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  • 他人事ではない相続税対策!具体的な方法と注意点

    他人事ではない相続税対策!具体的な方法と注意点

    「相続税対策」と聞くと、「一部のお金持ちのみが行うもの」という印象を抱く方も多いのではないでしょうか?しかし今、ごく普通の生活を送っている方にとっても、相続税は身近な存在になってきています。 では具体的に、どういった条件に当てはまると、相続税対策が必要になるのでしょうか。相続税が発生する条件や、税金を少なくするための具体的な対策、実施する際の注意点などをまとめて解説します。 そもそも相続税とは? 相続税は、被相続人から財産を受け継いだ際に、その額に応じて課せられる税金です。自身の親や配偶者が亡くなったときには、相続人になるケースも多いでしょう。受け継ぐ財産の金額が一定額以上になると、相続税を納める必要が生じます。 相続税には基礎控除があり、相続する財産が一定金額以下に収まれば、相続税を納める必要はありません。「相続税は一部のお金持ちのみが支払うもの」というイメージが根強いのは、「相続税を支払う=受け継ぐ財産の額がそれだけ多い」という考えによるものでしょう。 しかし今、状況は大きく変わってきています。相続税に関する制度は、2015年に改正。基礎控除額が40%も引き下げられたことにより、相続税を課せられる人の割合が大幅に増加しています。もはや相続税は、「お金持ちだけのもの」というわけではありません。ごく一般的な生活を送っている方々にとっても、相続税対策の重要性は増しているのです。 相続税対策を検討したい人とは? 相続税対策を検討したい人とは? では具体的に、相続する財産がいくら以上になると、相続税が発生するのでしょうか。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求められます。 相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) たとえば、夫婦と子ども1人の家族で夫が亡くなった場合、法定相続人は妻と子どもの2人です。上の式に当てはめると、相続税の基礎控除額は4,200万円に。夫から受け継ぐ財産が4,000万円であれば、相続税は発生しないため、対策をする必要はありません。一方で、受け継ぐ財産が5,000万円になると、基礎控除額を超過した800万円分に、相続税が課せられます。 これだけの情報を聞くと、「我が家にはそれだけの財産はないから、やはり相続税対策は必要ない」と思う方は多いのかもしれません。しかし、以下のような条件に当てはまる場合は、注意が必要です。 ・法定相続人の数が少ない(配偶者がいない) ・相続する財産に「不動産」が含まれる ・都心部の不動産を受け継ぐ予定である 法定相続人の数が少ない場合、特に配偶者がおらず、子どもやその他の人のみで財産を相続する場合、基礎控除額が少なくなる可能性があります。財産の総額が少なくても、相続税が発生する恐れがあるので、十分に注意しましょう。 またもう一点忘れてはいけないのが、不動産についてです。特に都心部の土地を受け継ぐ場合、あっという間に基礎控除額を超えてしまう可能性も。相続税を支払えるだけの現金がなければ、不動産を処分しなければならない事態も起こり得るでしょう。 相続税が課税される人の割合は、地方よりも都市部に多いと言われています。これは、不動産(主に土地)の評価額によって、相続税の基礎控除額を超えてしまうケースが多いためと考えられるでしょう。いざという場面で思わぬ出費に焦らないためにも、事前に相続税対策についても、しっかりと検討しておいてください。 具体的な対策方法4つ では具体的に、何をどうすれば相続税対策になるのでしょうか?4つの方法を紹介します。 ★1.生きている間に財産を贈与する 相続は、被相続人が亡くなった瞬間からスタートします。生きている間に、何らかの方法で配偶者や子どもに財産を移しておけば、相続財産を減らすことにつながります。生前の贈与によって、相続財産の合計が基礎控除内に収められれば、相続税の負担はゼロ円です。 とはいえ、自身の財産を他者にあげようとすれば、贈与税の対象に。この場合、贈与税が発生しない仕組みを活用し、上手に財産を移す必要があるでしょう。 もっともシンプルなのが、年間110万円までの非課税枠の中で贈与を行う方法です。1年に110万円でも、被相続人が5人いれば550万円になります。5年あれば、2,700万円以上の財産を、税金がかけずに移せる計算になるでしょう。 このほかにも、子どもや孫が住宅を購入するタイミングで資金援助を行った場合、最大1,000万円もの財産を非課税で移すことが可能。また教育資金を贈与すれば、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」を適用できます。こうした制度も上手に活用して、生前から相続財産を減らす工夫をスタートしましょう。 ★2.生命保険を活用する 相続人を受取人とした生命保険に加入すれば、被相続人が亡くなった際に、相続人に保険金が支払われます。この保険金に対しては、「500万円×法定相続人の数」まで非課税になる仕組みです。「現金」として相続するのではなく、「生命保険金」として相続できるよう準備を整えておけば、その分だけ、相続税の負担は少なくなります。 ★3.非課税財産を購入しておく 位牌や仏壇、墓碑に墓地など、祭祀にまつわる財産は、非課税財産と言われています。生前に現金一括で購入しておけば、その分は課税財産に含まれません。いずれ用意しなければならないものなら、生きている間に準備しておきましょう。こちらも相続税対策になります。 ★4.養子縁組で法定相続人を増やす 法定相続人が増えれば、その分だけ相続税の基礎控除額は増加します。法定相続人が少ないために相続税が発生する状況であれば、養子縁組によって法定相続人を増やす方法も効果的です。子どもの配偶者や孫を養子にする手続きを取っておけば、相続税の負担は少なくなります。養子縁組に関するルールを理解した上で、取り組みましょう。 相続税対策の注意点 相続税対策の注意点 相続税対策を行う上で、もっとも重要なのは、「効果的な方法を確実に実施する」という点です。そのためには、相続税に強い税理士のサポートを受けると良いでしょう。 自己流で相続税対策を行う方も多いですが、実際には、 ・全く効果のない相続税対策を行っていた ・相続税対策をしていたはずなのに、実際には高額な税金が発生してしまった ・あとで税務署から問題点を指摘された このようなトラブルを抱えてしまうケースもあります。税理士のアドバイスのもとで相続税対策を進めていけば、こうしたリスクは少なくなるでしょう。 ただし税理士に依頼した場合、専門家報酬が発生します。相続税がどれだけ発生する見込みで、専門家に依頼するメリットがどれだけあるのかを試算した上で、より良い道を探ってみてください。 相続税が支払えない場合はどうなる? 相続税対策を行わないまま手続きのタイミングを迎えてしまった場合、「相続税が支払えない!」といった事態に陥ってしまう可能性もあるでしょう。相続税が支払えない場合、分割での支払いが認められる可能性も。この制度を「延納」と言います。 延納が認められるためには、相続税額や一括納付が困難な理由、担保の提供など、一定の条件を満たさなければいけません。また相続税の申告期限までに、延納申請書と担保提供関係書類を準備し、提出する必要があります。 延納が認められた場合、最長20年までで分割納付が可能です。ただし延納期間に応じて利子税が加算されてしまうので注意してください。相続税が支払えないことが見込まれる場合、特に相続税対策が重要と言えるでしょう。 相続税について正しい知識を身につけよう 相続税と相続税対策は、もはや誰にとっても他人事ではありません。できるだけ早い段階で正しい知識を身につけ、具体的な対策をスタートするのがおすすめです。 相続税対策をスタートする時期が早ければ、選択肢も広がります。余計な税金を発生させないためにも、ぜひ相続税について正しく学んでみてください。

  • 生命保険は相続税の課税対象!注意が必要なパターンと計算方法を紹介

    生命保険は相続税の課税対象!注意が必要なパターンと計算方法を紹介

    人が亡くなった際に、残された家族の手に渡る「生命保険金」。この先の生活を支える「柱」のひとつとも言えるでしょう。少しでも多く手元に残したいと思うのは、当然のこと。しかし実際には、「生命保険金は相続税の対象になる可能性がある」という事実をご存知ですか? 生命保険に各種税金が発生するケースや、相続税の課税額・非課税枠について解説します。万が一のときのため、正しい知識を身につけておきましょう。 死亡保険金は「みなし相続財産」のひとつ 民法では、故人が生前に保有していた財産を、相続財産として認めています。死亡保険金は、被保険者の死亡によって発生する財産ですから、厳密に言えば民法上の相続財産には含まれていません。 一方で、相続税法上では、死亡保険金は相続税の課税対象に数えられています。このように、「厳密では相続財産ではないものの相続財産とみなし、相続税の課税対象になっている」のがみなし相続財産です。 たとえば「夫が死亡した際に、夫が契約していた死亡保険金を、保険金受取人である妻が受け取る」という場合、その死亡保険金は夫のみなし相続財産と言えます。妻が相続する際には、相続税が発生するケースもあります。 一方で、「夫が死亡した際に、妻が契約し被保険者を夫としていた死亡保険金を、契約者である妻自身が受け取る」という場合には、「所得税」が発生します。契約者・受け取り人が共に妻である場合、それは夫の財産ではなく妻の財産として認められるからです。 また「夫が死亡した際に、親が契約していた死亡保険金を、第三者である妻が受け取る」という場合には、「贈与税」の対象になります。亡くなった人・保険料を支払った人・保険金を受け取る人がすべて別々の場合、保険料を支払った人から保険金を受け取る人への「贈与」が行われたと判断されます。 このように、同じ死亡保険金でも、契約スタイルによって課税される税金の種類や金額が違ってきます。死亡保険金を受け取る際には、契約内容についてしっかりと確認する必要があるでしょう。 死亡保険金の受取で支払う相続税は? 故人が生前契約していた死亡保険金の受取人に法定相続人が指定されている場合、そのお金は「残された家族の生活を支えるためのお金である」と判断されます。その目的を考慮して、「相続税における生命保険金等の非課税枠」が用意されています。 非課税枠は、以下の数式で求められます。 【生命保険金等の非課税枠=500万円×法定相続人の数】 たとえば、夫が亡くなり、妻と2人の子どもが法定相続人になった場合、1,500万円までであれば非課税で受け取れるというわけです。もし夫の残した死亡保険金が2,000万円であった場合、残り500万円が相続税の対象になります。 ただし、死亡保険金が非課税枠から超過したからといって、即、相続税が発生するわけではありません。相続税には基礎控除が用意されていて、生命保険金とその他の相続財産すべてを含めて基礎控除額内に収まるのであれば、相続税はかからないのです。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求めてください。 【相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】 夫が亡くなり妻と2人の子どもが法定相続人になった場合の基礎控除額は、4,800万円です。生命保険金以外に4,000万円の財産を相続するとしたら、生命保険金等の非課税枠に入りきらなかった500万円を足しても、合計は4,500万円に。4,800万円以内に収まっているため、相続税は発生しません。 一方で、生命保険金以外の財産が4,500万円だった場合、生命保険金等の非課税枠に入りきらなかった500万円を足すと、合計は5,000万円に。この場合、基礎控除額から超過した200万円が相続税の課税対象になります。 生命保険金に所得税や贈与税が課せられる場合の金額は? 先ほどもお伝えしたとおり、生命保険の契約手法によっては、所得税や贈与税が発生するケースもあります。この場合、どのくらいの金額が課税対象になってしまうのでしょうか? ★生命保険金に所得税が課税される場合 契約時に「夫に万が一のことがあったときのため、妻が自分で夫を被保険者にした生命保険を契約する(※保険金受取人は妻)」というスタイルを選択した場合、夫が亡くなった際に妻が受け取る生命保険金は、所得税の対象になります。契約者本人が保険金を受け取っているため、一時所得とみなされるからです。 この場合の課税金額は、受け取った生命保険金額から経費と控除額を除いて求められます。 【所得税課税額=(死亡保険金受取額-払込保険料-50万円)÷2】 生命保険金における経費とは、過去に支払った保険料のこと。また一時所得には、50万円の特別控除が認められています。つまり、合計200万円振り込んで2,000万円の保険金を受け取った場合、875万円が所得税の課税対象額です。 ★生命保険金に贈与税が課税される場合 生命保険を契約する際には、「夫に万が一のことがあったときのため、妻が契約者・夫を被保険者・子どもを保険金受取人にする」というスタイルを選択するケースもあるでしょう。この場合、保険金を受け取る子どもには「贈与税」が課せられます。 贈与税の課税対象額を求める数式は、以下のとおりです。 【贈与税課税額=死亡保険金受取額-110万円】 110万円とは、贈与税における基礎控除額です。2,000万円の死亡保険金を受け取った場合、1,890万円が課税対象となり、相続税や所得税と比較すると、税額がかなり高くなると予想されます。 万が一のときのための生命保険だからこそ契約スタイルは慎重に 結婚したり子どもが生まれたり…家族が増えるときには、万が一のため、生命保険の契約を考える方も多いことでしょう。いざというときのためのお金だからこそ、「将来発生しうる税金」についても、ぜひ考慮してみてください。契約スタイルによって、課税金額が大きく変わってくる可能性があります。 「残された家族のためにできるだけ多くのお金を残したい」と思うのであれば、契約者自身が被保険者となり、また法定相続人である妻や子どもを受取人に指定するのがベストです。生命保険金等の非課税枠を活用できるぶん、相続税対策としても有効ですから、ぜひチェックしてみてください。 生命保険と「特別受益」とは? 生命保険に加入する際に、もう一点注意したいのが「特別受益」についてです。 ここまでお伝えしてきたとおり、生命保険金は基本的に、遺産相続の対象にはなりません。しかし遺産総額と比較してあまりにも高額な生命保険に加入していた場合、受取人とその他の相続人との公平性を保つため、生命保険が「特別受益」として扱われます。遺産に戻して、その他の財産と共に、遺産分割の対象になるケースもあるのです。 生命保険金が特別受益として扱われるかどうかは、個々の状況から総合的に判断されます。保険金額について不安がある場合には、一度専門家に相談してみるのもおすすめです。 生命保険と税金の関係性を知った上で判断しよう 生命保険を契約するときには、その金額や保険料にばかり目が向きがちです。しかし多額の保険料を投じて、十分な保険に加入したとしても、いざ保険金が下りた際に多額の税金を取られてしまうようでは意味がありません。ぜひ、生命保険と税金に関する予備知識を身につけた上で、契約スタイルを検討してみてくださいね。

