、相続放棄を検討した方が良いでしょう。相続放棄には、「相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内」という期限が存在しています。 遺言書の検認手続きや遺言書が残されていない場合の財産の調査は、相続放棄する可能性についても考慮した上で、時間に余裕を持って進めていくのがおすすめです。 相続放棄の手続きも、家庭裁判所にて進めていきます。申し立てが認められれば、「最初から相続人ではなかった」と法律的にも認められるでしょう。 ただし相続放棄すれば、これから先も含めて、すべての財産を相続する権利を一切失うことになります。また、もし自分よりも低順位の相続人がいれば、相続人は次の順位へと移っていくでしょう。こちらも考慮する必要があります。 遺産分割協議書の作成方法は? 遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書に記します。自分で手続きする場合、以下の点に注意してください。 ・相続人や財産を、正確に記載・相続人全員分の、実印での捺印が必要 遺産分割協議書は、預貯金の解約や相続登記などで使用する正式な書類です。内容が不十分であれば、後々トラブルに発展する可能性も。協議で決まった内容を、正確に記載してください。また相続人全員分の実印が必要になる点も、早めに確認しておきましょう。 忘れてはいけない相続税の申告 相続手続きが完了したあとに、忘れてはいけないのが相続税の申告についてです。相続税の申告には、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があります。申告が必要な場合には、忘れないように注意しましょう。 相続する財産の総額が、相続税の基礎控除額に収まる場合は、相続税を申告する必要はありません。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求められます。 【相続税の基礎控除額 =3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】 亡くなった配偶者の遺産を受け継ぐ場合など、基礎控除額に収まらない場合でも、相続税が発生しないケースは多々あります。ただしこの場合、「相続税を申告した結果、ゼロ円になった」と判断されるため、申告手続きそのものは必要になるため、注意してください。 相続財産の調査の段階で、「相続税の基礎控除額を超えそうだ」と判断した場合、相続税の申告についても余裕を持って進めていきましょう。 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 比較的シンプルな遺産相続であれば、自分自身で手続きを進めていくことは十分に可能です。それぞれの手続きの期限を意識しつつ、ひとつずつ確実にこなしていきましょう。一方で、以下のような場合は、専門家の手を借りることをおすすめします。 ・仕事が忙しく、平日昼間に動けない・面倒な手続きが苦手・遺産分割協議で揉める可能性が高い 自分で進めていく場合には、ぜひ今回紹介した情報を参考にしてみてくださいね。

  • 「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    ひと言で「遺産」と言ってもその実態はさまざまで、状況によっては「できれば受け取りたくない…」と考える方もいるでしょう。こんなとき、あらかじめ知っておきたいのが遺産を放棄するための手続きについてです。 このコラムでは、遺産を放棄するための手続き、「遺産放棄」について詳しく解説します。混同されやすい「相続放棄」との違いについても紹介するので、ぜひ今後の参考にしてみてください。 遺産放棄(財産放棄)とは具体的にどういうこと? 遺産放棄(財産放棄)とは、相続権を持っているにもかかわらず、「遺産を相続しない」という立場を表明することを言います。被相続人が亡くなり相続がスタートすると、まずは遺言書の有無が確認されるでしょう。遺言がなければ、その遺産は遺産分割協議によって、どう分けられるのか決定されます。この遺産分割協議にて、「財産を相続しない」と表明すれば、それが遺産放棄(財産放棄)に当たります。 遺産放棄は、法律で明確に定められた手続きではありません。よって事前に特別な準備をする必要もなく、その他の相続人に自身の決意を伝えればOKです。遺産分割協議でその希望が受け入れられれば、無事に遺産を放棄できるでしょう。 また遺産放棄を宣言したからといって、相続人としての立場を失うわけではありません。他の相続人との話し合いにはなるものの、「この遺産は放棄したいが、こちらだけは相続したい」など、柔軟な対応も可能です。後になって新たな遺産が見つかったときにも、またあらためて、相続人としての立場で話し合いに参加できるでしょう。 相続放棄との違いは? 遺産を受け取らない道を考えたとき、もう一つ検討したい道が「相続放棄」です。遺産放棄とよく似た言葉ではありますが、両者の意味合いは大きく異なります。それぞれの意味を正しく把握して、自身の思いに沿った方を選択しましょう。 相続放棄とは、相続人としての権利、つまり相続権そのものを放棄するための法的手続きです。法的にも自身の立場を明確にするため、一定期間内に家庭裁判所にて、必要な手続きを済ませる必要があります。家庭裁判所にて相続放棄が認められれば、その人は「最初から相続人ではなかった」とみなされるでしょう。相続順位は次の人に回され、今後何があっても、相続人としての権利を主張することはできなくなります。 相続放棄の手続きができる期間は、「相続を知った日から3ヶ月間」です。この期間を過ぎると、相続放棄の手続きは選択できなくなりますから、十分に注意してください。 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 遺産放棄が他の相続人に自身の意思を伝えるだけでOKであるのに対して、相続放棄するためには、家庭裁判所への申し立てが必須です。「どちらにしても財産を受け取らないのだから、より簡単な遺産放棄で十分なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、この考えは非常に危険です。 なぜなら、被相続人が残す「遺産」とは、常にプラスであるとは限らないからです。