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  • 親が残す資産は事前に把握しておこう!知らない場合のリスクを解説

    親が残す資産は事前に把握しておこう!知らない場合のリスクを解説

    子どもが生まれ、自身の生活基盤が整った際に、考えておきたいのが「親が残す資産」についてです。今すぐというわけではなくても、相続はいずれやってくる問題。そのときになって慌てないためには、事前の情報把握が重要です。親が残す資産を把握する方法や、知らない場合に考えられるリスクについて解説します。 親の資産がわからない人は意外と多い 親の資産がわからない人は意外と多い 自身の終活について積極的に考える方は増えていますが、「親がどのような資産を持っているのか詳しく知らない」という方は、まだまだ珍しくありません。親が残す資産の内容は、多岐にわたります。投資ブームの今、株式投資や不動産投資に取り組む方も増えているでしょう。子どもが把握していない不動産を所有している可能性もあります。 親がどのような資産を残すか把握していなければ、何の準備も整えられないまま相続のときを迎えることになってしまうでしょう。「まだまだ先だから…」と思いがちですが、相続のタイミングがいつになるのかは誰にもわかりません。知らない場合のリスクとしては、主に以下の3つが挙げられます。 ★1.相続税の準備ができない 親が残す資産額によっては、相続税が発生する可能性も。相続する資産の中から相続税を賄えれば良いのですが、実際にはそれが不可能なケースもあります。 たとえば親が残す資産のほとんどが不動産である場合、相続税は相続財産以外から調達しなければいけません。相続税が支払えない場合、不動産を売却しなければならない可能性もあります。仮にそれが「現在家族で暮らしている自宅」であれば、相続をきっかけに住む場所を失うことにもなりかねないのです。 親が残す資産額やその内訳を知っていれば、 ・相続税が発生しそうな状況なのか?・相続税の負担がどの程度になるのか? これらの情報を把握できるでしょう。相続税の支払いに向けて、計画的に準備を進められるはずです。 ★2.病院代や葬儀費用の清算で困る可能性がある 親の資産がわからないまま相続のときを迎えたとしても、各種手続きは待ってはくれません。病院代の清算から葬儀費用の支払いまで、多額の現金が必要になる場面は、決して少なくないのです。親が残す資産がわからなければ、子どもが立て替えることにもなりかねません。 親がどこにどの程度の資産を持っているか知っていれば、落ち着いて対応できます。自宅にタンス預金があれば、相続人同士の話し合いの末、支払いに充てることもできるでしょう。 どの銀行口座にどの程度の資産を残しているのか知っていれば、被相続人が亡くなる前に現金を引き出せる可能性もあります。口座名義人の死亡により凍結されたとしても、仮払い制度の利用により、素早く現金を用意できるはずです。 「すぐにでも現金が必要になる!」といった場面で、親の資産について一から冷静に調査するのは難しいでしょう。事前に知っていれば、いざというときでも落ち着いて対処できます。 ★3.遺産分割協議で揉めるリスクがある 相続が発生し、遺言が残されていない場合に必要なのが遺産分割協議です。相続人が複数人いる場合、誰が何を相続するのかで揉めるリスクがあります。 たとえば「遺産のほとんどが不動産で相続人のうち1人が居住している」という場合、どのように遺産を分割するべきか悩むケースも多いでしょう。親族間トラブルを防ぐためにも、親の資産をできるだけ早く把握し、相続人全員が納得できる形で相続の大枠を決めておくのがおすすめです。 被相続人が生きている間であれば、どのような想いで遺産分割を考えているのか、直接聞けます。遺産分割協議で突然知らされるよりも、心の準備ができるでしょう。 親が残す資産を把握する方法とは? 相続にまつわる親族間トラブルは、決して少なくありません。誰にとっても他人事ではないからこそ、親の資産を早めに把握し、必要な対策を講じておくことが大切です。とはいえ、「親が残す資産について話すのは抵抗がある…」と感じる方も多いのではないでしょうか?具体的にどうやって把握すれば良いのか、3つの方法を紹介します。 ★1.相続税をきっかけに聞いてみる 平成27年に、相続税の基礎控除に関するルールが変更されました。それまでよりも基礎控除額が減り、相続税を課税されるケースが増加しています。こうした状況を解説するとともに、親が残す資産について自然に聞いてみてください。 相続税の基礎控除額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求められます。親が残す資産がこの範囲に収まるのかどうかがわかるだけでも、子どもの負担は軽減できるでしょう。相続税をきっかけに、具体的にどのような資産が残される予定なのかどうか、ざっくりとした話だけでも聞いておくと安心です。 ★2.遺言書やエンディングノートをすすめてみる 親の資産について直接聞くのが難しい場合、終活の一環として、遺言書やエンディングノートの作成をおすすめするのもおすすめです。遺言書やエンディングノートを作成する場合、親自身が残す予定の資産を把握しなければいけません。その過程で、「子どもに伝えておくべき内容」をはっきりと理解する方も少なくありません。 実際に親が遺言書やエンディングノートを作成し始めたら、子どもに対してアドバイスを求める場面もあるかもしれません。無理をせず、少しずつ内容を聞いてみてください。 ★3.家族が集まる機会に話し合いの場を持つ 親が残す資産について聞きたいと思ったら、その他の相続人と協力するのもおすすめです。子どもの立場で相続人になる場合、兄弟姉妹と一緒に、親の話を聞いてみましょう。1人だけではなく、相続人全員で話をすることで、心理的な負担を軽減できる可能性があります。 お盆やお正月は、親族が集まる良い機会と言えるでしょう。親が残す予定の資産についても、話をしてみてはいかがでしょうか。 親が残す資産を知って相続対策を 親が残す資産を知って相続対策を 相続にまつわるトラブルは、決して少なくありません。「自分だけは大丈夫」と考えるのは危険です。あらゆる事態を想定して、生前から準備を進めておくことで、回避できるものも多いでしょう。親がどんな資産を残すのか知ることは、その一歩だと考えられます。 「あてにしていると思われたくない」という気持ちから、親の資産について、聞きづらい…と感じる方は少なくありません。だからこそ、なぜ知りたいのか、知らなかった場合に将来どのようなリスクが発生するのか、親に対してていねいに説明してみるのもおすすめです。親子間のコミュニケーションが深まれば、相続対策の幅はより一層広がります。親自身の生活を守るためにも、意思疎通を心掛けてみてください。

  • 遺産相続で成年後見人が必要な場合とは?成年後見制度の基本とともに解説

    遺産相続で成年後見人が必要な場合とは?成年後見制度の基本とともに解説

    遺産相続をスムーズに進めていくため、身につけておきたい知識の一つが「成年後見制度」についてです。遺産を相続する際に、成年後見人が必要になるケースとはどのようなものなのでしょうか?制度の基礎知識とともに、手続き方法についても解説するので、ぜひチェックしてみてください。 成年後見制度とは?基礎知識を身につけよう 成年後見制度とは?基礎知識を身につけよう まずは成年後見制度の基本について学びましょう。成年後見制度とは、判断能力が著しく低下している人の代わりに後見人が立ち、本人に代わって財産管理や契約の支援を行える制度のこと。判断能力が低下した人の保護を目的にしています。 認知症や知的障害、精神疾患を抱えている人は、財産管理や各種契約において、不利益を被りがち。利益と不利益をより正確に判断するため、成年後見人がサポートする仕組みです。制度を利用して後見人が決まったら、本人や家族であっても、後見人の同意なしでは財産の移動や各種契約が不可能になります。たとえ本人が勝手に契約を結んでしまったとしても、成年後見人であればそれを覆すことが可能です。 とはいえ、成年後見制度も万能ではありません。医療行為における同意や、結婚・養子縁組、離婚といった判断は認められていないのです。また、「介護が必要な場合にヘルパーを契約する」のは可能でも、成年後見人が自ら介護を行うことはありません。できる行為、できない行為をしっかりと把握した上で、制度を利用するべきかどうか判断しましょう。 相続で成年後見人が必要なケースとは? 遺産相続で成年後見人が必要なのは、「相続人の中に判断能力が著しく人」がいるケースです。相続手続きを進めていくためには、遺産分割協議を行う必要があるでしょう。協議では、相続人全員の同意が必要に。判断能力が低下した人が1人でも含まれている場合、分割協議そのものが進まなくなってしまいます。 仮に「判断能力が低下した状態のまま、遺産分割協議書を取り決めた」としても、協議そのものが無効と判断されてしまいます。たとえ家族であっても、遺産分割協議書への勝手なサインや押印は、犯罪になる恐れがあるので注意しましょう。本人が相続放棄すれば、その他の相続人で協議を進めることはできますが、判断能力や認知能力が低下した状態ではそれさえ難しいのが現実です。成年後見人がいれば、成年後見人のサポートのもとで、相続手続きを進めていけます。負債の方が多い場合、相続放棄の手続きも取れるでしょう。 一方で、相続人の中に判断能力が低下した人がいても、成年後見人が必要ないケースもあります。被相続人が生前に遺言を残していて、遺産相続の詳細や遺言執行者を指定していた場合が、こちらにあたるでしょう。 相続が発生した時点で誰に何を相続させるのか明らかになっていれば、遺産分割協議をする必要はありません。相続手続きもスムーズに進めていけます。判断能力が低下した人に財産を相続させたい場合でも、遺言執行者がいれば問題はありません。本人に代わって、相続に必要な手続きを済ませられるはずです。 判断能力が低下している人が相続人になると予想される場合、早めに準備を進めておくのもおすすめです。相続手続きがスタートする前であれば、「本当に成年後見制度が必要なのか?」「制度を利用しなかった場合にどのような不利益が予想されるのか?」といった点について、じっくりと考えられるでしょう。親族間で相談しながら、判断するのもおすすめです。 成年後見人を選任するための手続きは? 相続が発生したあとに、判断能力が低下した人のために成年後見人を選任する場合、親族や相続人が、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てましょう。すでに判断能力が低下している人の後見人を定める場合、誰が後見人になるのか、判断するのは家庭裁判所です。家族だからといって、自由に後見人になれるわけではないという点を、頭に入れておきましょう。 申し立て時に後見人候補者を立てることはできても、確実に選ばれるとは限りません。本人にどの程度のサポートが必要になるのか、家庭裁判所の判断のもとで決定されます。家族以外の、第三者の専門家が選ばれるケースもあります。専門職に就く人が成年後見人を務めることに決まった場合、報酬を支払わなくてはいけません。司法書士や弁護士に依頼した場合の報酬相場は、月に3~5万円と言われています。 成年後見人になるためには、特別な資格は必要ありません。ただし相続手続きのために成年後見人を選任する場合、「同じ相続人の立場にあたる人は、成年後見人にはなれない」という点に注意しましょう。相続人同士で後見人・被後見人という関係性になると、後見人が自分の利益を追求し、被後見人の利益を阻害する可能性があるためです。 この場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があるでしょう。特別代理人が必要かどうかは、状況によって異なります。具体的な条件については、相続手続きの専門家に相談するのがおすすめです。 成年後見人を選定する場合の手続き方法 成年後見人を選定する場合の手続き方法 相続手続きを進めるために成年後見人を選定する場合、以下の方法で手続きを進めていきましょう。 1.後見人を必要とする人の所在地にて、家庭裁判所に申し立てをする2.家庭裁判所にて審理が行われる3.成年後見人が選定される4.成年後見がスタートする 後見人を選定するための手続きでは、本人の判断能力の診断が必要です。かかりつけ医などに依頼し、状態を説明できるよう準備しておきましょう。また申し立てに必要な、その他の書類も収拾します。 家庭裁判所の審理では、申立人や後見人候補者はもちろん、本人との面接も行われます。親族の意向も確かめられるでしょう。これらの情報を総合的に判断し、「後見人が必要である」と判断されれば、後見人を選任します。審判の結果が送付されたあと2週間が経過したら、その内容が法務局に登記され、成年後見制度の利用がスタートします。 遺産分割協議を始められるのは、そのあとのこと。相続税の申告・納税期限を考えると、時間的な余裕はあまりありません。必要かどうかを素早く見極め、家庭裁判所に申し立ててください。 遺産相続で成年後見人が必要な場合を知って素早く対応しよう 遺産相続において、認知症などが原因で判断能力が低下した人が相続人に含まれる場合、成年後見制度の利用を検討してみてください。「遺産分割協議が進まない…」と悩む恐れもなくなるはずです。 実際に成年後見人が決まり、相続手続きを進められるようになるまでには時間がかかります。できるだけ早く動き出すことで、相続手続きをスムーズに進めやすくなるでしょう。