  • 後見制度で相続税の節税対策ができる?制度詳細と注意点

    後見制度で相続税の節税対策ができる?制度詳細と注意点

    両親が高齢になってくると、家族で相続税の節税対策について話す機会もあるかと思います。特に2016年の相続税法の改正以降、特別お金持ちの家庭でなくても高額な相続税が発生するケースが多発。相続が発生する前から、しっかりと準備を整えておくことが重要になってきています。 そうした状況の中、「成年後見制度で相続税対策が可能なのでは?」と注目する人が増えてきています。成年後見制度とはどういった制度で、本当に相続税対策が可能なのでしょうか?気になる注意点まで、わかりやすくまとめます。 成年後見制度とは? 成年後見制度は、何らかの事情により「判断能力が十分ではない」判断される人の財産管理等を支援するための制度です。この制度を使えば、年老いた両親が認知症になり正常な判断が難しくなってしまった場合でも、成年後見人がその活動をサポートできるようになります。 成年後見制度には、 ・法定後見制度・任意後見制度 の2種類があり、法定後見制度では家庭裁判所によって成年後見人が指定されます。任意後見制度の場合、「本人が元気なうちに成年後見人を指定しておくこと」が可能です。 成年後見人になると、本人に代わってその財産を管理したり、結んでしまった契約を解除することができます。さらに有価証券の管理や遺産相続の代行もできるようになります。 成年後見制度で相続税対策は可能なのか? 相続の際に多額の相続税が発生すると予測されている場合、不動産購入や生前贈与が効果的です。実際に相続が発生する前に、何らかの手を打ちたいと思う方は多いことでしょう。 とはいえ親が認知症を発症している場合、「意思能力がない」と判断され、各種契約や行為が「無効」になってしまいます。たとえば相続税対策にマンションを購入しようと思っても、認知症を発症している両親が契約するのは不可能というわけです。 だからこそ注目されているのが成年後見制度で、子どもが親の成年後見人になれば、その財産を自由に動かせるように思えます。このため「認知症発症以降でも相続税対策が可能」と言われるケースも多いようです。 ただし実際には、成年後見制度を使って相続税対策をするのは極めて難しいでしょう。なぜなら、成年後見制度の目的は「本人の財産を守ること」だからです。相続税対策は、被相続人ではなく相続人のために行われるもので、本人の財産を守ることにはなりません。 むしろこれは「相続税を発生させないため、本人の財産の評価額を下げる行為」に当たりますから、成年後見人になったところで、自由に決断・契約できるわけではないのです。かりに、成年後見人の立場を悪用して勝手に本人の財産を処分したとしても、その契約は無効と判断されてしまうでしょう。 ちなみに、法定後見制度ではなく「任意後見制度」を活用する場合、本人が健康なうちに、 ・成年後見人を務めて欲しい人・希望に沿った財産管理の方法 などを指定しておくことが可能です。この制度を上手に活用し、具体的な指示を記載した正式な書類を残しておけば、より自由度の高い財産管理が可能になるでしょう。 とはいえ、任意後見制度の場合も、「後見制度は本人の利益を守るためのもの」という前提に変わりはありません。 任意後見人には「任意後見監督人」と呼ばれるチェック者がつき、お金の出入りを確認します。この任意後見監督人には、弁護士などの第三者の専門家が選ばれるケースも多く、やはり「相続税対策のために本人の財産を減らす」という行動は、難しいでしょう。 成年後見制度を使えば「使い込み」の予防は可能 たとえば親が認知症を患い、正常な判断能力を失ってしまった場合、本人以外によって財産を使いこまれてしまう恐れがあります。同居親族であれば、年金や預貯金の使い込みは、決して難しいことではないでしょう。 成年後見制度を使い、事前に後見人を指定しておけば、預貯金の管理もすべて成年後見人が行うことになります。銀行へも届出を行うため、成年後見人に指定された人以外が勝手に引き出すことはできなくなります。 先ほどもお伝えしたとおり、成年後見人の原則は「本人の利益を守ること」です。相続対策に使うことは難しいですが、「財産を守る」という目的であれば、有効に活用できるのではないでしょうか。 成年後見制度が駄目なら相続税対策はどうする? 成年後見制度が駄目なら相続税対策はどうする? 相続税対策を目的に、家族の財産を自由に動かせるようにしたいのであれば、「家族信託」に注目してみるのがおすすめです。家族信託とは、一般的な信託システムを家族間に応用したもので「民事信託」呼ばれるケースもあります。 家族信託では、委託者(財産を預ける人)、受託者(財産の管理を任される人)、そして受益者(財産管理の利益を享受する人)の3者が存在し、これは家族間でそれぞれ自由に設定できます。たとえば、年老いた親が委託者・受益者となり、子どもが受託者になれば、親が信託した財産を子ども自身が運用可能です。さらに得られた利益で、親の生活費を賄うこともできます。 家族信託契約を結んでおけば、親が認知症になり、正常な判断能力を失ってしまった場合にも、子どもの判断で財産を動かせるようになります。つまり資産運用の形で、相続税対策のために財産の評価額を下げることも可能なのです。 もともと委託者兼受益者であった親が亡くなれば、当然その受益権は相続の対象になります。一定の金額以上になると予想される場合には、相続税が発生するでしょう。そうした意味では、「家族信託契約を結んだからといって、相続税の節税対策にはならない」と考えられます。 ただし、親が認知症になったあともしっかりと相続税対策を進めておけば、「相続財産の評価額を減らすことにより間接的な相続税対策になる可能性」があります。もし相続税対策のために導入するなら、あらかじめその内容や具体的な対策方法についてリサーチしておく必要があるでしょう。 家族信託を利用する場合の注意点は? 家族信託を利用する場合の注意点は? 親が認知症になったあとでも、相続税対策ができる「家族信託」。相続税対策のための方法として注目されていますが、実際に利用する際には、いくつか注意しなければならないポイントもあります。 家族信託で本当に節税対策ができるかどうかは、「受益者の設定方法」にかかっています。たとえば、親に信託された財産を子どもが運用する場合、受益者を子どもに設定すれば、それは「贈与」に当たります。すると贈与税の対象になってしまうので注意してください。 家族信託を利用した節税プランについては、専門の税理士に相談の上で、決定するのがおすすめです。自己判断をすると、「節税対策するつもりが、負担が増えてしまった!」という事態にもなりかねません。信託する財産や、今後の運用プランについて、信頼できるパートナーを見つけて相談してみてください。手続きについて、悩むリスクもなくなります。 相続税の節税対策に見切り発車は危険 相続税の節税のため、「成年後見制度」に注目する方が増加しています。成年後見制度を活用すれば、本人が認知症になったあとでも資産運用が可能になり、相続税対策もできるのでは…と思いがちです。しかし残念ながら、実際には難しいと言わざるを得ないでしょう。 認知症発症後の資産運用で節税を目指すなら、「家族信託」にも注目してみてください。事前にきちんと運用プランを立て、計画的に物事を進めていくことで、相続税対策につながる可能性があります。

  • 相続人死亡・行方不明の場合の相続はどうなる?税制上の注意点を解説

    相続人死亡・行方不明の場合の相続はどうなる?税制上の注意点を解説

    いざ相続の手続きをする際に、「あれ?この場合はどうなるのだろう…」と、疑問を抱くケースは少なくありません。相続人の状況は、各家庭によって異なるもの。インターネットや本の中に「自分のケースにピッタリと当てはまる事例」を見つけるのは難しいこともあるでしょう。 ここでは自身の状況に合った情報を探している方のために、「相続人が死亡している場合」と「行方不明の場合」それぞれについて、相続に必要な情報をまとめます。おすすめの相談先やサービス窓口も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。 相続人が死亡している場合の相続はどうなる? 相続人が死亡している場合の相続はどうなる? まずは、相続の基本についておさらいしておきましょう。人が亡くなったあと、その財産は「相続人」に受け継がれます。法律で財産を受け継ぐことが決まっている人を「法定相続人」と言い、亡くなった人が遺言書を残していなければ、遺産はこの法定相続人が相続します。 亡くなった人に配偶者がいれば、配偶者は必ず法定相続人になります。その他の法定相続人は、被相続人との関係性によってその順位が定められています。 第1順位に当たるのは、被相続人の子どもや孫といった直系卑属であり、第2順位は被相続人の親に当たる直系尊属、第3順位は兄弟姉妹です。第2順位か第3順位に当たる人は、自分よりも高い順位の人が一人でも存在していれば、相続人になることはできません。 ここで気になるのが、法定相続人が死亡している場合についてです。たとえば、「被相続人には配偶者と子どもがいたが、子どもはすでに亡くなっている」という場合、子どもの代わりにその子ども、つまり被相続人から見た「孫」が相続人になります。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼びます。 つまり亡くなった子どもの子どもが複数人いれば、その全てが法定相続人になるというわけです。本来、亡くなった子どもが受け取るはずだった遺産分を、代襲相続の対象となる相続人全員で分配します。 仮に「被相続人には子どもがいない、もしくはすでに亡くなっており孫もいない」という場合には、法定相続人は第2順位に当たる「親」へと移ります。親もすでに亡くなっている場合、第3順位の「兄弟」が相続人です。 兄弟姉妹が相続人になる場合も、すでに亡くなっていれば代襲相続の対象になります。亡くなっている兄弟姉妹の子ども、つまり被相続人から見て「甥や姪」に当たる人が、相続人になるのです。ただしその甥や姪もすでに亡くなっていた場合、その先の世代に代襲相続が続くことはありません。 相続人が死亡している場合の注意点は? 相続人がすでに死亡している場合に、注意しなければならないのが「代襲相続」についてです。第1順位の子どもが亡くなっている場合、直系卑属の代襲相続は、何代先までも続いていきます。つまり、問題を放置する期間が長くなれば、相続人の数はどんどん増えてしまう可能性があるのです。 相続の手続きは、基本的に相続人全員で行う必要があります。そのため相続人の範囲が広がれば広がるほど、手続きの難易度は高まっていってしまうでしょう。 特に不動産には相続手続きの期限がなく、問題が放置されがちです。相続問題を複雑化させないためには、できるだけ早期に手続きするのがおすすめです。 相続人が行方不明の場合の対処法は? 相続人が行方不明の場合の対処法は? 先ほどもお伝えしたとおり、相続の手続きは、相続人全員で行う必要があります。 ・所在不明で連絡がとれない ・生死すら不明で手も足も出ない このような場合でも、行方不明者を放置して手続きを進めることはできません。行方不明者の所在を確かめるため、あらゆる調査を求められるでしょう。 ただし、行方不明者が生死不明になったときからすでに7年が経過している場合、「失踪宣告」の手続きによって「すでに死亡しているもの」とみなすことができます。この場合、行方不明になった人以外の相続人で、相続の手続きを進めていきましょう。 失踪宣告にとって相続人から外れた人がいる場合も、代襲相続が行われます。直系卑属の場合は子どもや孫、その孫など…世代を問わず相続人になるため注意してください。 また「相続が発生した時点で行方不明者がいるものの、まだ7年は経過していない」という場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任申し立てを行いましょう。行方不明者の代わりとなる管理人を立てることで、相続手続きを進めていけます。 相続手続きの途中で相続人が亡くなった場合は? 遺産分割協議や手続きが長引くと、その最中に相続人が亡くなってしまうケースもあります。この場合、亡くなった人からの新たな相続が発生するため、話がややこしくなりがちです。これを数次相続と言います。 この場合、新たに亡くなった人の相続人も交えて、相続に関する話し合いを再度行うことになります。亡くなった相続人が本来相続するはずだった財産は、その被相続人に受け継がれます。そして、新たに発生した相続についても、適切に処理する必要があるでしょう。 相続手続きの途中で相続人が亡くなった場合、遺産分割協議書は新たに作り直す必要があります。「新たな相続内容に新たな相続人全員が合意する必要」があるのです。 相続人が亡くなっている・行方不明の場合の相談先は? 相続人がすでに亡くなっている場合や、行方不明になっている場合の遺産相続手続きは、複雑になりがちです。以下のような専門家に相談するのがおすすめです。 ・税理士 ・弁護士 ・司法書士 ・銀行 「事業」が相続の対象に入っていたり、相続税が気になる場合には、まず税理士に相談するのがおすすめです。また、相続人死亡や行方不明といった事情がこじれて、裁判になる可能性がある場合には、弁護士がおすすめ。司法書士は主に「不動産の名義変更」といった手続きをサポートしてくれますが、中には相続問題に強い事務所もあります。 「どこに相談すれば良いのかわからない…」という場合には、相続に関する相談窓口を活用してみてください。自治体や各種法人が相続専用窓口を用意しているケースも多く、そこから必要な窓口へとつないでもらえます。 行方不明ではないものの連絡がとれない場合は? 相続人の所在は判明しているものの、何度連絡しても、どうしても連絡が付かないケースもあるでしょう。この場合、失踪宣告や不在者財産管理人といった制度は利用できません。家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。裁判所を通じて、遺産分割についての話し合いを進めていきます。 調停がスタートすれば、相手方へは裁判所から連絡がいきます。裁判所からの連絡が無視され、話し合いができなかった場合でも心配は要りません。遺産分割審判により、裁判所が遺産分割方法を決定するので、それに沿って相続手続きを進めていけます。 複雑な相続も放置しないことが一番 被相続人が亡くなったとき、相続に関する手続きは悩ましい問題の一つです。複雑な事情がある場合には、できるだけ早期に専門家に相談してみてください。 相続税が発生すると思われる場合には、それがいくらになるのか、早めに把握する必要があります。そのあたりを得意とするのは税理士ですから、ぜひ相談してみてください。 相続の世界には細かなルールも多く、自分の場合に何が適用されるのか、よくわからない…と悩む方も少なくありません。問題を放置してもさらに複雑化してしまう可能性が高いですから、ぜひ早めの対処を心掛けましょう。