万が一、マイナスの財産が相続財産に含まれれば、遺産放棄の意思表明だけでは不十分です。債権者は、相続人に対しても借金を返済するよう求める権利が認められています。法律的にも「自分は相続人ではない」と明らかにしなければ、被相続人の代わりに、自身が借金を背負ってしまうでしょう。 いくら「自分は遺産を受け取っていないので」と説明しても、債権者には通用しません。法律をもとに動いている債権者の取り立ては、そのまま継続してしまいます。 プラスの財産とマイナスの財産の両方が残されている場合には、遺産放棄で十分なのか、それとも相続放棄の手続きを取らなければならないのか、特に慎重に判断する必要があります。遺産分割協議においても、「どうせ財産を相続しないから」と安易に考えるのは辞めましょう。どの遺産を誰がどのように引き継ぐのかを明らかにした上で、自身の立場を明確にするのがおすすめです。 遺産放棄を選んだ方が良いケースとは? 遺産放棄にも相続放棄にも、メリットとデメリットの両方があります。相続放棄のメリットは、相続人としての権利を放棄したという事実を、法的にも認められる点です。一方で、柔軟な対応が難しいというデメリットがあります。以下のようなケースでは、相続放棄よりも遺産放棄を選んだ方が、メリットが大きくなると予想されます。ぜひじっくり検討してみてください。 ★1.基本的には遺産を放棄しつつ、一部のみ受け取りたい場合 遺言書が残されていない場合の遺産相続では、法定相続分に沿って遺産を分配します。しかし、常に遺産を等分に分けられるとは限りません。特に、遺産に土地や建物といった不動産が含まれている場合、相続割合は非常に複雑になるでしょう。 たとえば、「不動産は要らないが、現金だけは受け取りたい」という場合、遺産放棄が有効です。不動産についてのみ遺産放棄をして、その他の財産については受け取りましょう。遺産放棄の手続きを上手に活用すれば、親族間の余計なトラブルを防止できる可能性があります。 ★2.将来的にさらに遺産が発見される可能性がある場合 被相続人が亡くなったあと、一定期間経ってから新たな遺産が発見されるケースもあります。この場合、最初の相続で相続放棄の手続きをすると、後で見つかった遺産についても相続する権利を失ってしまうでしょう。 「今現在明らかになっている遺産は受け取らない」と決めていても、将来的に状況が変化する可能性はゼロではありません。わざわざ相続放棄をするメリットがないのであれば、遺産放棄に留めておくのがおすすめです。将来遺産が発見された場合に、あらためて相続するのか、遺産放棄をするのか、それとも相続放棄をするのか、その時点の状況を考慮して決断できるでしょう。 ★3.相続権を次の順位に回したくない場合 相続放棄をしても遺産放棄をしても、「自分が遺産を受け取らない」という結果に変わりはありません。しかし「誰が相続人になるのか?」という視点で考えると、2つの手続きには非常に大きな差があるのです。 遺産放棄を選択する場合、自分自身が相続人として、「遺産を受け取らない」と決断することに。相続権は、当然自分のもとに残ります。一方で相続放棄をすれば、相続権は次の順位へと移っていきます。相続順位が移り、相続人の範囲が広がれば、さらなるトラブルを引き起こしてしまうケースもあるでしょう。 こうしたトラブルを防ぎたい場合も、「相続人の立場のまま遺産だけを受け取らない」遺産放棄には、意味があります。 今回紹介した3つのケースは、どれも「相続財産に負債が含まれていない場合」を想定しています。まずは負債がないかどうかを確認し、その上で、遺産放棄するべきかどうか、検討してみてくださいね。 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 自身の終活について考え始める時期は、身近な人からの相続について考え始めるべき時期でもあります。「遺産を受け取らない」という選択肢についても、ぜひ慎重に検討してみてください。 遺産放棄と相続放棄は、言葉は似ていますが、もたらす結果は大きく違ってきます。それぞれの基礎知識を身につけた上で、自分にとって必要な手続きを選択するのがおすすめです。

  • 兄弟姉妹の立場で遺産は受け取れる?知っておくべき注意点も

    自身の老後について考え始めたら、遺産や相続について正しい知識を身につけるところからスタートしましょう。相続とは、いつやってくるかわからないもの。きちんとした知識を持っていれば、いざそのときに慌てなくて済むでしょう。 遺産と言えば「親から受け継ぐもの」というイメージを抱いている人も多いかもしれませんが、状況によっては兄弟姉妹の遺産を受け取るケースもあります。兄弟姉妹の立場で、どうなった場合に遺産が受け取れるのか、わかりやすく解説します。 相続の基本!相続順位について学ぼう 相続の基本!相続順位について学ぼう 被相続人が亡くなったとき、その財産は相続人へと受け継がれていきます。故人と血縁関係にある人が相続人なるイメージですが、現実には「血縁関係にある人すべて」が相続人になれるわけではありません。相続には「相続順位」が定められており、この順位がもっとも高い人が相続人になれるのです。 被相続人が亡くなった際に、無条件で相続人になれるのは「配偶者」です。故人に夫や妻、法律上の配偶者がいれば、どのような状況であっても相続人として認められます。相続順位が定められているのは、この配偶者以外の相続人についてです。 相続順位がもっとも高いのは、故人の子どもです。子どもが複数人いれば、全員が相続人になります。相続順位2位は、故人の両親。そして第3順位に当てはまるのが、故人の兄弟姉妹です。相続順位1位から3位の人々は、常に相続人になれるわけではありません。相続順位が高い方から順番が回り、当てはまる人が見つかった段階で、それ以降の順位の人には相続権が発生しない仕組みになっています。 兄弟姉妹が亡くなった際に、故人が結婚していて子どもを設けている場合、配偶者とその子どもが財産を受け継ぐでしょう。故人の兄弟姉妹が相続人になるケースとして考えられるのは、「故人に子どもがおらず、両親もすでに亡くなっている場合」です。 ちなみに、故人には子どもがいたものの、すでにその子どもが亡くなっている場合、相続権は子どもの子ども、つまり孫へと受け継がれます。この場合も、故人の両親や兄弟姉妹が財産を相続することはできません。