会社勤めをしている人にとって、厚生年金とは、「よくわからないまま加入している年金制度」といったイメージも強いのかもしれません。保険料は給与から天引きされるため、「支払っている」という意識が乏しい点も特徴的だと言えるでしょう。
とはいえ将来の保障を考える上で、厚生年金にまつわる基本的な知識はマスト。身につけておいて損はありません。厚生年金の種類や、将来の保障を考える際のポイントなどについて、わかりやすく解説します。
厚生年金制度とは?

まずは厚生年金制度の概要についておさらいしておきましょう。
日本の公的年金は、基礎年金と厚生年金の2つで構成されています。基礎年金とは、原則として20歳以上のすべての国民に加入が義務付けられているもの。加入期間は60歳まで続きます。
一方で厚生年金に加入できるのは、会社員や公務員として仕事をしている人のみです。厚生年金加入は、法人もしくは5人以上の従業員を雇用している個人事業主に課せられた義務の一つ。保険料は事業主と従業員が半分ずつ支払う仕組みになっています。
基礎年金だけではなく厚生年金にも加入している人は、将来的に受け取る年金額がアップします。基礎年金とは違い、厚生年金の保険料は、毎月の給料やボーナスの金額によって違ってくるもの。受け取る給料の額が大きければその分保険料も高くはなりますが、将来受け取る年金額も増えるでしょう。厚生年金で自分が支払う保険料が多くなるということは、その分会社負担分も増えるということです。長い目で見れば、非常にお得な制度です。
厚生年金の種類
厚生年金と言えば、「老後の生活を支えるための資金」というイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、厚生年金の種類はそれだけではありません。3つの種類を紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
★老齢厚生年金
「年金」と言われて、最初に思いつくのはやはり老齢年金でしょう。厚生年金で受給できる老齢年金は、「老齢厚生年金」と呼ばれています。基本的には、65歳から受給可能です。仕事から引退したあと、老後の生活を支えるお金と言えるでしょう。
老齢厚生年金は、老齢基礎年金にプラスして支給されますが、受給額は以下のようなポイントに左右されます。
・現役時代にどれだけ厚生年金に加入していたか?
・どれだけの厚生年金保険料を納めてきたか?
基本的に国民全員が加入する国民年金とは違い、厚生年金の加入実績は人それぞれで異なります。自分がどれだけの年金を受け取れるのか気になったら、年金定期便にてチェックするのがおすすめです。
★障害厚生年金
障害年金は、病気やけがが原因で障害が残ってしまった場合など、一定の条件を満たすことで支給される年金を指します。国民年金から支給される年金を「障害基礎年金」、そして厚生年金から支給されるのが「障害厚生年金」です。
障害厚生年金を受給するための主な条件としては、
・初診日が厚生年金加入中である
・障害等級が1級・2級・3級のいずれかにあたる
などが挙げられるでしょう。障害等級が1級もしくは2級の場合、障害基礎年金と障害厚生年金をセットで受給できます。障害等級が3級の場合は、障害厚生年金のみが受給対象となります。
★遺族厚生年金
遺族年金は、生計を一にする家族の中で主にお金を稼いでいた人が亡くなった場合に、生計を維持されていた家族を対象に支給される年金のこと。こちらも、国民年金から支給される遺族基礎年金と厚生年金から支給される遺族厚生年金の2種類があります。
遺族厚生年金を受給できるのは、亡くなった人の配偶者と子、父母、孫、祖父母のいずれかです。誰が受け取るのか自分たちで決定できるわけではなく、受給者としての順位がもっとも高い人が受給し、それ以外の人に受給権は発生しない仕組みになっています。
このように、厚生年金とは「年をとったときだけに活躍する制度」というわけではありません。障害や死亡など、予期せぬ理由で働けなくなった場合でも、その後の自分や家族の生活を支える柱になってくれるでしょう。いざというときに素早く手続きするためにも、ぜひ年金制度の基礎知識を頭に入れておいてください。
将来の保障を考える上でのポイントとは?

結婚し子どもが生まれると、「自分に万が一のことがあっても、家族の生活を守れるように」という理由で、将来の保障について真剣に考え始める方も多いのではないでしょうか。子どものための学資保険や、万が一のときのための生命保険は、積極的に検討したいところです。
保障が手厚い保険に加入すれば、万が一のときでも安心して生活できるでしょう。しかし一方で、保障が手厚い保険は、「保険料が高い」という特徴があります。特にまだ子どもが小さい時期に、「保険料に多額のお金を費やすのはちょっと…」と思ってしまうのも無理はありません。
こんなとき、ぜひ頭に入れておきたいのが厚生年金の種類についてです。先ほどもお伝えしたとおり、厚生年金は「老後のため」だけのものではありません。一から保険に加入するのではなく、「万が一のときには障害厚生年金や遺族厚生年金を受け取れる」という認識の上で、足りない保障をプラスしていくのがおすすめです。
遺族厚生年金で受け取れる金額は「老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」と定められています。報酬比例部分は平均標準報酬額から計算できますから、具体的な金額も導き出せるでしょう。「一家の大黒柱である自分が亡くなったあとも、家族が生活に困らないように」との目的で生命保険に加入するのであれば、遺族厚生年金分は保障を減らせます。保険料負担も、その分軽くなるでしょう。
将来のための保障で、今の生活が苦しくなっては意味がありません。公的年金制度もしっかりと活用し、金銭面での準備を十分に整えたら、ぜひ今の家族の生活を充実させる工夫も取り入れてみてください。
厚生年金制度をしっかり理解し無駄のない保障を組み立てよう
「もしも将来、万が一の事態になってしまったら…」という不安は、誰もが抱くものです。特に子どもが生まれると、今後の家計の見通しが難しくなります。将来の安心のため、手厚い保障に惹かれる方も多いのではないでしょうか。
とはいえ公的年金制度にも、「万が一の事態が発生した場合に、家族の生活を守るための保障」は組み込まれています。すべてを私的な年金や保険でカバーしようとするのではなく、ぜひ両者を上手に組み合わせて、無駄のない保障設計を意識してみてください。経済的な負担を減らしつつ、将来への安心感も得られるのではないでしょうか。