学資保険は財産分与の対象?なる場合・ならない場合や養育費との関係を解説

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学資保険は財産分与の対象?なる場合・ならない場合や養育費との関係を解説
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夫婦が離婚する場合に、問題になりやすいのが「財産分与」です。子どもがいる場合、「学資保険はどうなるのか?」と不安を感じる方もいるのではないでしょうか。

学資保険が財産分与の対象になるのかどうか、わかりやすく解説します。養育費との関係性についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

学資保険は基本的に財産分与の対象になる

財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産を、離婚に伴い公平に分割することを言います。夫婦の間に子どもが生まれ、その子どものために学資保険に加入した場合、保険料は「夫婦が協力して収めたもの」と判断されます。夫婦の共有財産だからこそ、離婚する場合は財産分与の対象になるという仕組みです。

学資保険は子どものための保険であり、「子どもに所有権がある」と思う方も多いかもしれません。しかし、そもそも保険とは契約者自身の財産として考えられます。「子どもの財産」として扱われるわけではないという点を、頭に入れておきましょう。

学資保険には、「契約者に万が一のことがあった場合、その後の保険料支払いが免除される」という特徴があります。このため、世帯主である「父親」を契約者として、学資保険に加入しているご家庭も多いのではないでしょうか。一方で、夫婦が離婚する場合、母親側が親権を獲得するケースが目立ちます。「学資保険は子どものお金だから、父親が母親に渡すのは当然」と主張される可能性もあるでしょう。

まずは、「学資保険=子どものもの」という思い込みを忘れてください。夫婦の共有財産として、どのように分割するのがベストなのか、冷静に話し合う必要があります。

学資保険が財産分与の対象にならないケースとは?

一方で、同じ学資保険であっても財産分与の対象にならない事例も存在しています。それは、学資保険の支払い状況から、「夫婦が婚姻中に築き上げた共有財産」とは認められない場合です。

たとえば、子持ちで再婚した場合が挙げられるでしょう。前妻との間に子どもがいて、その後現在の妻と再婚したとします。前妻との間の子どものために学資保険に加入していて、現在の妻と婚姻する前に保険料を払い終えていた場合、その学資保険は夫の特有財産です。現在の妻と離婚することになっても、妻側は学資保険の財産分与を主張できません。

再婚や連れ子にかかわらず、「保険料を納めている時期の夫婦の関係性」をもとに、財産分与の対象になる・ならないが判断されます。判断に悩む場合は、離婚問題に強い弁護士等に相談してみると良いでしょう。

学資保険を財産分与する2つの方法

学資保険の契約中に財産分与する場合、主に2つの方法が考えられます。

・保険を解約して解約返戻金を平等に分割する
・保険契約を維持したまま、満期返戻金の半額を相手に渡す

それぞれの特徴について、詳しく解説します。

★1.中途解約なら素早くすっきり

離婚する時点で学資保険を解約すれば、後腐れなく財産分与できるでしょう。保険を解約し手に入ったお金を平等に分けるだけなので、トラブルになりにくいというメリットがあります。

ただし学資保険の場合、満期を迎える前に解約すると元本割れする可能性も。返戻率の高さが魅力で学資保険に加入した場合も、無駄になってしまいます。学資保険に加入する期間や保険料を無駄にしたくないと考える方にとっては、デメリットの多い方法と言えるでしょう。

★2.保険契約を維持する方法も

学資保険は、子どものための保険です。だからこそ、財産分与をしつつ、子どものための契約は維持するという方法も選択できます。

学資保険の契約者が子どもの親権を獲得する場合、満期返戻金の半分に当たる金額を、離婚するパートナーに支払います。子どもが成長し満期返戻金を受け取ったら、全額すべてが自分のものになるでしょう。一方で、学資保険の契約者ではない方が子どもの親権を獲得した場合、まずは保険契約者を変更します。その上で、離婚するパートナーに満期返戻金の半分に当たる金額を支払いましょう。

こちらの方法を選択すれば、財産分与後も学資保険の契約はそのまま維持できます。これまでに支払った保険料を無駄にせず、子どもの将来にも備えられるでしょう。一方で、保険契約者には、離婚するパートナーに支払う現金を用意するという負担が発生します。離婚時には何かと物入りですから、お金の工面をどうするのかがポイントになるでしょう。

学資保険を養育費の一部とする方法も

学資保険を養育費の一部とする方法も
学資保険を養育費の一部とする方法も

子どもがいる夫婦が離婚する場合、財産分与とともに問題になりやすいのが養育費についてです。子どものための備えである学資保険は、「養育費の一部」として扱うのもおすすめ。あえて財産分与の対象にしないことで、トラブルを避ける方法もあります。

具体的には、

・契約者の名前を親権者へと変更し、保険料の支払いを続ける
・満期返戻金の半分に当たる金額の支払いを求めない

といった方法が考えられます。

この場合、養育費の取り決めと学資保険の支払い・受取について、事前にしっかりと話し合っておきましょう。話し合いの結果をきちんとした形で取りまとめておけば、後々のトラブルを防ぐ効果も期待できます。

離婚するなら「学資保険の名義変更」を忘れずに

子どもの学資保険をどのように財産分与するのかは、離婚時の話し合いにて決定するもの。何かと忙しい時期でつい忘れてしまいがちですが、「学資保険の契約名義」だけは、確実に親権者へと変更しておきましょう。

特に中途解約しない形で学資保険を財産分与した場合、契約名義を変更しないまま放置してしまうケースも少なくありません。たとえ「子どもが大きくなったら渡すから大丈夫」「養育費として将来的に渡す」などの口約束があっても、実際に約束が守られるとは限らないでしょう。

学資保険は、契約してから受け取りまでに10年以上が経過するケースが一般的です。離婚時の話し合いが比較的円満に進んだとしても、保険金を受け取るタイミングまで同じ状況が続くとは限らないのです。子どものための保険だからこそ、財産分与の段階でしっかりと契約名義の変更を行い、確実に子どものために使える環境を整えておくのがおすすめです。

学資保険は財産分与の対象だからこそしっかりと話し合いを

学資保険は財産分与の対象だからこそしっかりと話し合いを
学資保険は財産分与の対象だからこそしっかりと話し合いを

学資保険は、基本的に財産分与の対象になります。契約中の保険をどのように財産分与するのか、養育費との関係をどうするのかなど、しっかりと話し合った上で子どもにとってより良い方法を選択しましょう。

中途解約する場合もしない場合も、メリットとデメリットの両方があります。自分にとって何がベストかわからないときには、専門家に相談してみるのもおすすめです。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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