  • 遺産として残された預貯金は引き出せない?対処法と手続きの流れ

    遺産として残された預貯金は引き出せない?対処法と手続きの流れ

    身近な人が亡くなった際に、トラブルになりやすいのが「被相続人名義の預貯金の引き出し」についてです。預貯金や遺産として扱われるため、取り扱いには注意しましょう。「遺産として残された預貯金は引き出せない」と言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。対処法や必要な手続きについて詳しく解説します。 預貯金が引き出せなくなるのは口座が凍結されるから 亡くなった人の口座からお金が引き出せなくなるのは、該当の口座が凍結されるからです。これは、銀行側が相続トラブルを避けるために行っている措置。特定の相続人だけが遺産を独り占めしないよう、「銀行側が死亡を確認した時点で口座を凍結する」と定められています。 銀行側が口座名義人の死亡を知るきっかけはさまざまです。 ・家族からの連絡・新聞に掲載されるお悔やみ欄・担当する行員からの連絡 「死亡届を提出すると自動的に銀行に連絡がいく」というのは誤解です。また、名義人死亡に伴う口座の凍結について、銀行側が相続人に対して通知することはありません。「気づいたときにはすでに凍結されていた…」という事態も、決して少なくないでしょう。いつ口座が凍結されてしまうかわからないからこそ、亡くなる瞬間が近づいてきたら、ある程度の準備を整えておく必要があります。 凍結されない場合も預金の取り扱いには注意が必要 相続人が口座名義人の死亡を知らせず、銀行側もその情報を得ていない場合、口座は凍結されません。ATMとキャッシュカード、暗証番号さえあれば、生前と同じように預金を引き出せるでしょう。 葬儀代やその他の出費に対応するため、亡くなった人の口座からお金を引き出すケースは決して少なくありません。それ自体が、何らかの罪に問われるわけではないでしょう。 ただし、安易な出金が、後々の相続トラブルに発展しやすいのも事実です。亡くなった人の預貯金は遺産の一部。特定の相続人が、よくわからない目的で多額の現金を引き出していたら、「預金を独り占めしようとしている」と思われても仕方がないでしょう。トラブルを避けるためには、細心の注意を払って行動する必要があります。 病院代の清算や葬儀で必要なお金を捻出する目的であれば、何にいくら必要だったのか、わかるようにして管理してください。請求書や領収書、必要なメモ書きとともに保管すれば、その他の相続人も納得しやすくなるでしょう。その他の目的で預貯金を引き出したい場合、相続分に留まる範囲で行動しましょう。「自身の取り分から先払いで受け取った」と説明し、相続手続きを進めていけば、問題が起きる可能性は低くなります。 自分一人で隠しておくのではなく、その他の相続人に対して、「どのような目的でいくら出金するのか」を明らかにしておくのもおすすめです。お金の流れをできるだけ明らかにしておくことで、生前の口座管理やその他の出金について、余計な誤解を防ぐ効果が期待できます。 口座が凍結された場合の対処法は? 銀行側が名義人死亡の事実を把握し、口座が凍結された場合、各金融機関にて相続手続きを進めていく必要があります。必要な手順さえ踏めば、凍結は解除され、口座解約とともに預貯金が引き出されます。金融機関から必要な書類の説明を受け、準備したのちに郵送しましょう。 被相続人が遺言書を残していれば、その内容をもとに相続手続きを進めていきます。遺言書の原本や謄本が必要になるので準備してください。残された遺言が自筆証書遺言であった場合、家庭裁判所の検認済証明書も必要に。手続き完了までには少し時間がかかるため、できるだけ早く動き出すのがおすすめです。 遺言書がなかった場合、相続人同士の話し合いで遺産分割協議書を作成するケースもあるでしょう。この場合は、遺産分割協議書を金融機関に提出します。 このほかにも、被相続人や相続人の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、所定の届出書など、必要書類は決して少なくありません。相続人それぞれの思いを確認した上で、速やかに準備を進めていきましょう。 凍結された口座からお金を引き出す方法はある? 凍結された口座からお金を引き出す方法はある? 預金口座の凍結から、必要な手続きを経て解除されるまでには、一定の時間が必要になるでしょう。「このままでは葬儀代の支払いができない」「遺産分割協議が進まず、お金が足りない」といったトラブルに発展する可能性もあります。このような場合には、「相続預金の仮払い制度」を活用しましょう。 仮払い制度は、凍結された口座からでも、預金の一部を引き出せる制度です。出金できる金額は「1金融機関あたり150万円を上限とし、預金額の3分の1×仮払いを受ける相続人の法定相続割合まで」と定められていますが、必要書類さえ揃えれば、現金の引き出しが可能です。 仮払い制度を利用するためには、 ・被相続人の戸籍謄本・除籍謄本(出生から死亡まで)・相続人の戸籍謄本(全員分)・印鑑証明書(手続きする人) これらの書類が必要です。金融機関によっては、その他の書類の提出を求められるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。 また家庭裁判所を通じて手続きを行った場合、引き出せる金額に上限はありません。少し手間はかかりますが、必要なお金が多いときには活用してみてください。必要性が認められれば、全額引き出しも可能です。 銀行口座はできるだけシンプルにしておくのがおすすめ 被相続人の死後、凍結された銀行口座からお金を引き出すのは、決して簡単ではありません。相続発生後の手間をできるだけ少なくするためには、生前から保有する銀行口座の数を絞っておくのがおすすめです。引き落とし用の口座や普段のお金を出し入れする口座をまとめておけば、相続手続きも楽になるでしょう。 使わない銀行口座を解約しておくことも、立派な終活の一つです。親が終活をスタートしたら、ぜひアドバイスしてみてください。またもちろん、自分自身の終活に活かすのもおすすめ。残された人に負担をかけないよう、しっかりと準備を整えておきましょう。 被相続人名義の預貯金は遺産の一部!慎重な取り扱いを 被相続人名義の預貯金は遺産の一部!慎重な取り扱いを 身近な人が亡くなった時点で、その人名義の預貯金は「遺産」として取り扱われます。たとえ家族であっても、その財産は家族だけのものではありません。相続人全員に受け取る権利があるお金なのです。慎重な取り扱いを心掛けてください。 口座が凍結されれば引き出せなくなりますし、たとえ凍結されなくても、勝手に引き出せばトラブルの原因になってしまうでしょう。どうしてもお金が必要なときには、相続人同士の意思疎通が重要です。しっかりと話し合った上で、仮払い制度の利用を検討しましょう。

  • 不動産の遺産分割はどうすれば良い?4つの方法と注意点

    不動産の遺産分割はどうすれば良い?4つの方法と注意点

    遺産分割の中でも、どうすれば良いのか悩みがちなのが「不動産」です。親族間トラブルを避けるためには、どう分ければ良いのでしょうか。4つの方法とそれぞれの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。相続人同士、納得して手続きできる方法を見つけましょう。 1.不動産をそのままの形で「現物分割」 1.不動産をそのままの形で「現物分割」 現物分割とは、不動産をそのままの形で相続する方法を指します。どう分けるのかによって、さまざまなパターンが考えられるでしょう。 ・相続人のうち1人だけが、家や土地をそのまま受け継ぐ・相続人の人数で土地を分筆し、それぞれの名義とする このほかにも、複数の相続人の中から2~3人のみが、分筆した土地を受け継ぐというケースも考えられます。相続対象となる不動産が複数ある場合には、誰がどの不動産を受け継ぐのか検討することになるでしょう。 ちなみに土地の分筆とは、もともとは1つの土地を法的に分ける作業を指します。分筆すればそれぞれで登記が可能ですから、理論上は「不動産を現金のようにしてきっちり分ける」ことも可能となるでしょう。ただし、分筆には各地で特別なルールが課せられている可能性も。中には「分筆不可」というケースもありますから、相続手続きの前にはしっかりとリサーチしておきましょう。 「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」場合、相続手続きはいたってシンプルです。ただし相続財産の中でも、不動産は高額になりがち。現金や預金といったその他の遺産が豊富にあればバランスを取りやすいですが、そうではない場合、不公平感が生じてしまう恐れもあります。不動産を相続する人に対して「ずるい」という感情が生まれれば、遺産分割協議がなかなかまとまらない可能性もあるでしょう。 2.そのほかの相続人に代償を支払う「代償分割」 先ほどお伝えした「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」という場合の、不公平感を軽減できるのが「代償分割」です。家や土地を受け継ぐ相続人は1人ですが、その1人がその他の相続人に対して代償金を支払い、相続の公平性を保ちます。 たとえば親名義の不動産で長男夫婦が同居していた場合、親の亡き後、長男夫婦が自宅に住み続けるためには、家や土地を相続する必要があるでしょう。仮に長男以外に次男・三男がいたとしたら、それぞれに相応のお金を支払います。不動産の価値が3,000万円なら、次男と三男それぞれの取り分は1,000万円ずつ。これを長男が、自分の財布から出すことになります。 代償分割のデメリットは、不動産を受け継ぐ人の金銭的負担が大きくなってしまう点です。経済的に余裕があれば良いですが、そうではない場合、「そもそも代償分割を選択できない」という可能性もあります。 一方で、マイホームでそのまま暮らしつつ、その他の相続人との間で公平に財産を分け合える点はメリットと言えるでしょう。相続対象の土地が分筆不可能であっても、代償分割なら相続人同士の争いごとが起きる可能性は低くなります。 3.不動産を売却してお金に換える「換価分割」 換価分割は、不動産を売却してお金に換えた上で、そのお金を相続人同士で分け合うスタイルを指します。マイホームは手元に残らないものの、相続人同士で平等に分配できるというメリットが期待できるでしょう。 不動産を換価分割する場合、相続手続きがスタートした後に、できるだけ早く手続きを進めていくことが大切です。対象の不動産がすぐに売れるとは限りませんし、時間に余裕がなくなれば、安い金額で手放さなくてはならなくなる可能性も高いでしょう。換価分割の場合、「不動産をできるだけ高く売ること」が重要なポイントに。そのための工夫は、ぜひ取り入れてみてください。 不動産を売却するためにはさまざまな手数料が発生します。相続時には、売却益から手数料を差し引いた上で、各相続人が自身の取り分を受け取ります。仮に不動産が3,000万円で売れたとしても、そのすべてが相続の対象になるわけではありません。手数料が300万円なら、残りの2,700万円を法定相続割合に応じて分配しましょう。 この方法であれば、代償分割とは違い、金銭的な余裕はなくても不動産を公平に分配できます。全員が「現金で受け取る」ため、差が生じにくく揉めごとに発展しにくいと言えるでしょう。ただし不動産を手元に残せないため、「被相続人が暮らしていた思い出の家や土地」を手放すことになります。同居していた親族がいれば、引越しを余儀なくされてしまうでしょう。 換価分割する場合には、遺産分割協議書にその旨と分配割合を記載するようにしてください。記載がないと、税金が二重に課せられてしまう恐れがあります。また誰がどういった形で登記し、売却手続きを進めていくのかについても考えなくてはいけません。そのあたりさえクリアできれば、全員が納得して進めやすい分割方法と言えるでしょう。 4.複数名義で引き継ぐ「共有分割」 不動産そのものを残したい一方で、不平等な分配は望まず、また代償分割も難しい場合に、選択肢として考えられるのが「共有」です。こちらの分割方法では、不動産を分割したり売却したりすることはありません。あくまでもそのままの形で引き継ぎ、相続人同士が複数人で不動産を所有します。 この場合、それぞれの持ち分は法定相続割合によって決められます。不動産の形はそのままに、「とりあえず今のままの形を維持できる」という点で、優れた分割方法と言えるでしょう。 ただし、一つの不動産を複数人で所有すれば、後々のトラブルにつながりやすくなります。たとえば物件のリフォームや売却を希望する場合でも、全員の許可が必要になるでしょう。また今回は相続人であった人が、いずれ被相続人になることも考えなくてはいけません。当然、共有分割した不動産の持ち分も相続財産に数えられますから、物件を取り巻く状況はさらに複雑になってしまいます。 一時的にはメリットがあっても、将来的に見ればトラブルの種。できる限り、その他3つの方法での分割を検討してみてください。 不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を 不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を 不動産相続で、どう分ければ良いのか悩む方は多いものです。一概にどれが正解とは言えませんから、自分たちにとってより良い方法を検討してみてください。 どれを選ぶべきか悩んだときには、専門家に相談したり、実際に不動産査定を受けてみたりするのもおすすめです。不動産相続の注意点や、相続対象となる物件の価値がわかれば、これから先どうしたいのか、相続人としての選択肢も見えてくるのではないでしょうか。

  • 「養子縁組」は遺産の相続税対策になる?仕組みや方法・注意点を解説

    「養子縁組」は遺産の相続税対策になる?仕組みや方法・注意点を解説

    平成27年1月実施の法改正により、相続税の基礎控除額が大幅に減額されました。これにより、相続税を支払わなくてはならない人の数も増加。だからこそ、相続税対策の重要性も増してきています。相続税対策の具体的な方法をリサーチしている方にとって、選択肢の一つになり得るのが「養子縁組」です。養子縁組が相続税対策になる理由や、実践する際の注意点を解説します。 養子縁組が相続税対策になる理由は? 養子縁組が相続税対策になる理由は? 養子縁組や相続税対策になる理由は、相続税の基礎控除額が決定される仕組みにあります。相続税は、受け継ぐ遺産の金額が基礎控除内におさまっていれば課税されません。基礎控除額を求める式は以下のとおりです。 【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】 このように、相続税の基礎控除額は法定相続人の数によって左右されます。仮に法定相続人が配偶者と子どもの合計2人であった場合、基礎控除額は4,200万円です。一方で法定相続人が10人いれば、9,000万円まで相続税が課税されない計算になります。 養子縁組は、法定相続人を増やす行為です。養子にも実子と同じように相続権が認められています。仮に養子縁組で法定相続人が2人増えれば、それだけで「相続税の基礎控除額も1,200万円アップする」というわけです。 また生命保険金や死亡退職金にも、相続人の数で金額が変わる非課税枠が用意されています。 生命保険金の非課税枠 → 【500万円×法定相続人の数】死亡退職金の非課税枠 → 【500万円×法定相続人の数】 すべてを活用した場合、養子による節税効果は非常に高いと言えるでしょう。 また仮に、養子縁組をしても相続税が発生してしまうとしても、相続人が増えれば1人当たりの相続財産の金額は減ります。すると相続税が課税される税率が低く抑えられるため、節税につながるというわけです。 相続税対策で養子縁組をする場合の注意点4つ 養子縁組で相続税対策をする仕組みは、いたってシンプルです。とはいえ、実際にこの方法で相続税対策を行った結果、トラブルに巻き込まれたり落とし穴にはまってしまったりするケースも少なくありません。4つの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★1.養子縁組で相続税対策できる人数には制限がある 上で説明したとおり、養子縁組による節税効果は十分にあります。とはいえ、「だったらどんどん養子を増やせばいい!」というわけにはいきません。法定相続人に含められる養子の数には制限があるからです。被相続人に実子がいる場合、法定相続人に含められる養子の数は「1人」です。実子がいない場合は「2人」まで認められています。 ただし養子を「特別養子縁組」で迎え入れていた場合、こちらのルールは適用されません。 特別養子縁組の場合、 ・子どもが15歳までであること・子どもの福祉のために必要であると認められること・裁判所の許可が得られること など、厳格な条件を満たす必要があります。 特別養子縁組で迎え入れた子どもは、実親との法律上の親子関係を解消し、新たに養親との間に親子関係を結ぶことに。血縁上は養親であっても、法律上は親子関係が認められているため、たとえ養子が3人以上いたとしても全員が法定相続人になれるというわけです。 ★2.養子は実子と同じように遺留分を請求できる 相続税対策を目的に養子縁組を行う場合、注意しなければならないのが、養子の相続分についてです。税金対策だけを目的にするなら、「養子を迎え入れて基礎控除額や非課税枠をアップさせたうえで、すべての財産を実子に残せるよう遺言を残せばよい」と思うかもしれません。 しかし法定相続人となった養子には、その他の相続人と同様に「遺産を相続する権利」が認められています。たとえ「実子にすべての財産を譲る」という遺言を残したとしても、養子には遺留分を請求する権利が認められているのです。遺留分をめぐってトラブルに発展する可能性があります。 ★3.相続税が2割加算される可能性がある 相続税の節税のために養子縁組をした結果、相続税が加算されてしまうケースもあります。それが、「孫を養子にして、祖父母から孫へと直接遺産を受け継ぐ場合」です。祖父母から父母、そして孫へと受け継がれる場合、相続税が2回発生する可能性があります。孫を祖父母の養子にして直接相続させれば、相続税を1回分節約できるでしょう。 とはいえこの方法は不公平なもの。相続税を2割加算することで、公平性を維持しています。知らないまま手続きすると「想像以上に相続税が高かった!」という事態に陥りかねませんから、注意してください。 ★4.その他の相続人の理解を得られない可能性がある 養子縁組で相続人を増やせば、相続税の負担は減らせるかもしれません。しかしそのほかの相続人たちにとっては、自分自身の取り分が減るということ。特に「遺産相続のために形式だけ養子になった」という場合、理解を得られない可能性があります。 このケースで特に多いのは、「同居する子どもの配偶者」を養子にして法定相続人にするケースです。同居する子どもの配偶者に生前非常にお世話になったとしても、法律上は法定相続人に含まれません。「より確実に遺産を受け取ってもらえるように」との思いで養子縁組するケースがあります。 とはいえ、同居していない子どもにとっては、「自身の取り分が減る」ということ。納得できない可能性も十分にあるでしょう。同居中の子ども夫婦と、兄弟姉妹夫婦の間で、相続をきっかけとした親族間トラブルに発展してしまう恐れがあります。 相続税対策の養子縁組でトラブルを起こさないために 相続税対策の養子縁組でトラブルを起こさないために 相続税対策に養子縁組をすれば、一定の効果が期待できるでしょう。とはいえ、しっかり検討しないまま決めてしまうと、思わぬトラブルを招いてしまう可能性も。まずは一度、相続に関する専門知識を有する専門家に相談するのがおすすめです。税理士を探し、アドバイスをもらいましょう。 相続税対策の方法は、養子縁組だけではありません。養子縁組以外の方法を選んだ方が、より効率的に相続税対策ができる可能性もあるでしょう。またそれ以前に、相続税の特例や控除を使えば、「わざわざ特別な対策を採らなくても、相続税の負担なく財産を引き継げる」というケースも存在しています。 その他の方法も検討したうえで「やはり養子縁組を」と思う場合には、その他の相続人に対する、丁寧な説明が必須です。なぜ養子縁組をするのか、なぜ養子にも財産を残したいのかが明らかになれば、遺産分割について納得したうえで受け入れられる相続人も多いはずです。相続税対策で養子縁組を選ぶのであれば、特に慎重に話を進めていってください。

