相続した一戸建てに住む場合の注意点とは?基礎知識やトラブル回避方法も

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相続した一戸建てに住む場合の注意点とは?基礎知識やトラブル回避方法も
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両親が亡くなった際に、実家の相続で悩む方は少なくありません。現金や預貯金の相続とは、全く異なる性質を持っている一戸建ての相続。「実家に住むのか、それとも住まずに手放すのか」と、判断を迫られる方も多いのではないでしょうか。

今回紹介するのは、迷った末に「住む」と決断した場合の注意点です。必要書類や具体的な手続き方法といった基礎知識から、一戸建て相続にまつわるトラブル回避法まで詳しく解説していきます。

相続した一戸建てに住むメリットとは?


実家の両親が亡くなった際に、両親が暮らしていた実家の一戸建てを相続するケースは多くあります。「相続した一戸建てに住む」という決断をした場合のメリットは、以下のとおりです。

・家賃がいらない
・住みながら自宅のメンテナンスができる
・両親の思い出を手元に残せる

現在の住まいが賃貸住宅なら、毎月家賃が発生します。相続した一戸建てに引っ越せば、家賃を支払う必要はありません。毎月の生活費にも余裕が生まれるでしょう。

また住まずに空き家にした場合と比較して、「家が傷みにくい」というメリットがあります。建物の修繕や庭の管理といった一戸建てに特有のメンテナンスも、暮らしの中で、自力で対処していけるでしょう。「ちょっと見ない間に庭の草木が伸びすぎて、近隣住民から苦情を言われる」なんてリスクも少なくなります。

最後に、相続した家を手元に残し、実際にそこで暮らすようになれば、両親が大切にしてきた家や思い出をそのまま保存できるでしょう。自身が幼い頃の思い出を、よりいっそう身近に感じられるのではないでしょうか。

相続した一戸建てに住む場合の手続きは?

■相続した一戸建てに住む場合の手続きは?
■相続した一戸建てに住む場合の手続きは?


ではここからは、一戸建ての相続と、実際にそこに住むまでに流れについて解説します。以下の手順で手続きを進めていきましょう。

★1.遺言書を確認する


相続手続きを進めていく際に、最初に行うべきなのが遺言書の確認です。遺言書が残されていれば、そこには故人の遺志が記されています。もしそこに実家に関する記述があれば、それは何よりも優先される事項です。遺書は自宅や貸金庫から見つかるケースも多いですが、勝手に開封して確認しないよう注意してください。

遺言書の形式によっても詳細なルールは異なりますが、見つけた遺言書を勝手に開けると罰金を命じられる可能性も。裁判所にて、検認の手続きを取ったのちに、内容を確認するようにしましょう。

★2.遺産分割協議を行う


遺言書の内容を確認したら、遺産を相続する人たちの間で遺産分割協議を行います。遺言書が残されていない場合は、相続財産を確認した後に、分割協議に移りましょう。

遺産分割協議とは、誰が何を、どの程度相続するのか決定するための話し合いのこと。参加者全員が納得しなければ、協議は終わりません。反対に、たとえ遺言書の内容と異なっていたとしても、相続人全員が納得し、意見が一致しているのであれば、遺言書よりも遺産分割協議の内容を相続に反映させられます。

★3.所有者移転登記を行う


遺産分割協議を経て、正式に実家を相続すると決まったら、不動産の所有権移転登記を行いましょう。所有者移転登記とは、「実家の所有者が変わりましたよ」と役所に届け出るための手続きです。法務局にて受け付けています。

所有者移転登記をしなかった場合でも、実家で暮らすことは可能です。ただし登記を行っていなければ、「この建物が法的に見ても自分のものである」と主張できません。後々のトラブルを避けるためにも、ぜひ早めに手続きしておいてください。

★4.引っ越しする

両親が所有していた一戸建てが、名実共に自分のものになったら、引っ越しをしましょう。相続人が自分一人だけの場合は特に心配はありませんが、複数人いる場合は引っ越しのタイミングにも注意してください。早く引っ越した方が家賃の負担は軽減できますが、その他の相続人の感情を逆なでしてしまう可能性があります。

★必要な書類は?


一戸建ての相続に必要な書類は、以下のとおりです。

・亡くなった親の戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・それぞれの住民票
・相続する物件の固定資産税評価証明書

また登記を行う際には一定の費用も発生します。登録免許税や書類の発行代のほか、手続きを専門家に依頼すれば報酬が発生するでしょう。専門家報酬も含める場合、10~15万円程度用意しておくと安心です。

相続した一戸建てに住む場合のトラブルと対処法は?


相続した一戸建てに住む場合、遺産相続とその手続きをめぐり、さまざまなトラブルに巻き込まれてしまう恐れがあります。トラブル事例について学ぶと共に、具体的な対処法や予防策を頭に入れておきましょう。

★その他の相続人の合意を得られない可能性がある


遺産相続で自分以外にも相続人がいる場合、実家を含めた「不動産」が、トラブルの火種になるケースは決して少なくありません。なぜなら、不動産は現金のように、等分には分けられないから。相続人の一人が「実家に住む」と決めた場合、その他の相続人との間のバランスをどう取るのかが問題になります。

実家に住む人がいなければ、売却した上で、その利益を等分に分けるという選択肢もあるでしょう。しかしそのまま住む人がいる場合、それも不可能になってしまいます。

トラブルを避けるためには、遺産分割協議を丁寧に進めていくことが大切です。実家を残したいという気持ちを、真摯に伝えましょう。また、1人が不動産を相続する代わりに、その他の相続人に現金を支払う代償分割についても検討してみてください。

★家族の合意を得られない可能性がある


「親が残した一戸建てに住む」という決断は、今後のライフスタイルにも深く関わってきます。実家が遠ければ、引っ越しに伴う負担も大きくなるでしょう。子どもがいれば、転校しなければいけません。

また比較的近隣エリアに実家がある場合でも、デメリットは決して少なくありません。古くなった一戸建てには、メンテナンス費用や修繕費用もかさむもの。「やっぱり新築一戸建ての方が…」と思うケースもあるでしょう。

相続した一戸建てに住む場合、現在の家族が抱える負担についてもしっかりと検討し、話し合うことが大切です。合意を得られなければ、「どうすれば不安を解消できるのか」を一緒に考えていきましょう。「親の家を残したい」という強い気持ちがある場合でも、配偶者や子どもがいる場合は、家族の意向も尊重してください。

相続した一戸建てに住む|後悔のない選択を

相続した一戸建てに住む|後悔のない選択を
相続した一戸建てに住む|後悔のない選択を


相続した一戸建てに住めば、家賃の負担はなくなりますし、両親の思い出も手元に残せます。とはいえ、実際の相続ではトラブルが発生してしまう可能性も。どういったトラブルのリスクがあるのかを把握し、丁寧に話を進めていくことが大切です。今回紹介した内容ももとに、ぜひ後悔のない選択をしてくださいね。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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