  • 兄弟は遺産を相続できる?兄弟のパターンごとに事例を使ってご紹介

    兄弟は遺産を相続できる?兄弟のパターンごとに事例を使ってご紹介

    兄弟は遺産を相続できる?兄弟のパターンごとに事例を使ってご紹介 身近な人が亡くなることなど考えたくはありませんが、誰もいつかは彼岸へと旅立ちます。 年齢に関係なく知っておきたい遺産相続について、この記事では兄弟姉妹の相続についてお伝えします。 両親が他界して独身の兄弟姉妹が亡くなった場合や、兄弟姉妹に子どもがいない場合などに遺された兄弟姉妹が遺産を相続できるケースもありますので、ぜひ参考にしてください。 兄弟姉妹が相続人になる場合 兄弟姉妹が相続人になる場合 被相続人(亡くなった人)に直系卑属(子や孫)、直系尊属(親や祖父)がおらず兄弟姉妹がいる場合は、兄弟姉妹が相続人になります。 相続人が兄弟姉妹のみの場合は、兄弟姉妹の法定相続分は相続財産のすべてです。相続財産のすべてを、兄弟姉妹の人数で割ります。配偶者がいる場合は、必ず相続人となります。 相続順位について 配偶者以外の相続人には、順位が決められています。 第1順位は子、子が先に亡くなっている場合は孫、子と孫が先に亡くなっている場合は、ひ孫です。 第2順位は父母、父母が先に亡くなっている場合は、祖父母です。 第3順位は兄弟姉妹、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、甥もしくは姪です。 兄弟姉妹が法定相続人になるケース 親や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属がいない場合は、兄弟姉妹が相続人となります。配偶者が存命で、親や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属がいない場合は、配偶者と故人の兄弟姉妹が遺産を相続できます。 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者の法定相続分は遺産の4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は遺産の4分の1です。兄弟姉妹が複数人いる場合は、遺産の4分の1を兄弟姉妹の数で割ります。 例えば、故人以外の兄弟姉妹が二人なら、相続分は一人あたり8分の1です。 ただし、遺言書があった場合には遺言書が優先されます。そのため、法定相続人になっても遺言書の内容によっては財産を取得できないケースもあります。 兄弟間で遺産相続で揉める原因と対処法 兄弟間で遺産相続で揉める原因と対処法 法律に従っていればトラブルは起こらない。そう考えている方も多いと思いますが、金銭等が絡んでくるため、ひょんなことから予想だにしないトラブルが発生するのが遺産相続です。 ここでは、兄弟間で遺産相続で揉めてしまう原因について下記のケースを解説します。 家族や兄弟間での話し合いができていない遺産を平等に分けることが難しい遺産相続の内容が非常に偏っている 実際に争いが起こってしまうと、遺産分割調停を行ったり、弁護士に依頼することになったりと解決したとしても禍根を残すことになりかねません。お互いの気持ちに寄り添い、冷静に話し合いが進められる状況を作れるよう、揉めてしまう原因を前もって把握しておくようにしましょう。 ➀家族や兄弟間での話し合いができていない 揉める原因として最も多くなるのが、家族間・兄弟間での話し合いが適切に行われていないことです。ご家族が亡くなられ、相続が発生すると期限などもあることから、ゆっくりと話し合いをする時間を設けることは困難です。 事前に話し合いが行えておらず、実際に相続が発生してからでは遅い場合も多いです。事前に十分な話し合いが行えていないことが、トラブルや揉め事の根源となる状況は決して珍しいものではありません。 亡くなっていないのに亡くなった後の話をするのは抵抗があるかもしれませんが、前もって話し合いお互いの考えていること・思いを把握しておくのはとても重要です。いざ相続となった段階で残された家族・兄弟が揉めてしまいトラブルになると亡くなられたご家族様が安心して眠れなくなるかもしれません。 話し合った内容をボイスレコーダーなどに録音し、形として残しておくと後々聞き返すこともできますし、トラブルになった際に役立つこともあります。ただし、法律的な意味は持たないことに注意が必要です。 ➁遺産を平等に分けることが難しい 遺産は現金のように分割が容易なものばかりではありません。不動産や車といった分割をすることが難しいものが遺産として残されている可能性も十分にあります。例えば下記のケースです。 3人兄弟残された財産は亡くなった長男名義の土地と建物、預金200万円 こういった場合の解決方法としては、以下のようなことが考えられます。 遺された兄弟2人のどちらかが土地を相続することで合意する土地を相続した人が現金でほかの1人に補填する土地を売却し、得た収入を2人で均等に按分する土地を共同名義で保有する トラブルを避けるため、事前に遺言書を作成し、分割方法についても細かくきちんと定めておくことをおすすめします。 ➂遺産相続の内容が非常に偏っている 遺言書に「長男に財産のすべてを相続させる」旨の記載があった場合でも、一定の相続人には遺留分を請求する権利があります。そのため、遺産相続の内容に不平等さを感じたら、遺留分の請求を検討してください。ただし、相続人が兄弟姉妹の場合には遺留分がないことに注意が必要です。 遺留分とは 遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことを言います。亡くなった方(被相続人)は、自身の財産の行方を遺言により自由に定めることができますが、被相続人の遺族の生活の保障のために一定の制約があります。これが遺留分の制度です。 兄弟姉妹に遺留分はなぜないのか 配偶者には遺留分がありますが、兄弟姉妹にはありません。 それは、被相続人と一緒に暮らしていた配偶者は経済的に困る可能性があることが理由の一つであると考えられます。 まとめ:兄弟間で遺産に関して揉めないために 兄弟間で遺産に関して揉めないために 兄弟姉妹が相続人になる場合は、被相続人に直系卑属・直系尊属がいない場合です。兄弟姉妹が法定相続人になるケースは関係性によって変わってきますので、本記事を参考にしてください。 また、兄弟間で遺産相続で揉める原因と対処法もご紹介しました。大切な家族が遺産に関して揉めてしまわないためにも、遺言書を作成したり、内容に極端な偏りが出ないように配慮したりといった対策が必要です。残される家族のために、できるだけ早い段階で遺産相続について検討してください。

  • 【遺言書作成】弁護士費用相場を解説!作成の流れやメリットについても

    【遺言書作成】弁護士費用相場を解説!作成の流れやメリットについても

    【遺言書作成】弁護士費用相場を解説!作成の流れやメリットについても 相続トラブルを避けるためには遺言書を作成することが重要です。遺言書の作成を専門家である弁護士に依頼したいけれど、費用が高そう、どのような流れになるのかわからないと困っている方もいらっしゃるでしょう。 この記事では、遺言書作成を弁護士に依頼する場合の費用の相場や遺言書作成の流れ、弁護士に遺言書作成を依頼することのメリットについて解説していきます。 遺言書を作成して相続に備えよう 遺言書を作成して相続に備えよう 遺言書を作成しておかないと、相続が発生した場合に、自分の思うように遺産を引き継がせることができなかったり、遺産争いとなってしまったりする危険があります。 自分の死後の家族を心配することがないように、遺言書を作成して相続に備えておくことは重要です。 遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類の形式があります。自筆証書遺言は、手書きで簡単に作成できるものですが、形式面の不備で無効となってしまうケースも多いです。公正証書遺言は、公証人が公正証書の形式で作成する遺言書です。作成には手間と手数料がかかりますが、形式面でも安心して正確な遺言書を作成するには、公正証書遺言をおすすめします。 遺言書作成にかかる弁護士費用の相場 遺言書作成にかかる弁護士費用の相場 遺言書を作成するには、形式面や内容面で専門的な知識がないと難しいこともあります。その場合、遺言書の作成を弁護士に依頼するのが安心ですが、弁護士に依頼するとなれば費用の心配をされる方も多いでしょう。 ここでは、遺言書作成にかかる弁護士費用の相場について説明します。 相談費用 遺言書作成のアドバイスを求めたり、作成を依頼したりするための相談費用としては、30分あたり5,000円が相場となります。事務所によっては、初回の相談を無料としているところも多くあります。 遺言書作成費用 日弁連が実施したアンケートによると、遺言書作成費用の相場は20万円程度です。 遺言書の作成費用は、自筆証書遺言と公正証書遺言のいずれを作成するのか、財産の内容はどのようなものであるのかによって変わりますので、詳しくは相談の際に聞いてみるようにしましょう。 遺言執行費用 遺言書の執行までを弁護士に依頼する場合には、遺言執行費用もかかります。遺言執行費用としては、財産額の数パーセントに一定の金額を加えたものとしている事務所が多いです。 多くの事務所が参考にしている、弁護士会の旧報酬基準では、遺産の額が3,000万円以下の場合には、2%+24万円、3,000万円を超え1億円以下の場合には、1%+54万円となっております。 そのほかの費用 遺言書の保管を弁護士に依頼する場合には、別途保管費用が発生する可能性があります。また、公正証書遺言を作成する場合には、弁護士費用とは別で公正証書の作成費用も必要です。 遺言書作成を弁護士に依頼する4つのメリット 遺言書作成を弁護士に依頼する4つのメリット 遺言書作成を専門家に依頼すると何となく安心することもあるでしょうが、ここでは遺言書作成を弁護士に依頼する具体的なメリットについて解説していきます。 遺言書作成を弁護士に依頼する具体的なメリットとしては、次の4つを挙げることができます。 法的に正確な内容の遺言書を作成できる遺言書作成に必要な財産の調査もできる遺言書の作成から遺言書の執行まで対応できる相続トラブルとなった場合の対応もできる 一つずつ見ていきましょう。 法的に正確な内容の遺言書を作成できる 遺言書の作成には、正確な法的知識が必要です。知識なしに遺言書を作成すると、最悪の場合には形式が間違っていて遺言そのものが無効になることもあります。 また、法定相続人に最低限認められる遺産の取り分である遺留分を意識せずに遺言書を作成すると、せっかく遺言書を作成したのに、結局は遺産争いが生じてしまうこともあるでしょう。 弁護士に依頼することで、遺留分などにも配慮して、法的に正確な内容の遺言書を作成できます。 遺言書作成に必要な財産の調査もできる 正確な遺言書を作成するためには、財産の内容も正確に把握することが重要です。 遺言書作成を弁護士に依頼することで、財産の内容を把握するための調査も合わせて行うことができます。 財産の記載漏れなどがあると、遺言書を残していても記載が漏れていた財産について遺産争いが生じる場合もあるので財産の調査を行うことは重要です。 遺言書の作成から遺言の執行まで対応できる 遺言書の作成を依頼した弁護士に遺言の執行まで依頼することで、亡くなったあとの対応についても一括して対応してもらうことができます。 被相続人が亡くなってから、遺言執行の対応のみをするとなれば、詳しい事情がわからずに手続きが上手く進まないこともあるでしょう。 被相続人の生前から事情を把握している弁護士が遺言執行まで担当することは、手続きをスムーズに進めるうえでも有効な方法と言えます。 相続トラブルとなった場合の対応もできる 実際に遺産争いなどが生じてしまってから誰かに相談するよりも、生前からよく事情を知っている弁護士がトラブルの対応をできるのは問題を解決するうえで大きなメリットといえるでしょう。 あとにも説明しますが、弁護士以外の専門家は、基本的に相続トラブルの問題には関与することができません。 遺言書作成を弁護士に依頼する際の流れ 遺言書作成を弁護士に依頼する際の流れ ここでは、実際に遺言書作成を弁護士に依頼するまでの流れについて解説します。 弁護士を探す まずは、遺言書作成の相談をする弁護士を探す必要があります。知り合いに弁護士がいない場合などは、インターネットで検索する、法テラスを利用するなどの方法により弁護士を探すことができます。 事務所のホームページで、遺言作成の詳しい対応について説明している弁護士も多いので、自分に合いそうな弁護士を探して相談の予約をしてみましょう。 弁護士と相談する 弁護士と相談する際には、家族構成や財産の内容がわかる資料を持参するようにしましょう。心配事など、聞きたいことをまとめておくと、相談時間を有効に活用することができます。 相談の際には、遺言書作成を実際に依頼する場合の費用や、どれくらいの期間がかかるかなどを確認するようにしましょう。 弁護士と契約する 相談のうえで弁護士に依頼する場合には、弁護士と契約を締結します。かかる費用や対応してもらう内容など、認識が合っているのか確認することが重要です。 遺言書の作成 契約が締結されると、実際に遺言書の作成が進められます。 遺言書の作成にかかる期間は、家族構成や財産の内容、遺言書の形式によってさまざまです。早ければ数日のうちに、長ければ数か月かかる場合もあるので、弁護士に期間の目安を確認しておくようにしましょう。 弁護士以外の遺言書作成の専門家との違い 弁護士以外の遺言書作成の専門家との違い 遺言書の作成は、弁護士以外にも行政書士や司法書士も専門としている場合があります。ここでは、弁護士以外の専門家と弁護士との違いについて解説します。 行政書士や司法書士も遺言書作成をしている 行政書士は文書作成の専門家として、司法書士は相続登記などの専門家として遺言書作成を受け付けていることがあります。 遺言書作成自体については、取扱件数も多く専門的に行っているところもありますので、行政書士や司法書士に依頼することも手段の1つと言えます。 弁護士とほかの専門家との違い 弁護士とほかの専門家との決定的な違いは、代理権が認められるか否かということにあります。 行政書士や司法書士は、相続トラブルとなった際に代理人としての対応ができません。そのため、相続トラブルが発生する場合には弁護士に、その心配がない場合には行政書士や司法書士に依頼することも1つの選択肢といえるでしょう。 遺言書作成を弁護士に依頼する際の注意点 遺言書作成を弁護士に依頼する際の注意点 遺言書の作成は、大きな財産を取り扱うことになる問題です。そのため、弁護士であれば誰に依頼してもよいということはなく、次の点に注意する必要があります。 経験のある弁護士を選ぶ 弁護士であっても、遺言書作成の経験がない弁護士もいます。 そのため、遺言書の作成を依頼する場合には、遺言書作成の経験が豊富な弁護士を選ぶのが安心です。 経験のない弁護士に依頼すると、必要な対応ができずに逆に手間がかかることもあるでしょう。 複数の弁護士を比較する 相談する弁護士を決める場合や、相談のあとでも納得できないような場合には、複数の弁護士を比較するべきです。 無料相談を実施している事務所も多いので、複数の事務所で無料相談を受けてみて自分に合う弁護士を選ぶのもよいでしょう。 まとめ:遺言書作成は弁護士に 遺言書作成は弁護士に 遺言書作成を弁護士に依頼する場合の費用やメリットなどについて解説しました。 亡くなったあとの家族の安心のためには遺言書を作成することが重要です。正しい遺言書を作成し、亡くなったあとのサポートも安心して受けられるためには、弁護士に遺言書作成を依頼することをおすすめします。