  • 婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    夫婦が離婚する場合に、行われるのが財産分与です。婚姻中に築き上げた財産を分け合うことを指しますが、「何をどこまで財産分与するのか?」で悩む方は少なくありません。今回紹介するのは、「婚姻中に親から相続した遺産」の取り扱いについてです。財産分与の対象になるケースやならないケース、頭に入れておきたい基礎知識を解説します。 相続した遺産は基本的に「特有財産」 相続した遺産は基本的に「特有財産」 財産分与について、まず頭に入れておきたいのが以下の2つです。 ・共有財産・特有財産 共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産のこと。一方で特有財産とは、夫婦どちらかのみに帰属している財産を指します。 たとえば、結婚している最中に増えた貯金や、購入した不動産は共有財産に含まれるでしょう。これらの共有財産は、離婚によって夫婦それぞれに分与されます。一方で特有財産は、財産分与の対象にはなりません。たとえ婚姻中に得た財産であっても、配偶者とは無関係であり、「形成されるのに夫婦間の協力はなかった」と判断されるためです。 婚姻中に自身の親が亡くなり、遺産を受け継いだ場合、その財産は「特有財産」と判断されます。よって、遺産相続後に離婚することになっても、基本的に財産分与の対象には含まれません。財産分与の話は、夫婦間で「何が共有財産にあたるのか?」を確認した上で、遺産相続とは別に進めていく必要があるでしょう。 ちなみに、特有財産に含まれるのは、相続した遺産だけではありません。 ・独身時代に貯めたお金・自身の親から援助された住宅資金・別居後に取得した財産 これらの財産も特有財産と判断されるため、財産分与の対象外となります。 遺産相続で得た財産も「共有財産」とみなされる可能性がある? 遺産相続で得た財産も、状況によっては共有財産とみなされるケースもあります。この場合、もちろん遺産も財産分与の対象となるため注意しましょう。具体的には、「遺産相続で得た財産が、配偶者の協力のもとで価値が向上した場合」がこちらにあたります。 たとえば、遺産相続で受け継いだお金を運用し、その金額が大幅にアップしている場合、「遺産に対して配偶者の貢献がある」とみなされる可能性があります。住宅を受け継ぎ、リフォーム等でその価値が向上している場合も含まれるでしょう。配偶者の貢献がどの程度あるのかによって、財産分与の割合は違ってきます。法律で明確な基準が設定されているわけではないため、状況に応じて、事例ごとに判断されるでしょう。 また遺産相続で得た財産が、夫婦の共有財産と混ざってしまっている場合にも注意が必要です。すでに「家計の一部」として、生活費が出たり入ったりしていれば、やはりそれも共有財産としてみなされてしまう可能性があります。財産分与を望まないのであれば、遺産として受け継いだお金を生活費の口座に入れておくのは危険です。 何をどこまで共有財産とみなすのかは、財産分与をする際に揉めやすいポイントです。遺産相続と財産分与、両者に関連したトラブルを避けるためには、共有財産と特有財産、それぞれの性質を理解した上で適切に管理する必要があるでしょう。 相続財産を財産分与しなくても良い具体的な事例とは? 相続した財産が財産分与の対象になるのかどうか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、相続した財産が財産分与の対象にならないケースを2つ具体的に紹介します。ぜひ参考にしてみてください。 ★相続した遺産を共有口座で管理していた場合 まだ離婚を検討していない時期、一方が相続した財産を、夫婦共有の口座で管理するケースは決して珍しくありません。この場合、「夫婦共有口座のお金であること」を理由に、財産分与の対象になるのでは?と不安に思う方も多いのではないでしょうか。 相続した遺産を共有口座にて管理していた場合でも、「遺産として受け継いだ分の特有財産」と判別できる状態であれば、財産分与の対象にはなりません。あくまでも「夫婦の生活費と混ざっておらず、特有財産として独立した存在である」と示せることが重要です。遺産相続分がどれだけなのか、きちんと把握できる状態であれば、共有口座かどうかは問題にはなりません。 ★相続した不動産で暮らしていた場合 夫婦どちらかが相続した家で暮らしていた場合、ただ暮らしていただけであれば、「配偶者の貢献によって価値が上昇した」とは考えられません。よって、財産分与の対象にはならないと考えられます。相続後にリフォームや大規模修繕を行っている場合を除き、財産分与の対象にする必要はないでしょう。 遺産の財産分与を希望する場合は? ここまで解説してきたとおり、遺産相続で受け継いだ遺産は、基本的に財産分与の対象にはなりません。相続手続きが婚姻期間中に行われた場合でも、この原則には変わりがないという点を、頭に入れておきましょう。 一方で、「遺産相続と財産分与の基本を知ってはいるが、相続した遺産も財産分与の対象にしたい」という方もいるのではないでしょうか。この場合、夫婦間の合意のもとで、一方の特有財産である遺産を、財産分与の対象として加えることも可能です。 特有財産を財産分与の対象外とするのは、民法の基本。しかし夫婦間の合意のもとで財産分与について決定する場合、その対象や割合については、原則にかかわらず、夫婦間で自由に決定できるという特徴があります。 「せっかく自分が受け継いだ遺産を財産分与するなんて…」と感じるケースも多いでしょうが、夫婦が離婚に至るまでの事情はさまざまです。「一刻も早く離婚したいのに、財産分与について揉めて、なかなか話が進んでいかない…」という場合には、遺産として受け継いだ分も含めて財産分与することで、手続きをスムーズに進めていける可能性もあるでしょう。 自分にとって何を優先したいのか、はっきりさせた上で手続きを進めていくのがおすすめです。 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 婚姻期間中に遺産を相続した場合、その財産は夫婦どちらかのみに帰属する「特有財産」と判断されます。離婚する場合でも、基本的に財産分与の対象には含まれないため、まずは安心してください。 ただし相続後の遺産の取り扱い方や、管理方法によっては財産分与の対象と判断されてしまうケースもあります。万が一の場合に備え、「特有財産である」ことを明確にして、維持・管理していくと良いでしょう。 また離婚する際の状況によっては、遺産も含めて財産分与した方が良いケースもあります。自分にとってのメリット・デメリットが気になったら、ぜひ一度専門家に相談してみてください。相続した遺産と財産分与について、適切なアドバイスを受けられるのではないでしょうか。

  • 遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    子育てがひと段落すると、自分たちの老後について漠然とした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。遺産に関する不安も、その中の一つです。「将来のトラブルリスクを回避するため、具体的な対策をスタートしたい」と思いつつ、まず何からすれば良いのかわからない…と悩む方も少なくありません。法律に関連するお悩みの相談先として有名なのが「法テラス」ですが、遺産についても相談できるのでしょうか?法テラスでできることや、利用するメリットについて解説します。 そもそも法テラスとは? そもそも法テラスとは? 法テラスの正式名称は、日本司法支援センターと言います。国が設立した機関で、「法的トラブルを抱えている方に解決の道を示すための総合案内所」という役割を担っています。 法的なトラブルを抱えてしまった際に、「誰に相談すれば良いのかわからない…」「法律によって解決できる道があるのかどうかさえはっきりしない」と感じる方は少なくありません。法律による支援にたどり着けないまま、どんどん状況を悪化させてしまう方も多いものです。だからこそ法テラスでは、以下のような業務を行っています。 ・トラブル解決のための情報提供・問題を解決するための具体的な相談窓口・無料法律相談の提供や弁護士・司法書士費用等の立て替え 日常生活の中、何らかのトラブルを抱えてしまった場合でも、まずは一度法テラスに相談するのがおすすめです。トラブルを解決するため、具体的にどういった手段を検討できるのか、専門家によるアドバイスを受けられるでしょう。より具体的なサポートをしてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらうことも可能です。 また一定の収入・資産要件を満たしている人向けに、無料で法律相談を実施したり、専門家費用を立て替えたりする制度も用意されています。法テラスは基本無料で利用できる機関なので、ぜひ活用してみてください。 法テラスを活用して遺言や遺産に関する疑問を解消 遺産や遺言には、法律が深く関わってきます。法律の知識がないまま自己流で終活を進めた場合、後々トラブルにつながってしまう可能性も。さまざまな不安を解消するため、また法的な基礎知識を身につけるため、ぜひ法テラスを活用してみてください。法テラスで相談できる内容の具体例は、以下のとおりです。 ★将来の遺産相続のために遺言書を残したい 終活ブームの今、「遺産相続にまつわるトラブルを防ぐためには遺言書が有効」という情報は広く知れ渡っています。しかし本当にトラブルを防ぎたいなら、単純に「遺言を残しておけばOK」とだけ考えるのは危険。「法律知識をもとに、適切な形で残された法的に有効な遺言書」を用意しておく必要があります。遺留分や法定相続人の範囲など…適切な知識がないまま遺言を残しても、かえってトラブルを招く結果になってしまうでしょう。 法テラスに相談すれば、正しい形で遺言を残すために必要な、法制度に関する情報を提供してもらえます。また「自分だけでは不安…」という場合には、より具体的な相談を受け付けてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらえるでしょう。専門家に相談しつつ、自分にあった遺言書を残せるはずです。 ★両親の遺産を相続する際に、親族間で争いが起きている 子育てがひと段落する年代は、自分自身が相続人になる機会も多い時期です。両親の遺産を相続する際に、すでに親族間で争いが起きてしまっているような場合も、法テラスにて相談が可能。相続に関する法律知識を提供してもらえるほか、自身の代理人となって動いてくれる、弁護士の紹介も受けられます。 親族間で直接やりとりすると、遺産相続問題は泥沼化してしまう恐れも。第三者である専門家の手を借りることで、話し合いをスムーズに進めていける可能性も高まるでしょう。 ★相続放棄をしたいが、何からすれば良いのかわからない 相続放棄の手続きは、相続が発生してから、一定期間内に適切に行わなければいけません。まず自分が何をするべきなのか、いつまでにどういった手続きを終えなければならないのか、法テラスにて相談に乗ってもらえます。もちろんこの場合も、専門家事務所の紹介を受けることが可能。相続放棄以外にも、「親が亡くなり、借金を代わりに返済するよう言われてしまった…」といった状況でも、適切に対処できるでしょう。 法テラスを利用するメリット3つ 初めての法律相談を、ためらう方は少なくありません。法テラスを利用するメリットを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★基本無料で気軽に相談できる 法テラスへの相談は、基本無料で利用できます。個別の事例に対して、具体的なアドバイスはもらえませんが、法律に関する基本的な情報提供を受けることは可能。相談は何度でもできますから、法律に関する知識を、少しずつ深めていけるのではないでしょうか。 法テラスへの相談は匿名でできますし、また電話やメール、直接相談など、さまざまな相談形式が整っています。自分に合った相談スタイルで気軽に利用できる点が、メリットだと言えます。 ★相続に強い専門家につないでもらえる 遺産相続に関する各種手続きを専門家にサポートしてもらう場合、依頼先の専門家は、「遺産や相続に強い人」を選ぶ必要があります。もともとのツテでもない限り、誰に相談すれば良いのか悩む方も多いでしょう。法テラスに状況を伝えて相談窓口を紹介してもらえば、相続問題に強い専門家とつながれるはずです。 「自分で相談先事務所を選べない」という点は、法テラスを利用するデメリットとも言われています。一方で、「相続問題に強い専門家を自分自身で見つけ出す自信がない…」という場合には、非常に大きなメリットとなるでしょう。 ★無料相談や費用の立て替え制度を利用できる 法テラスには、収入や保有資産が少ない方に対する扶助制度も用意されています。「遺産相続について困っているが、収入がなく、専門家にサポートを依頼するのが難しい…」といった場合でも、法テラスなら無料相談や費用の立て替えに応じてもらえます。 法テラスの民事扶助制度の利用を希望する場合、収入や資産に関する要件を満たしていることを示すための書類が必要です。まずは一度、法テラスの相談窓口に問い合わせをしてみてください。自身が要件を満たしているか、またどのような書類を用意すれば良いのか、具体的な情報をもらえるでしょう。 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産や相続、遺言に関するお悩み事を抱えている際に、誰に相談すれば良いかわからず、悩んでしまう方は少なくありません。法テラスなら、誰でも無料で気軽に相談できますから、ぜひ活用してみてください。法律に関する情報を提供してもらったり、相談先窓口を紹介してもらったりすれば、これから自分が何をするべきか、具体的に見えてくるのではないでしょうか。

  • 公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    近年、「遺言書を残して遺産トラブルを回避しよう」と考える方が増えてきています。自身が残した遺産を巡って、大切な人たちが争うとしたら…これほど悲しいことはありません。なんとかして回避したいと思うのは、当然だと言えるでしょう。 しかし実際には、故人が失くした遺言書をきっかけに、さらなるトラブルが発生してしまう事例も存在しています。遺産トラブルを防ぐのに有効なスタイル、「公正証書遺言」について、わかりやすく解説します。 なぜ遺言書を残しても遺産トラブルが発生するの? 終活を意識し始め、各種情報サイトをチェックしてみると、「遺産トラブルを予防するためには遺言書が有効」という情報を目にする機会も多いのではないでしょうか。確かに遺言書が残されていれば、故人の思いに沿った相続が可能に。親族間のトラブルを予防するため、一定の効果が期待できるでしょう。 しかし実際には、遺言書が残されていても、遺産トラブルに発展してしまう事例は決して少なくありません。その理由は以下のとおりです。 ★1.遺言書が法的に有効と認められないから 遺言書にはいくつかのタイプがあり、いつでも好きなときに、自分の手で書き残せるものもあります。しかしこの場合、遺言書に必要な要件を満たしておらず、「法的に無効」と判断されてしまうケースも少なくありません。 遺言書が残されていても、法的に有効だと認められなければ意味がありません。相続人はあらためて遺産分割協議を行い、遺産相続の詳細を決定しなければならないのです。遺言書で遺産を多くもらえるように指定されていた人は、当然「故人の遺志」を尊重するよう求めるでしょう。一方で、その他の人は法定相続分に沿った手続きを求める可能性が高いです。法的に無効な遺言書によって、故人の遺志を確認できてしまうが故のトラブルだと言えるでしょう。 ★2.遺言書に記された内容が遺留分を侵害しているから 法的に認められる形で遺言書が残されていた場合でも、油断は禁物です。その内容によっては、やはり親族間のトラブルが発生してしまう恐れがあります。中でも注意しなければならないのが、遺留分についてでしょう。 遺留分とは、相続人が相続財産の中から最低限相続できる財産のこと。たとえ「全財産を○○に譲る」という内容が残されていたとしても、その他の相続人は遺留分を請求できます。最低限の財産を相続できるとはいえ、「いったいなぜこのような遺言が残されたのか?」という点で、トラブルが発生する恐れもあります。 ★3.遺言書に本人の意思が反映されているとは限らないから 被相続人が自分一人で作成し、自宅で保管されていた遺言書の場合、その内容の信ぴょう性がもとで、トラブルに発展するケースもあります。 ・認知能力が低下した状況で、誰かに書かされたのではないか?・すでに内容が改ざんされているのではないか? もしも本当に、遺言の強制や誘導、改ざんといった事実があれば、そこに故人の遺志は反映されていないことに。その信ぴょう性を巡って、騒動に発展する事例も決して少なくありません。 公正証書遺言とは?トラブル回避に有効な理由 上で説明したようなトラブルは、遺言の残し方に工夫することで予防できます。ぜひ公正証書遺言に注目してみてください。 公正証書遺言とは、公証人関与のもとで遺言書を作成する方法を言います。作成段階から専門家に手を貸してもらえば、 ・遺言書が法的に無効と判断されるリスクを防ぐ・遺言の内容についても事前に専門家に相談に乗ってもらえる・あとで内容が改ざんされる恐れがない といったメリットが発生します。遺言書にはさまざまな種類がありますが、公正証書遺言は「もっとも確実性の高い遺言」と言われているのです。 公正証書遺言は、第三者である「公証人」が作成します。出来上がった遺言書は、公文書として扱われ、いざ遺言が執行される瞬間まで厳重に管理されるでしょう。遺言を残した時点での故人の「意思」が、争点になる可能性も低くなります。 ただし公正証書遺言を作成するためには、相応の手数料を支払う必要があります。また作成までには、それなりの時間がかかってしまうでしょう。遺言書を残したいと思ったら、できるだけ早く行動に移すよう注意してくださいね。 公正証書遺言の残し方や費用を解説 公正証書遺言の残し方や費用を解説 ではここからは、実際に公正証書遺言を残すための流れや費用をチェックしていきましょう。公正証書遺言を作成するための手順は、以下のとおりです。 1.公証人との間で事前打ち合わせを行う2.証人になってくれる人を2人探す3.証人2人と共に公証役場に行き、遺言書を作成する4.同じ内容の公正証書遺言を3通作成し、1通を公証役場に保管する 公正証書遺言を作成する場合に、最初にやらなければならないのが公証人との打ち合わせです。公証役場に出向いたからといって、その場ですぐに遺言を作成できるわけではありません。遺言に残す内容など、事前の打ち合わせを済ませておきましょう。 また証人には、未成年や将来相続人になると推定される人は指定できません。また公証人の配偶者や、四親等以内の血族も指定できないというルールがあります。 信用できる人物2人に依頼するのが一番ですが、手間を省きたいなら専門家に依頼するのもおすすめです。事前打ち合わせや公証役場での手続きについても、専門家がしっかりとサポートしてくれるでしょう。遺留分についても、トラブルになりにくい遺言の残し方をアドバイスしてもらえるはずです。 公証役場では、公証人の本人確認や遺言内容の確認、公証人の筆記・読み聞かせといった手続きが行われます。遺言者と証人2名、さらに公証人が署名捺印することで、正式な遺言として認められるでしょう。 公証役場での手続きに必要な時間は、およそ30分前後です。また公正証書遺言を作成するためには、公証役場に手数料を支払わなければいけません。遺言の価格に応じて手数料の金額が変わってくるため、注意してください。 財産が100万円以下であれば手数料は5,000円です。一方で財産の価額が5,000万より上で1億円以下の場合の手数料は4万3,000円です。自身の財産の金額に合わせて、どれだけ必要になるのかあらかじめチェックしておきましょう。 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産相続について、「まさか我が家でトラブルなんて…」と考える方は少なくありません。しかし実際には、相続に関して割り切れない思いを抱く人は多いもの。非常に根の深い、親族間トラブルの原因になる可能性もあるのです。将来のトラブルを予防するために、ぜひ公正証書遺言についても検討してみてください。 作成時に手間はかかっても、「法律的にほぼ確実な遺言書が残せる」というメリットは非常に大きいと言えるでしょう。トラブル回避を目的に遺言書を残すのであれば、ぜひ積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

