両親が死亡した場合の遺族年金受取人は誰?子どものためにできることは?

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両親が死亡した場合の遺族年金受取人は誰?子どものためにできることは?
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家族が亡くなったときには、遺族年金の受取人になれる可能性があります。両親が共に死亡した場合、子どもは遺族年金を受け取れるのでしょうか。
未成年が遺族年金を受け取る場合の注意点や手続き方法、親の立場で子どものためにできることも解説します。

遺族年金とは?

遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入していた被保険者が亡くなった際に、その家族に支給される年金を指します。国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金、厚生年金に加入していた場合は遺族厚生年金の受取人になれる可能性があるでしょう。どちらにも加入していて、それぞれの受給要件を満たしていれば、両方とも受給できます。

遺族基礎年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受取人です。この場合の「子」とは、18歳になってから最初に年度末を迎えるまでの人(もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人)を指します。遺族厚生年金は、遺族基礎年金よりも受給要件が緩く、親を亡くした子どもは受給要件を満たす可能性が高いでしょう。

両親が共に死亡した場合の遺族年金は?

両親が共に死亡した場合、生前に親が国民年金や厚生年金に加入していれば、子どもは受取人になれる可能性が高いでしょう。子どもが受取人になる場合の、遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給金額は、それぞれ以下のとおりです。

【遺族基礎年金】

79万5,000円(2人目の加算額:22万8,700円、3人目以降の加算額:7万6,200円)

【遺族厚生年金】
被保険者が加入していた老齢厚生年金の、報酬比例部分の4分の3の金額

子どもが複数人いる場合には、受給できる金額を合計して、人数で割った金額が1人分の受給金額です。

遺族基礎年金で受給できる金額は定額ですが、遺族厚生年金は被保険者の生前の加入状況によって違ってきます。両親が共に亡くなってしまった場合、子どもは「両方の遺族年金を合算して受給できる」というわけではありません。父親と母親、受給金額が多いどちらか一方のみを選択して受給することになります。どちらを選ぶのか決定したら、最寄りの年金事務所にて手続きしてください。

未成年者の各種手続きに必要なのは?

両親が亡くなってしまった場合、子どもが遺族年金を受給するためには、各種手続きを進めていく必要があるます。とはいえ、未成年の子どもが自分で手続きすることはできません。亡くなった親に代わって親権を獲得した人や未成年後見人が、子どもの代理で手続きを進めます。

未成年後見人とは、未成年者に代わって法的契約を結んだり、その財産を管理したりすることを認められている人。親権者がいない場合に、未成年者の利益や権利、そして財産を保護する目的で各種権限を保有しています。親が亡くなったあと、未成年の「親代わり」と言っても良い重要な存在ですが、誰でもすぐになれるわけではありません。未成年後見人を選任するためには、まずは家庭裁判所への申し立てが必要に。未成年者本人もしくは親族が手続きします。

未成年後見人は、家庭裁判所が決定します。親族が選任されるケースもあれば、弁護士や司法書士といった専門家が選任されるケースも。それぞれの子どもの状況を見極めて、最善だと認められる人が未成年後見人に選任される仕組みです。

未成年後見人が選任されたら、子どもの代理人として遺族年金の受給手続きを進めていけるでしょう。支給された遺族年金も、未成年後見人の手で管理されます。幼い子ども自身が動かなければならない場面はありませんので、安心してください。

親として子どものためにできることは?

親として子どものためにできることは?
親として子どものためにできることは?

両親が共に死亡してしまった場合、遺族年金が受け取れるとはいえ、子どもの負担は非常に大きなものになってしまうでしょう。万が一のときでも、子どもの生活をできる限り守るため、未成年後見人を事前に指名しておくのがおすすめです。

先ほど「未成年後見人は家庭裁判所で選定される」とお伝えしましたが、両親が遺言書であらかじめ指定していた場合、その限りではありません。遺言書で指定されていた人が市町村役場で所定の手続きを終えるだけで、後見人として動けるようになります。両親が死亡したあとのさまざまな手続きについても、法的な立場をもって素早く対処していけるでしょう。

未成年後見人を事前にしておくメリットは、ほかにもあります。後見人に指定したい人に対して、両親からあらかじめ話を通しておけるでしょう。信用できる相手を自分で選定できますし、「万が一のときには○○してほしい」と、あらかじめ希望を伝えておくことも可能です。依頼される側としても心の準備ができますし、いざというときには、すぐに行動に移せるのではないでしょうか。子どもの精神面での安定にも役立つはずです。

遺言書で未成年後見人を指定する場合、家庭裁判所は介入しません。同時に未成年後見監督人も指定し、子どもの財産や身上監護上のチェックができる体制を整えておくのがおすすめです。

子どもが遺族年金を受け取る場合のリスクとは?

両親が共に亡くなり、子ども自身が遺族年金を受け取る場合、実際にその財産を管理するのは未成年後見人です。親族等がその役割を担う場合、子どもの財産を私利私欲のために使ってしまう恐れがあります。

本来であれば、子どもの利益を保護するために選任される未成年後見人。本来の役割を果たしていなかった場合でも、子ども自身がその事実にすぐに気付くのは難しいでしょう。特に遺言書で未成年後見人を指名する場合、チェック体制が働きにくいという点も知っておいてください。誰に依頼すれば、子どもの財産を適切に管理してくれるのか、親として厳しい目で判断することが大切です。

子どもも遺族年金の受取人になれる

子どもも遺族年金の受取人になれる
子どもも遺族年金の受取人になれる

両親が死亡した場合、遺族年金の受取人は子どもです。どちらか一方の遺族年金を選択する必要はありますが、子どものその後の生活を支える助けとなってくれるでしょう。

一方で、未成年である子どもに年金受給のための手続きはできません。未成年後見人を選定し、子どもの代理人として手続きをし、大人になるまでの間は適切に財産管理をしてもらわなくてはならないでしょう。

親として、万が一のときのためにできるのは、「信頼できる相手を見つけ、未成年後見人になってもらえるようあらかじめお願いしておくこと」です。きちんと準備を整え、自身の思いも伝えておきましょう。両親に万が一のことがあった場合、子どもがどういった状況になるのかを想定した上で、何が必要なのか検討してみてはいかがでしょうか。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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