  • 相続の相談先は弁護士?税理士?ケースごとの選び方や費用目安を解説

    相続の相談先は弁護士?税理士?ケースごとの選び方や費用目安を解説

    相続の相談先は弁護士?税理士?ケースごとの選び方や費用目安を解説 財産の相続手続きが始まると「亡くなった人のことを考えている暇もない」「手続きが複雑で手間」と感じる人もいるのではないでしょうか?相続には、さまざまな手続きがあって、とても忙しい状況で対応することもあります。相続は自分でおこなうこともできますが、専門家にまかせて確実な相続をしたいと考える場合もあるでしょう。 しかし、相談先によって費用は変わるので、不安に感じるかもしれません。今回は、各相談先の特徴や、費用について紹介します。専門家によって、対応できる範囲が異なりますので、ぜひ最後まで読み進めて相談先の参考にしてください。 相続の相談先はどこ? 相続の相談先はどこ? 相続の相談先は、大きく分けて5つあります。 税理士行政書士弁護士司法書士銀行・信託銀行 それぞれ相談できる内容や、費用の違いがあります。相談内容や状況に合わせて相談先を検討するとよいでしょう。それぞれ、詳しく見ていきましょう。 相続相談先①税理士 相続税の申告が必要なら税理士です。名前の通り税関係の専門家であり、税金の管理を業務としています。相続税に関しては税理士ですが、基本的に相続の手続きは行いません。 相続税とは、被相続人の財産を相続した相続人が支払う税金のことです。「相続の手続きをやる」と掲げている税理士事務所もありますが、その場合は行政書士や司法書士と連携している可能性があります。 また、相続税の申告がない場合は、税理士に依頼する必要はなく、相続の窓口としては、行政書士や司法書士が適切です。 相続相談先②行政書士 依頼人の代わりに、書面作成をおこなう専門家です。行政書士は業務の範囲が広く、依頼しやすいというメリットがあります。反対に、範囲が広いことにより、得意・不得意があり、すべての行政書士が相続の対応ができる訳ではありません。 相続を依頼したい場合は、実績が豊富、または相続専門の行政書士に依頼するとよいでしょう。ただし、行政書士には訴訟、登記に関する「代理権」がありません。当事者の代わりにこれらの申請や、交渉ができない点に注意しましょう。 相続相談先③弁護士 相続のトラブルなら弁護士に相談しましょう。弁護士なら、以下のような内容を相談できます。 遺産相続借金問題慰謝料請求の問題 など 上記以外でも、さまざまな場面で応じてくれます。相続の件でトラブルになりそうな場合や、裁判に発展しそうなときは、迷わず弁護士に相談するとよいでしょう。 亡くなる前であれば、遺言書の作成やエンディングノートについても相談が可能です。 相続相談先④司法書士 司法書士は、不動産の名義変更の申請や、戸籍の収集や相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成を行っています。それ以外にも、相続放棄、特別代理人の選任申立、遺産分割調停の申立などで家庭裁判所に提出する書類の作成を行っています。 相続財産に不動産がある場合には、相続人の権利は相続登記により確定しておかないと、将来的に誰の資産なのかとトラブルになる可能性があり、売却の手続きも滞ってしまいます。そのため、相続登記をおこなう必要があります。このような場合は司法書士に依頼しましょう。 相続相談先⑤銀行・信託銀行 銀行や信託銀行にも、相続手続きの相談ができるサービスがあります。しかし、一定のサービスのみの提供となり費用も他に比べると高くなります。また、トラブルの恐れがある場合の相続手続きに対しては、業務をおこなわないケースがあるので注意が必要です。 相続相談先の費用比較 相続相談先の費用比較 ここからは、それぞれの相談先の費用について見ていきます。費用に関してはあくまでも目安ですので、詳しくは各相談先に相談するとよいでしょう。 税理士 税理士への相談は、内容にはよりますが無料でおこなっている場合があります。ただし、あくまでも相談の範囲であり、解決策や金額の具体的な話になると相談費用が必要です。 費用は、30分5,000円〜10,000円が相場とされています。平成14年3月までは、報酬規程が決まっており、1時間まで一律20,000円でした。そのため、必要費用は下がっています。 行政書士 行政書士は、幅広い相続に関する手続きが最大のメリットで、各手続きによって費用が異なります。相続の基本報酬を設定し、その後、必要な手続きに合わせ1〜30,000円を加算するというケースと「おまかせパック」のように、パッケージしたプランを設けている事務所があります。 パッケージ利用だと200,000円前後が相場です。基本報酬から加算するタイプでは、費用加算が多くなるケースもあるので注意しましょう。 弁護士 相談料は30分でおよそ5,000円ほどです。相談料は無料としている事務所もあるので、まずは無料相談を考えているなら探してみるとよいでしょう。 報酬金に関しては、得られる経済的利益に対して15%前後が必要とされています。また、着手金や出張費として、実費費用が加算される場合もあります。明確な内訳を提示してもらえる事務所を選ぶと、安心して相談できるでしょう。 司法書士 司法書士の費用は、自由化されているため、司法書士事務所によって差があります。相続登記にかかる相場は50,000~150,000円ほどですが、作成する書類(遺産分割協議書やその他必要な書類作成)に対して追加で費用が必要となるでしょう。 数次登記や対象となる不動産が多い場合は、その分、工数が必要となるため、費用は増えるのが一般的です。料金をパッケージ化した事務所もあるので、費用が心配な方は、パッケージ化した料金形態の事務所を選ぶとよいでしょう。 数次登記とは、不動産名義の人が亡くなった後に、相続人も亡くなっている状態のことで、登記手続きが複雑になる状態を指します。 銀行・信託銀行 各専門家に依頼するよりも、費用は高額になるケースが多いです。その分、信用度が高く、安心できるというメリットがあります。 費用相場は1,100,000円〜1,650,000万円前後です。また、遺産額に応じ、0.3%〜2%程度の料金が加算されます。さらに相続登記の料金などもプラスされます。 相続の問題がある場合は、手続きを断るケースがあるので注意が必要です。 相続の手続きは自分でできるの? 相続の手続きは自分でできるの? 相続の手続きは、専門家に相談しなくてもすすめることは可能です。専門家に依頼すると費用もかかるため、自分たちで相続の手続きをおこなおうと考える方もおられるでしょう。しかし、相続の手続きには専門的な知識や書類の作成が必要になるため、労力や時間が必要です。せっかく作成した書類も効力がなく、家族間のトラブルの元になってしまうケースも考えられます。 また、本来受け取れるはずの財産の一部しか受け取っていなかったなどの事例もあります。専門家に相談し、サポートを受けることで、確実に相続の処理をおこなってもらえるので安心して任せられるでしょう。 まとめ:相談先によってできる範囲が違う 相談先によってできる範囲が違う 相続手続きは、相談先として選択肢があり、どこに相談していいか悩んでしまうでしょう。各専門家はそれぞれ、専門分野が異なるため、適切な事務所に相談にいく必要があります。 また、それぞれで費用が異なるため、いくつかの事業所に確認し比較するとよいでしょう。安いからよい訳ではありません。業務内容や相談のしやすさなどから自身にあった相談先を検討してみてください。

  • 会社を円滑に相続するためには?必要な手続きや注意点を解説

    会社を円滑に相続するためには?必要な手続きや注意点を解説

    会社を円滑に相続するためには?必要な手続きや注意点を解説(イメージ) 会社の相続をまず何から準備すべきかと迷っていませんか。この記事では、会社を相続するうえでの手順や注意点について詳しく解説しています。 失敗せずに相続するためには、まず何を準備すべきかわかりますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。 会社の相続とは 会社の相続とは 親が経営している会社を子どもに引き継ぐ場合、相続の手続きをしなければなりません。相続は、引き継ぐ会社が法人か個人事業かの2パターンに分けられます。 会社が法人の場合の相続 親が経営している会社が法人の場合、経営者個人の資産か会社の資産で子どもが相続できるかが異なります。経営者個人が持っている資産は、相続人に引き継がれます。 一方で、会社の資産は会社法人の所有となり、相続人である子どもには引き継がれません。会社の資産は、経営者が退いたあとに経営する後継者が引き継ぎます。 ただし、経営者個人の資産で多くの自社株を子どもが引き継いだ場合、経営権を支配できます。会社は独立した法人のため、経営者である親が亡くなっても会社の相続自体は起こらないと覚えておきましょう。 個人事業の場合の相続 個人の事業を相続する場合は、すべての資産が経営者個人のものとなり、事業の資産もすべて引き継ぐことができます。そのため、個人事業の相続は一般的な相続とあまり変わりません。 ただし、前経営者が取引先と締結した契約が多いと、手続きが少し複雑です。なぜなら、それらの契約は個人名義で行っているため、再度契約し直さなければならないからです。 個人事業を相続する前に、取引先の数はどれくらいか事前にチェックするとよいでしょう。 会社を相続する手順 会社を相続する手順 次に親の会社を相続する場合の手順について紹介します。個人事業は一般的な相続と変わらないため、今回ご紹介するのは法人の事業を引き継ぐ手順です。 ①相続するために会社の株式を取得 親が経営している会社が法人なら、基本的にその会社の資産を引き継げません。法人の会社を引き継ぐ場合は、会社の経営権の相続が必要です。 そのためには、ほかの相続人と遺産分割について協議して、発行株式の過半数を保有しなければなりません。過半数の株式を保有していると、役員の選任など経営するうえでの体制を整えられます。 もし会社を引き継がないと決定した場合は、この時点で公平に遺産分割しましょう。 共同経営も可能ですが、意見が割れて経営が上手くいかなくなる恐れがあるため、特定の人物に相続させるのがよいです。 ②会社の名義を相続する人に変更 次に、会社を相続するためには、会社備え付けの株主名簿の名義を相続する人に変更しなければなりません。なぜなら、株式をもっていたとしても、名義を変更していなければ権利を行使できないからです。 名義変更する株式の会社が上場企業の場合は、発行元の会社と取り扱っている証券会社の両方で手続きが必要です。名義を変更しなければ、経営権の相続はできないため、速やかに行いましょう。 ③相続した会社を経営するための手続き 最後に行うのが、相続した会社を経営するための手続きです。まず、株式を保有した状態から株主総会を開いて役員の地位を確保し、代表取締役に就任します。 その後、法人の銀行口座の代表者変更手続きや取引先への通知などが必要です。経営する中で、経営者の変更に伴う手続きを行っていき、会社を引き継いでいきましょう。 会社を相続するうえでの注意点 会社を相続するうえでの注意点 会社を相続するうえでは、さまざまな点に注意しなければ損をしてしまいます。この章では、押さえておきたい下記の3つの注意点についてご紹介します。 会社の評価額が高くなる会社の負債を相続してしまう会社の経営権を取得できない 順番に見ていきましょう。 ①会社の評価額が高くなる 1つ目の注意すべきポイントは、会社を相続する際の税金が高くなってしまう点です。会社の評価額は、株式の価値で算出され、会社の事業財産・不動産・貸付金などにかかってきます。株式の金銭的価値が高いと評価されると、その分相続税が高くなります。 また、貸付金は経営者が会社の経費を立て替えた時などのお金です。貸付金は回収できていなくてもその金額に相続税がかかってしまうため、特に注意が必要です。 そのため、親の会社を相続すると税金はどれくらいかかるのか、あらかじめシュミレーションしておくと相続税がどれくらいか分かります。税金が莫大にかかってしまうならば、生前にできる対策についてよく検討しましょう。 ②会社の負債を相続してしまう 2つ目の注意点として挙げられるのが、会社の負債を相続してしまう事態です。経営をするうえでは融資を受けている会社が多く、何も考えず相続してしまうと危険なのです。 代表者が債務の連帯保証人になっていると、その保証債務も相続する対象となってしまいます。 ただし、設備投資や事業拡大のために融資を受けている場合もあるので、一概に良し悪しは言えません。相続する会社の財務面をくまなく確認し、危険と判断するならば相続放棄も視野に入れましょう。 ③会社の経営権を取得できない 3つ目に注意したいのが、会社の経営権を取得できないリスクがある点です。先程述べたとおり、会社の経営権は発行済株式の過半数を保有していないと行使できません。 また、事業の目的の変更や定款の変更をしたい場合は、発行済株式の3分の2以上が必要です。例え会社を相続すると決めたとしても、ほかの相続人が反対して株式を一人の相続人に集中させられないと、上手く事業を承継できないのです。 生前に遺言書の作成をしておくと、株式をまとめられてスムーズに相続できるため、事前に準備しておきましょう。 会社の相続で失敗しないための事前準備 会社の相続で失敗しないための事前準備 会社の相続での損や失敗は、事前準備を進めておくと避けられます。この章では、会社を相続する前に必要な3つの準備を見ていきましょう。 遺言書を作成する生前贈与で会社の株式を譲渡する自社株の評価額を下げる 一つずつ解説します。 ①遺言書を作成する 会社を相続する前に行うべき1つ目の準備は遺言書の作成です。遺言書を作成しておくと、会社の後継者を指定でき、余計なトラブルをなくしたスムーズな相続が可能です。 例えば、長男に会社を継がせようと考えている場合、長男に株式を集中させる旨を遺言書に残す必要があります。 ただし、株式の金銭的価値が高いと、取得できないほかの相続人との不公平が生まれてしまいます。そのため、相続人が複数いる状態で株式を集中させたいならば、ほかの相続人はどうするか資産の配分の検討が非常に重要です。 遺言書は、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3種類から選んで作成しましょう。 ②生前贈与で会社の株式を譲渡する 2つ目に出来る準備が、生前贈与で会社の株式を譲渡する方法です。生前贈与では、会社の株式や事業の資産などを亡くなる前に譲渡して事業承継を進められます。ただし、生前贈与の場合、贈与税がかかるのを覚えておきましょう。 また、株式や不動産の評価額が低い時に贈与すると、節税対策として活用もできます。生前に株式の譲渡を完了させておけば、確実に自分の意志を反映させられて、相続におけるトラブルも未然に防げます。 子ども同士での争いを避けるためにも、生前贈与を選択肢の一つとして検討しましょう。 ③自社株の評価額を下げる 最後に、自社株の評価額を下げるのも事前準備として非常に大切です。会社の株式を相続する場合、その価格によって相続税が高くなってしまいます。 例えば、不動産の購入は自社株の評価を下げる方法の一つです。土地や建物は現金よりも低く評価される傾向にあるため、純資産価額を引き下げる効果があります。 そのため、結果として純資産価額方式で計算する相続税も減らせるのです。このように、事前に対策しておくと相続税の負担を軽くできます。 まとめ:事前準備で円滑に会社の相続を進めよう まとめ:事前準備で円滑に会社の相続を進めよう 会社の相続は、後継者に引き継ぐために経営者にとって必要な手続きです。会社の相続には2種類あり、法人と個人事業で方法が異なる点をご紹介しました。 法人の会社を相続する場合は、会社の株式の過半数を集中させなければ、経営権を取得できず、経営がうまくいきません。そのため、遺言書の作成や生前贈与など事前に準備しておくと、スムーズに相続を進められます。 また、不動産の取得などを行って、自社株の評価額をさげておくと、相続する方の相続税の負担を軽くできます。将来を見据えて、今から会社の相続のための準備を進めていきましょう。