  • 遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    40代~50代になると、いつか発生するであろう「相続」について、気になる方も多いのではないでしょうか。実家の親が亡くなれば、子どもはほぼ確実に法定相続人に数えられます。いざ相続が発生しても、「具体的に何をどう手続きすれば良いかわからない…」と悩む方は少なくありません。 遺産相続の手続きは、具体的にどう進めていけば良いのでしょうか。自分で手続きする場合の流れや注意点について解説します。 遺産相続とは?大まかな流れ 遺産相続とは、亡くなった人が所有していた財産を、相続人で分け合う手続きを言います。具体的にどういった流れになるのか、把握しておきましょう。遺産相続の流れは、「故人が遺言書を残しているかどうか?」によって、大きく違ってきます。 遺言書が残っている場合と、残っていない場合、それぞれについて大まかな流れをチェックしてみましょう。 ★遺言書が残されている場合 故人の遺言書が見つかった場合の流れは、以下のとおりです。 1.必要に応じて家庭裁判所にて検認の手続きをする2.遺言書の中身を確認する3.遺言書の内容に沿って、遺産を分割する4.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書とは、故人の最期の思いを記した正式な書類です。法的効力を持つ正式な遺言書であれば、そこに記された内容に沿って相続手続きを進めていくのが基本。たとえ遺言書に記されていた内容が法定相続分とは異なっていても、遺言書の方が優先されます。 親族間で協議する必要がないため、争いごとを避けられる可能性も高いでしょう。また相続が発生してから、慌てて相続財産の調査をする必要もありません。 ただし遺言書が自宅で発見された「自筆証書遺言」の場合、家庭裁判所による「検認」と呼ばれる手続きが必要です。封がしてあるものを勝手に開けて中身を確認してしまうと、偽造や変造を疑われる原因に。5万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意してください。 遺言書の検認には、家庭裁判所への申し立てが必要です。以下の必要書類を揃えて手続きしてください。 ・申立書・遺言者の戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本(出生時から死亡時までのすべてを揃えて提出)・相続人の戸籍謄本(全員分) 検認には、少なくても1ヶ月以上の時間が必要になります。検認が必要な遺言書が発見されたら、できるだけ素早く申し立てを行いましょう。 ちなみに、残されていた遺言が公正証書遺言であったり、自筆証書遺言であっても法務局にて保管されていたりした場合には、検認は不要です。偽造や変造の疑いがないため、すぐに内容を確認し、その後の手続きを進めていけます。 ★遺言書が残されていない場合 遺言書が残されていない場合は、遺産相続について、相続人が協力して決定する必要があります。こちらの場合の大まかな流れは以下のとおりです。 1.相続人に関する調査を行い、確定する2.相続財産に関する調査を行い、確定する3.遺産分割協議を行う4.協議の内容に基づき、遺産分割協議書を作成する5.遺産分割協議書に基づいて、遺産を分割する6.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書が残されていない場合、「誰が相続人になるのか?」「何が相続対象に含まれるのか?」を明らかにするところからスタートします。必要に応じて、専門家の手を借りることも検討してみてください。こうして調査された内容をもとに、遺産分割協議を行います。誰が何を相続するのか、この協議にて確定しましょう。あとはその内容に基づいて相続を完了させます。 言葉にすると非常にシンプルですが、実際には遺産分割協議がまとまらない事例や、話がこじれて訴訟にまで発展してしまう事例も少なくありません。ひとつひとつの問題を、丁寧に解決していく必要があるでしょう。 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産相続の手続きを自分で進めていく場合、注意したいポイントのひとつが、相続放棄についてです。相続する財産の状況によっては、放棄した方が良いのかどうか、ぜひ冷静に検討してみてください。 遺産相続では、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も対象になります。相続する遺産を調査した結果、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いようであれば、相続放棄を検討した方が良いでしょう。相続放棄には、「相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内」という期限が存在しています。 遺言書の検認手続きや遺言書が残されていない場合の財産の調査は、相続放棄する可能性についても考慮した上で、時間に余裕を持って進めていくのがおすすめです。 相続放棄の手続きも、家庭裁判所にて進めていきます。申し立てが認められれば、「最初から相続人ではなかった」と法律的にも認められるでしょう。 ただし相続放棄すれば、これから先も含めて、すべての財産を相続する権利を一切失うことになります。また、もし自分よりも低順位の相続人がいれば、相続人は次の順位へと移っていくでしょう。こちらも考慮する必要があります。 遺産分割協議書の作成方法は? 遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書に記します。自分で手続きする場合、以下の点に注意してください。 ・相続人や財産を、正確に記載・相続人全員分の、実印での捺印が必要 遺産分割協議書は、預貯金の解約や相続登記などで使用する正式な書類です。内容が不十分であれば、後々トラブルに発展する可能性も。協議で決まった内容を、正確に記載してください。また相続人全員分の実印が必要になる点も、早めに確認しておきましょう。 忘れてはいけない相続税の申告 相続手続きが完了したあとに、忘れてはいけないのが相続税の申告についてです。相続税の申告には、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があります。申告が必要な場合には、忘れないように注意しましょう。 相続する財産の総額が、相続税の基礎控除額に収まる場合は、相続税を申告する必要はありません。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求められます。 【相続税の基礎控除額 =3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】 亡くなった配偶者の遺産を受け継ぐ場合など、基礎控除額に収まらない場合でも、相続税が発生しないケースは多々あります。ただしこの場合、「相続税を申告した結果、ゼロ円になった」と判断されるため、申告手続きそのものは必要になるため、注意してください。 相続財産の調査の段階で、「相続税の基礎控除額を超えそうだ」と判断した場合、相続税の申告についても余裕を持って進めていきましょう。 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 比較的シンプルな遺産相続であれば、自分自身で手続きを進めていくことは十分に可能です。それぞれの手続きの期限を意識しつつ、ひとつずつ確実にこなしていきましょう。一方で、以下のような場合は、専門家の手を借りることをおすすめします。 ・仕事が忙しく、平日昼間に動けない・面倒な手続きが苦手・遺産分割協議で揉める可能性が高い 自分で進めていく場合には、ぜひ今回紹介した情報を参考にしてみてくださいね。

  • 「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    ひと言で「遺産」と言ってもその実態はさまざまで、状況によっては「できれば受け取りたくない…」と考える方もいるでしょう。こんなとき、あらかじめ知っておきたいのが遺産を放棄するための手続きについてです。 このコラムでは、遺産を放棄するための手続き、「遺産放棄」について詳しく解説します。混同されやすい「相続放棄」との違いについても紹介するので、ぜひ今後の参考にしてみてください。 遺産放棄(財産放棄)とは具体的にどういうこと? 遺産放棄(財産放棄)とは、相続権を持っているにもかかわらず、「遺産を相続しない」という立場を表明することを言います。被相続人が亡くなり相続がスタートすると、まずは遺言書の有無が確認されるでしょう。遺言がなければ、その遺産は遺産分割協議によって、どう分けられるのか決定されます。この遺産分割協議にて、「財産を相続しない」と表明すれば、それが遺産放棄(財産放棄)に当たります。 遺産放棄は、法律で明確に定められた手続きではありません。よって事前に特別な準備をする必要もなく、その他の相続人に自身の決意を伝えればOKです。遺産分割協議でその希望が受け入れられれば、無事に遺産を放棄できるでしょう。 また遺産放棄を宣言したからといって、相続人としての立場を失うわけではありません。他の相続人との話し合いにはなるものの、「この遺産は放棄したいが、こちらだけは相続したい」など、柔軟な対応も可能です。後になって新たな遺産が見つかったときにも、またあらためて、相続人としての立場で話し合いに参加できるでしょう。 相続放棄との違いは? 遺産を受け取らない道を考えたとき、もう一つ検討したい道が「相続放棄」です。遺産放棄とよく似た言葉ではありますが、両者の意味合いは大きく異なります。それぞれの意味を正しく把握して、自身の思いに沿った方を選択しましょう。 相続放棄とは、相続人としての権利、つまり相続権そのものを放棄するための法的手続きです。法的にも自身の立場を明確にするため、一定期間内に家庭裁判所にて、必要な手続きを済ませる必要があります。家庭裁判所にて相続放棄が認められれば、その人は「最初から相続人ではなかった」とみなされるでしょう。相続順位は次の人に回され、今後何があっても、相続人としての権利を主張することはできなくなります。 相続放棄の手続きができる期間は、「相続を知った日から3ヶ月間」です。この期間を過ぎると、相続放棄の手続きは選択できなくなりますから、十分に注意してください。 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 遺産放棄が他の相続人に自身の意思を伝えるだけでOKであるのに対して、相続放棄するためには、家庭裁判所への申し立てが必須です。「どちらにしても財産を受け取らないのだから、より簡単な遺産放棄で十分なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、この考えは非常に危険です。 なぜなら、被相続人が残す「遺産」とは、常にプラスであるとは限らないからです。万が一、マイナスの財産が相続財産に含まれれば、遺産放棄の意思表明だけでは不十分です。債権者は、相続人に対しても借金を返済するよう求める権利が認められています。法律的にも「自分は相続人ではない」と明らかにしなければ、被相続人の代わりに、自身が借金を背負ってしまうでしょう。 いくら「自分は遺産を受け取っていないので」と説明しても、債権者には通用しません。法律をもとに動いている債権者の取り立ては、そのまま継続してしまいます。 プラスの財産とマイナスの財産の両方が残されている場合には、遺産放棄で十分なのか、それとも相続放棄の手続きを取らなければならないのか、特に慎重に判断する必要があります。遺産分割協議においても、「どうせ財産を相続しないから」と安易に考えるのは辞めましょう。どの遺産を誰がどのように引き継ぐのかを明らかにした上で、自身の立場を明確にするのがおすすめです。 遺産放棄を選んだ方が良いケースとは? 遺産放棄にも相続放棄にも、メリットとデメリットの両方があります。相続放棄のメリットは、相続人としての権利を放棄したという事実を、法的にも認められる点です。一方で、柔軟な対応が難しいというデメリットがあります。以下のようなケースでは、相続放棄よりも遺産放棄を選んだ方が、メリットが大きくなると予想されます。ぜひじっくり検討してみてください。 ★1.基本的には遺産を放棄しつつ、一部のみ受け取りたい場合 遺言書が残されていない場合の遺産相続では、法定相続分に沿って遺産を分配します。しかし、常に遺産を等分に分けられるとは限りません。特に、遺産に土地や建物といった不動産が含まれている場合、相続割合は非常に複雑になるでしょう。 たとえば、「不動産は要らないが、現金だけは受け取りたい」という場合、遺産放棄が有効です。不動産についてのみ遺産放棄をして、その他の財産については受け取りましょう。遺産放棄の手続きを上手に活用すれば、親族間の余計なトラブルを防止できる可能性があります。 ★2.将来的にさらに遺産が発見される可能性がある場合 被相続人が亡くなったあと、一定期間経ってから新たな遺産が発見されるケースもあります。この場合、最初の相続で相続放棄の手続きをすると、後で見つかった遺産についても相続する権利を失ってしまうでしょう。 「今現在明らかになっている遺産は受け取らない」と決めていても、将来的に状況が変化する可能性はゼロではありません。わざわざ相続放棄をするメリットがないのであれば、遺産放棄に留めておくのがおすすめです。将来遺産が発見された場合に、あらためて相続するのか、遺産放棄をするのか、それとも相続放棄をするのか、その時点の状況を考慮して決断できるでしょう。 ★3.相続権を次の順位に回したくない場合 相続放棄をしても遺産放棄をしても、「自分が遺産を受け取らない」という結果に変わりはありません。しかし「誰が相続人になるのか?」という視点で考えると、2つの手続きには非常に大きな差があるのです。 遺産放棄を選択する場合、自分自身が相続人として、「遺産を受け取らない」と決断することに。相続権は、当然自分のもとに残ります。一方で相続放棄をすれば、相続権は次の順位へと移っていきます。相続順位が移り、相続人の範囲が広がれば、さらなるトラブルを引き起こしてしまうケースもあるでしょう。 こうしたトラブルを防ぎたい場合も、「相続人の立場のまま遺産だけを受け取らない」遺産放棄には、意味があります。 今回紹介した3つのケースは、どれも「相続財産に負債が含まれていない場合」を想定しています。まずは負債がないかどうかを確認し、その上で、遺産放棄するべきかどうか、検討してみてくださいね。 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 自身の終活について考え始める時期は、身近な人からの相続について考え始めるべき時期でもあります。「遺産を受け取らない」という選択肢についても、ぜひ慎重に検討してみてください。 遺産放棄と相続放棄は、言葉は似ていますが、もたらす結果は大きく違ってきます。それぞれの基礎知識を身につけた上で、自分にとって必要な手続きを選択するのがおすすめです。

