「遺言書情報証明書」とは?記載内容や使い方・請求方法まで

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「遺言書情報証明書」とは?記載内容や使い方・請求方法まで
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令和2年より、自筆証書遺言を法務局に保管できる「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしています。この制度を利用するなら、ぜひ「遺言書情報証明書」についても、基礎知識を学んでおきましょう。
遺言書情報証明書とはどのような書類で、相続手続きにおいてどう使えば良いのでしょうか。必要になった場合の請求方法まで、詳しく紹介します。

遺言書情報証明書とは?

遺言書情報証明書とは?
遺言書情報証明書とは?

遺言書情報証明書とは、遺言書の内容を証明できる重要書類の一つです。証明書には、以下のような情報が含まれています。

・遺言者の氏名
・出生年月日
・住所および本籍(または国籍等)
・遺言書が作成された年月日
・遺言書の保管された年月日
・遺言書が保管されている遺言書保管所
・保管番号
・受遺者の氏名と住所(※受遺者がいる場合のみ)
・遺言執行者の氏名と住所(※遺言執行者がいる場合のみ)
・遺言書の画像情報(※目録を含む)

つまり、遺言書情報証明書を取得すれば、遺言書に記された情報を把握できるというわけです。

令和2年の自筆証書遺言書保管制度のスタートにより、遺言書情報証明書にも注目が集まっています。というのも、遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合、相続人は遺言書の原本を目にする機会がないため。画像データとして保管されていた遺言書の内容を遺言書情報証明書として取得し、各種相続手続きを進めていくことになります。

「遺言書が原本ではなくても相続手続きが可能なのか?」と不安を感じる方もいるでしょうが、遺言書情報証明書であれば大丈夫です。銀行に持ち込んで被相続人の預金を解約することも、不動産の相続登記を行うことも可能になります。

遺言書情報証明書のメリット

まだまだ新しい制度のため、「遺言書情報証明書がなぜ必要なのかよくわからない…」と感じる方も多いのではないでしょうか。遺言書情報証明書を利用するメリットについてお伝えします。

遺言書開封時の検認が必要ない

自筆証書遺言で遺言書が残されている場合、相続が発生しても、すぐにその内容を確認できません。偽造や変造を防ぐため、家庭裁判所にて「検認」と呼ばれる手続きが必要になります。検認とは、遺言書の内容を裁判所で最初に確認し、問題がないことを証明するためのもの。遺言書の公平性や正確性を保つために欠かせない手続きではありますが、「申し立てから検認の完了まで、時間がかかってしまう」というデメリットがあります。

被相続人が同じ自筆証書遺言を残していた場合でも、法務局に預け、相続人が遺言書情報証明書を取得する形式であれば、検認は必要ありません。法務局から入手した証明書をその場ですぐに確認し、その内容のもと、具体的な相続手続きをスタートできるでしょう。

自筆証書遺言書保管制度で法務局に預けられた遺言書は、実際に相続が発生するまで、遺言者以外はその内容を確認できない仕組みになっています。保存された画像データを提示する遺言書情報証明書であれば、偽造や変造の恐れはありません。よって検認手続きが不要となるわけです。被相続人にとっては、より正確な遺言書を残せるというメリットがありますし、相続人にとっては相続手続きの手間を省けるというメリットが発生します。

全国どこからでも交付請求ができる

ここまでお伝えしてきたとおり、遺言書情報証明書は、遺言書の原本から作られた画像データです。その情報は、日本全国どの遺言書保管所からでも手続きが可能で、楽に取得できるでしょう。わざわざ遠方まで出向く必要もありませんし、相続人にとって利便性の高い保管所を選択することも可能です。こちらも、相続手続きの手間削減につながるでしょう。

3.自筆証書遺言書保管制度のメリットも多い
遺言書情報証明書は、自筆証書遺言書保管制度に付随する証明書です。自筆証書遺言書保管制度を利用するメリットも、決して少なくありません。

たとえば自筆証書遺言書保管制度を使えば、遺言者が亡くなった際に、遺言書の存在をあらかじめ指定しておいた相続人等に通知できます。自筆証書遺言の場合、せっかく遺言書を残しても、発見されないまま終わってしまうというケースも存在しています。通知があれば、このようなリスクはなくなるでしょう。

また実際に遺言書を作成して法務局に保管する際には、窓口にて遺言書の形式ルールチェックを受けられます。遺言書のルールが守られておらず、法的に無効と判断される恐れがある場合、アドバイスをもとに訂正できるでしょう。遺言の内容そのものへのアドバイスではありませんが、遺言書無効リスクを低減できるはずです。

これらのメリットを頭に入れて、ぜひ遺言書情報証明書および自筆証書遺言書保管制度の活用について検討してみてください。

遺言書情報証明書を取得するための流れ

遺言書情報証明書を相続人が取得できるようになるのは、遺言者が亡くなったあとです。生存中は、遺言書の存在を知っていても証明書の取得はできませんので注意してください。取得手続きは、以下の流れで進めていきます。

1.交付請求を行う遺言書保管所を決定する
2.必要事項を記載し、交付請求書を作成する
3.希望する遺言書保管所を予約する
4.予約日時に遺言書保管書へ行き、交付請求書と必要書類を提出する
5.証明書を受け取る

交付請求を行う遺言書保管所は、日本全国どこでも選べます。ただし実際に保管所に出向いて請求手続きを行う場合、事前予約が必須。「わざわざ時間を合わせるのが難しい」という場合には、郵送での手続きを選んでみてください。この場合、予約も訪問も必要ありません。

遺言書情報証明書を交付してもらうために必要な書類は、以下のとおりです。

・遺言者の死亡を確認できる書類(戸籍謄本等)
・請求者の住民票の写し
・法定相続情報一覧図の写し
・相続人である事実が確認できる戸籍謄本や法人の代表者事項証明書など
・身分証明書(顔写真付き)
・手数料(1通につき800円)

法定相続情報一覧図の写しがない場合は、遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の住民票の写しを用意しましょう。二度手間にならないよう、必要な書類についてあらかじめしっかりと確認した上で、手続きを進めてください。

遺言書情報証明書を取得して相続手続きをスムーズに

遺言書情報証明書を取得して相続手続きをスムーズに
遺言書情報証明書を取得して相続手続きをスムーズに

遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用して遺言を残していた場合、相続手続きを進めるためには遺言書情報証明書を取得する必要があります。取得時には手間と時間、そして手数料が発生しますが、検認手続きは不要に。そのまま相続手続きを進めていけます。基本的な知識を身につけた上で、制度を活用してみてください。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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