  • 他人事ではない相続税対策!具体的な方法と注意点

    「相続税対策」と聞くと、「一部のお金持ちのみが行うもの」という印象を抱く方も多いのではないでしょうか?しかし今、ごく普通の生活を送っている方にとっても、相続税は身近な存在になってきています。 では具体的に、どういった条件に当てはまると、相続税対策が必要になるのでしょうか。相続税が発生する条件や、税金を少なくするための具体的な対策、実施する際の注意点などをまとめて解説します。 そもそも相続税とは? 相続税は、被相続人から財産を受け継いだ際に、その額に応じて課せられる税金です。自身の親や配偶者が亡くなったときには、相続人になるケースも多いでしょう。受け継ぐ財産の金額が一定額以上になると、相続税を納める必要が生じます。 相続税には基礎控除があり、相続する財産が一定金額以下に収まれば、相続税を納める必要はありません。「相続税は一部のお金持ちのみが支払うもの」というイメージが根強いのは、「相続税を支払う=受け継ぐ財産の額がそれだけ多い」という考えによるものでしょう。 しかし今、状況は大きく変わってきています。相続税に関する制度は、2015年に改正。基礎控除額が40%も引き下げられたことにより、相続税を課せられる人の割合が大幅に増加しています。もはや相続税は、「お金持ちだけのもの」というわけではありません。ごく一般的な生活を送っている方々にとっても、相続税対策の重要性は増しているのです。 相続税対策を検討したい人とは? 相続税対策を検討したい人とは? では具体的に、相続する財産がいくら以上になると、相続税が発生するのでしょうか。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求められます。 相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) たとえば、夫婦と子ども1人の家族で夫が亡くなった場合、法定相続人は妻と子どもの2人です。上の式に当てはめると、相続税の基礎控除額は4,200万円に。夫から受け継ぐ財産が4,000万円であれば、相続税は発生しないため、対策をする必要はありません。一方で、受け継ぐ財産が5,000万円になると、基礎控除額を超過した800万円分に、相続税が課せられます。 これだけの情報を聞くと、「我が家にはそれだけの財産はないから、やはり相続税対策は必要ない」と思う方は多いのかもしれません。しかし、以下のような条件に当てはまる場合は、注意が必要です。 ・法定相続人の数が少ない(配偶者がいない) ・相続する財産に「不動産」が含まれる ・都心部の不動産を受け継ぐ予定である 法定相続人の数が少ない場合、特に配偶者がおらず、子どもやその他の人のみで財産を相続する場合、基礎控除額が少なくなる可能性があります。財産の総額が少なくても、相続税が発生する恐れがあるので、十分に注意しましょう。 またもう一点忘れてはいけないのが、不動産についてです。特に都心部の土地を受け継ぐ場合、あっという間に基礎控除額を超えてしまう可能性も。相続税を支払えるだけの現金がなければ、不動産を処分しなければならない事態も起こり得るでしょう。 相続税が課税される人の割合は、地方よりも都市部に多いと言われています。これは、不動産(主に土地)の評価額によって、相続税の基礎控除額を超えてしまうケースが多いためと考えられるでしょう。いざという場面で思わぬ出費に焦らないためにも、事前に相続税対策についても、しっかりと検討しておいてください。 具体的な対策方法4つ では具体的に、何をどうすれば相続税対策になるのでしょうか?4つの方法を紹介します。 ★1.生きている間に財産を贈与する 相続は、被相続人が亡くなった瞬間からスタートします。生きている間に、何らかの方法で配偶者や子どもに財産を移しておけば、相続財産を減らすことにつながります。生前の贈与によって、相続財産の合計が基礎控除内に収められれば、相続税の負担はゼロ円です。 とはいえ、自身の財産を他者にあげようとすれば、贈与税の対象に。この場合、贈与税が発生しない仕組みを活用し、上手に財産を移す必要があるでしょう。 もっともシンプルなのが、年間110万円までの非課税枠の中で贈与を行う方法です。1年に110万円でも、被相続人が5人いれば550万円になります。5年あれば、2,700万円以上の財産を、税金がかけずに移せる計算になるでしょう。 このほかにも、子どもや孫が住宅を購入するタイミングで資金援助を行った場合、最大1,000万円もの財産を非課税で移すことが可能。また教育資金を贈与すれば、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」を適用できます。こうした制度も上手に活用して、生前から相続財産を減らす工夫をスタートしましょう。 ★2.生命保険を活用する 相続人を受取人とした生命保険に加入すれば、被相続人が亡くなった際に、相続人に保険金が支払われます。この保険金に対しては、「500万円×法定相続人の数」まで非課税になる仕組みです。「現金」として相続するのではなく、「生命保険金」として相続できるよう準備を整えておけば、その分だけ、相続税の負担は少なくなります。 ★3.非課税財産を購入しておく 位牌や仏壇、墓碑に墓地など、祭祀にまつわる財産は、非課税財産と言われています。生前に現金一括で購入しておけば、その分は課税財産に含まれません。いずれ用意しなければならないものなら、生きている間に準備しておきましょう。こちらも相続税対策になります。 ★4.養子縁組で法定相続人を増やす 法定相続人が増えれば、その分だけ相続税の基礎控除額は増加します。法定相続人が少ないために相続税が発生する状況であれば、養子縁組によって法定相続人を増やす方法も効果的です。子どもの配偶者や孫を養子にする手続きを取っておけば、相続税の負担は少なくなります。養子縁組に関するルールを理解した上で、取り組みましょう。 相続税対策の注意点 相続税対策の注意点 相続税対策を行う上で、もっとも重要なのは、「効果的な方法を確実に実施する」という点です。そのためには、相続税に強い税理士のサポートを受けると良いでしょう。 自己流で相続税対策を行う方も多いですが、実際には、 ・全く効果のない相続税対策を行っていた ・相続税対策をしていたはずなのに、実際には高額な税金が発生してしまった ・あとで税務署から問題点を指摘された このようなトラブルを抱えてしまうケースもあります。税理士のアドバイスのもとで相続税対策を進めていけば、こうしたリスクは少なくなるでしょう。 ただし税理士に依頼した場合、専門家報酬が発生します。相続税がどれだけ発生する見込みで、専門家に依頼するメリットがどれだけあるのかを試算した上で、より良い道を探ってみてください。 相続税が支払えない場合はどうなる? 相続税対策を行わないまま手続きのタイミングを迎えてしまった場合、「相続税が支払えない!」といった事態に陥ってしまう可能性もあるでしょう。相続税が支払えない場合、分割での支払いが認められる可能性も。この制度を「延納」と言います。 延納が認められるためには、相続税額や一括納付が困難な理由、担保の提供など、一定の条件を満たさなければいけません。また相続税の申告期限までに、延納申請書と担保提供関係書類を準備し、提出する必要があります。 延納が認められた場合、最長20年までで分割納付が可能です。ただし延納期間に応じて利子税が加算されてしまうので注意してください。相続税が支払えないことが見込まれる場合、特に相続税対策が重要と言えるでしょう。 相続税について正しい知識を身につけよう 相続税と相続税対策は、もはや誰にとっても他人事ではありません。できるだけ早い段階で正しい知識を身につけ、具体的な対策をスタートするのがおすすめです。 相続税対策をスタートする時期が早ければ、選択肢も広がります。余計な税金を発生させないためにも、ぜひ相続税について正しく学んでみてください。

  • 生命保険は相続税の課税対象!注意が必要なパターンと計算方法を紹介

    人が亡くなった際に、残された家族の手に渡る「生命保険金」。この先の生活を支える「柱」のひとつとも言えるでしょう。少しでも多く手元に残したいと思うのは、当然のこと。しかし実際には、「生命保険金は相続税の対象になる可能性がある」という事実をご存知ですか? 生命保険に各種税金が発生するケースや、相続税の課税額・非課税枠について解説します。万が一のときのため、正しい知識を身につけておきましょう。 死亡保険金は「みなし相続財産」のひとつ 民法では、故人が生前に保有していた財産を、相続財産として認めています。死亡保険金は、被保険者の死亡によって発生する財産ですから、厳密に言えば民法上の相続財産には含まれていません。 一方で、相続税法上では、死亡保険金は相続税の課税対象に数えられています。このように、「厳密では相続財産ではないものの相続財産とみなし、相続税の課税対象になっている」のがみなし相続財産です。 たとえば「夫が死亡した際に、夫が契約していた死亡保険金を、保険金受取人である妻が受け取る」という場合、その死亡保険金は夫のみなし相続財産と言えます。妻が相続する際には、相続税が発生するケースもあります。 一方で、「夫が死亡した際に、妻が契約し被保険者を夫としていた死亡保険金を、契約者である妻自身が受け取る」という場合には、「所得税」が発生します。契約者・受け取り人が共に妻である場合、それは夫の財産ではなく妻の財産として認められるからです。 また「夫が死亡した際に、親が契約していた死亡保険金を、第三者である妻が受け取る」という場合には、「贈与税」の対象になります。亡くなった人・保険料を支払った人・保険金を受け取る人がすべて別々の場合、保険料を支払った人から保険金を受け取る人への「贈与」が行われたと判断されます。 このように、同じ死亡保険金でも、契約スタイルによって課税される税金の種類や金額が違ってきます。死亡保険金を受け取る際には、契約内容についてしっかりと確認する必要があるでしょう。 死亡保険金の受取で支払う相続税は? 故人が生前契約していた死亡保険金の受取人に法定相続人が指定されている場合、そのお金は「残された家族の生活を支えるためのお金である」と判断されます。その目的を考慮して、「相続税における生命保険金等の非課税枠」が用意されています。 非課税枠は、以下の数式で求められます。 【生命保険金等の非課税枠=500万円×法定相続人の数】 たとえば、夫が亡くなり、妻と2人の子どもが法定相続人になった場合、1,500万円までであれば非課税で受け取れるというわけです。もし夫の残した死亡保険金が2,000万円であった場合、残り500万円が相続税の対象になります。 ただし、死亡保険金が非課税枠から超過したからといって、即、相続税が発生するわけではありません。相続税には基礎控除が用意されていて、生命保険金とその他の相続財産すべてを含めて基礎控除額内に収まるのであれば、相続税はかからないのです。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求めてください。 【相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】 夫が亡くなり妻と2人の子どもが法定相続人になった場合の基礎控除額は、4,800万円です。生命保険金以外に4,000万円の財産を相続するとしたら、生命保険金等の非課税枠に入りきらなかった500万円を足しても、合計は4,500万円に。4,800万円以内に収まっているため、相続税は発生しません。 一方で、生命保険金以外の財産が4,500万円だった場合、生命保険金等の非課税枠に入りきらなかった500万円を足すと、合計は5,000万円に。この場合、基礎控除額から超過した200万円が相続税の課税対象になります。 生命保険金に所得税や贈与税が課せられる場合の金額は? 先ほどもお伝えしたとおり、生命保険の契約手法によっては、所得税や贈与税が発生するケースもあります。この場合、どのくらいの金額が課税対象になってしまうのでしょうか? ★生命保険金に所得税が課税される場合 契約時に「夫に万が一のことがあったときのため、妻が自分で夫を被保険者にした生命保険を契約する(※保険金受取人は妻)」というスタイルを選択した場合、夫が亡くなった際に妻が受け取る生命保険金は、所得税の対象になります。契約者本人が保険金を受け取っているため、一時所得とみなされるからです。 この場合の課税金額は、受け取った生命保険金額から経費と控除額を除いて求められます。 【所得税課税額=(死亡保険金受取額-払込保険料-50万円)÷2】 生命保険金における経費とは、過去に支払った保険料のこと。また一時所得には、50万円の特別控除が認められています。つまり、合計200万円振り込んで2,000万円の保険金を受け取った場合、875万円が所得税の課税対象額です。 ★生命保険金に贈与税が課税される場合 生命保険を契約する際には、「夫に万が一のことがあったときのため、妻が契約者・夫を被保険者・子どもを保険金受取人にする」というスタイルを選択するケースもあるでしょう。この場合、保険金を受け取る子どもには「贈与税」が課せられます。 贈与税の課税対象額を求める数式は、以下のとおりです。 【贈与税課税額=死亡保険金受取額-110万円】 110万円とは、贈与税における基礎控除額です。2,000万円の死亡保険金を受け取った場合、1,890万円が課税対象となり、相続税や所得税と比較すると、税額がかなり高くなると予想されます。 万が一のときのための生命保険だからこそ契約スタイルは慎重に 結婚したり子どもが生まれたり…家族が増えるときには、万が一のため、生命保険の契約を考える方も多いことでしょう。いざというときのためのお金だからこそ、「将来発生しうる税金」についても、ぜひ考慮してみてください。契約スタイルによって、課税金額が大きく変わってくる可能性があります。 「残された家族のためにできるだけ多くのお金を残したい」と思うのであれば、契約者自身が被保険者となり、また法定相続人である妻や子どもを受取人に指定するのがベストです。生命保険金等の非課税枠を活用できるぶん、相続税対策としても有効ですから、ぜひチェックしてみてください。 生命保険と「特別受益」とは? 生命保険に加入する際に、もう一点注意したいのが「特別受益」についてです。 ここまでお伝えしてきたとおり、生命保険金は基本的に、遺産相続の対象にはなりません。しかし遺産総額と比較してあまりにも高額な生命保険に加入していた場合、受取人とその他の相続人との公平性を保つため、生命保険が「特別受益」として扱われます。遺産に戻して、その他の財産と共に、遺産分割の対象になるケースもあるのです。 生命保険金が特別受益として扱われるかどうかは、個々の状況から総合的に判断されます。保険金額について不安がある場合には、一度専門家に相談してみるのもおすすめです。 生命保険と税金の関係性を知った上で判断しよう 生命保険を契約するときには、その金額や保険料にばかり目が向きがちです。しかし多額の保険料を投じて、十分な保険に加入したとしても、いざ保険金が下りた際に多額の税金を取られてしまうようでは意味がありません。ぜひ、生命保険と税金に関する予備知識を身につけた上で、契約スタイルを検討してみてくださいね。

