遺族年金の種類は2つ!受給要件や受取人はどうなる?

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遺族年金の種類は2つ!受給要件や受取人はどうなる?
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家計を支えていた家族が亡くなってしまったら…。今後の生活がどうなるのか、経済的な不安を抱える方も多いでしょう。こんなとき、ぜひ知っておきたいのが「遺族年金」に関する知識です。

亡くなった家族の年金加入状況によっては、亡くなったあとに年金を受け取れる可能性があります。遺族年金の種類とそれぞれの特徴、受給要件や受取人について詳しく解説します。

遺族年金とは?2つの種類を知っておこう


遺族年金とは、年金保険の加入者が亡くなった場合に、亡くなった人によって生計を維持されていた家族を支えるための年金制度です。たとえば、働き盛りの会社員が亡くなった場合、その配偶者や子どもは、これから先どう生活すれば良いか不安を抱えてしまうでしょう。遺族年金を受給できれば、その後の生活費も確保できます。

さて、そんな遺族年金には、以下の2つの種類があります。

・遺族基礎年金
・遺族厚生年金

日本の年金制度は、いわゆる二階建ての仕組みになっています。原則として20歳以上の国民全員が加入するのが国民年金制度で、会社員や公務員として働いている人は、国民年金にプラスして厚生年金にも加入しています。遺族基礎年金の場合、20歳以上の国民すべてが対象になる可能性があるのに対して、遺族厚生年金は対象者が限定されます。自営業を営んでいる方や無職の方は、対象になりません。

ただし現在は自営業者であっても、過去に会社員として仕事をした経験があり、厚生年金にも加入していた場合は、受給要件を満たしている可能性も。過去の加入記録をもとに、専門家にアドバイスをもらいましょう。

遺族基礎年金と遺族厚生年金は、それぞれ別の制度です。遺族基礎年金だけが対象になる方もいれば、両方を同時に受け取れる方もいるでしょう。残念ながら受給要件を満たせず、どちらの遺族年金も受け取れないケースも存在しています。次項目からは、それぞれの受給要件について、より詳しくチェックしていきましょう。

遺族基礎年金を受給できる人はごくわずか

遺族基礎年金を受給できる人はごくわずか
遺族基礎年金を受給できる人はごくわずか


20歳以上の国民全員に加入が義務付けられている国民年金。そこから支給される遺族基礎年金ですが、実際に受給できる人はごくわずかです。遺族基礎年金を受給するためには、以下の条件をクリアする必要があります。

・死亡した人によって生計を維持されていた子どももしくは配偶者である
・保険料の納付期間や滞納に関する基準を満たしている

遺族基礎年金は、子育て中の方々を支える目的の制度です。このため、子どもが「18歳到達年度の3月31日を経過していない」もしくは「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級である」の、いずれかの条件を満たしている必要があります。

たとえば、子どもがいない夫婦の夫が亡くなっても、妻は遺族基礎年金を受給できません。子どもがいる夫婦でも、すでに成長し19歳以上になっていれば、やはり受給要件は満たせないのです。

ちなみに、遺族基礎年金の制度は近年大幅に改定されています。過去のルールでは、遺族基礎年金を受給できるのは「子ども」もしくは「子どもを養育中の妻」だけに限られていました。つまり、父子家庭では受け取ることができなかったのです。現在このルールは撤廃され、上記の条件を満たしていれば、「妻を亡くした夫」の立場でも受給が可能に。こちらも頭に入れておきましょう。

遺族厚生年金を受給できるのは厚生年金加入者家族

一方で、遺族厚生年金を受給できるのは厚生年金に加入している(していた)会社員や公務員の遺族です。具体的には、以下のような場合に遺族年金を受給できる可能性があります。

・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき (※1)

遺族厚生年金の場合も、受給資格を持つのは、亡くなった方に生計を維持されていた家族です。具体的には、以下のような方々が当てはまります。

・妻
・子
・夫
・父母
・孫
・祖父母

上で言う子や孫は、遺族基礎年金の場合と同じく、「18歳到達年度の3月31日を経過していない」もしくは「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級である」の、いずれかの条件を満たしている人を指します。また夫や父母、祖父母については、「死亡当時に55歳以上」という条件を満たしている場合にのみ、受給できる可能性があります。

遺族の中で受給要件を満たす人が複数いる場合、遺族厚生年金を受け取れるのは、もっとも優先順位の高い方のみ。妻がいなければ子、それもいなければ55歳以上の夫…といった仕組みです。遺族基礎年金とは違い、対象年齢の子どもがいない場合でも、妻は遺族年金を受け取れる可能性があるでしょう。ただし妻の年齢が30歳未満であり、なおかつ夫婦の間に子どもがいなかった場合は、5年間のみ支給されます。

遺族基礎年金を受給できる人がごく限られているのに対して、遺族厚生年金では、「亡くなった人に生計を維持されていた人がいれば、誰かは受給できる」というケースが多く見られます。遺族基礎年金よりも、受給できる人の幅が広い制度だと言えるでしょう。ただし遺族厚生年金の場合も、受給するためには、保険料の支払い期間に関する要件を満たしている必要があります。過去の加入履歴をチェックしてみてください。

遺族年金がよくわからない…相談先は?

遺族年金の受給要件は非常に複雑で、「説明を読んでもよくわからない…」という方も多いのではないでしょうか?こんなときには、自分だけで判断するのではなく、ぜひその道のプロに相談してみてください。

遺族年金についてもっとも手軽に相談できるのが、各自治体が開設している年金相談窓口です。年金事務所や街角の年金相談センターを頼ってみるのも良いでしょう。年金番号など、必要な情報をまとめて相談にいけば、自身の状況に合ったアドバイスがもらえるはずです。

また「内縁の妻」や「死亡当時に別居していた」など、複雑な要因を抱えている場合は、社会保険労務士に相談してみましょう。遺族年金に強い専門家に相談すれば、解決に向けた糸口がつかめるかもしれません。

身近な家族が亡くなったら遺族年金も確認を

身近な家族が亡くなったら遺族年金も確認を
身近な家族が亡くなったら遺族年金も確認を

大黒柱として生活を支えてくれていた家族が亡くなったとき、今後の生活に不安を抱き、途方に暮れてしまう方も多いのではないでしょうか。遺族基礎年金もしくは遺族厚生年金を受給できれば、生活の支えになってくれるでしょう。まずは一度、亡くなった家族の過去の年金加入履歴と、現在の家族の状況についてチェックしてみてくださいね。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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