第2順位の父母が亡くなっている場合、祖父母に相続権が発生します。兄弟姉妹に相続権が発生するものの、すでに亡くなっている場合はその子どもたち、つまり故人にとっての甥や姪が相続権を持ちます。 兄弟姉妹が法定相続人になった場合の相続割合は? 兄弟姉妹の立場で相続人になると決定した場合、どのくらいの財産を受け継ぐのか気になる方もいるでしょう。兄弟姉妹が相続人となるケースは、以下の2パターンしかありません。 ・故人の配偶者と共に、兄弟姉妹が相続人になる・兄弟姉妹のみが相続人になる 下のケースは非常にシンプルで、相続人となる兄弟姉妹ですべての財産を受け継ぎます。兄弟姉妹が複数人いる場合には、財産をそれぞれで等分することになるでしょう。 一方で、故人に配偶者がいる場合、相続財産の4分の3を配偶者が受け継ぎます。兄弟姉妹の法定相続分は全体の4分の1で、相続人が複数人いる場合には、その4分の1をさらに等分に分けてください。 兄弟姉妹が法定相続人になる場合に覚えておきたい3つのポイント 兄弟姉妹が法定相続人になる場合に覚えておきたい3つのポイント 兄弟姉妹が法定相続人になるケースは、決して少なくありません。兄弟姉妹が亡くなった際には、法定相続人になる可能性があるという点を、頭に入れておきましょう。兄弟姉妹の立場で、頭に入れておきたいポイントを3つ紹介します。 ★1.子どもや親が相続放棄する可能性がある 上で解説したとおり、亡くなった兄弟姉妹に配偶者や子どもがいれば、兄弟姉妹の立場で法定相続人になるケースは少ないでしょう。その時点で、「自分には関係ないこと」と捉えてしまう方も多いのではないでしょうか。ここに注意が必要です。 遺産相続とは、プラスの財産のみを受け継ぐ行為ではありません。もし故人が負債を抱えていたとしたら、そのマイナスの財産も相続財産としてみなされるでしょう。この場合、相続順位第1位である故人の子どもたちや、第2位の父母が、そろって相続放棄の手続きを取る可能性も。相続放棄の手続きを取った相続人は「最初からいないもの」として扱われ、相続順位は次に回されます。つまり、第3順位である兄弟姉妹が、相続人になる可能性もあるのです。 相続放棄の手続きには、期限が設定されています。「自分には関係ないだろう」と思い込み、手続きのチャンスを逃さないよう注意してください。 ★2.故人の兄弟姉妹の代襲相続は一代のみ 代襲相続とは、相続権を持つ人がすでに亡くなっていた場合に、その相続権が下の世代(もしくは上の世代)にどんどん受け継がれていくことを言います。 故人の子どもが亡くなっていれば、その子どもが、その子どもも亡くなっていればまたその子どもに相続権が発生します。第2順位の両親についても同様で、両親が亡くなっていればそのまた両親、さらにその先の両親と、どんどん遡っていくのです。その範囲は定められておらず、該当する人が存在するなら、どこまででも辿っていけるという特徴があります。 ただし兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続は一代のみと決められています。兄弟姉妹が亡くなっていれば甥や姪が相続権を持ちますが、すでに甥や姪が亡くなっている場合、その子どもに相続権が渡ることはありません。 ★3.兄弟姉妹に遺留分は認められない もう一点忘れてはいけないのが、遺留分に関する注意点です。遺留分とは、法定相続人が相続できる最低限度の相続分のこと。たとえば故人が遺言書で「○○に全財産を譲る」と言った内容を残していても、法定相続人であれば、遺留分だけは確保できるという特徴があります。 兄弟姉妹の立場で法定相続人になる場合、遺留分は認められていません。故人の遺言は法定相続よりも優先されますから、「配偶者に全財産を譲る」といった内容が残されていれば、兄弟姉妹が遺産を受け取ることはできないのです。 トラブルになりやすいポイントですから、事前に頭に入れておきましょう。 兄弟姉妹が財産を相続する場合の特徴を知ってトラブルを防ごう 兄弟姉妹の立場で、被相続人の遺産を受け取れる可能性はあります。故人に子どもがおらず、すでに両親も亡くなっている場合、相続権が回ってくる可能性が高いと言えるでしょう。 しかし実際に兄弟姉妹の立場で法定相続人になる場合、相続人の範囲が広がり、トラブルに悩まされるケースも少なくありません。相続に関する基礎知識をきちんと身につけ、トラブルを避けられるように準備しておきましょう。相続順位を知っておくだけでも、事前の心構えができるはずです。

  • 親が亡くなり遺言が見つかった!相続の進め方を解説

    終活ブームの今、遺言書を残して亡くなる方も多くなっています。とはいえ、いざ自分の親が亡くなり、遺言書が発見された場合にどう行動すれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。 今回は遺言書が残されている場合の相続の進め方について解説します。何からすれば良いのかわからない…というときには、ぜひ参考にしてみてください。 まずは「開封」に注意! 遺言書とは、被相続人の最期の思いが詰まった書類です。法的拘束力を持ち、相続人は遺言書の内容に沿って、相続手続きを進めていくことになります。そんな遺言書には、以下のような種類があります。それぞれで取り扱い方法が異なりますから、注意しましょう。 ・自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言 自筆証書遺言の場合、自宅で発見されるケースも少なくありません。身近な人が亡くなりバタバタしている中で、「少しでも早く内容を確認したい!」と思う方も多いのではないでしょうか。しかし封がしてある自筆証書遺言を勝手に開封すると、5万円以下の過料が科される恐れがあります。また「内容を改ざんしたのでは…」と疑われるきっかけにもなりかねないでしょう。 中身を確認するために、必要になるのが家庭裁判所による「検認」の手続きです。検認とは、遺言書の偽造や改ざんを防ぐためのシステムです。未開封の状態で、いったん家庭裁判所に提出しなければいけません。裁判所に指定された日時に、あらためて行われる検認に立ち会いましょう。 検認後に発行される「検認済証明書」は、この先の相続手続きを進めていくために必須です。手続きには少し時間がかかるため、遺言書を発見したら、できるだけ早く家庭裁判所への申し立てを行ってください。 