  • 後見制度で相続税の節税対策ができる?制度詳細と注意点

    両親が高齢になってくると、家族で相続税の節税対策について話す機会もあるかと思います。特に2016年の相続税法の改正以降、特別お金持ちの家庭でなくても高額な相続税が発生するケースが多発。相続が発生する前から、しっかりと準備を整えておくことが重要になってきています。 そうした状況の中、「成年後見制度で相続税対策が可能なのでは?」と注目する人が増えてきています。成年後見制度とはどういった制度で、本当に相続税対策が可能なのでしょうか?気になる注意点まで、わかりやすくまとめます。 成年後見制度とは? 成年後見制度は、何らかの事情により「判断能力が十分ではない」判断される人の財産管理等を支援するための制度です。この制度を使えば、年老いた両親が認知症になり正常な判断が難しくなってしまった場合でも、成年後見人がその活動をサポートできるようになります。 成年後見制度には、 ・法定後見制度・任意後見制度 の2種類があり、法定後見制度では家庭裁判所によって成年後見人が指定されます。任意後見制度の場合、「本人が元気なうちに成年後見人を指定しておくこと」が可能です。 成年後見人になると、本人に代わってその財産を管理したり、結んでしまった契約を解除することができます。さらに有価証券の管理や遺産相続の代行もできるようになります。 成年後見制度で相続税対策は可能なのか? 相続の際に多額の相続税が発生すると予測されている場合、不動産購入や生前贈与が効果的です。実際に相続が発生する前に、何らかの手を打ちたいと思う方は多いことでしょう。 とはいえ親が認知症を発症している場合、「意思能力がない」と判断され、各種契約や行為が「無効」になってしまいます。たとえば相続税対策にマンションを購入しようと思っても、認知症を発症している両親が契約するのは不可能というわけです。 だからこそ注目されているのが成年後見制度で、子どもが親の成年後見人になれば、その財産を自由に動かせるように思えます。このため「認知症発症以降でも相続税対策が可能」と言われるケースも多いようです。 ただし実際には、成年後見制度を使って相続税対策をするのは極めて難しいでしょう。なぜなら、成年後見制度の目的は「本人の財産を守ること」だからです。相続税対策は、被相続人ではなく相続人のために行われるもので、本人の財産を守ることにはなりません。 むしろこれは「相続税を発生させないため、本人の財産の評価額を下げる行為」に当たりますから、成年後見人になったところで、自由に決断・契約できるわけではないのです。かりに、成年後見人の立場を悪用して勝手に本人の財産を処分したとしても、その契約は無効と判断されてしまうでしょう。 ちなみに、法定後見制度ではなく「任意後見制度」を活用する場合、本人が健康なうちに、 ・成年後見人を務めて欲しい人・希望に沿った財産管理の方法 などを指定しておくことが可能です。この制度を上手に活用し、具体的な指示を記載した正式な書類を残しておけば、より自由度の高い財産管理が可能になるでしょう。 とはいえ、任意後見制度の場合も、「後見制度は本人の利益を守るためのもの」という前提に変わりはありません。 任意後見人には「任意後見監督人」と呼ばれるチェック者がつき、お金の出入りを確認します。この任意後見監督人には、弁護士などの第三者の専門家が選ばれるケースも多く、やはり「相続税対策のために本人の財産を減らす」という行動は、難しいでしょう。 成年後見制度を使えば「使い込み」の予防は可能 たとえば親が認知症を患い、正常な判断能力を失ってしまった場合、本人以外によって財産を使いこまれてしまう恐れがあります。同居親族であれば、年金や預貯金の使い込みは、決して難しいことではないでしょう。 成年後見制度を使い、事前に後見人を指定しておけば、預貯金の管理もすべて成年後見人が行うことになります。銀行へも届出を行うため、成年後見人に指定された人以外が勝手に引き出すことはできなくなります。 先ほどもお伝えしたとおり、成年後見人の原則は「本人の利益を守ること」です。相続対策に使うことは難しいですが、「財産を守る」という目的であれば、有効に活用できるのではないでしょうか。 成年後見制度が駄目なら相続税対策はどうする? 成年後見制度が駄目なら相続税対策はどうする? 相続税対策を目的に、家族の財産を自由に動かせるようにしたいのであれば、「家族信託」に注目してみるのがおすすめです。家族信託とは、一般的な信託システムを家族間に応用したもので「民事信託」呼ばれるケースもあります。 家族信託では、委託者(財産を預ける人)、受託者(財産の管理を任される人)、そして受益者(財産管理の利益を享受する人)の3者が存在し、これは家族間でそれぞれ自由に設定できます。たとえば、年老いた親が委託者・受益者となり、子どもが受託者になれば、親が信託した財産を子ども自身が運用可能です。さらに得られた利益で、親の生活費を賄うこともできます。 家族信託契約を結んでおけば、親が認知症になり、正常な判断能力を失ってしまった場合にも、子どもの判断で財産を動かせるようになります。つまり資産運用の形で、相続税対策のために財産の評価額を下げることも可能なのです。 もともと委託者兼受益者であった親が亡くなれば、当然その受益権は相続の対象になります。一定の金額以上になると予想される場合には、相続税が発生するでしょう。そうした意味では、「家族信託契約を結んだからといって、相続税の節税対策にはならない」と考えられます。 ただし、親が認知症になったあともしっかりと相続税対策を進めておけば、「相続財産の評価額を減らすことにより間接的な相続税対策になる可能性」があります。もし相続税対策のために導入するなら、あらかじめその内容や具体的な対策方法についてリサーチしておく必要があるでしょう。 家族信託を利用する場合の注意点は? 家族信託を利用する場合の注意点は? 親が認知症になったあとでも、相続税対策ができる「家族信託」。相続税対策のための方法として注目されていますが、実際に利用する際には、いくつか注意しなければならないポイントもあります。 家族信託で本当に節税対策ができるかどうかは、「受益者の設定方法」にかかっています。たとえば、親に信託された財産を子どもが運用する場合、受益者を子どもに設定すれば、それは「贈与」に当たります。すると贈与税の対象になってしまうので注意してください。 家族信託を利用した節税プランについては、専門の税理士に相談の上で、決定するのがおすすめです。自己判断をすると、「節税対策するつもりが、負担が増えてしまった!」という事態にもなりかねません。信託する財産や、今後の運用プランについて、信頼できるパートナーを見つけて相談してみてください。手続きについて、悩むリスクもなくなります。 相続税の節税対策に見切り発車は危険 相続税の節税のため、「成年後見制度」に注目する方が増加しています。成年後見制度を活用すれば、本人が認知症になったあとでも資産運用が可能になり、相続税対策もできるのでは…と思いがちです。しかし残念ながら、実際には難しいと言わざるを得ないでしょう。 認知症発症後の資産運用で節税を目指すなら、「家族信託」にも注目してみてください。事前にきちんと運用プランを立て、計画的に物事を進めていくことで、相続税対策につながる可能性があります。

  • 相続人死亡・行方不明の場合の相続はどうなる?税制上の注意点を解説

    いざ相続の手続きをする際に、「あれ?この場合はどうなるのだろう…」と、疑問を抱くケースは少なくありません。相続人の状況は、各家庭によって異なるもの。インターネットや本の中に「自分のケースにピッタリと当てはまる事例」を見つけるのは難しいこともあるでしょう。 ここでは自身の状況に合った情報を探している方のために、「相続人が死亡している場合」と「行方不明の場合」それぞれについて、相続に必要な情報をまとめます。おすすめの相談先やサービス窓口も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。 相続人が死亡している場合の相続はどうなる? 相続人が死亡している場合の相続はどうなる? まずは、相続の基本についておさらいしておきましょう。人が亡くなったあと、その財産は「相続人」に受け継がれます。法律で財産を受け継ぐことが決まっている人を「法定相続人」と言い、亡くなった人が遺言書を残していなければ、遺産はこの法定相続人が相続します。 亡くなった人に配偶者がいれば、配偶者は必ず法定相続人になります。その他の法定相続人は、被相続人との関係性によってその順位が定められています。 第1順位に当たるのは、被相続人の子どもや孫といった直系卑属であり、第2順位は被相続人の親に当たる直系尊属、第3順位は兄弟姉妹です。第2順位か第3順位に当たる人は、自分よりも高い順位の人が一人でも存在していれば、相続人になることはできません。 ここで気になるのが、法定相続人が死亡している場合についてです。たとえば、「被相続人には配偶者と子どもがいたが、子どもはすでに亡くなっている」という場合、子どもの代わりにその子ども、つまり被相続人から見た「孫」が相続人になります。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼びます。 つまり亡くなった子どもの子どもが複数人いれば、その全てが法定相続人になるというわけです。本来、亡くなった子どもが受け取るはずだった遺産分を、代襲相続の対象となる相続人全員で分配します。 仮に「被相続人には子どもがいない、もしくはすでに亡くなっており孫もいない」という場合には、法定相続人は第2順位に当たる「親」へと移ります。親もすでに亡くなっている場合、第3順位の「兄弟」が相続人です。 兄弟姉妹が相続人になる場合も、すでに亡くなっていれば代襲相続の対象になります。亡くなっている兄弟姉妹の子ども、つまり被相続人から見て「甥や姪」に当たる人が、相続人になるのです。ただしその甥や姪もすでに亡くなっていた場合、その先の世代に代襲相続が続くことはありません。 相続人が死亡している場合の注意点は? 相続人がすでに死亡している場合に、注意しなければならないのが「代襲相続」についてです。第1順位の子どもが亡くなっている場合、直系卑属の代襲相続は、何代先までも続いていきます。つまり、問題を放置する期間が長くなれば、相続人の数はどんどん増えてしまう可能性があるのです。 相続の手続きは、基本的に相続人全員で行う必要があります。そのため相続人の範囲が広がれば広がるほど、手続きの難易度は高まっていってしまうでしょう。 特に不動産には相続手続きの期限がなく、問題が放置されがちです。相続問題を複雑化させないためには、できるだけ早期に手続きするのがおすすめです。 相続人が行方不明の場合の対処法は? 相続人が行方不明の場合の対処法は? 先ほどもお伝えしたとおり、相続の手続きは、相続人全員で行う必要があります。 ・所在不明で連絡がとれない ・生死すら不明で手も足も出ない このような場合でも、行方不明者を放置して手続きを進めることはできません。行方不明者の所在を確かめるため、あらゆる調査を求められるでしょう。 ただし、行方不明者が生死不明になったときからすでに7年が経過している場合、「失踪宣告」の手続きによって「すでに死亡しているもの」とみなすことができます。この場合、行方不明になった人以外の相続人で、相続の手続きを進めていきましょう。 失踪宣告にとって相続人から外れた人がいる場合も、代襲相続が行われます。直系卑属の場合は子どもや孫、その孫など…世代を問わず相続人になるため注意してください。 また「相続が発生した時点で行方不明者がいるものの、まだ7年は経過していない」という場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任申し立てを行いましょう。行方不明者の代わりとなる管理人を立てることで、相続手続きを進めていけます。 相続手続きの途中で相続人が亡くなった場合は? 遺産分割協議や手続きが長引くと、その最中に相続人が亡くなってしまうケースもあります。この場合、亡くなった人からの新たな相続が発生するため、話がややこしくなりがちです。これを数次相続と言います。 この場合、新たに亡くなった人の相続人も交えて、相続に関する話し合いを再度行うことになります。亡くなった相続人が本来相続するはずだった財産は、その被相続人に受け継がれます。そして、新たに発生した相続についても、適切に処理する必要があるでしょう。 相続手続きの途中で相続人が亡くなった場合、遺産分割協議書は新たに作り直す必要があります。「新たな相続内容に新たな相続人全員が合意する必要」があるのです。 相続人が亡くなっている・行方不明の場合の相談先は? 相続人がすでに亡くなっている場合や、行方不明になっている場合の遺産相続手続きは、複雑になりがちです。以下のような専門家に相談するのがおすすめです。 ・税理士 ・弁護士 ・司法書士 ・銀行 「事業」が相続の対象に入っていたり、相続税が気になる場合には、まず税理士に相談するのがおすすめです。また、相続人死亡や行方不明といった事情がこじれて、裁判になる可能性がある場合には、弁護士がおすすめ。司法書士は主に「不動産の名義変更」といった手続きをサポートしてくれますが、中には相続問題に強い事務所もあります。 「どこに相談すれば良いのかわからない…」という場合には、相続に関する相談窓口を活用してみてください。自治体や各種法人が相続専用窓口を用意しているケースも多く、そこから必要な窓口へとつないでもらえます。 行方不明ではないものの連絡がとれない場合は? 相続人の所在は判明しているものの、何度連絡しても、どうしても連絡が付かないケースもあるでしょう。この場合、失踪宣告や不在者財産管理人といった制度は利用できません。家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。裁判所を通じて、遺産分割についての話し合いを進めていきます。 調停がスタートすれば、相手方へは裁判所から連絡がいきます。裁判所からの連絡が無視され、話し合いができなかった場合でも心配は要りません。遺産分割審判により、裁判所が遺産分割方法を決定するので、それに沿って相続手続きを進めていけます。 複雑な相続も放置しないことが一番 被相続人が亡くなったとき、相続に関する手続きは悩ましい問題の一つです。複雑な事情がある場合には、できるだけ早期に専門家に相談してみてください。 相続税が発生すると思われる場合には、それがいくらになるのか、早めに把握する必要があります。そのあたりを得意とするのは税理士ですから、ぜひ相談してみてください。 相続の世界には細かなルールも多く、自分の場合に何が適用されるのか、よくわからない…と悩む方も少なくありません。問題を放置してもさらに複雑化してしまう可能性が高いですから、ぜひ早めの対処を心掛けましょう。

