子供に残す資産に要注意!万が一のときのための予備知識

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子供に残す資産に要注意!万が一のときのための予備知識
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親として、子供のためにできるだけ多くの資産を残したいと願う方も多いのではないでしょうか。とはいえ、相続に関するルールの中には、複雑でよくわからない点も多いもの。「おそらく大丈夫だろう」という認識で話を進めていくと、将来的に、子供が困る事態にもなりかねないでしょう。

今回は、子供に資産を残す際の注意点について解説します。万が一のときのための予備知識として、ぜひ最後までご覧ください。

子供名義の預金通帳に注意

子供名義の預金通帳に注意
子供名義の預金通帳に注意

親が子供のために資産を残す方法として、「子供名義の預金通帳を作り、そこにお金を積み立てていく」というものがあります。最初から子供名義にしておけば、遺産相続の際に相続税が加算されることはありません。また、「贈与税の非課税枠に収まる範囲にしておけば、余計なお金を取られる恐れもない」と考える方も多いのではないでしょうか。

確かに、非常に有効で非常に手軽な方法に映りますが、実際には注意するべき点も少なくありません。ただ単純に「親が子供名義の通帳を作ってそこにお金を入れていく」というだけでは、「贈与」とみなされない可能性が高いからです。

贈与としてみなされなければ、通帳の名義だけが子供であっても、実際には親の財産に。相続が発生すれば相続税の対象になりますし、基礎控除分を超える場合、子供自身が税金を納めなくてはいけなくなります。

このケースで最も重要なポイントになるのは、「親から子供への贈与が本当に存在していたのか?」という点です。ただ単純に親がお金を積み立て、子供自身はその存在を把握していないような場合、贈与と認められないのです。この方法で子供のための財産を残したいと考えるなら、ぜひ以下の点に注意してください。

・お金をあげる、もらうという意識をはっきりさせる
・通帳の管理を子供自身にさせる(子供がすでに成人している場合)

より確実にトラブルを予防するためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成するのがおすすめです。多少手間はかかりますが、「本当に贈与があった」と証明する手立てになるでしょう。また、贈与税の非課税枠から、あえてほんの少し足が出る程度の贈与を行うのも効果的です。もちろん、非課税枠を超えた分に対しては贈与税が加算されますが、ときおり贈与税を納めておくことで、子供自身の資産であると認められやすくなるでしょう。

「持ち家を残す」のが正解とは限らない

「持ち家を残す」のが正解とは限らない
「持ち家を残す」のが正解とは限らない

子供のために資産を残すことを考え始めたとき、「不動産」が頭に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。家族みんなで暮らした家に思い入れがあるのは当たり前のこと。また持ち家をそのままの形で子供に残せば、「子供自身が住む場所を確保できる」というメリットがあります。

とはいえ、子供のために持ち家を残したことがきっかけで、相続トラブルに発展するようなケースも珍しくありません。なぜなら、相続人が一人だけとは限らないから。「相続人同士で揉めないため、きっちり遺産を分割したい」と思っていても、持ち家があると、途端にそれは難しくなってしまうでしょう。

また不動産の維持・管理にはそれなりの費用がかかるものです。自分たちが長く生活してきたマイホームを子供に相続させようとすれば、子供自身にメンテナンスやリフォームの手間やコストがかかってくるでしょう。「住まいを確保できてうれしい」と思う人もいれば、「自分の住まいは別で確保したいから、正直負担…」というケースも少なくないのが現実です。

持ち家を残すかどうかについては、子供との間で事前にしっかりと話し合っておくことをおすすめします。持ち家を残した方が良いということであれば、どのような形で相続するのがベストなのかまで、あらかじめ確認しておくと安心です。

子供自身が「残されても困る」ということであれば、相続が発生する前に自宅を売却し、現金で相続させるのも一つの方法です。遺産分割協議で揉める可能性は低くなりますし、「相続人同士できっちり等分に分ける」という選択もしやすくなるでしょう。

子供が居住しない住居を財産として相続させた場合、自身の死後、マイホームは空き家になる可能性も。きちんとした手入れや管理が行き届かず、「特定空き家等」に認定されてしまった場合、固定資産税は大幅にアップします。人の手が入らなくなった古い物件を売却するのは、決して簡単ではありません。そうなる前に、自分自身の代で「家じまい」を検討するのもおすすめです。

生命保険の活用も検討しておこう

親が子供に財産を残す際に、「子供たちとの関係性によって、残す財産の額に差をつけたい」と思うこともあるかもしれません。たとえば、2人の子供のうち1人は同居し自分の面倒を見てくれ、もう1人は長く疎遠になっているような場合、「同居して面倒を見てくれる子供の方に、多くの財産を残したい」と思うのは、ある意味で当然だと言えるでしょう。

このような場合、子供たちの相続分に対して、遺言で割合を指定するのがおすすめです。このとき、「なぜ片方の子供にだけ多くの財産を残すのか」という理由まで、しっかりと伝えておくと良いでしょう。相続人の間の不公平感を和らげる効果が期待できます。

また、生命保険を活用するのもおすすめの方法です。遺産を多めに渡したいと思っている相続人を受取人にした、生命保険に加入しましょう。すると、自身が亡くなった際に支給される生命保険金は、事前に指定しておいた受取人のもとに直接わたります。

年齢を重ねると加入できる保険にも制限が出てきますが、死亡保険金には非課税措置も設けられており、相続税対策としても有効です。自身に合ったタイプの保険を探し、できるだけ早い段階から対策を取っておくのも良いでしょう。

注意点を理解して子供に資産を残そう

子供に資産を残す際に、注意するべき3つのポイントをまとめました。相続に関するルールをしっかりと理解した上で準備を進めておけば、相続の手続きそのものをスムーズに進めていける可能性も。子供の負担も軽減できるでしょう。子供のために良かれと思ってしたことでも、実際には「大きな負担になってしまった…」というケースは決して少なくありません。そして、相続する側の負担が増えれば増えるほど、相続トラブルに発展するリスクも高まってしまいます。

子供のためを思って財産を残すのであれば、相手の気持ちに寄り添って、必要な準備を丁寧に整えておくことが大切です。それも大切な終活の一つ。いつそのときが訪れても良いように、少しずつ準備を進めていきましょう。今回紹介した3つのポイントもぜひ参考にしながら、子供に財産を残すことについて、今一度検討してみてください。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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