遺産【争族】を防ぐために…やっておくべき事前準備とは?

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遺産【争族】を防ぐために…やっておくべき事前準備とは?
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身近な人が亡くなった際に、発生するのが相続です。できるだけ円満に解決したいと思いつつ、実際には遺産「争族」になってしまうケースも少なくありません。余計なトラブルを防ぐためには、事前にしっかりと相続準備を進めておくことが大切です。争いを避けるための3つのポイントを紹介します。

相続人の負担を減らすための対策をする

相続人の負担を減らすための対策をする
相続人の負担を減らすための対策をする

遺産相続でトラブルが発生する理由は、各家庭によってさまざまです。比較的多くみられるのが、相続にかかる負担が大きく、「できるだけ負担を少なくしたい」と願う親族同士で、トラブルに発展してしまうケースです。できるだけ負担を少なくするための対策をとっておきましょう。具体的な対策は、以下のとおりです。

★相続財産を減らす

相続財産が多い場合に、問題になりやすいのが相続税です。遺産相続には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除が用意されていますが、この金額を超えてしまえば、その分に対して相続税が課税されます。相続時の負担を軽減し、できるだけ多くの財産を手元に残すためには、「相続が発生する前に、できるだけ相続財産を減らしておく」必要があるでしょう。

贈与税の負担が大きくならない範囲で生前贈与をしたり、不動産を購入したりする方法が一般的。現金を不動産に変えておけば、相続税評価額は80%程度に減額されるため、相続税の負担軽減に役立つはずです。

またもう一点重要なのが、「もらって困る財産はできる限り事前に処分しておく」ということです。たとえば、田舎の空き家を財産として残されても、困る方がほとんどでしょう。プラスになるどころか、修繕費や管理費などで、マイナスの資産になってしまう可能性も高いです。いざ売却しようとしても、状態の悪い物件を購入したいと思う人は決して多くはありません。不必要な財産は、相続人間の間で押し付け合いのような状況に陥りがちです。できるだけ自分の代で整理しておくと良いでしょう。

どういった相続対策が有効なのかは、個々の状況によって異なります。対策方法を間違えると、相続人の負担がかえって増加してしまう恐れもあるため、注意してください。相続問題に強い専門家に、相談に乗ってもらうのもおすすめです。

★相続税を納付するための現金をあらかじめ用意しておく

相続税の申告と納付には、期限が定められています。相続が発生した日の翌日から10か月以内と短いため、話をスムーズに進めていく必要があるでしょう。またもう一点注意しなければならないのが、「相続税が発生した場合、税金は現金で納める必要がある」という点です。

不動産相続などで相続税が高額になる場合、現金の準備で苦労する相続人は少なくありません。最悪の場合、せっかく相続した不動産を短期間で売却し、相続税の支払いにあてなければならないような事態も考えられます。

だからこそ、相続税の支払いにあてる分の現金は、相続準備として事前に用意しておくのがおすすめです。不動産の一部を売却して現金を用意したり、不動産投資で賃貸経営をし、そのリターンを確保したりする方法も良いでしょう。こちらも、相続税の負担がだいたいいくらくらいになりそうなのか、専門家と試算した上で必要額を準備しておくのがおすすめです。

家族としっかりコミュニケーションをとる

遺産相続で、あえて揉めようとするご家族は少ないはず。しかし実際には、争いごとが発生してしまうケースは珍しくありません。その多くは、コミュニケーション不足が原因で発生しています。

たとえば、被相続人が「自分の面倒を献身的にみてくれた長男に、全財産を残したい」と考えたとします。とはいえ、こうした考えに、その他の相続人が納得できるとは限らないでしょう。その他の兄弟の中にも「自分は○○で貢献した」「長男は確かに同居していたが、その分生前に受けた恩恵も誰より多かったはず」など、モヤモヤした気持ちが残ってしまう可能性があります。

こうしたトラブルを予防するため、生前から家族間でしっかりとコミュニケーションをとっておくことも、非常に重要な相続準備の一つです。被相続人の立場としても、相続人それぞれの思いを知るきっかけになるでしょう。

たとえば、先ほどの「長男に全財産を残したい」という希望がある場合でも、生前に自らの口から伝えておけば、印象は変わります。どれだけ感謝していて、なぜ財産を残したいと思っているのか。その代わり、その他の相続人に対して何をしようと思っているのか、しっかりと伝えてみてください。その他の相続人からは、もしかしたら文句の言葉が出てくるかもしれません。しかし、生前であれば、それぞれの相続人の思いを知った上で、それを実際の相続に反映させることもできるはずです。

亡くなる前に相続の話をするなんて…と思う方もいるかもしれませんが、これも立派な終活の一つです。自らがコミュニケーションをとれる段階でしっかりと話し合いを進めておくことで、余計なトラブルを防げるはずです。

自身の思いを遺言書に残す

自身の思いを遺言書に残す
自身の思いを遺言書に残す

相続人たちとの間でしっかりとコミュニケーションがとれたら、自身の思いも反映させた内容を、遺言書に残しておきましょう。どれだけ蜜にコミュニケーションをとっていても、きちんとした書類が残っていなければ、やはりトラブルになってしまう可能性も。終活ブームの今、一般の方でも遺言を残すことは決して難しくありません。ぜひ、自身の言葉を記しておきましょう。

遺言を残す際に、争族にさせないための注意点は以下のとおりです。

・遺言書を無効にさせない

・相続人の感情を逆なでしない

近年人気の自筆証書遺言は、誰でも自宅で手軽に遺言を残せる方法です。しかしその有効性が認められるためには、ルールに則った形式で書かれていなくてはいけません。実際に、「遺言は残っていたが、ほんの少しのミスが原因で無効と判断されてしまった…」というケースも少なくないのです。

また、遺言を残していた場合でも、法定相続人にはそれぞれ遺留分が認められています。遺留分を無視して「○○に全財産を相続させる」といった内容を残しても、結局のところ、トラブルに発展してしまう可能性が高いでしょう。あらかじめ遺留分に配慮した内容を記載し、またそのように決断した理由についても丁寧に残しておくことで、各相続人の感情にも配慮できるのではないでしょうか。

ちょっとした工夫で遺産「争族」を防ぐことはできる!

トラブルのイメージも強い遺産相続ですが、準備段階からしっかりと配慮しておけば、余計な問題を避けられるでしょう。重要なのは、トラブルの芽を事前に察知し、できる限りつぶしておくということ。決して難しい内容ではありませんから、ぜひ終活の一環として取り入れてみてください。

自身が亡くなったあとも、残された家族はみんな仲良くやってほしいと願う方は多いでしょう。円満な遺産相続で、その後押しができると良いですね。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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