  • 兄弟は遺産を相続できる?兄弟のパターンごとに事例を使ってご紹介

    兄弟は遺産を相続できる?兄弟のパターンごとに事例を使ってご紹介 身近な人が亡くなることなど考えたくはありませんが、誰もいつかは彼岸へと旅立ちます。 年齢に関係なく知っておきたい遺産相続について、この記事では兄弟姉妹の相続についてお伝えします。 両親が他界して独身の兄弟姉妹が亡くなった場合や、兄弟姉妹に子どもがいない場合などに遺された兄弟姉妹が遺産を相続できるケースもありますので、ぜひ参考にしてください。 兄弟姉妹が相続人になる場合 兄弟姉妹が相続人になる場合 被相続人(亡くなった人)に直系卑属(子や孫)、直系尊属(親や祖父)がおらず兄弟姉妹がいる場合は、兄弟姉妹が相続人になります。 相続人が兄弟姉妹のみの場合は、兄弟姉妹の法定相続分は相続財産のすべてです。相続財産のすべてを、兄弟姉妹の人数で割ります。配偶者がいる場合は、必ず相続人となります。 相続順位について 配偶者以外の相続人には、順位が決められています。 第1順位は子、子が先に亡くなっている場合は孫、子と孫が先に亡くなっている場合は、ひ孫です。 第2順位は父母、父母が先に亡くなっている場合は、祖父母です。 第3順位は兄弟姉妹、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、甥もしくは姪です。 兄弟姉妹が法定相続人になるケース 親や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属がいない場合は、兄弟姉妹が相続人となります。配偶者が存命で、親や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属がいない場合は、配偶者と故人の兄弟姉妹が遺産を相続できます。 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者の法定相続分は遺産の4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は遺産の4分の1です。兄弟姉妹が複数人いる場合は、遺産の4分の1を兄弟姉妹の数で割ります。 例えば、故人以外の兄弟姉妹が二人なら、相続分は一人あたり8分の1です。 ただし、遺言書があった場合には遺言書が優先されます。そのため、法定相続人になっても遺言書の内容によっては財産を取得できないケースもあります。 兄弟間で遺産相続で揉める原因と対処法 兄弟間で遺産相続で揉める原因と対処法 法律に従っていればトラブルは起こらない。そう考えている方も多いと思いますが、金銭等が絡んでくるため、ひょんなことから予想だにしないトラブルが発生するのが遺産相続です。 ここでは、兄弟間で遺産相続で揉めてしまう原因について下記のケースを解説します。 家族や兄弟間での話し合いができていない遺産を平等に分けることが難しい遺産相続の内容が非常に偏っている 実際に争いが起こってしまうと、遺産分割調停を行ったり、弁護士に依頼することになったりと解決したとしても禍根を残すことになりかねません。お互いの気持ちに寄り添い、冷静に話し合いが進められる状況を作れるよう、揉めてしまう原因を前もって把握しておくようにしましょう。 ➀家族や兄弟間での話し合いができていない 揉める原因として最も多くなるのが、家族間・兄弟間での話し合いが適切に行われていないことです。ご家族が亡くなられ、相続が発生すると期限などもあることから、ゆっくりと話し合いをする時間を設けることは困難です。 事前に話し合いが行えておらず、実際に相続が発生してからでは遅い場合も多いです。事前に十分な話し合いが行えていないことが、トラブルや揉め事の根源となる状況は決して珍しいものではありません。 亡くなっていないのに亡くなった後の話をするのは抵抗があるかもしれませんが、前もって話し合いお互いの考えていること・思いを把握しておくのはとても重要です。いざ相続となった段階で残された家族・兄弟が揉めてしまいトラブルになると亡くなられたご家族様が安心して眠れなくなるかもしれません。 話し合った内容をボイスレコーダーなどに録音し、形として残しておくと後々聞き返すこともできますし、トラブルになった際に役立つこともあります。ただし、法律的な意味は持たないことに注意が必要です。 ➁遺産を平等に分けることが難しい 遺産は現金のように分割が容易なものばかりではありません。不動産や車といった分割をすることが難しいものが遺産として残されている可能性も十分にあります。例えば下記のケースです。 3人兄弟残された財産は亡くなった長男名義の土地と建物、預金200万円 こういった場合の解決方法としては、以下のようなことが考えられます。 遺された兄弟2人のどちらかが土地を相続することで合意する土地を相続した人が現金でほかの1人に補填する土地を売却し、得た収入を2人で均等に按分する土地を共同名義で保有する トラブルを避けるため、事前に遺言書を作成し、分割方法についても細かくきちんと定めておくことをおすすめします。 ➂遺産相続の内容が非常に偏っている 遺言書に「長男に財産のすべてを相続させる」旨の記載があった場合でも、一定の相続人には遺留分を請求する権利があります。そのため、遺産相続の内容に不平等さを感じたら、遺留分の請求を検討してください。ただし、相続人が兄弟姉妹の場合には遺留分がないことに注意が必要です。 遺留分とは 遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことを言います。亡くなった方(被相続人)は、自身の財産の行方を遺言により自由に定めることができますが、被相続人の遺族の生活の保障のために一定の制約があります。これが遺留分の制度です。 兄弟姉妹に遺留分はなぜないのか 配偶者には遺留分がありますが、兄弟姉妹にはありません。 それは、被相続人と一緒に暮らしていた配偶者は経済的に困る可能性があることが理由の一つであると考えられます。 まとめ:兄弟間で遺産に関して揉めないために 兄弟間で遺産に関して揉めないために 兄弟姉妹が相続人になる場合は、被相続人に直系卑属・直系尊属がいない場合です。兄弟姉妹が法定相続人になるケースは関係性によって変わってきますので、本記事を参考にしてください。 また、兄弟間で遺産相続で揉める原因と対処法もご紹介しました。大切な家族が遺産に関して揉めてしまわないためにも、遺言書を作成したり、内容に極端な偏りが出ないように配慮したりといった対策が必要です。残される家族のために、できるだけ早い段階で遺産相続について検討してください。

  • 【遺言書作成】弁護士費用相場を解説!作成の流れやメリットについても

    【遺言書作成】弁護士費用相場を解説!作成の流れやメリットについても 相続トラブルを避けるためには遺言書を作成することが重要です。遺言書の作成を専門家である弁護士に依頼したいけれど、費用が高そう、どのような流れになるのかわからないと困っている方もいらっしゃるでしょう。 この記事では、遺言書作成を弁護士に依頼する場合の費用の相場や遺言書作成の流れ、弁護士に遺言書作成を依頼することのメリットについて解説していきます。 遺言書を作成して相続に備えよう 遺言書を作成して相続に備えよう 遺言書を作成しておかないと、相続が発生した場合に、自分の思うように遺産を引き継がせることができなかったり、遺産争いとなってしまったりする危険があります。 自分の死後の家族を心配することがないように、遺言書を作成して相続に備えておくことは重要です。 遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類の形式があります。自筆証書遺言は、手書きで簡単に作成できるものですが、形式面の不備で無効となってしまうケースも多いです。公正証書遺言は、公証人が公正証書の形式で作成する遺言書です。作成には手間と手数料がかかりますが、形式面でも安心して正確な遺言書を作成するには、公正証書遺言をおすすめします。 遺言書作成にかかる弁護士費用の相場 遺言書作成にかかる弁護士費用の相場 遺言書を作成するには、形式面や内容面で専門的な知識がないと難しいこともあります。その場合、遺言書の作成を弁護士に依頼するのが安心ですが、弁護士に依頼するとなれば費用の心配をされる方も多いでしょう。 ここでは、遺言書作成にかかる弁護士費用の相場について説明します。 相談費用 遺言書作成のアドバイスを求めたり、作成を依頼したりするための相談費用としては、30分あたり5,000円が相場となります。事務所によっては、初回の相談を無料としているところも多くあります。 遺言書作成費用 日弁連が実施したアンケートによると、遺言書作成費用の相場は20万円程度です。 遺言書の作成費用は、自筆証書遺言と公正証書遺言のいずれを作成するのか、財産の内容はどのようなものであるのかによって変わりますので、詳しくは相談の際に聞いてみるようにしましょう。 遺言執行費用 遺言書の執行までを弁護士に依頼する場合には、遺言執行費用もかかります。遺言執行費用としては、財産額の数パーセントに一定の金額を加えたものとしている事務所が多いです。 多くの事務所が参考にしている、弁護士会の旧報酬基準では、遺産の額が3,000万円以下の場合には、2%+24万円、3,000万円を超え1億円以下の場合には、1%+54万円となっております。 そのほかの費用 遺言書の保管を弁護士に依頼する場合には、別途保管費用が発生する可能性があります。また、公正証書遺言を作成する場合には、弁護士費用とは別で公正証書の作成費用も必要です。 遺言書作成を弁護士に依頼する4つのメリット 遺言書作成を弁護士に依頼する4つのメリット 遺言書作成を専門家に依頼すると何となく安心することもあるでしょうが、ここでは遺言書作成を弁護士に依頼する具体的なメリットについて解説していきます。 遺言書作成を弁護士に依頼する具体的なメリットとしては、次の4つを挙げることができます。 法的に正確な内容の遺言書を作成できる遺言書作成に必要な財産の調査もできる遺言書の作成から遺言書の執行まで対応できる相続トラブルとなった場合の対応もできる 一つずつ見ていきましょう。 法的に正確な内容の遺言書を作成できる 遺言書の作成には、正確な法的知識が必要です。知識なしに遺言書を作成すると、最悪の場合には形式が間違っていて遺言そのものが無効になることもあります。 また、法定相続人に最低限認められる遺産の取り分である遺留分を意識せずに遺言書を作成すると、せっかく遺言書を作成したのに、結局は遺産争いが生じてしまうこともあるでしょう。 弁護士に依頼することで、遺留分などにも配慮して、法的に正確な内容の遺言書を作成できます。 遺言書作成に必要な財産の調査もできる 正確な遺言書を作成するためには、財産の内容も正確に把握することが重要です。 遺言書作成を弁護士に依頼することで、財産の内容を把握するための調査も合わせて行うことができます。 財産の記載漏れなどがあると、遺言書を残していても記載が漏れていた財産について遺産争いが生じる場合もあるので財産の調査を行うことは重要です。 遺言書の作成から遺言の執行まで対応できる 遺言書の作成を依頼した弁護士に遺言の執行まで依頼することで、亡くなったあとの対応についても一括して対応してもらうことができます。 被相続人が亡くなってから、遺言執行の対応のみをするとなれば、詳しい事情がわからずに手続きが上手く進まないこともあるでしょう。 被相続人の生前から事情を把握している弁護士が遺言執行まで担当することは、手続きをスムーズに進めるうえでも有効な方法と言えます。 相続トラブルとなった場合の対応もできる 実際に遺産争いなどが生じてしまってから誰かに相談するよりも、生前からよく事情を知っている弁護士がトラブルの対応をできるのは問題を解決するうえで大きなメリットといえるでしょう。 あとにも説明しますが、弁護士以外の専門家は、基本的に相続トラブルの問題には関与することができません。 遺言書作成を弁護士に依頼する際の流れ 遺言書作成を弁護士に依頼する際の流れ ここでは、実際に遺言書作成を弁護士に依頼するまでの流れについて解説します。 弁護士を探す まずは、遺言書作成の相談をする弁護士を探す必要があります。知り合いに弁護士がいない場合などは、インターネットで検索する、法テラスを利用するなどの方法により弁護士を探すことができます。 事務所のホームページで、遺言作成の詳しい対応について説明している弁護士も多いので、自分に合いそうな弁護士を探して相談の予約をしてみましょう。 弁護士と相談する 弁護士と相談する際には、家族構成や財産の内容がわかる資料を持参するようにしましょう。心配事など、聞きたいことをまとめておくと、相談時間を有効に活用することができます。 相談の際には、遺言書作成を実際に依頼する場合の費用や、どれくらいの期間がかかるかなどを確認するようにしましょう。 弁護士と契約する 相談のうえで弁護士に依頼する場合には、弁護士と契約を締結します。かかる費用や対応してもらう内容など、認識が合っているのか確認することが重要です。 遺言書の作成 契約が締結されると、実際に遺言書の作成が進められます。 遺言書の作成にかかる期間は、家族構成や財産の内容、遺言書の形式によってさまざまです。早ければ数日のうちに、長ければ数か月かかる場合もあるので、弁護士に期間の目安を確認しておくようにしましょう。 弁護士以外の遺言書作成の専門家との違い 弁護士以外の遺言書作成の専門家との違い 遺言書の作成は、弁護士以外にも行政書士や司法書士も専門としている場合があります。ここでは、弁護士以外の専門家と弁護士との違いについて解説します。 行政書士や司法書士も遺言書作成をしている 行政書士は文書作成の専門家として、司法書士は相続登記などの専門家として遺言書作成を受け付けていることがあります。 遺言書作成自体については、取扱件数も多く専門的に行っているところもありますので、行政書士や司法書士に依頼することも手段の1つと言えます。 弁護士とほかの専門家との違い 弁護士とほかの専門家との決定的な違いは、代理権が認められるか否かということにあります。 行政書士や司法書士は、相続トラブルとなった際に代理人としての対応ができません。そのため、相続トラブルが発生する場合には弁護士に、その心配がない場合には行政書士や司法書士に依頼することも1つの選択肢といえるでしょう。 遺言書作成を弁護士に依頼する際の注意点 遺言書作成を弁護士に依頼する際の注意点 遺言書の作成は、大きな財産を取り扱うことになる問題です。そのため、弁護士であれば誰に依頼してもよいということはなく、次の点に注意する必要があります。 経験のある弁護士を選ぶ 弁護士であっても、遺言書作成の経験がない弁護士もいます。 そのため、遺言書の作成を依頼する場合には、遺言書作成の経験が豊富な弁護士を選ぶのが安心です。 経験のない弁護士に依頼すると、必要な対応ができずに逆に手間がかかることもあるでしょう。 複数の弁護士を比較する 相談する弁護士を決める場合や、相談のあとでも納得できないような場合には、複数の弁護士を比較するべきです。 無料相談を実施している事務所も多いので、複数の事務所で無料相談を受けてみて自分に合う弁護士を選ぶのもよいでしょう。 まとめ:遺言書作成は弁護士に 遺言書作成は弁護士に 遺言書作成を弁護士に依頼する場合の費用やメリットなどについて解説しました。 亡くなったあとの家族の安心のためには遺言書を作成することが重要です。正しい遺言書を作成し、亡くなったあとのサポートも安心して受けられるためには、弁護士に遺言書作成を依頼することをおすすめします。

