遺産の独り占めはよくあるトラブル!3つの対処法と予防のポイントは?

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遺産の独り占めはよくあるトラブル!3つの対処法と予防のポイントは?
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遺産相続に関するトラブルで、耳にする機会も多いのが「独り占め」です。相続人のうちの1人が財産を独占してしまったら、その他の相続人にとっては、到底納得できる状況とは言えないでしょう。

では実際に独り占めトラブルが発生してしまった際に、私たちはどう対処するべきなのでしょうか。3つの方法と、そもそも独り占めトラブルを起こさないための予防法をお伝えします。

遺産の独り占めが起きる理由

遺産の独り占めが起きる理由
遺産の独り占めが起きる理由

相続が発生する前は、「相続人の誰かが財産を独り占めするなんて、想像もできない…」と思う方も多いのかもしれません。しかし実際には、遺産の独り占めは「よくあるトラブル」の一つ。決して珍しくないのです。では、そもそもなぜ遺産の独り占めという状況が生まれてしまうのでしょうか?理由として考えられるのは、以下の2つの状況です。

★遺言書に「○○にすべての財産を譲る」という記載がある場合

被相続人が遺言書に、「特定の相続人のみにすべての財産を譲る」と記載していた場合、遺産の独り占めは可能になります。法的に有効な遺言書に記載された内容は、何よりも優先されるべき事項だからです。相続人の意志というよりは、被相続人の意志によるものと捉え、受け入れる必要があるでしょう。

★同居中の家族が遺産分割協議に応じない場合

遺言書がない場合でも、被相続人と同居していた相続人によって、財産を独り占めされてしまうケースもあります。同居家族であれば、預金口座に残されたお金やその他の財産についても、別の相続人よりも詳しく把握しているでしょう。また自宅が被相続人名義であれば、遺産分割協議によって住む場所を失う事態にもなりかねません。

・不動産分割に関する協議に一切応じない

・遺産を勝手に使い込む

このような状況で、独り占めが発生するケースもあります。

もしも遺産を独り占めされてしまったら…対処法3つ

もしも本当に遺産を独り占めされてしまったら、できるだけ早く具体的な行動をとる必要があります。3つの対処法を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

★遺言書が有効なのか確かめる

遺言書によって独り占めが発生している場合、何よりも先に確認しておきたいのが「遺言書の有効性」についてです。近年の終活ブームに伴って、増えている自筆証書遺言では、遺言書に必要な要件を満たせていないことが原因で、無効と判断される事例も少なくありません。遺言書そのものが無効であれば、「○○にすべての財産を譲る」といった内容も無効に。一から遺産分割協議を行う必要があり、独り占めを阻止できるでしょう。

また、たとえ遺言書の必要要件を満たしていても、自宅で保管されていた遺言書の場合、偽造されている可能性や内容を変えられている可能性も捨てきれません。あらゆる可能性を考慮しながら、遺言書そのものについてチェックしてみてください。チェックポイントがよくわからない場合には、弁護士などの専門家に相談するのもおすすめです。

★遺留分を請求する

「○○にすべての財産を譲る」という内容の遺言書が有効であると認められた場合、相続人1人の独り占めが可能になります。とはいえ、その他の相続人には「遺留分を請求する権利」が認められていますから、必要な手続きを進めていきましょう。

遺留分とは、法定相続人に認められている遺産の最低限の取り分のこと。たとえば法定相続人が配偶者のみの場合は1/2が、配偶者と子どもの場合はそれぞれ1/4ずつが遺留分として認められます。たとえ遺言書で独り占めを認めていても、遺留分を請求すれば、実質的に独り占めを阻止できるでしょう。

ただし遺留分の請求権が認められているのは、

・配偶者や子供などの直系卑属

・両親などの直系尊属

のみです。兄弟姉妹の立場で法定相続人になった場合、残念ながら請求できません。

★家庭裁判所に申し立てる

有効な遺言書がないにもかかわらず、遺産の独り占めトラブルが発生している場合、最初は説得にあたるケースがほとんどでしょう。説得に耳を貸し、遺産分割協議に応じてくれるようであれば、問題はありません。より深刻なのは、そうした説得でも効果が見られない場合です。

この場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。調停委員による説得や遺産分割審判による分割方法の決定など、法律的な側面からより公正な遺産分割をサポートしてくれるでしょう。

またすでに遺産が使い込まれている場合、まずは銀行に連絡して口座をストップしてもらいましょう。被相続人が亡くなったあとの出入金記録を確認し、使い込みの有無をチェックしてください。その記録をもとに遺産分割調停に臨むことで、使い込まれた財産分も取り返せる可能性があります。本当に使い込まれているのか、またどの程度取り返せるのかは、個々の状況によって異なります。経験豊富な弁護士に相談すると良いでしょう。

そもそも遺産の独り占めを防ぐためには?

遺産の独り占めは、さまざまなトラブルを招きかねません。その他の相続人との間に深い亀裂が生じる恐れもありますし、最終的に裁判になれば、トラブルが年単位で続いていく可能性もあるでしょう。こうしたトラブルを避けるためには、ぜひ以下のような対策を心掛けてみてください。

★遺言書は正しく、相続人感情に配慮した形で残す

遺言書は被相続人の遺志を伝えるためのものです。余計なトラブルを防ぐためには、まず「法律的に有効な形で遺言書を残す」ことを意識してください。またその内容についても注意が必要です。

先ほどもお伝えしたとおり、相続人の1人に独り占めさせるような形の遺言を残したとしても、その他の法定相続人には遺留分の請求が認められています。最初から遺留分に配慮した内容にしておけば、独り占めにはならず、余計なトラブルを回避できる可能性も高まるでしょう。また遺産分配が公平ではない理由についても、丁寧な説明を心掛けると、より自分の気持ちを届けやすくなります。

★同居中の相続人とその他の相続人とが円満な関係性を築く

遺言書の有無にかかわらず、遺産の独り占めは同居中の相続人によって行われるケースが目立ちます。これには、「被相続人の面倒は全部自分が見て来た」という自負や犠牲の気持ちが関係していると思われます。

同居中の家族だけが介護を担当するのではなく、周囲の相続人が積極的に関わりサポートすれば、独り占めトラブルが発生する可能性は低くなります。

遺産の独り占めトラブルは早めの相談が鍵

遺産の独り占めトラブルは早めの相談が鍵
遺産の独り占めトラブルは早めの相談が鍵

万が一遺産の独り占めトラブルが発生してしまったら、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。遺言書の有効性や独り占めの正当性について、法律の専門家として状況を判断してくれるでしょう。また独り占めしている相続人との交渉役も担ってもらえます。

相続トラブルで弁護士なんて…と思う方もいるかもしれませんが、話がこじれれば、問題はより大きく深くなっていきます。法律の力も借りつつ、少しでもスッキリと解決できる道を探ってみてください。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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