ちなみに、同じ遺言でも公正証書遺言であれば、家庭裁判所による検認の必要はありません。また自筆証書遺言の場合でも、「自筆証書遺言書保管制度」を使い法務局内で保管されていたものであれば、やはり検認は必要ありません。 遺言執行者を確認しよう 遺言執行者を確認しよう 遺言書の内容を確認できたら、まずチェックしたいのが遺言執行者についてです。遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するための手続きを進めていく人のこと。遺言書で指定されていたら、まずはその人が役割を担ってくれるか確かめなければいけません。特に指定されていない場合は、家庭裁判所に選任してもらえます。 家庭裁判所に選任してもらう場合でも、相続人が信頼できる遺言執行者を指定できます。「家庭裁判所に勝手に指定されたくない」という場合には、事前に許可をもらった上で、信頼できる相手を遺言執行者として指定できるよう準備しておきましょう。法律上の知識が必要で、相応の責任を求められるため、士業を営む専門家に依頼するのがおすすめです。 遺言執行者が決定したら、その事実を相続人に通知します。いよいよここから、相続の具体的な手続きがスタートします。 遺言執行者による遺言の執行 遺言執行者が決まったら、遺言書の内容に沿って手続きが進められていきます。具体的には、 ・相続財産の引き渡しや管理・相続財産に関係する書類の引き渡しや管理・妨害している者がいれば、その排除・遺言執行に必要な訴訟行為・遺言に基づく財産の処分や売買など といった作業が含まれます。遺言執行者を士業の専門家に依頼した場合、その指示にしたがって手続きを進めていけば大丈夫です。スムーズに遺言を執行できるでしょう。 自分たちで遺言を執行する場合の手続きとは? 遺書の内容が遺贈や遺産分割方法の指定のみで、非常にシンプルな形式の場合、必ずしも遺言執行者は必要ありません。この場合、遺言で指定された内容に沿って、相続人全員が協力して手続きを進めていくことになります。遺言をもとに相続人それぞれの相続割合を明らかにして、遺産の分配を実行しましょう。 必要であれば、登記申請や金銭の取り立ても行います。相続財産を不法に占有している人がいれば明け渡しを求め、移転するよう請求してください。遺言書のとおりに遺産を分配できれば、相続手続きは完了です。 遺言書が見つかった場合の注意点3つ 遺言書が見つかった場合の注意点3つ 遺言書を残す目的のひとつは、相続に関する親族間トラブルの予防です。とはいえ、遺言書が残されていればそれですべて安心というわけではないので、注意してください。具体的な注意点を3つ紹介します。 ★遺言書は本当に有効か? 親が亡くなり遺言書が発見されたとしても、常にその内容が有効とは限りません。遺言書の内容に沿って相続手続きを進めていく前に、その中身が法律的に見て本当に有効なのかどうかを判断しましょう。 専門家のサポートのもとで作られている公正証書遺言の場合、法的効力を持たない恐れはほぼないでしょう。一方で自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、書式や内容の不具合が原因で「法的効力を持たない」と判断される事例も少なくありません。 不意に遺言が見つかったら、その内容が気になるのは当然のこと。しかし実際には、内容だけではなく「本当に遺言書としての効力を持っている書類なのか?」を確かめる必要があります。 万が一、残された遺言書に法的効力がないと判断された場合、その内容も無効に。相続人全員で遺産分割協議を行い、相続手続きを進めていくことになります。 ★遺言書に記載されていない財産はないか? 遺言書が法的に有効だと判断される場合でも、すべての相続財産がもれなく記載されているとは限りません。この場合、遺言書に記載されていない相続財産について、遺産分割協議が必要になります。 ★遺言の内容に納得できない場合はどうなる? 遺言書が法的に有効な形で残されていれば、被相続人はその相続に自身の遺志を最大限反映できます。法定相続分を無視して、特定の人にのみ財産を相続させることもできるでしょう。また本来であれば相続権を持たない人が、財産を相続することもできます。 とはいえ、法定相続とは異なる内容の遺言であればあるほど、「その内容に納得できない…」と感じる人が出てくる可能性もあるでしょう。残念ながら、正しい形で残された遺言の内容は、相続人には覆せません。 ただし兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺留分が認められています。これは、法律で最低限保障されている相続分のこと。遺言書のとおりに遺産が分配された場合でも、遺留分が侵害されていれば請求の上で取り戻せるでしょう。弁護士に相談の上で、適切に対処してください。 遺言書が見つかったらまずは落ち着いて行動を 親が亡くなり遺言書が発見されたら、驚く方も多いのではないでしょうか。勝手に開封するのではなく、まずは落ち着いて行動しましょう。 遺言書を家庭裁判所で検認してもらうためには、1ヶ月以上の時間が必要です。だからといって相続手続きに定められている各種期限が延長されるわけでないので、注意してください。できるだけ早めに、必要な手続きを進めていきましょう。

  • 初めての遺言作成ならぜひ検討を!遺言にまつわる便利なサービス

    子育てがひと段落すると、自分たち夫婦の未来が気になるものです。「そろそろ老後の準備を始めようかな…」と思っている方におすすめなのが、遺言の作成です。自身の最期のメッセージを大切な人たちに届け、また自身の思いを相続に反映させられるでしょう。 終活ブームを迎えている今、遺言作成をサポートしてくれる便利なサービスが多数登場しています。初めての遺言作成で利用したいサービスを紹介するので、ぜひチェックしてみてください。 デジタル遺言サービス デジタル遺言サービス デジタル遺言サービスとは、近年特に注目されているサービスのひとつです。自身の遺言をオンライン上に残しておき、タイミングと相手を事前に指定。自身が設定した条件を満たした段階で、相手のもとにメッセージを届けられます。法的拘束力は持たないものの、自身の思いをより手軽に伝えるための方法として、高く注目されています。 デジタル遺言サービスを利用するメリットは、以下のとおりです。 ・自宅のパソコンやスマートフォンから、いつでも手軽に遺言を残せる・内容を変更する際の手間がかからない・動画でメッセージを伝えられる・オンライン上のログイン情報の管理がしやすい 終活を検討し始めたばかりの方にとって、「遺言は具体的に」と言われても、何をどうすれば良いか戸惑うケースも多いのではないでしょうか。デジタル遺言サービスなら、いつでもどこでも、好きなときに手軽に遺言を残せます。「やっぱり内容を変更したい」と思ったときでも、自分で手間なく作業できるでしょう。自身の思いをまとめるのにも役立つはずです。 また各種SNSやオンラインバンキングなど、自分に万が一のことがあったときのため、「ログイン情報をまとめておきたい」と思う方にも役立ちます。デジタル遺言サービスは、こうした情報の管理・伝達とも相性が良いでしょう。 一方で、デジタル遺言サービスにもデメリットはあります。先ほどもお伝えしたとおり、法的な効力を持たないため、オンライン上に保管されたメッセージが正式な「遺言書」として認められるわけではないのです。デジタル遺言サービスを通じて、正式な遺言書を残したいと思ったときには、また別のサービスの利用が必要になるでしょう。 デジタル遺言サービスには、無料で利用できるものも少なくありません。将来的に正式な遺言書を残したくなった場合に、作成をサポートする機能を備えているところもありますから、自身のニーズに合わせて利用先を検討してみてください。 遺言書案文イメージの無料作成サービス 遺言書案文イメージの無料作成サービス 「どうせなら法的拘束力を持った遺言書を作成したいが、わざわざ専門家に相談するのはちょっと…」と思う方におすすめなのが、遺言書案文イメージの無料作成サービスです。オンライン上で遺言内容に関する質問に回答していくと、その内容を反映した案文イメージを作成。イメージをもとに自身の手で清書すれば、自筆証書遺言が作成できます。 自筆証書遺言とは、遺言作成者が自筆で残す遺言書のこと。自分一人で、自宅でも作成できる遺言書として、近年注目を集めています。費用がかからない点も、自筆証書遺言のメリットと言えるでしょう。 一方で、専門家の手を経ずに作成できるため、内容の不備によるトラブルがあとを絶たないのも事実です。自筆証書遺言の有効性が認められなければ、メッセージとして残せはしても、法的な効力は持たせられません。相続に自身の遺志を反映させるのも難しくなってしまうでしょう。 遺言書案文イメージの無料作成サービスを使えば、自身の希望に沿った内容の案文イメージを手軽に入手できます。あとは自分自身の手で書き写すだけですから、ミスが発生するリスクも少なくなるでしょう。難しいことを考えなくても自筆証書遺言を作れるというメリットもあります。法定相続人の遺留分チェックを受けられるサービスを利用すれば、「親族間に憤りや悲しみを残さない遺言書内容」を作成しやすくなるでしょう。 ただしあくまでも無料サービスのため、対応できる範囲には限界があります。比較的シンプルな内容の遺言には対応できても、そうではない場合、自身の思いを反映させるのが難しくなってしまう恐れも。遺言書作成の初期段階で、自身の思いをはっきりさせるためのステップとして活用するのもおすすめです。 専門家事務所による遺言作成支援サービス 複雑な内容の遺言書を、より確実な形で残したいと思う場合には、専門家の手を借りるのが一番です。遺言書の作成支援サービスは、司法書士事務所や行政書士事務所、弁護士事務所や信託銀行などでも提供されています。 専門家事務所の遺言作成支援サービスを利用した場合、以下のようなサポートを受けられるでしょう。 ・相続財産の調査・法定相続人に関する調査・個別の状況を把握した相談・遺言内容のチェック・遺言書の保管・遺言の執行 実際にどういったサポートを受けられるのかは、依頼先の専門家事務所によって異なります。サービス内容によって専門家報酬の金額は変わってきますから、正式依頼前にしっかりとチェックしておきましょう。 コストはかかりますが、「できるだけ素早く、確実な遺言を残しておきたい」と思う方にはぴったりのサービスです。遺言書作成に強い専門家を探してみてください。 国が提供するサービスにも注目してみよう! 初めて遺言を作成するなら、ぜひ国が提供しているサービスにも注目してみてください。法務局では2020年7月より、自筆証書遺言書保管制度をスタートしています。自分で作成した自筆証書遺言を、法務局にて保管してもらえるサービスです。 自宅で手軽に残せる自筆証書遺言ですが、 ・長い保管期間中に内容を改ざんされてしまう・相続が発生しても発見されない といったリスクがあります。作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらえば、改ざんや紛失の恐れはなく、また相続開始と共により確実に相続人のもとへ届けられるでしょう。また相続が発生した際に、家庭裁判所の検認が不要であるというメリットもあります。 こちらのサービスを利用するためには保管申請手数料として3,900円支払う必要がありますが、原本は遺言者死亡後50 年間、またその画像データは遺言者死亡後150年間と、長期にわたって確実に保管され続けます。自筆証書遺言を検討するなら、安心安全のためにも、ぜひこちらのサービスもセットで検討してみてください。 便利なサービスも活用して初めての遺言作成を! 初めての遺言作成では、何をどうすれば良いかわからない方も多いはず。最初の一歩を踏み出すためには、今回紹介した便利サービスを利用するのもおすすめです。情報を整理し、自身の思いを見つめ直すきっかけにもなるのではないでしょうか。無料で利用できるサービスも多いので、ぜひ検討してみてくださいね。

  • 死亡保険は相続税の課税対象?遺産分割は?覚えておきたい基礎知識

