遺産相続でよくあるトラブル…連絡が取れない相続人がいる場合はどうする?

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遺産相続でよくあるトラブル…連絡が取れない相続人がいる場合はどうする?
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遺産相続では、相続人が遺産分割協議を行い、誰が何をどの程度相続するのか決定する必要があります。できるだけスムーズに手続きを進めていきたいところですが、中には「相続人のうちの1人とどうしても連絡が取れない!」といったトラブルに巻き込まれてしまう事例も。このような場合には、いったいどう対処すれば良いのでしょうか?具体的な対処法や、知っておきたい基礎知識をまとめます。

遺産相続の基本…特定の相続人を除外した協議は無効

遺産相続の基本…特定の相続人を除外した協議は無効
遺産相続の基本…特定の相続人を除外した協議は無効

まずは遺産相続手続きの、基本についておさらいしましょう。遺言書が残されていない場合の遺産相続は、相続人同士の協議によって、相続の内容が決定されます。相続人が全員納得した上で、話を進めていくのが前提です。

相続人になるのは、亡くなった人の配偶者および血族です。配偶者は常に相続人になりますが、血族には優先順位が定められています。優先順位がもっとも高い人のみが、相続人になる仕組みです。
第1順位に当てはまるのは、亡くなった人の子どもおよびその代襲相続人です。第1順位に当てはまる人がいない場合は、第2順位である両親等の直系尊属に相続権が移ります。第2順位もいなければ、亡くなった人の兄弟姉妹およびその代襲相続人が第3順位と判断されるでしょう。

たとえば、亡くなった人に子どもや両親がいなかった場合、第3順位にあたる兄弟姉妹に相続権が発生します。しかしその兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合、その子どもたち、つまり亡くなった人から見て甥や姪にあたる人物が相続人になる仕組みです。親族間の交流がほとんどなければ、「相続人であっても連絡先がわからない」「どれだけ電話しても出てもらえない」といった事態も、決して珍しくはないでしょう。

さて、相続人のほとんどに連絡がついていて、「あと1人だけ連絡できない」という場合、「その人のみを除いて遺産分割協議を進めてしまおう」と思うケースもあるかもしれません。しかし残念ながら、「連絡が取れない」という理由のみで、遺産分割協議から特定の相続人を除外することは認められていません。協議そのものはできても、残念ながらその結果は「無効」と判断されてしまうでしょう。

・口座を解約して現金を引き出す
・不動産の名義変更をする

このような相続手続きは、一切進められなくなってしまいます。

連絡が取れない理由と対処法は?

「遺産相続において、相続人と連絡が取れない」という事実の裏には、さまざまな理由が隠されているでしょう。具体的にどう対処すれば良いのかは、この理由によって違ってきます。3つのパターンと対処法をそれぞれ具体的に解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

★パターン1「相続の発生や、自身が相続人であるという事実を知らない」

被相続人と相続人の関係性によっては、

・相続人自身が相続発生の事実を知らない
・相続人自身に、その自覚がない

といったケースも考えられます。相続権を持っているものの、被相続人の存在すら知らず、まったく別の世界で生きる人も少なくありません。この場合、その他の相続人が連絡を取ろうとしたところで、「知らない人が、何かよくわからない話をしている」程度にしか感じられないでしょう。特段に自分の方から行動を起こす必要を感じられず、結果として「無視」になってしまう恐れがあります。

この場合は、まず相手の状況について、丁寧に説明し理解を求める必要があるでしょう。被相続人と相続人との関係性はもちろん、相続手続きを無視した場合のリスクやデメリットについてもしっかりと説明してみてください。

相続人の連絡先がわからない場合、戸籍の附票から住所をたどれます。手紙を出しても反応がない場合は、直接出向いてみるのもおすすめの方法です。

★パターン2「相続人である事実を知っていてあえて無視している」


2つ目のパターンは、自身が相続人である事実を知っていても、あえて連絡を無視しているケースです。被相続人や、その他の相続人との関係が悪化している場合に、陥りやすいケースと言えるでしょう。

この場合も、まずはなんとか、自分自身で連絡を取ろうと努力するのが第一歩です。電話・郵便・訪問と、あらゆる手段を講じてみてください。もしそれでも駄目なら、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。

遺産分割調停とは、相続人だけでは遺産分割協議が進まない場合に、家庭裁判所が「調停」という形で介入することを言います。調停を申し立てれば、あえて無視している相続人のもとにも、家庭裁判所から連絡がいきます。もちろん、家裁からの連絡も無視されてしまう恐れもありますが、そうした事実を踏まえた上で遺産分割審判へと移行。裁判官が遺産分割方法を指定することで、遺産相続手続きを進められるようになります。

★パターン3「行方不明になっている」


相続が発生した事実を知らせようにも、相続人が行方不明になってしまっているケースもあります。先ほどもお伝えしたとおり、戸籍の附票から調査すれば相続人の住所特定は可能。しかし、相続人がその住所にいなかった場合、居場所をたどる方法はありません。

行方不明になっている相続人がいる場合、家庭裁判所にて「不在者財産管理人」を選任してもらいましょう。不在者財産管理人は、行方不明になっている相続人の代理人として、遺産分割協議に参加します。
また行方不明になってからすでに7年以上が経過している場合、家庭裁判所から失踪宣告を出してもらう方法もあります。こちらは、すでに亡くなっている可能性が高いと思われる場合に、行方不明者を死亡したものとみなす制度です。失踪宣告が出れば、連絡がつかない相続人を「亡くなったもの」とみなして、相続手続きを進めていけるようになります。

専門家に相談するのもおすすめ

専門家に相談するのもおすすめ
専門家に相談するのもおすすめ

遺産相続において、「相続人の中に連絡が取れない人がいる」というのは、よくあるトラブルのひとつです。住所をたどったり、なんとか連絡を取ろうと努力したり…時間も手間もかかってしまうでしょう。だからこそ、弁護士や司法書士といった専門家に相談し、サポートを依頼するのもおすすめです。

親族間の関係性が悪化している場合や、相続人がそもそも何も知らない場合、第三者である専門家の介入は、決して悪いことではありません。むしろ冷静に、相続手続きを無視するメリット・デメリットについて考えられるのではないでしょうか。ぜひ積極的に検討してみてください。

連絡が取れない場合の流れを知って素早い対処を

相続人の中に連絡が取れない人がいると、手続き全体がストップしてしまいます。さまざまな不利益を被る可能性もあるため、速やかに対処しましょう。なぜ連絡が取れないのか、状況を把握した上で、今回紹介した対処法も実践してみてください。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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