  • 親が残す資産は事前に把握しておこう!知らない場合のリスクを解説

    子どもが生まれ、自身の生活基盤が整った際に、考えておきたいのが「親が残す資産」についてです。今すぐというわけではなくても、相続はいずれやってくる問題。そのときになって慌てないためには、事前の情報把握が重要です。親が残す資産を把握する方法や、知らない場合に考えられるリスクについて解説します。 親の資産がわからない人は意外と多い 親の資産がわからない人は意外と多い 自身の終活について積極的に考える方は増えていますが、「親がどのような資産を持っているのか詳しく知らない」という方は、まだまだ珍しくありません。親が残す資産の内容は、多岐にわたります。投資ブームの今、株式投資や不動産投資に取り組む方も増えているでしょう。子どもが把握していない不動産を所有している可能性もあります。 親がどのような資産を残すか把握していなければ、何の準備も整えられないまま相続のときを迎えることになってしまうでしょう。「まだまだ先だから…」と思いがちですが、相続のタイミングがいつになるのかは誰にもわかりません。知らない場合のリスクとしては、主に以下の3つが挙げられます。 ★1.相続税の準備ができない 親が残す資産額によっては、相続税が発生する可能性も。相続する資産の中から相続税を賄えれば良いのですが、実際にはそれが不可能なケースもあります。 たとえば親が残す資産のほとんどが不動産である場合、相続税は相続財産以外から調達しなければいけません。相続税が支払えない場合、不動産を売却しなければならない可能性もあります。仮にそれが「現在家族で暮らしている自宅」であれば、相続をきっかけに住む場所を失うことにもなりかねないのです。 親が残す資産額やその内訳を知っていれば、 ・相続税が発生しそうな状況なのか?・相続税の負担がどの程度になるのか? これらの情報を把握できるでしょう。相続税の支払いに向けて、計画的に準備を進められるはずです。 ★2.病院代や葬儀費用の清算で困る可能性がある 親の資産がわからないまま相続のときを迎えたとしても、各種手続きは待ってはくれません。病院代の清算から葬儀費用の支払いまで、多額の現金が必要になる場面は、決して少なくないのです。親が残す資産がわからなければ、子どもが立て替えることにもなりかねません。 親がどこにどの程度の資産を持っているか知っていれば、落ち着いて対応できます。自宅にタンス預金があれば、相続人同士の話し合いの末、支払いに充てることもできるでしょう。 どの銀行口座にどの程度の資産を残しているのか知っていれば、被相続人が亡くなる前に現金を引き出せる可能性もあります。口座名義人の死亡により凍結されたとしても、仮払い制度の利用により、素早く現金を用意できるはずです。 「すぐにでも現金が必要になる!」といった場面で、親の資産について一から冷静に調査するのは難しいでしょう。事前に知っていれば、いざというときでも落ち着いて対処できます。 ★3.遺産分割協議で揉めるリスクがある 相続が発生し、遺言が残されていない場合に必要なのが遺産分割協議です。相続人が複数人いる場合、誰が何を相続するのかで揉めるリスクがあります。 たとえば「遺産のほとんどが不動産で相続人のうち1人が居住している」という場合、どのように遺産を分割するべきか悩むケースも多いでしょう。親族間トラブルを防ぐためにも、親の資産をできるだけ早く把握し、相続人全員が納得できる形で相続の大枠を決めておくのがおすすめです。 被相続人が生きている間であれば、どのような想いで遺産分割を考えているのか、直接聞けます。遺産分割協議で突然知らされるよりも、心の準備ができるでしょう。 親が残す資産を把握する方法とは? 相続にまつわる親族間トラブルは、決して少なくありません。誰にとっても他人事ではないからこそ、親の資産を早めに把握し、必要な対策を講じておくことが大切です。とはいえ、「親が残す資産について話すのは抵抗がある…」と感じる方も多いのではないでしょうか?具体的にどうやって把握すれば良いのか、3つの方法を紹介します。 ★1.相続税をきっかけに聞いてみる 平成27年に、相続税の基礎控除に関するルールが変更されました。それまでよりも基礎控除額が減り、相続税を課税されるケースが増加しています。こうした状況を解説するとともに、親が残す資産について自然に聞いてみてください。 相続税の基礎控除額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求められます。親が残す資産がこの範囲に収まるのかどうかがわかるだけでも、子どもの負担は軽減できるでしょう。相続税をきっかけに、具体的にどのような資産が残される予定なのかどうか、ざっくりとした話だけでも聞いておくと安心です。 ★2.遺言書やエンディングノートをすすめてみる 親の資産について直接聞くのが難しい場合、終活の一環として、遺言書やエンディングノートの作成をおすすめするのもおすすめです。遺言書やエンディングノートを作成する場合、親自身が残す予定の資産を把握しなければいけません。その過程で、「子どもに伝えておくべき内容」をはっきりと理解する方も少なくありません。 実際に親が遺言書やエンディングノートを作成し始めたら、子どもに対してアドバイスを求める場面もあるかもしれません。無理をせず、少しずつ内容を聞いてみてください。 ★3.家族が集まる機会に話し合いの場を持つ 親が残す資産について聞きたいと思ったら、その他の相続人と協力するのもおすすめです。子どもの立場で相続人になる場合、兄弟姉妹と一緒に、親の話を聞いてみましょう。1人だけではなく、相続人全員で話をすることで、心理的な負担を軽減できる可能性があります。 お盆やお正月は、親族が集まる良い機会と言えるでしょう。親が残す予定の資産についても、話をしてみてはいかがでしょうか。 親が残す資産を知って相続対策を 親が残す資産を知って相続対策を 相続にまつわるトラブルは、決して少なくありません。「自分だけは大丈夫」と考えるのは危険です。あらゆる事態を想定して、生前から準備を進めておくことで、回避できるものも多いでしょう。親がどんな資産を残すのか知ることは、その一歩だと考えられます。 「あてにしていると思われたくない」という気持ちから、親の資産について、聞きづらい…と感じる方は少なくありません。だからこそ、なぜ知りたいのか、知らなかった場合に将来どのようなリスクが発生するのか、親に対してていねいに説明してみるのもおすすめです。親子間のコミュニケーションが深まれば、相続対策の幅はより一層広がります。親自身の生活を守るためにも、意思疎通を心掛けてみてください。

  • 遺産相続で成年後見人が必要な場合とは?成年後見制度の基本とともに解説

    遺産相続をスムーズに進めていくため、身につけておきたい知識の一つが「成年後見制度」についてです。遺産を相続する際に、成年後見人が必要になるケースとはどのようなものなのでしょうか?制度の基礎知識とともに、手続き方法についても解説するので、ぜひチェックしてみてください。 成年後見制度とは?基礎知識を身につけよう 成年後見制度とは?基礎知識を身につけよう まずは成年後見制度の基本について学びましょう。成年後見制度とは、判断能力が著しく低下している人の代わりに後見人が立ち、本人に代わって財産管理や契約の支援を行える制度のこと。判断能力が低下した人の保護を目的にしています。 認知症や知的障害、精神疾患を抱えている人は、財産管理や各種契約において、不利益を被りがち。利益と不利益をより正確に判断するため、成年後見人がサポートする仕組みです。制度を利用して後見人が決まったら、本人や家族であっても、後見人の同意なしでは財産の移動や各種契約が不可能になります。たとえ本人が勝手に契約を結んでしまったとしても、成年後見人であればそれを覆すことが可能です。 とはいえ、成年後見制度も万能ではありません。医療行為における同意や、結婚・養子縁組、離婚といった判断は認められていないのです。また、「介護が必要な場合にヘルパーを契約する」のは可能でも、成年後見人が自ら介護を行うことはありません。できる行為、できない行為をしっかりと把握した上で、制度を利用するべきかどうか判断しましょう。 相続で成年後見人が必要なケースとは? 遺産相続で成年後見人が必要なのは、「相続人の中に判断能力が著しく人」がいるケースです。相続手続きを進めていくためには、遺産分割協議を行う必要があるでしょう。協議では、相続人全員の同意が必要に。判断能力が低下した人が1人でも含まれている場合、分割協議そのものが進まなくなってしまいます。 仮に「判断能力が低下した状態のまま、遺産分割協議書を取り決めた」としても、協議そのものが無効と判断されてしまいます。たとえ家族であっても、遺産分割協議書への勝手なサインや押印は、犯罪になる恐れがあるので注意しましょう。本人が相続放棄すれば、その他の相続人で協議を進めることはできますが、判断能力や認知能力が低下した状態ではそれさえ難しいのが現実です。成年後見人がいれば、成年後見人のサポートのもとで、相続手続きを進めていけます。負債の方が多い場合、相続放棄の手続きも取れるでしょう。 一方で、相続人の中に判断能力が低下した人がいても、成年後見人が必要ないケースもあります。被相続人が生前に遺言を残していて、遺産相続の詳細や遺言執行者を指定していた場合が、こちらにあたるでしょう。 相続が発生した時点で誰に何を相続させるのか明らかになっていれば、遺産分割協議をする必要はありません。相続手続きもスムーズに進めていけます。判断能力が低下した人に財産を相続させたい場合でも、遺言執行者がいれば問題はありません。本人に代わって、相続に必要な手続きを済ませられるはずです。 判断能力が低下している人が相続人になると予想される場合、早めに準備を進めておくのもおすすめです。相続手続きがスタートする前であれば、「本当に成年後見制度が必要なのか?」「制度を利用しなかった場合にどのような不利益が予想されるのか?」といった点について、じっくりと考えられるでしょう。親族間で相談しながら、判断するのもおすすめです。 成年後見人を選任するための手続きは? 相続が発生したあとに、判断能力が低下した人のために成年後見人を選任する場合、親族や相続人が、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てましょう。すでに判断能力が低下している人の後見人を定める場合、誰が後見人になるのか、判断するのは家庭裁判所です。家族だからといって、自由に後見人になれるわけではないという点を、頭に入れておきましょう。 申し立て時に後見人候補者を立てることはできても、確実に選ばれるとは限りません。本人にどの程度のサポートが必要になるのか、家庭裁判所の判断のもとで決定されます。家族以外の、第三者の専門家が選ばれるケースもあります。専門職に就く人が成年後見人を務めることに決まった場合、報酬を支払わなくてはいけません。司法書士や弁護士に依頼した場合の報酬相場は、月に3~5万円と言われています。 成年後見人になるためには、特別な資格は必要ありません。ただし相続手続きのために成年後見人を選任する場合、「同じ相続人の立場にあたる人は、成年後見人にはなれない」という点に注意しましょう。相続人同士で後見人・被後見人という関係性になると、後見人が自分の利益を追求し、被後見人の利益を阻害する可能性があるためです。 この場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があるでしょう。特別代理人が必要かどうかは、状況によって異なります。具体的な条件については、相続手続きの専門家に相談するのがおすすめです。 成年後見人を選定する場合の手続き方法 成年後見人を選定する場合の手続き方法 相続手続きを進めるために成年後見人を選定する場合、以下の方法で手続きを進めていきましょう。 1.後見人を必要とする人の所在地にて、家庭裁判所に申し立てをする2.家庭裁判所にて審理が行われる3.成年後見人が選定される4.成年後見がスタートする 後見人を選定するための手続きでは、本人の判断能力の診断が必要です。かかりつけ医などに依頼し、状態を説明できるよう準備しておきましょう。また申し立てに必要な、その他の書類も収拾します。 家庭裁判所の審理では、申立人や後見人候補者はもちろん、本人との面接も行われます。親族の意向も確かめられるでしょう。これらの情報を総合的に判断し、「後見人が必要である」と判断されれば、後見人を選任します。審判の結果が送付されたあと2週間が経過したら、その内容が法務局に登記され、成年後見制度の利用がスタートします。 遺産分割協議を始められるのは、そのあとのこと。相続税の申告・納税期限を考えると、時間的な余裕はあまりありません。必要かどうかを素早く見極め、家庭裁判所に申し立ててください。 遺産相続で成年後見人が必要な場合を知って素早く対応しよう 遺産相続において、認知症などが原因で判断能力が低下した人が相続人に含まれる場合、成年後見制度の利用を検討してみてください。「遺産分割協議が進まない…」と悩む恐れもなくなるはずです。 実際に成年後見人が決まり、相続手続きを進められるようになるまでには時間がかかります。できるだけ早く動き出すことで、相続手続きをスムーズに進めやすくなるでしょう。