    結婚して子どもが生まれ、家族が増えると気になるのが「死亡保険」についてです。自分に万が一のことがあったときでも、残された家族の生活を守れるように…と、死亡保険の加入を検討する方も少なくありません。 とはいえ、死亡保険に加入する際には、将来の「相続税」や「遺産分割」についても意識したいところです。事前に基礎知識を身につけておけば、余計なトラブルも防げるでしょう。 今回は、死亡保険と相続の関係性について解説します。死亡保険にも相続税はかかるのか、また妻を受取人に指定した保険金を、遺産分割しなければならないのか。これらの疑問を解消しましょう。 死亡保険金は受取人の「固有財産」 死亡保険に加入する場合、契約時に受取人を指定します。被保険者が亡くなったときに、この受取人が死亡保険金を受け取れる仕組みです。 死亡保険金の基礎知識として、まず頭に入れておきたいのは、死亡保険金とは受取人の固有財産であるという事実です。相続財産には含まれず、当然遺産分割の対象にもなりません。事前に指定されていた受取人のみが、死亡保険金のすべてを受け取る仕組みになっています。 一般的に、死亡保険金の受取人には、配偶者や子どもなどが指定されているケースが多いでしょう。死亡保険金の受取人が、法定相続人の一人であるという事例も、決して珍しくはありません。この場合、保険金の受取人でもあり、また法定相続人でもあるその人は、「保険金」と「相続分の遺産」の両方を受け取れるのです。 【例】家族構成:両親と子ども2人(A、B)の4人家族相続財産:不動産や現金など合計2,000万円死亡保険:夫が子どもAを受取人に指定した2,000万円の死亡保険に加入 夫が死亡した場合の法定相続分妻:1,000万円子どもA:500万円子どもB:500万円 死亡保険金子どもA:2,000万円 合計妻:1,000万円子どもA:2,500万円子どもB:500万円 このような計算式になります。 死亡保険金は相続財産に含まれないため、たとえ相続放棄の手続きを行った場合でも、それとは別に死亡保険金の受け取りが可能です。 ただし受取人に指定されていた人がすでに亡くなっている場合、受取人に指定されていた人の相続人が死亡保険金を受け取ります。この場合、死亡保険金を相続人の頭数で割り、それぞれが等分ずつ受け取る仕組みです。 ただし「みなし相続財産」として相続税の課税対象に! ただし「みなし相続財産」として相続税の課税対象に! 先ほどお伝えしたとおり、死亡保険金は相続財産には含まれません。しかし、「みなし相続財産」として扱われる点にだけは注意しましょう。これは、「相続財産として遺産分割する必要はないが、相続税の課税対象には含まれる」という事実を示しています。死亡保険金は金額が大きくなりやすいため、特に注意が必要です。 とはいえ死亡保険金とは、被保険者が亡くなった後の身近な人たちの生活を支えるためのもの。その目的に配慮して、以下のような非課税枠が用意されています。 【死亡保険非課税枠】500万円×法定相続人の数 先ほどの4人家族の例を挙げるなら、500万円×3人で1,500万円が非課税枠として計算されます。残った500万円は遺産の総額に含まれますが、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)や債務控除(被相続人が生前に残した借金や葬儀費用)を適用できます。 また死亡保険金の受取人が「配偶者」であった場合、課税対象となる相続財産が1億6,000万円以下であれば相続税が課せられない、配偶者控除が利用できます。よほど大きな保険に加入していないかぎり、相続税が課せられる可能性は低いと言えるでしょう。 ちなみに、死亡保険金の受取人が法定相続人以外に指定されている場合は、やや注意が必要です。死亡保険非課税枠は、「相続人が死亡保険金を受け取った場合にのみ利用できる」もの。相続税が課せられる可能性も高まるという点は、頭に入れておいてください。 死亡保険金が所得税や贈与税の対象になるケースとは? 死亡保険金が所得税や贈与税の対象になるケースとは? ここまで、死亡保険金と相続税について解説してきました。しかしそもそもの保険加入の仕方によっては、相続税ではなく所得税や贈与税を課せられる可能性も。いったいどういった場合に相続税以外の税が対象となるのか、こちらも知っておきましょう。 死亡保険金やみなし相続財産として扱われるのは、死亡保険の契約者と被保険者が、被相続人であった場合です。たとえば、夫自身が契約者となり、自身を対象とした死亡保険に加入。妻を受取人に指定した場合、妻が受け取る死亡保険金は相続税の対象になるでしょう。 一方で、妻が契約者となり夫を対象とした死亡保険に加入。受取人も妻であった場合、妻が受け取る死亡保険金は所得税の対象になります。「妻が加入した保険金を妻自身が受け取る」と判断されますから、死亡保険金は「妻の所得」となるわけです。 所得税には、相続税のような充実した非課税枠や控除制度は用意されていません。死亡保険金を一括で受け取った場合には「一時所得」と判断されます。受け取った保険金から払い込んだ分の保険料を引き、特別控除額50万円を超えた分に自身の所得を合わせて所得税が計算されます。年金方式で受け取った場合には「雑所得」と判断されるでしょう。こちらの場合、特別控除は利用できません。 死亡保険金の受け取りが贈与とみなされるのは、契約者と被保険者、そして受取人のすべてに別々の人物が指定されている場合です。たとえば、妻が契約者となり、夫が被保険者となる死亡保険を契約。死亡保険金の受取人を子どもに指定した場合、死亡保険金は妻から子への贈与とみなされます。 契約者・被保険者・受取人の指定は、保険加入時に決定するもの。誰をどのように指定するのかによって、将来受け取る死亡保険金の課税金額が大きく変わってくる可能性もあるでしょう。死亡保険金に関する基礎知識をしっかりと身につけ、受取時に余計な問題が発生しないよう注意してください。 死亡保険金に関する理解を深めよう! 死亡保険金は、受取人の固有財産としてみなされ、遺産分割の対象にはなりません。「特定の人にのみ財産を多く残したい」と思う場合、非常に有効な手段と言えるでしょう。 たとえ「全財産を○○に譲る」という内容の遺言を残した場合でも、法定相続人には遺留分の請求が認められています。死亡保険金であれば、遺留分を請求される恐れもありません。また、「法定相続人以外に多くのお金を残してあげたい」という場合にもおすすめの方法です。 とはいえ死亡保険金に関する無理解が、被保険者の死後、親族間の争いの火種になってしまうケースも決して少なくありません。残された家族の生活を助け、また余計な争いを避けるためには、事前にしっかりと基礎知識を身につけておくことが重要です。今回紹介した内容も参考にしながら、保険の加入について検討してみてくださいね。

  • 学資保険に入るなら受け取り方法を予習しよう!タイミングや注意点は?