  • 相続の相談先は弁護士?税理士?ケースごとの選び方や費用目安を解説

    相続の相談先は弁護士?税理士?ケースごとの選び方や費用目安を解説 財産の相続手続きが始まると「亡くなった人のことを考えている暇もない」「手続きが複雑で手間」と感じる人もいるのではないでしょうか?相続には、さまざまな手続きがあって、とても忙しい状況で対応することもあります。相続は自分でおこなうこともできますが、専門家にまかせて確実な相続をしたいと考える場合もあるでしょう。 しかし、相談先によって費用は変わるので、不安に感じるかもしれません。今回は、各相談先の特徴や、費用について紹介します。専門家によって、対応できる範囲が異なりますので、ぜひ最後まで読み進めて相談先の参考にしてください。 相続の相談先はどこ? 相続の相談先はどこ? 相続の相談先は、大きく分けて5つあります。 税理士行政書士弁護士司法書士銀行・信託銀行 それぞれ相談できる内容や、費用の違いがあります。相談内容や状況に合わせて相談先を検討するとよいでしょう。それぞれ、詳しく見ていきましょう。 相続相談先①税理士 相続税の申告が必要なら税理士です。名前の通り税関係の専門家であり、税金の管理を業務としています。相続税に関しては税理士ですが、基本的に相続の手続きは行いません。 相続税とは、被相続人の財産を相続した相続人が支払う税金のことです。「相続の手続きをやる」と掲げている税理士事務所もありますが、その場合は行政書士や司法書士と連携している可能性があります。 また、相続税の申告がない場合は、税理士に依頼する必要はなく、相続の窓口としては、行政書士や司法書士が適切です。 相続相談先②行政書士 依頼人の代わりに、書面作成をおこなう専門家です。行政書士は業務の範囲が広く、依頼しやすいというメリットがあります。反対に、範囲が広いことにより、得意・不得意があり、すべての行政書士が相続の対応ができる訳ではありません。 相続を依頼したい場合は、実績が豊富、または相続専門の行政書士に依頼するとよいでしょう。ただし、行政書士には訴訟、登記に関する「代理権」がありません。当事者の代わりにこれらの申請や、交渉ができない点に注意しましょう。 相続相談先③弁護士 相続のトラブルなら弁護士に相談しましょう。弁護士なら、以下のような内容を相談できます。 遺産相続借金問題慰謝料請求の問題 など 上記以外でも、さまざまな場面で応じてくれます。相続の件でトラブルになりそうな場合や、裁判に発展しそうなときは、迷わず弁護士に相談するとよいでしょう。 亡くなる前であれば、遺言書の作成やエンディングノートについても相談が可能です。 相続相談先④司法書士 司法書士は、不動産の名義変更の申請や、戸籍の収集や相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成を行っています。それ以外にも、相続放棄、特別代理人の選任申立、遺産分割調停の申立などで家庭裁判所に提出する書類の作成を行っています。 相続財産に不動産がある場合には、相続人の権利は相続登記により確定しておかないと、将来的に誰の資産なのかとトラブルになる可能性があり、売却の手続きも滞ってしまいます。そのため、相続登記をおこなう必要があります。このような場合は司法書士に依頼しましょう。 相続相談先⑤銀行・信託銀行 銀行や信託銀行にも、相続手続きの相談ができるサービスがあります。しかし、一定のサービスのみの提供となり費用も他に比べると高くなります。また、トラブルの恐れがある場合の相続手続きに対しては、業務をおこなわないケースがあるので注意が必要です。 相続相談先の費用比較 相続相談先の費用比較 ここからは、それぞれの相談先の費用について見ていきます。費用に関してはあくまでも目安ですので、詳しくは各相談先に相談するとよいでしょう。 税理士 税理士への相談は、内容にはよりますが無料でおこなっている場合があります。ただし、あくまでも相談の範囲であり、解決策や金額の具体的な話になると相談費用が必要です。 費用は、30分5,000円〜10,000円が相場とされています。平成14年3月までは、報酬規程が決まっており、1時間まで一律20,000円でした。そのため、必要費用は下がっています。 行政書士 行政書士は、幅広い相続に関する手続きが最大のメリットで、各手続きによって費用が異なります。相続の基本報酬を設定し、その後、必要な手続きに合わせ1〜30,000円を加算するというケースと「おまかせパック」のように、パッケージしたプランを設けている事務所があります。 パッケージ利用だと200,000円前後が相場です。基本報酬から加算するタイプでは、費用加算が多くなるケースもあるので注意しましょう。 弁護士 相談料は30分でおよそ5,000円ほどです。相談料は無料としている事務所もあるので、まずは無料相談を考えているなら探してみるとよいでしょう。 報酬金に関しては、得られる経済的利益に対して15%前後が必要とされています。また、着手金や出張費として、実費費用が加算される場合もあります。明確な内訳を提示してもらえる事務所を選ぶと、安心して相談できるでしょう。 司法書士 司法書士の費用は、自由化されているため、司法書士事務所によって差があります。相続登記にかかる相場は50,000~150,000円ほどですが、作成する書類(遺産分割協議書やその他必要な書類作成)に対して追加で費用が必要となるでしょう。 数次登記や対象となる不動産が多い場合は、その分、工数が必要となるため、費用は増えるのが一般的です。料金をパッケージ化した事務所もあるので、費用が心配な方は、パッケージ化した料金形態の事務所を選ぶとよいでしょう。 数次登記とは、不動産名義の人が亡くなった後に、相続人も亡くなっている状態のことで、登記手続きが複雑になる状態を指します。 銀行・信託銀行 各専門家に依頼するよりも、費用は高額になるケースが多いです。その分、信用度が高く、安心できるというメリットがあります。 費用相場は1,100,000円〜1,650,000万円前後です。また、遺産額に応じ、0.3%〜2%程度の料金が加算されます。さらに相続登記の料金などもプラスされます。 相続の問題がある場合は、手続きを断るケースがあるので注意が必要です。 相続の手続きは自分でできるの? 相続の手続きは自分でできるの? 相続の手続きは、専門家に相談しなくてもすすめることは可能です。専門家に依頼すると費用もかかるため、自分たちで相続の手続きをおこなおうと考える方もおられるでしょう。しかし、相続の手続きには専門的な知識や書類の作成が必要になるため、労力や時間が必要です。せっかく作成した書類も効力がなく、家族間のトラブルの元になってしまうケースも考えられます。 また、本来受け取れるはずの財産の一部しか受け取っていなかったなどの事例もあります。専門家に相談し、サポートを受けることで、確実に相続の処理をおこなってもらえるので安心して任せられるでしょう。 まとめ:相談先によってできる範囲が違う 相談先によってできる範囲が違う 相続手続きは、相談先として選択肢があり、どこに相談していいか悩んでしまうでしょう。各専門家はそれぞれ、専門分野が異なるため、適切な事務所に相談にいく必要があります。 また、それぞれで費用が異なるため、いくつかの事業所に確認し比較するとよいでしょう。安いからよい訳ではありません。業務内容や相談のしやすさなどから自身にあった相談先を検討してみてください。

  • 会社を円滑に相続するためには?必要な手続きや注意点を解説

    会社を円滑に相続するためには?必要な手続きや注意点を解説(イメージ) 会社の相続をまず何から準備すべきかと迷っていませんか。この記事では、会社を相続するうえでの手順や注意点について詳しく解説しています。 失敗せずに相続するためには、まず何を準備すべきかわかりますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。 会社の相続とは 会社の相続とは 親が経営している会社を子どもに引き継ぐ場合、相続の手続きをしなければなりません。相続は、引き継ぐ会社が法人か個人事業かの2パターンに分けられます。 会社が法人の場合の相続 親が経営している会社が法人の場合、経営者個人の資産か会社の資産で子どもが相続できるかが異なります。経営者個人が持っている資産は、相続人に引き継がれます。 一方で、会社の資産は会社法人の所有となり、相続人である子どもには引き継がれません。会社の資産は、経営者が退いたあとに経営する後継者が引き継ぎます。 ただし、経営者個人の資産で多くの自社株を子どもが引き継いだ場合、経営権を支配できます。会社は独立した法人のため、経営者である親が亡くなっても会社の相続自体は起こらないと覚えておきましょう。 個人事業の場合の相続 個人の事業を相続する場合は、すべての資産が経営者個人のものとなり、事業の資産もすべて引き継ぐことができます。そのため、個人事業の相続は一般的な相続とあまり変わりません。 ただし、前経営者が取引先と締結した契約が多いと、手続きが少し複雑です。なぜなら、それらの契約は個人名義で行っているため、再度契約し直さなければならないからです。 個人事業を相続する前に、取引先の数はどれくらいか事前にチェックするとよいでしょう。 会社を相続する手順 会社を相続する手順 次に親の会社を相続する場合の手順について紹介します。個人事業は一般的な相続と変わらないため、今回ご紹介するのは法人の事業を引き継ぐ手順です。 ①相続するために会社の株式を取得 親が経営している会社が法人なら、基本的にその会社の資産を引き継げません。法人の会社を引き継ぐ場合は、会社の経営権の相続が必要です。 そのためには、ほかの相続人と遺産分割について協議して、発行株式の過半数を保有しなければなりません。過半数の株式を保有していると、役員の選任など経営するうえでの体制を整えられます。 もし会社を引き継がないと決定した場合は、この時点で公平に遺産分割しましょう。 共同経営も可能ですが、意見が割れて経営が上手くいかなくなる恐れがあるため、特定の人物に相続させるのがよいです。 ②会社の名義を相続する人に変更 次に、会社を相続するためには、会社備え付けの株主名簿の名義を相続する人に変更しなければなりません。なぜなら、株式をもっていたとしても、名義を変更していなければ権利を行使できないからです。 名義変更する株式の会社が上場企業の場合は、発行元の会社と取り扱っている証券会社の両方で手続きが必要です。名義を変更しなければ、経営権の相続はできないため、速やかに行いましょう。 ③相続した会社を経営するための手続き 最後に行うのが、相続した会社を経営するための手続きです。まず、株式を保有した状態から株主総会を開いて役員の地位を確保し、代表取締役に就任します。 その後、法人の銀行口座の代表者変更手続きや取引先への通知などが必要です。経営する中で、経営者の変更に伴う手続きを行っていき、会社を引き継いでいきましょう。 会社を相続するうえでの注意点 会社を相続するうえでの注意点 会社を相続するうえでは、さまざまな点に注意しなければ損をしてしまいます。この章では、押さえておきたい下記の3つの注意点についてご紹介します。 会社の評価額が高くなる会社の負債を相続してしまう会社の経営権を取得できない 順番に見ていきましょう。 ①会社の評価額が高くなる 1つ目の注意すべきポイントは、会社を相続する際の税金が高くなってしまう点です。会社の評価額は、株式の価値で算出され、会社の事業財産・不動産・貸付金などにかかってきます。株式の金銭的価値が高いと評価されると、その分相続税が高くなります。 また、貸付金は経営者が会社の経費を立て替えた時などのお金です。貸付金は回収できていなくてもその金額に相続税がかかってしまうため、特に注意が必要です。 そのため、親の会社を相続すると税金はどれくらいかかるのか、あらかじめシュミレーションしておくと相続税がどれくらいか分かります。税金が莫大にかかってしまうならば、生前にできる対策についてよく検討しましょう。 ②会社の負債を相続してしまう 2つ目の注意点として挙げられるのが、会社の負債を相続してしまう事態です。経営をするうえでは融資を受けている会社が多く、何も考えず相続してしまうと危険なのです。 代表者が債務の連帯保証人になっていると、その保証債務も相続する対象となってしまいます。 ただし、設備投資や事業拡大のために融資を受けている場合もあるので、一概に良し悪しは言えません。相続する会社の財務面をくまなく確認し、危険と判断するならば相続放棄も視野に入れましょう。 ③会社の経営権を取得できない 3つ目に注意したいのが、会社の経営権を取得できないリスクがある点です。先程述べたとおり、会社の経営権は発行済株式の過半数を保有していないと行使できません。 また、事業の目的の変更や定款の変更をしたい場合は、発行済株式の3分の2以上が必要です。例え会社を相続すると決めたとしても、ほかの相続人が反対して株式を一人の相続人に集中させられないと、上手く事業を承継できないのです。 生前に遺言書の作成をしておくと、株式をまとめられてスムーズに相続できるため、事前に準備しておきましょう。 会社の相続で失敗しないための事前準備 会社の相続で失敗しないための事前準備 会社の相続での損や失敗は、事前準備を進めておくと避けられます。この章では、会社を相続する前に必要な3つの準備を見ていきましょう。 遺言書を作成する生前贈与で会社の株式を譲渡する自社株の評価額を下げる 一つずつ解説します。 ①遺言書を作成する 会社を相続する前に行うべき1つ目の準備は遺言書の作成です。遺言書を作成しておくと、会社の後継者を指定でき、余計なトラブルをなくしたスムーズな相続が可能です。 例えば、長男に会社を継がせようと考えている場合、長男に株式を集中させる旨を遺言書に残す必要があります。 ただし、株式の金銭的価値が高いと、取得できないほかの相続人との不公平が生まれてしまいます。そのため、相続人が複数いる状態で株式を集中させたいならば、ほかの相続人はどうするか資産の配分の検討が非常に重要です。 遺言書は、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3種類から選んで作成しましょう。 ②生前贈与で会社の株式を譲渡する 2つ目に出来る準備が、生前贈与で会社の株式を譲渡する方法です。生前贈与では、会社の株式や事業の資産などを亡くなる前に譲渡して事業承継を進められます。ただし、生前贈与の場合、贈与税がかかるのを覚えておきましょう。 また、株式や不動産の評価額が低い時に贈与すると、節税対策として活用もできます。生前に株式の譲渡を完了させておけば、確実に自分の意志を反映させられて、相続におけるトラブルも未然に防げます。 子ども同士での争いを避けるためにも、生前贈与を選択肢の一つとして検討しましょう。 ③自社株の評価額を下げる 最後に、自社株の評価額を下げるのも事前準備として非常に大切です。会社の株式を相続する場合、その価格によって相続税が高くなってしまいます。 例えば、不動産の購入は自社株の評価を下げる方法の一つです。土地や建物は現金よりも低く評価される傾向にあるため、純資産価額を引き下げる効果があります。 そのため、結果として純資産価額方式で計算する相続税も減らせるのです。このように、事前に対策しておくと相続税の負担を軽くできます。 まとめ:事前準備で円滑に会社の相続を進めよう まとめ:事前準備で円滑に会社の相続を進めよう 会社の相続は、後継者に引き継ぐために経営者にとって必要な手続きです。会社の相続には2種類あり、法人と個人事業で方法が異なる点をご紹介しました。 法人の会社を相続する場合は、会社の株式の過半数を集中させなければ、経営権を取得できず、経営がうまくいきません。そのため、遺言書の作成や生前贈与など事前に準備しておくと、スムーズに相続を進められます。 また、不動産の取得などを行って、自社株の評価額をさげておくと、相続する方の相続税の負担を軽くできます。将来を見据えて、今から会社の相続のための準備を進めていきましょう。

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