妻に残すビデオメッセージは意味がないって本当?正しく遺言を残すために

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妻に残すビデオメッセージは意味がないって本当?正しく遺言を残すために
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スマートフォンで誰でも手軽にビデオメッセージを残せるようになった今、「自身の最期の思いを映像で届けたい」と考えるからも増えてきています。特に長年連れ添った妻に対するメッセージは、「形式的な遺言書ではあじけない…」と感じる方も多いようです。
とはいえ、「妻に残すビデオメッセージには意味がない」という意見を見かけるのも事実。ビデオメッセージや遺言が持つ意味、そして正しい形式について確認しておきましょう。

妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない

妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない
妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない

ビデオメッセージでは、画像を見ている人に対して、自身の言葉で直接語りかけられます。自身の口から発せられる言葉や、その表情や雰囲気など、さまざまな情報をダイレクトに届けられるでしょう。
しかし残念ながら、ビデオメッセージに法的な効力は発生しません。ビデオメッセージの中で、たとえ本人が「妻に全財産を相続させたい」と発言したとしても、そこに法的な拘束力は存在しないのです。妻以外の相続人がその内容を認めなければ、自身の遺志を相続に反映させるのは難しいでしょう。

そもそも遺言書とは、自身が亡くなったあとの相続について、希望を伝えるための正式な書類です。法的に有効な形で遺言書が残されていた場合、その内容は他の何よりも優先されます。
たとえば、法定相続人以外を相続人として指定したり、法定相続分に囚われない相続割合を指定したりすることも可能に。しかし、このような強い効力を持つ書類だからこそ、「法的に有効」と認められるためにはさまざまな条件をクリアする必要があるのです。残念ながら、ビデオメッセージではその条件をクリアできません。

インターネットで「遺言」について調べてみると、「妻や家族に遺言としてビデオメッセージを残しても、意味がない」という意見を目にする機会もあるでしょう。これは、その法的根拠に注目した意見だと言えます。自身のメッセージに法的拘束力を持たせたいのであれば、ビデオメッセージではなく、正式な形式で作成された遺言書を活用してみてください。

ビデオメッセージは相続トラブル予防に効果的


先ほどもお伝えしたとおり、妻に残すビデオメッセージに法的な意味はありません。しかし、以下のような側面から見ると、ビデオメッセージの作成は非常に効果的です。

・親族間の相続トラブルを予防したい
・直接伝えられなかった素直な気持ちを届けたい
・自身の死後、必要な情報をわかりやすく伝えたい

ビデオメッセージの有用性として、もっとも注目されているのが相続トラブルの予防効果です。遺言書の内容を補完するための情報として、ぜひビデオメッセージを活用してみてください。

遺言書においては、被相続人の遺志を最大限に反映した内容を記すことが可能。とはいえ、遺言内容によっては、親族間で不満が噴出してしまう可能性もあるでしょう。「妻に全財産を相続させる」という内容を記した場合、遺産を受け取れない相続人が出てくるはずです。遺言書の内容に沿って遺産分割した場合でも、その後の関係性に溝が生じてしまうケースは少なくありません。

ここで活躍するのが、ビデオメッセージです。なぜそのような内容の遺言を残したのか、自身の言葉で直接語り掛けましょう。遺言書とは違い、ビデオメッセージなら、自分の言葉で素直な思いを届けられます。たとえ自身に不利な内容の遺言であっても、「そこに込められた思いや理由が明らかになれば納得しやすい」と感じる方は多いものです。ぜひ映像の強みを最大限に活用してみてください。

また相手が妻となると、「お互いに照れくさくて、なかなか素直な気持ちを伝えられていない」という方も多いのではないでしょうか。最後に残すビデオメッセージは、素直な思いを残すチャンスでもあります。直接言うのが恥ずかしい言葉も、ぜひ素直に語りかけてみてください。自分が亡くなったあとの、妻の生活を支える力になってくれるでしょう。

最後に、「必要な情報をわかりやすく伝えられる」という意味でも、ビデオメッセージは非常に効果的です。人が亡くなったあと、さまざまな雑務が発生するもの。そのために必要な情報を、ぜひビデオメッセージで残しておいてください。貴重品が保管されている場所や、連絡してほしい相手、遺言書のありかなど、手紙では伝えにくい点も、言葉でならわかりやすく伝えられるはずです。

このように、法的な拘束力はなくても、ビデオメッセージを残すことには意味があります。遺言書が「法律面」で自身の死後の手続きをサポートしてくれる存在なら、ビデオメッセージは「感情面」で遺族を支える柱になってくれるでしょう。それぞれが持つ意味をしっかりと把握した上で、状況に合わせて併用するのがおすすめです。

ビデオメッセージの作成方法・残し方は?

妻や家族に残すビデオメッセージは、自身の好きなスタイルで作成できます。自分のスマートフォンを使って撮影するだけでも、心のこもったメッセージになるでしょう。
より本格的なメッセージを作成したい場合には、プロに依頼するのもおすすめです。カメラ写りや編集にまでこだわった、特別な「作品」として残せるでしょう。自分で作成する場合と比較してコストは高くなってしまいますが、プロのアドバイスを受けられるというメリットもあります。

実際にビデオメッセージを作成したら、ぜひその残し方にも気を配ってみてください。せっかくビデオメッセージを作成しても、自身の死後、動画が発見されなければ意味がありません。確実に動画を見てもらえるよう、以下の方法を検討してみてください。

・自身が亡くなったあと、指定先に動画を転送してくれるサービスを利用する
・わかりやすい場所に動画を保存し、エンディングノート等でそのありかを伝える
・作成からお届けまで、ワンストップサービスを提供してくれる業者を利用する

どの方法にもメリットとデメリットがあります。ぜひ、自身の思いをより確実に届けるための対策を取り入れてみてください。

妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を

妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を
妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を

「妻に残すビデオメッセージに意味がない」という意見を目にすると、「だとしたら残しても残さなくても同じ」「遺言書だけで十分」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、自身の言葉と表情で直接思いを届けられるビデオメッセージが持つメリットは、決して少なくありません。たとえ法的な意味はなくても、遺言書とともに活用し、親族間の相続トラブル予防のために役立てることをおすすめします。

ビデオメッセージの残し方や保管方法もさまざまです。まずはどのような形でどんなメッセージを残したいか、考えるところからスタートしてみてください。終活の一歩と言えるでしょう。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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