    子どもが生まれたら、検討したいのが学資保険についてです。学資保険の大きな目的は、将来の進学への備え。とはいえ、まだまだ小さなわが子の姿から、保険金受取時を明確にイメージするのは難しいかもしれません。 学資保険でより確実に子どもの将来のために備えるのであれば、受け取り方法について予習した上で、加入を検討することが大切です。受け取りタイミングや注意点など、知っておきたい情報をまとめます。 学資保険とは?どうやって受け取る? 学資保険とは?どうやって受け取る? 学資保険は、子どもの進学時にお金が受け取れるよう、計算して加入するタイプの保険です。受け取ったお金は、子どもの学費や一人暮らし費用に充てるご家庭が多いでしょう。「学資保険」という名称から、「子どものためにしか使えないのでは…」と思う方もいるかもしれませんが、これは誤解です。 学資保険の使い道は自由で、進学費用以外に利用しても大丈夫です。たとえば、「進学費用が無事に賄えたので住宅ローンの繰り上げ返済へ」「子どもに車を買ってやりたい」「事業費用の補填として」など、さまざまな使い道を自由に選択できるのです。 では実際に、学資保険はどのようにして受け取るのでしょうか。 学資保険の被保険者は「子ども」であり、子どもの年齢によって満期時期が設定されています。満期を迎えるころになると、保険会社から知らせが届きます。あとはその知らせに沿って手続きすればOKです。 学資保険で注意したい受け取りタイミング 学資保険とは?どうやって受け取る? 学資保険の満期返戻金を受け取るのにベストな時期は、「何を目的にして保険に加入するのか?」によって異なるでしょう。 たとえば、大学入学費用を賄うつもりで加入するのであれば、子どもの年齢が17歳もしくは18歳に達したときに満期返戻金を受け取れるのがベストです。一方で、大学在学中の費用を賄いたいなら20歳前後、大学院進学費用を想定して加入するなら、22歳に設定すると良いでしょう。 子どもが何歳で満期を迎えるのかは、保険商品の種類によって変わってきます。学資保険に加入するタイミングで、将来のビジョンをはっきりさせておく必要があるでしょう。加入する保険を間違えれば、「せっかく学資保険に加入していたのに、必要な時期にお金を受け取れなかった…」という事態にもなりかねません。 学資保険の満期でもっとも多いタイプは、やはり「大学進学時(18歳)」に多額のお金を受け取れる保険でしょう。多くの子どもが大学に進学する中、進学費用の負担は決して少なくありません。たとえ大学進学しなかったとしても、専門学校への入学準備や就職準備、結婚準備など、お金があって困ることはないでしょう。 ただしこちらのタイプを選ぶ場合にも、注意したいポイントがあります。それは、子どもの年齢と支払い時期の関係性です。子どもが18歳になったときに満期返戻金を受け取る場合、それ以前に必要となる進学費用は賄えません。 たとえば子どもの誕生日が3月31日であれば、満期返戻金を受け取れるタイミングもこの日以降に。もっともお金が必要なタイミングに、保険金を使えない計算になってしまいます。特に子どもが早生まれの場合は注意しましょう。満期年齢を17歳に設定し、保険金受取から進学費用支払いまでのスケジュールに余裕を持たせておくのもおすすめです。 学資保険の受け取りに関する注意点2つ 子どもの将来のために備える学資保険。学資保険に加入するタイミングで押さえておきたい注意点は、以下の2つです。こちらもぜひチェックしてみてください。 ★何度もお祝い金が受け取れるタイプはお得? 近年、学資保険のバリエーションは非常に豊富です。中でも人気なのは、子どもの成長の節目で、何度も「お祝い金」を受け取れるタイプでしょう。18歳を満期に設定していても、小学校入学時・中学校入学時・高校入学時など、さまざまなタイミングでお祝い金が支給されるタイプを指します。 何度もお金を受け取れるわけですから、「非常にお得」と感じるかもしれません。しかし、何度も受け取るお祝い金とは、あくまでも自分自身が積み立てている保険金の一部。つまり満期返戻金の一部を「前払い」しているに過ぎないのです。 確かに、子どもの成長の節目にお祝い金を受け取れれば「助かる!」と思う場面もあるでしょう。しかしお祝い金を受け取れば受け取るほど、本来の目的であった「大学進学時に受け取れるお金」は少なくなってしまいます。 また保険会社にとって、何度もお祝い金を支給するにはコストがかかります。このため、満期返戻金を一括で受け取るタイプの学資保険と比較して、「返戻率が低くなりやすい」という特徴があります。本当にお得なのかどうか、しっかりと検討するのがおすすめです。 ★学資保険の満期返戻金にも税金がかかる可能性がある! 学資保険の満期返戻金を受け取る際にも、忘れてはいけないのが税金についてです。具体的にどういった税金が課せられるのかは、学資保険の契約者と受取人の関係性によって違ってくるでしょう。 もっとも多いのは、契約者と受取人が同一であるケースです。「子どもの父親が契約者となり保険金を支払い、子どもの父親が満期返戻金を受け取り、子どもの学費を支払う」という事例ですね。この場合、一括で受け取った学資保険の満期返戻金は「一時所得」と判断され、「所得税」の対象になります。 ただし一時所得には50万円の特別控除が用意されており、年間の一時所得金額がこの範囲に収まっていれば、所得税は課せられません。学資保険の受取額の平均は200~300万円程度と言われていますが、過去に収めた保険金は差し引きできます。50万円以上の、いわゆる「儲け」が出るケースは稀だと言えるでしょう。 ちなみに、学資保険のお金を毎年1回、継続して受け取る場合は「雑所得」と判断されます。やはりこちらも、所得税の対象になるため注意してください。雑所得には、一時所得のような特別控除額が存在しません。お祝い金を受け取れば、その金額に応じて所得税の課税額が増えるという点を頭に入れておきましょう。 また、学資保険の受取人を契約者以外に設定した場合、満期返戻金は贈与税の対象になります。こちらも注意してください。 学資保険に加入するなら将来へのビジョンをはっきりさせよう! 子どもが生まれたら、なんとなく学資保険を…と考える方も多いのではないでしょうか。学資保険は、将来の進学費用を賄うための方法の一つです。後悔なく受け取るためには、加入する段階で、将来へのビジョンをある程度はっきりさせておく必要があるでしょう。 ・どのタイミングでお金を受け取るのか?・いくら受け取れるようにするのか?・誰を契約者と受取人に設定するのか? これらの点を明らかにしておくだけで、失敗リスクも減らせるはずです。子どものための保険だからこそ、ぜひ準備はしっかりと整えておきましょうね。

  • 不動産相続の基礎知識|相続財産の評価方法を学ぼう

