遺産分割協議書の作成方法は?書式・流れ・必要な手続き

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遺産分割協議書の作成方法は?書式・流れ・必要な手続き
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相続手続きで作成される機会も多いのが、遺産分割協議書です。初めて耳にする名前に、「具体的に何を記し、どう作成すれば良いのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。遺産分割協議書の基本的な知識、作成方法、流れについて解説します。

遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、遺産分割協議で決定した内容を記すための書類です。遺産分割協議書の作成が終われば、遺産相続のための具体的な手続きを進めていけるでしょう。

遺産分割協議は、遺言書で遺産分割方法が指定されていなかった場合に行われる協議です。相続人全員が出席し、遺産分割方法を決定します。協議がまとまった段階でその内容を記し、相続人全員が同意。署名・押印によって作成されるのが、遺産分割協議書なのです。

相続登記や被相続人の預貯金引き出しなど、遺産分配に必要な手続きには、遺産分割協議書の提示が求められます。遺産分割に関わる法的な書類であり、非常に重要なものと言えるでしょう。法律で作成するよう求められているわけではありませんが、必要とされる場面は多くあります。

遺産分割協議書作成の流れと方法

では具体的に、遺産分割協議書はどのように作成すれば良いのでしょうか。まずは一連の流れについて確認しておきましょう。

1.相続開始
2.法定相続人を特定する
3.相続財産を特定する
4.遺産分割協議を行う
5.協議の内容を遺産分割協議書にまとめる
6.遺産分割協議書の内容をもとに、具体的な相続手続きをスタートする

遺産分割協議書は、遺産分割協議が終了しなければ作成できません。遺産分割協議を行うための各種調査は、できるだけ早く開始しましょう。遺産分割協議が終わったら、必要な情報を書類としてまとめていきます。遺産分割協議書に記載するべき内容は以下のとおりです。

・被相続人の情報
・作成日付
・相続人情報
・誰がどの遺産を、どのような割合で相続するのか
・あとで遺産が発見された場合の取り扱い方法
・相続人全員分の署名押印

遺産分割協議書に、決まった形式はありません。法的な書類とはいえ、自分たちでの作成も可能。手書きでもパソコンでも、正式な書類として認められるでしょう。ただし、遺産分割協議書に必要な情報が含まれていなければ、無効と判断される恐れがあります。必要な情報がきちんと含まれているかどうか、しっかりと判断してみてください。

遺産分割協議書でもっとも重要なのは、相続人の特定と、それぞれが何を相続するのかについてです。相続人の情報には、名前と続柄を明記してください。

相続財産についても、可能な限り正確な情報を記す必要があります。預貯金を相続する場合には、銀行名や支店名、口座番号までを明記しましょう。土地を相続する場合には、所在地や地番と土地の種類、地積の情報が必要です。家や建物の場合には所在地と家屋番号、建物の構造や面積を記してください。

また被相続人が抱えていた負債も、相続財産の一部です。債権者、契約内容、債務残高についても記載し、誰がどのように相続するのか明らかにしましょう。

一方で、被相続人を被保険者とする生命保険金や死亡退職金を、遺産分割協議書の内容に含める必要はありません。これらのお金は、事前に指定されている受取人の固有の財産として判断されます。よって、遺産分割の対象にはなりません。そもそも遺産分割協議で受取人が決定することもないため、協議書に含める必要はないでしょう。

遺産分割協議書を作成する段階ですべての財産が明らかになっているのが理想ですが、実際にはあとで遺産の一部が発見されるケースも少なくありません。この場合にどうするのかを事前に話し合い、協議書の内容に含めておけば、あとで遺産分割協議をやり直す必要もなくなります。いざというときのためのトラブル対策として、遺産分割協議書に含めておきましょう。

★押印には実印が必要

遺産分割協議書に必要なのは、相続人全員分の署名・押印です。全員分の住所や氏名を記したのちに、実印で押印してください。認印の使用は認められていません。

実印が手元にない場合は、遺産分割協議を進めていく中で準備しておきましょう。遺産分割協議書が複数ページに及ぶ場合は、相続人全員で契印することで、トラブルリスクを低減できます。

遺産分割協議書が必要ないケースとは?

遺産分割協議書は、相続時に「必ず必要」というわけではありません。作成しなくても問題ないのは、以下のような場合です。

・法的に有効な遺言書にて遺産分割方法が指定されている場合
・法定相続分に沿った形で遺産分配する場合
・法定相続人が1人しかいない場合
・遺産が現金や預金だけの場合

遺言書が残されている場合、そもそも遺産分割協議が行われません。遺言書の内容に沿って遺産を分配するだけですから、わざわざ遺産分割協議書を作成する必要はないでしょう。各種名義変更や口座解約の手続きは、遺産分割協議書の代わりに遺言書の提出によって進めていけます。

法定相続分に則って遺産を分割すれば、法的なトラブルが発生する恐れはないでしょう。相続人が1人のみの場合や、現金のみの場合も遺産分割協議書は必要ありません。

預金の引き出しは、相続人全員が同意して書類を作成すれば、遺産分割協議書なしでも手続き可能です。引き出した現金は、相続人同士の話し合いによって分割してください。

遺産分割協議書が必要な手続きとは?

遺産分割協議書が必要とされる相続手続きは、以下のとおりです。

・相続税申告
・不動産の名義変更
・預金の名義変更と解約
・株式の名義変更と解約
・自動車の名義変更

相続税申告の場合、税務署に対して遺産分割協議書を提出しなければいけません。不動産の名義変更や法務局、自動車の場合は陸運局です。預金や株式については、口座を有する金融機関に提出し、手続きを進めていきましょう。

遺産分割協議書が必要となる場面は、決して少なくありません。相続人全員分の書類を作成し、それぞれが1部ずつ保有するのがおすすめです。

遺産分割協議書の作成方法を知ってスムーズな手続きを

遺産分割協議書の作成方法を知ってスムーズな手続きを
遺産分割協議書の作成方法を知ってスムーズな手続きを

遺産分割協議が行われる場合、その内容を遺産分割協議書にまとめておくのがおすすめです。各種相続手続きで提出を求められますし、該当の手続きがない場合でも、トラブル予防に効果的です。法定相続分を無視した遺産分配になったとしても、遺産分割協議書があれば「相続人全員がそれに同意した」という証拠を残せるでしょう。のちのちのトラブル予防に役立つはずです。

遺産分割協議書は、必要な情報さえわかっていれば、自分たちでも作成可能です。今回紹介した情報も、ぜひ参考にしてみてください。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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