  • 遺産として残された預貯金は引き出せない?対処法と手続きの流れ

    身近な人が亡くなった際に、トラブルになりやすいのが「被相続人名義の預貯金の引き出し」についてです。預貯金や遺産として扱われるため、取り扱いには注意しましょう。「遺産として残された預貯金は引き出せない」と言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。対処法や必要な手続きについて詳しく解説します。 預貯金が引き出せなくなるのは口座が凍結されるから 亡くなった人の口座からお金が引き出せなくなるのは、該当の口座が凍結されるからです。これは、銀行側が相続トラブルを避けるために行っている措置。特定の相続人だけが遺産を独り占めしないよう、「銀行側が死亡を確認した時点で口座を凍結する」と定められています。 銀行側が口座名義人の死亡を知るきっかけはさまざまです。 ・家族からの連絡・新聞に掲載されるお悔やみ欄・担当する行員からの連絡 「死亡届を提出すると自動的に銀行に連絡がいく」というのは誤解です。また、名義人死亡に伴う口座の凍結について、銀行側が相続人に対して通知することはありません。「気づいたときにはすでに凍結されていた…」という事態も、決して少なくないでしょう。いつ口座が凍結されてしまうかわからないからこそ、亡くなる瞬間が近づいてきたら、ある程度の準備を整えておく必要があります。 凍結されない場合も預金の取り扱いには注意が必要 相続人が口座名義人の死亡を知らせず、銀行側もその情報を得ていない場合、口座は凍結されません。ATMとキャッシュカード、暗証番号さえあれば、生前と同じように預金を引き出せるでしょう。 葬儀代やその他の出費に対応するため、亡くなった人の口座からお金を引き出すケースは決して少なくありません。それ自体が、何らかの罪に問われるわけではないでしょう。 ただし、安易な出金が、後々の相続トラブルに発展しやすいのも事実です。亡くなった人の預貯金は遺産の一部。特定の相続人が、よくわからない目的で多額の現金を引き出していたら、「預金を独り占めしようとしている」と思われても仕方がないでしょう。トラブルを避けるためには、細心の注意を払って行動する必要があります。 病院代の清算や葬儀で必要なお金を捻出する目的であれば、何にいくら必要だったのか、わかるようにして管理してください。請求書や領収書、必要なメモ書きとともに保管すれば、その他の相続人も納得しやすくなるでしょう。その他の目的で預貯金を引き出したい場合、相続分に留まる範囲で行動しましょう。「自身の取り分から先払いで受け取った」と説明し、相続手続きを進めていけば、問題が起きる可能性は低くなります。 自分一人で隠しておくのではなく、その他の相続人に対して、「どのような目的でいくら出金するのか」を明らかにしておくのもおすすめです。お金の流れをできるだけ明らかにしておくことで、生前の口座管理やその他の出金について、余計な誤解を防ぐ効果が期待できます。 口座が凍結された場合の対処法は? 銀行側が名義人死亡の事実を把握し、口座が凍結された場合、各金融機関にて相続手続きを進めていく必要があります。必要な手順さえ踏めば、凍結は解除され、口座解約とともに預貯金が引き出されます。金融機関から必要な書類の説明を受け、準備したのちに郵送しましょう。 被相続人が遺言書を残していれば、その内容をもとに相続手続きを進めていきます。遺言書の原本や謄本が必要になるので準備してください。残された遺言が自筆証書遺言であった場合、家庭裁判所の検認済証明書も必要に。手続き完了までには少し時間がかかるため、できるだけ早く動き出すのがおすすめです。 遺言書がなかった場合、相続人同士の話し合いで遺産分割協議書を作成するケースもあるでしょう。この場合は、遺産分割協議書を金融機関に提出します。 このほかにも、被相続人や相続人の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、所定の届出書など、必要書類は決して少なくありません。相続人それぞれの思いを確認した上で、速やかに準備を進めていきましょう。 凍結された口座からお金を引き出す方法はある? 凍結された口座からお金を引き出す方法はある? 預金口座の凍結から、必要な手続きを経て解除されるまでには、一定の時間が必要になるでしょう。「このままでは葬儀代の支払いができない」「遺産分割協議が進まず、お金が足りない」といったトラブルに発展する可能性もあります。このような場合には、「相続預金の仮払い制度」を活用しましょう。 仮払い制度は、凍結された口座からでも、預金の一部を引き出せる制度です。出金できる金額は「1金融機関あたり150万円を上限とし、預金額の3分の1×仮払いを受ける相続人の法定相続割合まで」と定められていますが、必要書類さえ揃えれば、現金の引き出しが可能です。 仮払い制度を利用するためには、 ・被相続人の戸籍謄本・除籍謄本(出生から死亡まで)・相続人の戸籍謄本(全員分)・印鑑証明書(手続きする人) これらの書類が必要です。金融機関によっては、その他の書類の提出を求められるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。 また家庭裁判所を通じて手続きを行った場合、引き出せる金額に上限はありません。少し手間はかかりますが、必要なお金が多いときには活用してみてください。必要性が認められれば、全額引き出しも可能です。 銀行口座はできるだけシンプルにしておくのがおすすめ 被相続人の死後、凍結された銀行口座からお金を引き出すのは、決して簡単ではありません。相続発生後の手間をできるだけ少なくするためには、生前から保有する銀行口座の数を絞っておくのがおすすめです。引き落とし用の口座や普段のお金を出し入れする口座をまとめておけば、相続手続きも楽になるでしょう。 使わない銀行口座を解約しておくことも、立派な終活の一つです。親が終活をスタートしたら、ぜひアドバイスしてみてください。またもちろん、自分自身の終活に活かすのもおすすめ。残された人に負担をかけないよう、しっかりと準備を整えておきましょう。 被相続人名義の預貯金は遺産の一部!慎重な取り扱いを 被相続人名義の預貯金は遺産の一部!慎重な取り扱いを 身近な人が亡くなった時点で、その人名義の預貯金は「遺産」として取り扱われます。たとえ家族であっても、その財産は家族だけのものではありません。相続人全員に受け取る権利があるお金なのです。慎重な取り扱いを心掛けてください。 口座が凍結されれば引き出せなくなりますし、たとえ凍結されなくても、勝手に引き出せばトラブルの原因になってしまうでしょう。どうしてもお金が必要なときには、相続人同士の意思疎通が重要です。しっかりと話し合った上で、仮払い制度の利用を検討しましょう。

  • 不動産の遺産分割はどうすれば良い?4つの方法と注意点

    遺産分割の中でも、どうすれば良いのか悩みがちなのが「不動産」です。親族間トラブルを避けるためには、どう分ければ良いのでしょうか。4つの方法とそれぞれの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。相続人同士、納得して手続きできる方法を見つけましょう。 1.不動産をそのままの形で「現物分割」 1.不動産をそのままの形で「現物分割」 現物分割とは、不動産をそのままの形で相続する方法を指します。どう分けるのかによって、さまざまなパターンが考えられるでしょう。 ・相続人のうち1人だけが、家や土地をそのまま受け継ぐ・相続人の人数で土地を分筆し、それぞれの名義とする このほかにも、複数の相続人の中から2~3人のみが、分筆した土地を受け継ぐというケースも考えられます。相続対象となる不動産が複数ある場合には、誰がどの不動産を受け継ぐのか検討することになるでしょう。 ちなみに土地の分筆とは、もともとは1つの土地を法的に分ける作業を指します。分筆すればそれぞれで登記が可能ですから、理論上は「不動産を現金のようにしてきっちり分ける」ことも可能となるでしょう。ただし、分筆には各地で特別なルールが課せられている可能性も。中には「分筆不可」というケースもありますから、相続手続きの前にはしっかりとリサーチしておきましょう。 「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」場合、相続手続きはいたってシンプルです。ただし相続財産の中でも、不動産は高額になりがち。現金や預金といったその他の遺産が豊富にあればバランスを取りやすいですが、そうではない場合、不公平感が生じてしまう恐れもあります。不動産を相続する人に対して「ずるい」という感情が生まれれば、遺産分割協議がなかなかまとまらない可能性もあるでしょう。 2.そのほかの相続人に代償を支払う「代償分割」 先ほどお伝えした「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」という場合の、不公平感を軽減できるのが「代償分割」です。家や土地を受け継ぐ相続人は1人ですが、その1人がその他の相続人に対して代償金を支払い、相続の公平性を保ちます。 たとえば親名義の不動産で長男夫婦が同居していた場合、親の亡き後、長男夫婦が自宅に住み続けるためには、家や土地を相続する必要があるでしょう。仮に長男以外に次男・三男がいたとしたら、それぞれに相応のお金を支払います。不動産の価値が3,000万円なら、次男と三男それぞれの取り分は1,000万円ずつ。これを長男が、自分の財布から出すことになります。 代償分割のデメリットは、不動産を受け継ぐ人の金銭的負担が大きくなってしまう点です。経済的に余裕があれば良いですが、そうではない場合、「そもそも代償分割を選択できない」という可能性もあります。 一方で、マイホームでそのまま暮らしつつ、その他の相続人との間で公平に財産を分け合える点はメリットと言えるでしょう。相続対象の土地が分筆不可能であっても、代償分割なら相続人同士の争いごとが起きる可能性は低くなります。 3.不動産を売却してお金に換える「換価分割」 換価分割は、不動産を売却してお金に換えた上で、そのお金を相続人同士で分け合うスタイルを指します。マイホームは手元に残らないものの、相続人同士で平等に分配できるというメリットが期待できるでしょう。 不動産を換価分割する場合、相続手続きがスタートした後に、できるだけ早く手続きを進めていくことが大切です。対象の不動産がすぐに売れるとは限りませんし、時間に余裕がなくなれば、安い金額で手放さなくてはならなくなる可能性も高いでしょう。換価分割の場合、「不動産をできるだけ高く売ること」が重要なポイントに。そのための工夫は、ぜひ取り入れてみてください。 不動産を売却するためにはさまざまな手数料が発生します。相続時には、売却益から手数料を差し引いた上で、各相続人が自身の取り分を受け取ります。仮に不動産が3,000万円で売れたとしても、そのすべてが相続の対象になるわけではありません。手数料が300万円なら、残りの2,700万円を法定相続割合に応じて分配しましょう。 この方法であれば、代償分割とは違い、金銭的な余裕はなくても不動産を公平に分配できます。全員が「現金で受け取る」ため、差が生じにくく揉めごとに発展しにくいと言えるでしょう。ただし不動産を手元に残せないため、「被相続人が暮らしていた思い出の家や土地」を手放すことになります。同居していた親族がいれば、引越しを余儀なくされてしまうでしょう。 換価分割する場合には、遺産分割協議書にその旨と分配割合を記載するようにしてください。記載がないと、税金が二重に課せられてしまう恐れがあります。また誰がどういった形で登記し、売却手続きを進めていくのかについても考えなくてはいけません。そのあたりさえクリアできれば、全員が納得して進めやすい分割方法と言えるでしょう。 4.複数名義で引き継ぐ「共有分割」 不動産そのものを残したい一方で、不平等な分配は望まず、また代償分割も難しい場合に、選択肢として考えられるのが「共有」です。こちらの分割方法では、不動産を分割したり売却したりすることはありません。あくまでもそのままの形で引き継ぎ、相続人同士が複数人で不動産を所有します。 この場合、それぞれの持ち分は法定相続割合によって決められます。不動産の形はそのままに、「とりあえず今のままの形を維持できる」という点で、優れた分割方法と言えるでしょう。 ただし、一つの不動産を複数人で所有すれば、後々のトラブルにつながりやすくなります。たとえば物件のリフォームや売却を希望する場合でも、全員の許可が必要になるでしょう。また今回は相続人であった人が、いずれ被相続人になることも考えなくてはいけません。当然、共有分割した不動産の持ち分も相続財産に数えられますから、物件を取り巻く状況はさらに複雑になってしまいます。 一時的にはメリットがあっても、将来的に見ればトラブルの種。できる限り、その他3つの方法での分割を検討してみてください。 不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を 不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を 不動産相続で、どう分ければ良いのか悩む方は多いものです。一概にどれが正解とは言えませんから、自分たちにとってより良い方法を検討してみてください。 どれを選ぶべきか悩んだときには、専門家に相談したり、実際に不動産査定を受けてみたりするのもおすすめです。不動産相続の注意点や、相続対象となる物件の価値がわかれば、これから先どうしたいのか、相続人としての選択肢も見えてくるのではないでしょうか。

  • 「養子縁組」は遺産の相続税対策になる?仕組みや方法・注意点を解説

    平成27年1月実施の法改正により、相続税の基礎控除額が大幅に減額されました。これにより、相続税を支払わなくてはならない人の数も増加。だからこそ、相続税対策の重要性も増してきています。相続税対策の具体的な方法をリサーチしている方にとって、選択肢の一つになり得るのが「養子縁組」です。養子縁組が相続税対策になる理由や、実践する際の注意点を解説します。 養子縁組が相続税対策になる理由は? 養子縁組が相続税対策になる理由は? 養子縁組や相続税対策になる理由は、相続税の基礎控除額が決定される仕組みにあります。相続税は、受け継ぐ遺産の金額が基礎控除内におさまっていれば課税されません。基礎控除額を求める式は以下のとおりです。 【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】 このように、相続税の基礎控除額は法定相続人の数によって左右されます。仮に法定相続人が配偶者と子どもの合計2人であった場合、基礎控除額は4,200万円です。一方で法定相続人が10人いれば、9,000万円まで相続税が課税されない計算になります。 養子縁組は、法定相続人を増やす行為です。養子にも実子と同じように相続権が認められています。仮に養子縁組で法定相続人が2人増えれば、それだけで「相続税の基礎控除額も1,200万円アップする」というわけです。 また生命保険金や死亡退職金にも、相続人の数で金額が変わる非課税枠が用意されています。 生命保険金の非課税枠 → 【500万円×法定相続人の数】死亡退職金の非課税枠 → 【500万円×法定相続人の数】 すべてを活用した場合、養子による節税効果は非常に高いと言えるでしょう。 また仮に、養子縁組をしても相続税が発生してしまうとしても、相続人が増えれば1人当たりの相続財産の金額は減ります。すると相続税が課税される税率が低く抑えられるため、節税につながるというわけです。 相続税対策で養子縁組をする場合の注意点4つ 養子縁組で相続税対策をする仕組みは、いたってシンプルです。とはいえ、実際にこの方法で相続税対策を行った結果、トラブルに巻き込まれたり落とし穴にはまってしまったりするケースも少なくありません。4つの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★1.養子縁組で相続税対策できる人数には制限がある 上で説明したとおり、養子縁組による節税効果は十分にあります。とはいえ、「だったらどんどん養子を増やせばいい!」というわけにはいきません。法定相続人に含められる養子の数には制限があるからです。被相続人に実子がいる場合、法定相続人に含められる養子の数は「1人」です。実子がいない場合は「2人」まで認められています。 ただし養子を「特別養子縁組」で迎え入れていた場合、こちらのルールは適用されません。 特別養子縁組の場合、 ・子どもが15歳までであること・子どもの福祉のために必要であると認められること・裁判所の許可が得られること など、厳格な条件を満たす必要があります。 特別養子縁組で迎え入れた子どもは、実親との法律上の親子関係を解消し、新たに養親との間に親子関係を結ぶことに。血縁上は養親であっても、法律上は親子関係が認められているため、たとえ養子が3人以上いたとしても全員が法定相続人になれるというわけです。 ★2.養子は実子と同じように遺留分を請求できる 相続税対策を目的に養子縁組を行う場合、注意しなければならないのが、養子の相続分についてです。税金対策だけを目的にするなら、「養子を迎え入れて基礎控除額や非課税枠をアップさせたうえで、すべての財産を実子に残せるよう遺言を残せばよい」と思うかもしれません。 しかし法定相続人となった養子には、その他の相続人と同様に「遺産を相続する権利」が認められています。たとえ「実子にすべての財産を譲る」という遺言を残したとしても、養子には遺留分を請求する権利が認められているのです。遺留分をめぐってトラブルに発展する可能性があります。 ★3.相続税が2割加算される可能性がある 相続税の節税のために養子縁組をした結果、相続税が加算されてしまうケースもあります。それが、「孫を養子にして、祖父母から孫へと直接遺産を受け継ぐ場合」です。祖父母から父母、そして孫へと受け継がれる場合、相続税が2回発生する可能性があります。孫を祖父母の養子にして直接相続させれば、相続税を1回分節約できるでしょう。 とはいえこの方法は不公平なもの。相続税を2割加算することで、公平性を維持しています。知らないまま手続きすると「想像以上に相続税が高かった!」という事態に陥りかねませんから、注意してください。 ★4.その他の相続人の理解を得られない可能性がある 養子縁組で相続人を増やせば、相続税の負担は減らせるかもしれません。しかしそのほかの相続人たちにとっては、自分自身の取り分が減るということ。特に「遺産相続のために形式だけ養子になった」という場合、理解を得られない可能性があります。 このケースで特に多いのは、「同居する子どもの配偶者」を養子にして法定相続人にするケースです。同居する子どもの配偶者に生前非常にお世話になったとしても、法律上は法定相続人に含まれません。「より確実に遺産を受け取ってもらえるように」との思いで養子縁組するケースがあります。 とはいえ、同居していない子どもにとっては、「自身の取り分が減る」ということ。納得できない可能性も十分にあるでしょう。同居中の子ども夫婦と、兄弟姉妹夫婦の間で、相続をきっかけとした親族間トラブルに発展してしまう恐れがあります。 相続税対策の養子縁組でトラブルを起こさないために 相続税対策の養子縁組でトラブルを起こさないために 相続税対策に養子縁組をすれば、一定の効果が期待できるでしょう。とはいえ、しっかり検討しないまま決めてしまうと、思わぬトラブルを招いてしまう可能性も。まずは一度、相続に関する専門知識を有する専門家に相談するのがおすすめです。税理士を探し、アドバイスをもらいましょう。 相続税対策の方法は、養子縁組だけではありません。養子縁組以外の方法を選んだ方が、より効率的に相続税対策ができる可能性もあるでしょう。またそれ以前に、相続税の特例や控除を使えば、「わざわざ特別な対策を採らなくても、相続税の負担なく財産を引き継げる」というケースも存在しています。 その他の方法も検討したうえで「やはり養子縁組を」と思う場合には、その他の相続人に対する、丁寧な説明が必須です。なぜ養子縁組をするのか、なぜ養子にも財産を残したいのかが明らかになれば、遺産分割について納得したうえで受け入れられる相続人も多いはずです。相続税対策で養子縁組を選ぶのであれば、特に慎重に話を進めていってください。