    不動産を相続する際に、気になるのが相続税についてです。実際に相続税が発生するかどうかは、相続対象の不動産の評価額によって決定されます。とはいえ、不動産の評価額をどのように決めれば良いのか、悩む方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、不動産相続の基本として、評価方法の種類や特徴を解説します。ぜひ参考にしてみてください。 不動産を評価するための方法とは? 不動産を評価するための方法とは? 土地や建物といった不動産には、金銭的にどの程度の価値があるのかわかりにくいという特徴があります。評価方法も非常に複雑なので、慎重な対応を心掛けましょう。 相続税は、相続する財産の「課税遺産総額」をもとに計算されます。相続する財産が「現金のみ」であれば、話は簡単ですが、実際にはそうした事例ばかりではありません。このため国税庁では、「財産評価基本通達」というルールを提示し、それにのっとって各種相続財産の評価を行うよう求めています。土地や住宅と言った不動産も、例外ではありません。 土地の相続税評価方法は、以下の2つです。 ・路線価方式・倍率方式 どのエリアの土地を相続するのかによって、適用される方式が異なってきます。 一方で家屋の相続税評価は、固定資産税評価額をもとに計算されます。次項目からは、土地と建物、それぞれの相続税評価方法について、より詳しく掘り下げていきましょう。 土地の相続税評価方法は2つ!それぞれの特徴や違い まずは土地の相続税評価方法について見ていきましょう。路線価方式と倍率方式のそれぞれについて、解説していきます。 *路線価方式とは?路線価方式とは、年に1度国が発表する「路線価」をもとに、相続対象となる土地の評価額を算出する方法です。多くの人が居住する、市街地にて採用されています。 路線価方式で相続税評価額を求める際の計算式は、以下のとおりです。 【相続税評価額=路線価×土地の面積(× 補正率)】 路線価は、国税庁が公表している路線価図からチェックできます。そこに相続する土地の面積を掛け合わせて求めましょう。もしも土地に、「形がいびつである」「間口が狭い」といった問題があれば、定められた補正率をさらに掛け合わせてください。 主な補正としては、以下のような内容が挙げられます。 ・不整形地補正(旗竿地や三角形の土地など)・間口狭小補正(普通住宅地区において道路に面している間口が8メートルに満たないなど)・奥行長大補正(間口の長さよりも奥行きの長さが大幅に広い)・がけ地補正(斜面の角度が30度以上の急傾斜地がある) それぞれの補正率は、土地の状態によって細かく定められています。当てはまりそうな点がある場合、国税庁サイトなどで、補正が認められるための条件について確認しておきましょう。 補正率さえ明らかにできれば、計算は決して難しくありません。相続税評価額を求められます。 *倍率方式とは? 一方で倍率方式とは、国税庁が公表している評価倍率という数値を使って求めます。路線価図が公開されているサイトにてチェックできますから、ぜひ確認してみてください。こちらは主に、路線価が設定されていないエリアで用いられる手法です。 相続する土地の評価倍率は、エリアによってさまざまです。サイトでチェックした数値に、固定資産税評価額を掛け合わせて求めます。 【相続税評価額=固定資産税評価額×エリア別の倍率】 たとえば、固定資産税評価額が1,000万円でエリア別の倍率が1.1であった場合、相続税評価額は1,100万円と算出されます。 *土地を貸していた・借りていた場合の計算方法は?被相続人が、生前誰かに土地を貸していて、その土地を相続することになった場合、「貸宅地の評価方法」が適用されます。誰にも貸していなかった土地と比べて、相続税評価額が下がるでしょう。 人に貸していた土地の相続税評価額を求める計算式は、以下のとおりです。 【貸宅地の相続税評価額=土地評価額×(1-借地権割合)】 借地権割合は国税庁のホームページで確認しておきましょう。借地権割合の分だけ、評価額が下がる仕組みです。 住宅の相続税評価額の計算はシンプル 住宅の相続税評価額の計算はシンプル 家屋を相続する場合の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0を掛け合わせて求められます。つまり固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になりますから、非常にシンプルな計算だと言えるでしょう。 一方で、相続する物件が賃貸住宅の場合、計算式はやや複雑になります。 【建物の相続税評価額=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)】 借地権割合とは、借主側の権利のことで、その割合は一律30%と定められています。賃貸割合とは、全体の床面積のうち、どの程度を人に貸しているのかを示す割合です。200平方メートルのうち、100平方メートルを人に貸していた場合、賃貸割合は50%、つまり0.5で計算されます。 賃貸住宅を相続する場合、被相続人が亡くなった際に入居している人がいたかどうかで、相続税評価額が大きく変わってくる可能性も。複雑でわからないときには、専門家に相談してみてください。 人から借りた土地に建つ住宅を相続する場合はどうなる? 不動産相続にまつわる具体的な状況は、個々で異なるもの。「第三者から借りた土地に建っている建物を相続した」場合には、相続税評価額はどのように計算すれば良いのでしょうか。 まず大前提として知っておきたいのが、「借地権は相続財産に含まれる」という点です。建物が被相続人名義で、土地が第三者名義であった場合、「土地は相続対象ではない」と思う方がほとんどでしょう。もちろん他人名義の土地を相続することはできませんが、その土地を借りて使用する権利(借地権)は相続財産の一種であり、相続税の課税対象になるのです。 借地権の相続税評価額は、以下の計算式で求められます。 【自用地評価額×借地権割合=借地権の相続税評価額】 借りている土地の評価額に、国税庁ホームページで確認できる「借地権割合」を掛け合わせましょう。土地の分の相続税評価額が求められます。 困ったときの相談先は? 不動産の相続税評価額は、計算式の情報と必要な情報さえそろっていれば、自力で計算可能です。相続の話し合いをする上でも、極めて重要な情報の一つですから、ぜひ早めに計算しておきましょう。 とはいえ、土地の形がいびつであったり、何らかの問題を抱えていたりする場合には、専門家への相談によって相続税評価額が変わってくる可能性も。不動産の相続税評価額は、ちょっとしたことで数百万円違ってくる可能性もあるので、十分に注意してください。 不動産の相続税評価額について困ったら、ぜひ相続問題に強い税理士に相談してみてください。このほか、自治体等が設置している相続税の相談窓口を利用するのもおすすめですよ。

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