親の死後に発見されたビデオメッセージ…扱い方と注意点は?

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親の死後に発見されたビデオメッセージ…扱い方と注意点は?
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自身の最期の想いをしっかりと伝えるため、終活に取り組む方も増えてきています。遺書やビデオメッセージを残して亡くなる方も多いのではないでしょうか。
今回は、親がビデオメッセージを残して亡くなった場合の、扱い方や注意点について解説します。「どうすれば良いのだろう」と悩んだときには、ぜひ参考にしてみてください。

まずはビデオメッセージを確認してみよう

親の死後、ビデオメッセージが残されていることがわかったら、まずはその内容を確認してみましょう。「自分の死後に、その想いを確認してもらうために」という理由で、ビデオメッセージを残す方は増えてきています。自筆証書遺言のように「内容を確認する前に検認手続きが必要になる」ということはありませんから、自分たちの好きなタイミングで確認して大丈夫です。

とはいえ、故人が残したビデオメッセージを、長期間放置するのはおすすめできません。終活の一環としてビデオメッセージを残している場合、葬儀への希望や連絡を取って欲しい人、自身が残す財産についてなど、重要な情報が含まれているケースも多いからです。できるだけ早く確認し、ビデオメッセージを残した人の希望を叶えられるよう準備しましょう。

ビデオメッセージに「遺言書」としての法的拘束力はない

ビデオメッセージの内容を確認したところ、財産相続に関わる遺言書のような内容が見つかるケースもあるでしょう。この場合に重要なのは、「ビデオメッセージに遺言書としての効力はない」という事実です。

紙に書いただけの遺言書と、本人は直接語りかけているビデオメッセージを比較すると、「ビデオメッセージの方が自身の想いを伝えやすいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし遺言書とは、非常に強い法的拘束力を持つもの。間違いなく運用されるよう、厳しいルールが定められているのです。残念ながらビデオメッセージは、遺言書のルールをクリアしていません。

もしビデオメッセージに財産相続にまつわる内容が収録されていたら、遺言書が残されていないかどうか探してみましょう。ビデオメッセージには遺言書のような効力がない事実を知った上で、「遺言書の内容を補完する目的」でビデオメッセージを残す方もいます。この場合、法的に有効な遺言書が見つかれば、その内容のとおりに遺産を分割できるでしょう。自宅はもちろん、公証役場にも確認してみてください。エンディングノートが残されていれば、遺言書についても記載されている可能性があります。

遺言書が残されていない場合、遺産分割協議を行いましょう。法定相続人全員で、遺産をどう分割するか協議するための機会です。ビデオメッセージに法的拘束力はないとはいえ、相続人全員が納得しているのであれば、被相続人の遺志を相続に反映できます。一方で、1人でも納得できない人がいれば、ビデオメッセージどおりの遺産分割は不可能です。話がまとまらなければ、法定相続割合に従って遺産を分けることになるでしょう。

親からのビデオメッセージ、活用方法は?

親からのビデオメッセージ、活用方法は?
親からのビデオメッセージ、活用方法は?

遺言書のような法的拘束力がないとはいえ、親からのビデオメッセージは生前の想いを届けてくれる特別なツールです。ぜひ以下のような場面で活用してみてください。

★お葬式にて

亡くなった親が残してくれたビデオメッセージは、生前の姿を楽しませてくれるもの。身近な人が故人に関するエピソードを披露するのも良いですが、その人が実際に動き、話している姿を収録したビデオは、特別な意味を持つでしょう。

お葬式で流されるビデオメッセージは、近年「エンディングムービー」として人気を集めています。故人の人となりを知ってもらうため、またありし日の姿を思い描いてもらうために、ひと役買ってくれるはずです。葬儀の際の演出として、ぜひ活用してみてください。映像をきっかけに、思い出話も広がるでしょう。

★遺産分割協議にて

ビデオメッセージに法的拘束力はありませんが、遺産分割協議の際に、参加者全員で確認するのもおすすめです。たとえ法的な意味はなくても、故人がどのように考えていたのか、知るためのヒントとして活用できるでしょう。

たとえば「相続人のうち、1人だけに全財産を譲る」という内容の遺言を聞いたとき、財産を相続できない相続人がすぐに納得するのは難しいでしょう。しかし故人には、故人がそう決めただけの理由があったはず。ビデオメッセージを通じてその理由に触れられれば、遺言の内容を納得して受け入れやすくなるのではないでしょうか。

遺産分割協議は、親族間のトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。ビデオメッセージで親の言葉を直接耳にすることで、トラブル予防効果も期待できます。

★故人を思い出すきっかけとして

ビデオメッセージの良いところは、何度でも繰り返し楽しめる点です。親が亡くなってすぐの時期は、葬儀や埋葬でバタバタしがち。「悲しみに浸る間もない」というのが正直なところです。

さまざまな手続きが終わり、ほっと一息つく頃になると、急に寂しさが襲ってくることも。こんなときには、ぜひビデオメッセージを見返してみてください。ビデオの中では、生前と変わりない元気な姿や表情を見せ、懐かしい声を聞かせてくれるはずです。あれこれと思い出すきっかけになるでしょう。

ビデオメッセージは、兄弟姉妹が集まったときに流すのもおすすめです。家族写真で過去を振り返るのも良いですが、動いている姿はよりいっそう記憶を刺激してくれるでしょう。大切な家族と、懐かしい思い出話に花を咲かせてみてください。

親からのビデオメッセージの注意点は?

親からのビデオメッセージを見つけた際の注意点は、「親の本音」を冷静に受け止めるということです。特に相続に関する内容が含まれている場合、「自分にとっては到底納得できない」と思う可能性もあるでしょう。ビデオメッセージをきっかけに、モヤモヤした感情を抱くこともあるかもしれません。

とはいえ、親の本音に対して感情的にぶつかっても、話は前に進みません。親の考えは親の考えとして受け止めた上で、自分自身がどう考え行動するのかを決定してみてください。ビデオメッセージの特徴を頭に入れた上で、納得できる道を探るのがおすすめです。

ビデオメッセージを見つけたら冷静な対応を

ビデオメッセージを見つけたら冷静な対応を
ビデオメッセージを見つけたら冷静な対応を


亡くなった親が残したビデオメッセージを見つけたら、ぜひ冷静に対処してみてください。相続に関する内容については、正式な遺言書が残されているかどうかで、対応が変わってきます。ビデオメッセージに込められた親の想いを理解しつつ、これから先についてもしっかりと検討しましょう。故人を思い出すためのツールとしても、ぜひ役立ててみてください。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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