  • 婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    夫婦が離婚する場合に、行われるのが財産分与です。婚姻中に築き上げた財産を分け合うことを指しますが、「何をどこまで財産分与するのか?」で悩む方は少なくありません。今回紹介するのは、「婚姻中に親から相続した遺産」の取り扱いについてです。財産分与の対象になるケースやならないケース、頭に入れておきたい基礎知識を解説します。 相続した遺産は基本的に「特有財産」 相続した遺産は基本的に「特有財産」 財産分与について、まず頭に入れておきたいのが以下の2つです。 ・共有財産・特有財産 共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産のこと。一方で特有財産とは、夫婦どちらかのみに帰属している財産を指します。 たとえば、結婚している最中に増えた貯金や、購入した不動産は共有財産に含まれるでしょう。これらの共有財産は、離婚によって夫婦それぞれに分与されます。一方で特有財産は、財産分与の対象にはなりません。たとえ婚姻中に得た財産であっても、配偶者とは無関係であり、「形成されるのに夫婦間の協力はなかった」と判断されるためです。 婚姻中に自身の親が亡くなり、遺産を受け継いだ場合、その財産は「特有財産」と判断されます。よって、遺産相続後に離婚することになっても、基本的に財産分与の対象には含まれません。財産分与の話は、夫婦間で「何が共有財産にあたるのか?」を確認した上で、遺産相続とは別に進めていく必要があるでしょう。 ちなみに、特有財産に含まれるのは、相続した遺産だけではありません。 ・独身時代に貯めたお金・自身の親から援助された住宅資金・別居後に取得した財産 これらの財産も特有財産と判断されるため、財産分与の対象外となります。 遺産相続で得た財産も「共有財産」とみなされる可能性がある? 遺産相続で得た財産も、状況によっては共有財産とみなされるケースもあります。この場合、もちろん遺産も財産分与の対象となるため注意しましょう。具体的には、「遺産相続で得た財産が、配偶者の協力のもとで価値が向上した場合」がこちらにあたります。 たとえば、遺産相続で受け継いだお金を運用し、その金額が大幅にアップしている場合、「遺産に対して配偶者の貢献がある」とみなされる可能性があります。住宅を受け継ぎ、リフォーム等でその価値が向上している場合も含まれるでしょう。配偶者の貢献がどの程度あるのかによって、財産分与の割合は違ってきます。法律で明確な基準が設定されているわけではないため、状況に応じて、事例ごとに判断されるでしょう。 また遺産相続で得た財産が、夫婦の共有財産と混ざってしまっている場合にも注意が必要です。すでに「家計の一部」として、生活費が出たり入ったりしていれば、やはりそれも共有財産としてみなされてしまう可能性があります。財産分与を望まないのであれば、遺産として受け継いだお金を生活費の口座に入れておくのは危険です。 何をどこまで共有財産とみなすのかは、財産分与をする際に揉めやすいポイントです。遺産相続と財産分与、両者に関連したトラブルを避けるためには、共有財産と特有財産、それぞれの性質を理解した上で適切に管理する必要があるでしょう。 相続財産を財産分与しなくても良い具体的な事例とは? 相続した財産が財産分与の対象になるのかどうか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、相続した財産が財産分与の対象にならないケースを2つ具体的に紹介します。ぜひ参考にしてみてください。 ★相続した遺産を共有口座で管理していた場合 まだ離婚を検討していない時期、一方が相続した財産を、夫婦共有の口座で管理するケースは決して珍しくありません。この場合、「夫婦共有口座のお金であること」を理由に、財産分与の対象になるのでは?と不安に思う方も多いのではないでしょうか。 相続した遺産を共有口座にて管理していた場合でも、「遺産として受け継いだ分の特有財産」と判別できる状態であれば、財産分与の対象にはなりません。あくまでも「夫婦の生活費と混ざっておらず、特有財産として独立した存在である」と示せることが重要です。遺産相続分がどれだけなのか、きちんと把握できる状態であれば、共有口座かどうかは問題にはなりません。 ★相続した不動産で暮らしていた場合 夫婦どちらかが相続した家で暮らしていた場合、ただ暮らしていただけであれば、「配偶者の貢献によって価値が上昇した」とは考えられません。よって、財産分与の対象にはならないと考えられます。相続後にリフォームや大規模修繕を行っている場合を除き、財産分与の対象にする必要はないでしょう。 遺産の財産分与を希望する場合は? ここまで解説してきたとおり、遺産相続で受け継いだ遺産は、基本的に財産分与の対象にはなりません。相続手続きが婚姻期間中に行われた場合でも、この原則には変わりがないという点を、頭に入れておきましょう。 一方で、「遺産相続と財産分与の基本を知ってはいるが、相続した遺産も財産分与の対象にしたい」という方もいるのではないでしょうか。この場合、夫婦間の合意のもとで、一方の特有財産である遺産を、財産分与の対象として加えることも可能です。 特有財産を財産分与の対象外とするのは、民法の基本。しかし夫婦間の合意のもとで財産分与について決定する場合、その対象や割合については、原則にかかわらず、夫婦間で自由に決定できるという特徴があります。 「せっかく自分が受け継いだ遺産を財産分与するなんて…」と感じるケースも多いでしょうが、夫婦が離婚に至るまでの事情はさまざまです。「一刻も早く離婚したいのに、財産分与について揉めて、なかなか話が進んでいかない…」という場合には、遺産として受け継いだ分も含めて財産分与することで、手続きをスムーズに進めていける可能性もあるでしょう。 自分にとって何を優先したいのか、はっきりさせた上で手続きを進めていくのがおすすめです。 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 婚姻期間中に遺産を相続した場合、その財産は夫婦どちらかのみに帰属する「特有財産」と判断されます。離婚する場合でも、基本的に財産分与の対象には含まれないため、まずは安心してください。 ただし相続後の遺産の取り扱い方や、管理方法によっては財産分与の対象と判断されてしまうケースもあります。万が一の場合に備え、「特有財産である」ことを明確にして、維持・管理していくと良いでしょう。 また離婚する際の状況によっては、遺産も含めて財産分与した方が良いケースもあります。自分にとってのメリット・デメリットが気になったら、ぜひ一度専門家に相談してみてください。相続した遺産と財産分与について、適切なアドバイスを受けられるのではないでしょうか。

  • 遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    子育てがひと段落すると、自分たちの老後について漠然とした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。遺産に関する不安も、その中の一つです。「将来のトラブルリスクを回避するため、具体的な対策をスタートしたい」と思いつつ、まず何からすれば良いのかわからない…と悩む方も少なくありません。法律に関連するお悩みの相談先として有名なのが「法テラス」ですが、遺産についても相談できるのでしょうか?法テラスでできることや、利用するメリットについて解説します。 そもそも法テラスとは? そもそも法テラスとは? 法テラスの正式名称は、日本司法支援センターと言います。国が設立した機関で、「法的トラブルを抱えている方に解決の道を示すための総合案内所」という役割を担っています。 法的なトラブルを抱えてしまった際に、「誰に相談すれば良いのかわからない…」「法律によって解決できる道があるのかどうかさえはっきりしない」と感じる方は少なくありません。法律による支援にたどり着けないまま、どんどん状況を悪化させてしまう方も多いものです。だからこそ法テラスでは、以下のような業務を行っています。 ・トラブル解決のための情報提供・問題を解決するための具体的な相談窓口・無料法律相談の提供や弁護士・司法書士費用等の立て替え 日常生活の中、何らかのトラブルを抱えてしまった場合でも、まずは一度法テラスに相談するのがおすすめです。トラブルを解決するため、具体的にどういった手段を検討できるのか、専門家によるアドバイスを受けられるでしょう。より具体的なサポートをしてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらうことも可能です。 また一定の収入・資産要件を満たしている人向けに、無料で法律相談を実施したり、専門家費用を立て替えたりする制度も用意されています。法テラスは基本無料で利用できる機関なので、ぜひ活用してみてください。 法テラスを活用して遺言や遺産に関する疑問を解消 遺産や遺言には、法律が深く関わってきます。法律の知識がないまま自己流で終活を進めた場合、後々トラブルにつながってしまう可能性も。さまざまな不安を解消するため、また法的な基礎知識を身につけるため、ぜひ法テラスを活用してみてください。法テラスで相談できる内容の具体例は、以下のとおりです。 ★将来の遺産相続のために遺言書を残したい 終活ブームの今、「遺産相続にまつわるトラブルを防ぐためには遺言書が有効」という情報は広く知れ渡っています。しかし本当にトラブルを防ぎたいなら、単純に「遺言を残しておけばOK」とだけ考えるのは危険。「法律知識をもとに、適切な形で残された法的に有効な遺言書」を用意しておく必要があります。遺留分や法定相続人の範囲など…適切な知識がないまま遺言を残しても、かえってトラブルを招く結果になってしまうでしょう。 法テラスに相談すれば、正しい形で遺言を残すために必要な、法制度に関する情報を提供してもらえます。また「自分だけでは不安…」という場合には、より具体的な相談を受け付けてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらえるでしょう。専門家に相談しつつ、自分にあった遺言書を残せるはずです。 ★両親の遺産を相続する際に、親族間で争いが起きている 子育てがひと段落する年代は、自分自身が相続人になる機会も多い時期です。両親の遺産を相続する際に、すでに親族間で争いが起きてしまっているような場合も、法テラスにて相談が可能。相続に関する法律知識を提供してもらえるほか、自身の代理人となって動いてくれる、弁護士の紹介も受けられます。 親族間で直接やりとりすると、遺産相続問題は泥沼化してしまう恐れも。第三者である専門家の手を借りることで、話し合いをスムーズに進めていける可能性も高まるでしょう。 ★相続放棄をしたいが、何からすれば良いのかわからない 相続放棄の手続きは、相続が発生してから、一定期間内に適切に行わなければいけません。まず自分が何をするべきなのか、いつまでにどういった手続きを終えなければならないのか、法テラスにて相談に乗ってもらえます。もちろんこの場合も、専門家事務所の紹介を受けることが可能。相続放棄以外にも、「親が亡くなり、借金を代わりに返済するよう言われてしまった…」といった状況でも、適切に対処できるでしょう。 法テラスを利用するメリット3つ 初めての法律相談を、ためらう方は少なくありません。法テラスを利用するメリットを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★基本無料で気軽に相談できる 法テラスへの相談は、基本無料で利用できます。個別の事例に対して、具体的なアドバイスはもらえませんが、法律に関する基本的な情報提供を受けることは可能。相談は何度でもできますから、法律に関する知識を、少しずつ深めていけるのではないでしょうか。 法テラスへの相談は匿名でできますし、また電話やメール、直接相談など、さまざまな相談形式が整っています。自分に合った相談スタイルで気軽に利用できる点が、メリットだと言えます。 ★相続に強い専門家につないでもらえる 遺産相続に関する各種手続きを専門家にサポートしてもらう場合、依頼先の専門家は、「遺産や相続に強い人」を選ぶ必要があります。もともとのツテでもない限り、誰に相談すれば良いのか悩む方も多いでしょう。法テラスに状況を伝えて相談窓口を紹介してもらえば、相続問題に強い専門家とつながれるはずです。 「自分で相談先事務所を選べない」という点は、法テラスを利用するデメリットとも言われています。一方で、「相続問題に強い専門家を自分自身で見つけ出す自信がない…」という場合には、非常に大きなメリットとなるでしょう。 ★無料相談や費用の立て替え制度を利用できる 法テラスには、収入や保有資産が少ない方に対する扶助制度も用意されています。「遺産相続について困っているが、収入がなく、専門家にサポートを依頼するのが難しい…」といった場合でも、法テラスなら無料相談や費用の立て替えに応じてもらえます。 法テラスの民事扶助制度の利用を希望する場合、収入や資産に関する要件を満たしていることを示すための書類が必要です。まずは一度、法テラスの相談窓口に問い合わせをしてみてください。自身が要件を満たしているか、またどのような書類を用意すれば良いのか、具体的な情報をもらえるでしょう。 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産や相続、遺言に関するお悩み事を抱えている際に、誰に相談すれば良いかわからず、悩んでしまう方は少なくありません。法テラスなら、誰でも無料で気軽に相談できますから、ぜひ活用してみてください。法律に関する情報を提供してもらったり、相談先窓口を紹介してもらったりすれば、これから自分が何をするべきか、具体的に見えてくるのではないでしょうか。

  • 公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    近年、「遺言書を残して遺産トラブルを回避しよう」と考える方が増えてきています。自身が残した遺産を巡って、大切な人たちが争うとしたら…これほど悲しいことはありません。なんとかして回避したいと思うのは、当然だと言えるでしょう。 しかし実際には、故人が失くした遺言書をきっかけに、さらなるトラブルが発生してしまう事例も存在しています。遺産トラブルを防ぐのに有効なスタイル、「公正証書遺言」について、わかりやすく解説します。 なぜ遺言書を残しても遺産トラブルが発生するの? 終活を意識し始め、各種情報サイトをチェックしてみると、「遺産トラブルを予防するためには遺言書が有効」という情報を目にする機会も多いのではないでしょうか。確かに遺言書が残されていれば、故人の思いに沿った相続が可能に。親族間のトラブルを予防するため、一定の効果が期待できるでしょう。 しかし実際には、遺言書が残されていても、遺産トラブルに発展してしまう事例は決して少なくありません。その理由は以下のとおりです。 ★1.遺言書が法的に有効と認められないから 遺言書にはいくつかのタイプがあり、いつでも好きなときに、自分の手で書き残せるものもあります。しかしこの場合、遺言書に必要な要件を満たしておらず、「法的に無効」と判断されてしまうケースも少なくありません。 遺言書が残されていても、法的に有効だと認められなければ意味がありません。相続人はあらためて遺産分割協議を行い、遺産相続の詳細を決定しなければならないのです。遺言書で遺産を多くもらえるように指定されていた人は、当然「故人の遺志」を尊重するよう求めるでしょう。一方で、その他の人は法定相続分に沿った手続きを求める可能性が高いです。法的に無効な遺言書によって、故人の遺志を確認できてしまうが故のトラブルだと言えるでしょう。 ★2.遺言書に記された内容が遺留分を侵害しているから 法的に認められる形で遺言書が残されていた場合でも、油断は禁物です。その内容によっては、やはり親族間のトラブルが発生してしまう恐れがあります。中でも注意しなければならないのが、遺留分についてでしょう。 遺留分とは、相続人が相続財産の中から最低限相続できる財産のこと。たとえ「全財産を○○に譲る」という内容が残されていたとしても、その他の相続人は遺留分を請求できます。最低限の財産を相続できるとはいえ、「いったいなぜこのような遺言が残されたのか?」という点で、トラブルが発生する恐れもあります。 ★3.遺言書に本人の意思が反映されているとは限らないから 被相続人が自分一人で作成し、自宅で保管されていた遺言書の場合、その内容の信ぴょう性がもとで、トラブルに発展するケースもあります。 ・認知能力が低下した状況で、誰かに書かされたのではないか?・すでに内容が改ざんされているのではないか? もしも本当に、遺言の強制や誘導、改ざんといった事実があれば、そこに故人の遺志は反映されていないことに。その信ぴょう性を巡って、騒動に発展する事例も決して少なくありません。 公正証書遺言とは?トラブル回避に有効な理由 上で説明したようなトラブルは、遺言の残し方に工夫することで予防できます。ぜひ公正証書遺言に注目してみてください。 公正証書遺言とは、公証人関与のもとで遺言書を作成する方法を言います。作成段階から専門家に手を貸してもらえば、 ・遺言書が法的に無効と判断されるリスクを防ぐ・遺言の内容についても事前に専門家に相談に乗ってもらえる・あとで内容が改ざんされる恐れがない といったメリットが発生します。遺言書にはさまざまな種類がありますが、公正証書遺言は「もっとも確実性の高い遺言」と言われているのです。 公正証書遺言は、第三者である「公証人」が作成します。出来上がった遺言書は、公文書として扱われ、いざ遺言が執行される瞬間まで厳重に管理されるでしょう。遺言を残した時点での故人の「意思」が、争点になる可能性も低くなります。 ただし公正証書遺言を作成するためには、相応の手数料を支払う必要があります。また作成までには、それなりの時間がかかってしまうでしょう。遺言書を残したいと思ったら、できるだけ早く行動に移すよう注意してくださいね。 公正証書遺言の残し方や費用を解説 公正証書遺言の残し方や費用を解説 ではここからは、実際に公正証書遺言を残すための流れや費用をチェックしていきましょう。公正証書遺言を作成するための手順は、以下のとおりです。 1.公証人との間で事前打ち合わせを行う2.証人になってくれる人を2人探す3.証人2人と共に公証役場に行き、遺言書を作成する4.同じ内容の公正証書遺言を3通作成し、1通を公証役場に保管する 公正証書遺言を作成する場合に、最初にやらなければならないのが公証人との打ち合わせです。公証役場に出向いたからといって、その場ですぐに遺言を作成できるわけではありません。遺言に残す内容など、事前の打ち合わせを済ませておきましょう。 また証人には、未成年や将来相続人になると推定される人は指定できません。また公証人の配偶者や、四親等以内の血族も指定できないというルールがあります。 信用できる人物2人に依頼するのが一番ですが、手間を省きたいなら専門家に依頼するのもおすすめです。事前打ち合わせや公証役場での手続きについても、専門家がしっかりとサポートしてくれるでしょう。遺留分についても、トラブルになりにくい遺言の残し方をアドバイスしてもらえるはずです。 公証役場では、公証人の本人確認や遺言内容の確認、公証人の筆記・読み聞かせといった手続きが行われます。遺言者と証人2名、さらに公証人が署名捺印することで、正式な遺言として認められるでしょう。 公証役場での手続きに必要な時間は、およそ30分前後です。また公正証書遺言を作成するためには、公証役場に手数料を支払わなければいけません。遺言の価格に応じて手数料の金額が変わってくるため、注意してください。 財産が100万円以下であれば手数料は5,000円です。一方で財産の価額が5,000万より上で1億円以下の場合の手数料は4万3,000円です。自身の財産の金額に合わせて、どれだけ必要になるのかあらかじめチェックしておきましょう。 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産相続について、「まさか我が家でトラブルなんて…」と考える方は少なくありません。しかし実際には、相続に関して割り切れない思いを抱く人は多いもの。非常に根の深い、親族間トラブルの原因になる可能性もあるのです。将来のトラブルを予防するために、ぜひ公正証書遺言についても検討してみてください。 作成時に手間はかかっても、「法律的にほぼ確実な遺言書が残せる」というメリットは非常に大きいと言えるでしょう。トラブル回避を目的に遺言書を残すのであれば、ぜひ積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

