つたえるコトダマ

相続人以外が遺言で財産を受け取った場合の税金は?注意点も解説

相続人以外が遺言で財産を受け取った場合の税金は?注意点も解説

相続人以外が遺言で財産を受け取った場合の税金は?注意点も解説

自身の遺産を誰に相続させるのかを考えたとき、「相続人以外を指定したい」と思うこともあるのではないでしょうか。この場合、注意しなければならないのが税金についてです。遺言で相続人以外に財産を受け継がせる方法や、その場合の税金について、注意点を踏まえて解説します。

遺言書で指定すれば「遺贈」が可能に

人が亡くなった際に、その財産は法定相続人が受け継ぎます。法定相続人には、配偶者や子どものほか、親や兄弟などが当てはまるでしょう。配偶者は常に法定相続人になりますが、子ども・親・兄弟などは、相続順位に則って、法定相続人になるかどうかが決定されます。法定相続人にならなかった場合、被相続人の財産を受け継ぐことはできません。

たとえば、

・内縁の妻
・認知していない婚外子

これらの立場にあたる人は、どれだけ身近な存在であっても相続権は持たないのです。もし「自分の財産を受け継がせたい、その生活を安定させたい」といった思いがあるのなら、事前にしっかりと対策をしておくことをおすすめします。

相続人以外に財産を受け継がせるためには、法的に有効な遺言書を残し、その中で遺産分配の方法を自身で指定しておく方法が効果的です。遺言書で財産の贈り先を指定する「遺贈」であれば、相続人以外の第三者に財産を残せるでしょう。

相続人以外に財産を受け継がせる場合の税金はどうなる?

相続人以外に財産を受け継がせる場合の税金はどうなる?

遺言書で相続人以外を指定し、自身の財産を相続させる場合に、注意しなければならないのは以下の3点です。どれも相続税に関連するポイントですから、事前にチェックしておきましょう。

★1.基礎控除額の計算には含めない


遺産を相続する際に、課せられる税金と言えば相続税です。相続財産は、相続人の生活を支えるための資産でもあります。このため、その他の税金と比較して基礎控除額が多いという特徴があるのです。

相続税の基礎控除額は、以下の計算式で求められます。

【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】

たとえば配偶者と子ども3人が相続人になる場合、法定相続人の数は全部で4人。上の計算式に当てはめると、基礎控除額は4,800万円となります。相続する遺産の相続がこの範囲に収まれば、相続税の申告・納税は必要ありません。

遺言書で相続人以外が遺産を受け取るように指定されていた場合でも、上記計算式の「法定相続人の数」には含まれないのです。「遺言書で財産を受け取る人の数を増やせば、基礎控除額が増える」というわけではないという点を、頭に入れておきましょう。

★2.相続税が発生する場合、負担は2割増しになる

相続税には、「被相続人の配偶者と一親等の親族」以外が財産を受け取る場合、相続税の負担が2割増しになるというルールがあります。一親等の親族に当てはまるのは、被相続人の子どもと両親です。遺言書で孫や兄弟姉妹、内縁関係にある配偶者等を指定して財産を贈る場合、想定以上に相続税が高額になる可能性があるという点も、知っておいてください。

ただし、「被相続人である子どもが亡くなっているため、代襲相続で孫が財産を受け継ぐ」といった場合には、相続税負担が2割増しになる恐れはありません。あくまでも孫は、相続人である子どもの代わりに財産を受け継ぐ立場だからです。「代襲相続で相続人の立場を得る」場合と、「相続権を持たない孫に遺言で財産を相続させる」場合では、同じ孫でも税負担は変わります。相続税が課税されると思われる場合、その支払い方法についても、事前に考慮しておくのがおすすめです。

★3.死亡保険金の非課税枠が対象外になる

被相続人の死亡によって死亡保険金が支払われた場合、専用の非課税枠が用意されています。

【500万円×法定相続人の数】

こちらの範囲内であれば、相続税は加算されません。

ただしこちらの制度を利用できるのは、相続人のみです。相続人以外が死亡保険金を受け取った場合、非課税枠は適用されず、相続税の負担が重くなるという点も頭に入れておきましょう。

相続人以外が遺言で不動産を受け取った場合の税金は?

被相続人の財産には、現金や預金以外にもさまざまなものが含まれているでしょう。中でも問題になりやすいのが、不動産です。遺言書で法定相続人以外を指名して自身の不動産を受け継がせる場合、不動産取得税を納めなければいけません。

不動産取得税とは、不動産を取得した際に課せられる税金のこと。取得時にのみ課せられる税金なので、目にする機会は少ないでしょう。「マイホームや土地を購入した際に課せられる税金」といったイメージも強いですが、遺贈によって不動産を受け取った場合も、不動産取得税の課税対象です。

不動産の価値が高く、相続税の負担も重くなってしまう場合、納税資金をどうやりくりするのかもポイントになるでしょう。「遺言書によって相続させる財産のほとんどが不動産」という状況になると、遺言書で指定された人は、自身の財産から納税分の現金を工面しなければいけません。税金負担分を工面できない場合、せっかく不動産を残しても、「相続できずに結局手放さざるを得ない」といった事態にもなりかねないでしょう。

相続人以外への遺贈は事前のコミュニケーションが鍵

遺言書を使えば、相続人以外にも財産を残すことが可能です。しかし遺言書で相続人以外が受取人として指定されていれば、本来の相続人は不満を抱くでしょう。指定された人が肩身の狭い思いをしたり、想像以上の税金負担に悩んだりする可能性もあるのです。

だからこそ、相続人以外に財産を残したい場合は、特にしっかりとコミュニケーションを取っておきましょう。

・なぜ相手に財産を残したいのか?
・相続税の発生有無
・相続税や不動産取得税の負担方法について

これらの項目についてしっかりと話し合い、合意を得ていれば、相続発生後の手続きもスムーズに進めていけるはずです。

またこうしたコミュニケーションは、法定相続人との間でも行っておくことをおすすめします。なぜ法定相続人以外を指定して財産を相続させたいと考えているのか、自身の想いを明らかにしておけば、余計なトラブルも防げるはずです。

相続人以外に財産を残すことは可能!税金・注意点に注目を

相続人以外に財産を残すことは可能!税金・注意点に注目を

遺言書を正しく残せば、相続人以外へと自身の財産を相続させられます。法律にとらわれず、自身の想いを反映できる相続になるでしょう。

一方で、税金面には注意が必要です。法定相続人に「生活安定のため」という理由で控除枠や非課税枠を用意されているのに対して、相続人以外にそうした制度は利用できません。税金や注意点までを踏まえて、自分にとって理想の相続について検討してみてください。

モバイルバージョンを終了