  • 遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    40代~50代になると、いつか発生するであろう「相続」について、気になる方も多いのではないでしょうか。実家の親が亡くなれば、子どもはほぼ確実に法定相続人に数えられます。いざ相続が発生しても、「具体的に何をどう手続きすれば良いかわからない…」と悩む方は少なくありません。 遺産相続の手続きは、具体的にどう進めていけば良いのでしょうか。自分で手続きする場合の流れや注意点について解説します。 遺産相続とは?大まかな流れ 遺産相続とは、亡くなった人が所有していた財産を、相続人で分け合う手続きを言います。具体的にどういった流れになるのか、把握しておきましょう。遺産相続の流れは、「故人が遺言書を残しているかどうか?」によって、大きく違ってきます。 遺言書が残っている場合と、残っていない場合、それぞれについて大まかな流れをチェックしてみましょう。 ★遺言書が残されている場合 故人の遺言書が見つかった場合の流れは、以下のとおりです。 1.必要に応じて家庭裁判所にて検認の手続きをする2.遺言書の中身を確認する3.遺言書の内容に沿って、遺産を分割する4.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書とは、故人の最期の思いを記した正式な書類です。法的効力を持つ正式な遺言書であれば、そこに記された内容に沿って相続手続きを進めていくのが基本。たとえ遺言書に記されていた内容が法定相続分とは異なっていても、遺言書の方が優先されます。 親族間で協議する必要がないため、争いごとを避けられる可能性も高いでしょう。また相続が発生してから、慌てて相続財産の調査をする必要もありません。 ただし遺言書が自宅で発見された「自筆証書遺言」の場合、家庭裁判所による「検認」と呼ばれる手続きが必要です。封がしてあるものを勝手に開けて中身を確認してしまうと、偽造や変造を疑われる原因に。5万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意してください。 遺言書の検認には、家庭裁判所への申し立てが必要です。以下の必要書類を揃えて手続きしてください。 ・申立書・遺言者の戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本(出生時から死亡時までのすべてを揃えて提出)・相続人の戸籍謄本(全員分) 検認には、少なくても1ヶ月以上の時間が必要になります。検認が必要な遺言書が発見されたら、できるだけ素早く申し立てを行いましょう。 ちなみに、残されていた遺言が公正証書遺言であったり、自筆証書遺言であっても法務局にて保管されていたりした場合には、検認は不要です。偽造や変造の疑いがないため、すぐに内容を確認し、その後の手続きを進めていけます。 ★遺言書が残されていない場合 遺言書が残されていない場合は、遺産相続について、相続人が協力して決定する必要があります。こちらの場合の大まかな流れは以下のとおりです。 1.相続人に関する調査を行い、確定する2.相続財産に関する調査を行い、確定する3.遺産分割協議を行う4.協議の内容に基づき、遺産分割協議書を作成する5.遺産分割協議書に基づいて、遺産を分割する6.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書が残されていない場合、「誰が相続人になるのか?」「何が相続対象に含まれるのか?」を明らかにするところからスタートします。必要に応じて、専門家の手を借りることも検討してみてください。こうして調査された内容をもとに、遺産分割協議を行います。誰が何を相続するのか、この協議にて確定しましょう。あとはその内容に基づいて相続を完了させます。 言葉にすると非常にシンプルですが、実際には遺産分割協議がまとまらない事例や、話がこじれて訴訟にまで発展してしまう事例も少なくありません。ひとつひとつの問題を、丁寧に解決していく必要があるでしょう。 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産相続の手続きを自分で進めていく場合、注意したいポイントのひとつが、相続放棄についてです。相続する財産の状況によっては、放棄した方が良いのかどうか、ぜひ冷静に検討してみてください。 遺産相続では、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も対象になります。相続する遺産を調査した結果、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いようであれば、相続放棄を検討した方が良いでしょう。相続放棄には、「相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内」という期限が存在しています。 遺言書の検認手続きや遺言書が残されていない場合の財産の調査は、相続放棄する可能性についても考慮した上で、時間に余裕を持って進めていくのがおすすめです。 相続放棄の手続きも、家庭裁判所にて進めていきます。申し立てが認められれば、「最初から相続人ではなかった」と法律的にも認められるでしょう。 ただし相続放棄すれば、これから先も含めて、すべての財産を相続する権利を一切失うことになります。また、もし自分よりも低順位の相続人がいれば、相続人は次の順位へと移っていくでしょう。こちらも考慮する必要があります。 遺産分割協議書の作成方法は? 遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書に記します。自分で手続きする場合、以下の点に注意してください。 ・相続人や財産を、正確に記載・相続人全員分の、実印での捺印が必要 遺産分割協議書は、預貯金の解約や相続登記などで使用する正式な書類です。内容が不十分であれば、後々トラブルに発展する可能性も。協議で決まった内容を、正確に記載してください。また相続人全員分の実印が必要になる点も、早めに確認しておきましょう。 忘れてはいけない相続税の申告 相続手続きが完了したあとに、忘れてはいけないのが相続税の申告についてです。相続税の申告には、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があります。申告が必要な場合には、忘れないように注意しましょう。 相続する財産の総額が、相続税の基礎控除額に収まる場合は、相続税を申告する必要はありません。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求められます。 【相続税の基礎控除額 =3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】 亡くなった配偶者の遺産を受け継ぐ場合など、基礎控除額に収まらない場合でも、相続税が発生しないケースは多々あります。ただしこの場合、「相続税を申告した結果、ゼロ円になった」と判断されるため、申告手続きそのものは必要になるため、注意してください。 相続財産の調査の段階で、「相続税の基礎控除額を超えそうだ」と判断した場合、相続税の申告についても余裕を持って進めていきましょう。 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 比較的シンプルな遺産相続であれば、自分自身で手続きを進めていくことは十分に可能です。それぞれの手続きの期限を意識しつつ、ひとつずつ確実にこなしていきましょう。一方で、以下のような場合は、専門家の手を借りることをおすすめします。 ・仕事が忙しく、平日昼間に動けない・面倒な手続きが苦手・遺産分割協議で揉める可能性が高い 自分で進めていく場合には、ぜひ今回紹介した情報を参考にしてみてくださいね。

  • 「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    ひと言で「遺産」と言ってもその実態はさまざまで、状況によっては「できれば受け取りたくない…」と考える方もいるでしょう。こんなとき、あらかじめ知っておきたいのが遺産を放棄するための手続きについてです。 このコラムでは、遺産を放棄するための手続き、「遺産放棄」について詳しく解説します。混同されやすい「相続放棄」との違いについても紹介するので、ぜひ今後の参考にしてみてください。 遺産放棄(財産放棄)とは具体的にどういうこと? 遺産放棄(財産放棄)とは、相続権を持っているにもかかわらず、「遺産を相続しない」という立場を表明することを言います。被相続人が亡くなり相続がスタートすると、まずは遺言書の有無が確認されるでしょう。遺言がなければ、その遺産は遺産分割協議によって、どう分けられるのか決定されます。この遺産分割協議にて、「財産を相続しない」と表明すれば、それが遺産放棄(財産放棄)に当たります。 遺産放棄は、法律で明確に定められた手続きではありません。よって事前に特別な準備をする必要もなく、その他の相続人に自身の決意を伝えればOKです。遺産分割協議でその希望が受け入れられれば、無事に遺産を放棄できるでしょう。 また遺産放棄を宣言したからといって、相続人としての立場を失うわけではありません。他の相続人との話し合いにはなるものの、「この遺産は放棄したいが、こちらだけは相続したい」など、柔軟な対応も可能です。後になって新たな遺産が見つかったときにも、またあらためて、相続人としての立場で話し合いに参加できるでしょう。 相続放棄との違いは? 遺産を受け取らない道を考えたとき、もう一つ検討したい道が「相続放棄」です。遺産放棄とよく似た言葉ではありますが、両者の意味合いは大きく異なります。それぞれの意味を正しく把握して、自身の思いに沿った方を選択しましょう。 相続放棄とは、相続人としての権利、つまり相続権そのものを放棄するための法的手続きです。法的にも自身の立場を明確にするため、一定期間内に家庭裁判所にて、必要な手続きを済ませる必要があります。家庭裁判所にて相続放棄が認められれば、その人は「最初から相続人ではなかった」とみなされるでしょう。相続順位は次の人に回され、今後何があっても、相続人としての権利を主張することはできなくなります。 相続放棄の手続きができる期間は、「相続を知った日から3ヶ月間」です。この期間を過ぎると、相続放棄の手続きは選択できなくなりますから、十分に注意してください。 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 遺産放棄が他の相続人に自身の意思を伝えるだけでOKであるのに対して、相続放棄するためには、家庭裁判所への申し立てが必須です。「どちらにしても財産を受け取らないのだから、より簡単な遺産放棄で十分なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、この考えは非常に危険です。 なぜなら、被相続人が残す「遺産」とは、常にプラスであるとは限らないからです。万が一、マイナスの財産が相続財産に含まれれば、遺産放棄の意思表明だけでは不十分です。債権者は、相続人に対しても借金を返済するよう求める権利が認められています。法律的にも「自分は相続人ではない」と明らかにしなければ、被相続人の代わりに、自身が借金を背負ってしまうでしょう。 いくら「自分は遺産を受け取っていないので」と説明しても、債権者には通用しません。法律をもとに動いている債権者の取り立ては、そのまま継続してしまいます。 プラスの財産とマイナスの財産の両方が残されている場合には、遺産放棄で十分なのか、それとも相続放棄の手続きを取らなければならないのか、特に慎重に判断する必要があります。遺産分割協議においても、「どうせ財産を相続しないから」と安易に考えるのは辞めましょう。どの遺産を誰がどのように引き継ぐのかを明らかにした上で、自身の立場を明確にするのがおすすめです。 遺産放棄を選んだ方が良いケースとは? 遺産放棄にも相続放棄にも、メリットとデメリットの両方があります。相続放棄のメリットは、相続人としての権利を放棄したという事実を、法的にも認められる点です。一方で、柔軟な対応が難しいというデメリットがあります。以下のようなケースでは、相続放棄よりも遺産放棄を選んだ方が、メリットが大きくなると予想されます。ぜひじっくり検討してみてください。 ★1.基本的には遺産を放棄しつつ、一部のみ受け取りたい場合 遺言書が残されていない場合の遺産相続では、法定相続分に沿って遺産を分配します。しかし、常に遺産を等分に分けられるとは限りません。特に、遺産に土地や建物といった不動産が含まれている場合、相続割合は非常に複雑になるでしょう。 たとえば、「不動産は要らないが、現金だけは受け取りたい」という場合、遺産放棄が有効です。不動産についてのみ遺産放棄をして、その他の財産については受け取りましょう。遺産放棄の手続きを上手に活用すれば、親族間の余計なトラブルを防止できる可能性があります。 ★2.将来的にさらに遺産が発見される可能性がある場合 被相続人が亡くなったあと、一定期間経ってから新たな遺産が発見されるケースもあります。この場合、最初の相続で相続放棄の手続きをすると、後で見つかった遺産についても相続する権利を失ってしまうでしょう。 「今現在明らかになっている遺産は受け取らない」と決めていても、将来的に状況が変化する可能性はゼロではありません。わざわざ相続放棄をするメリットがないのであれば、遺産放棄に留めておくのがおすすめです。将来遺産が発見された場合に、あらためて相続するのか、遺産放棄をするのか、それとも相続放棄をするのか、その時点の状況を考慮して決断できるでしょう。 ★3.相続権を次の順位に回したくない場合 相続放棄をしても遺産放棄をしても、「自分が遺産を受け取らない」という結果に変わりはありません。しかし「誰が相続人になるのか?」という視点で考えると、2つの手続きには非常に大きな差があるのです。 遺産放棄を選択する場合、自分自身が相続人として、「遺産を受け取らない」と決断することに。相続権は、当然自分のもとに残ります。一方で相続放棄をすれば、相続権は次の順位へと移っていきます。相続順位が移り、相続人の範囲が広がれば、さらなるトラブルを引き起こしてしまうケースもあるでしょう。 こうしたトラブルを防ぎたい場合も、「相続人の立場のまま遺産だけを受け取らない」遺産放棄には、意味があります。 今回紹介した3つのケースは、どれも「相続財産に負債が含まれていない場合」を想定しています。まずは負債がないかどうかを確認し、その上で、遺産放棄するべきかどうか、検討してみてくださいね。 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 自身の終活について考え始める時期は、身近な人からの相続について考え始めるべき時期でもあります。「遺産を受け取らない」という選択肢についても、ぜひ慎重に検討してみてください。 遺産放棄と相続放棄は、言葉は似ていますが、もたらす結果は大きく違ってきます。それぞれの基礎知識を身につけた上で、自分にとって必要な手続きを選択するのがおすすめです。

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