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生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

相続税対策のため、遺産にまつわる親族間トラブルを避けるため、有効だと言われているのが「生前贈与」です。具体的にどのような制度で、どういったメリットが期待できるのでしょうか。注意点も踏まえて解説します。
遺言による遺贈との違いや、どちらにするべきか悩んだ場合の考え方も紹介。相続に関する不安を解消するため、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも生前贈与とは?3つのメリット解説

生前贈与とは、将来相続財産になる見込みの遺産を、生前に贈与することを言います。贈与をする側と受ける側が贈与契約を結び、財産をやりとりする方法です。生前贈与のメリットは、以下を参考にしてみてください。

★メリット1「自身の意思を明確にできる」

先ほどもお伝えしたとおり、生前贈与とは、自身が生きている間に相手を指定し、自分の財産を受け取ってもらう方法です。自身の意思を明確に示せるため、死後に発生する相続よりも、親族間トラブルが発生しにくいというメリットがあります。たとえば、「よく世話をしてくれている長男の嫁に財産を残してやりたい」といった場面においても、自らの口で状況を説明可能。その他の親族にも、納得してもらいやすいでしょう。

また遺言書を残さないまま亡くなってしまった場合、被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つのは、法定相続人のみです。先ほどの「長男の嫁」や「孫」、「内縁の妻」など、相続権を持たない人に財産を残すことが難しくなってしまいます。

生前贈与なら、このような縛りは発生しません。誰にどれだけの財産を受け継いでほしいのか、自身の意思で判断できます。

★メリット2「相続税対策に有効である」


被相続人が亡くなった際に、相続人に対して課せられるのが相続税です。相続財産の総額が一定以上になれば、税金を支払わなくてはいけません。生前贈与で事前に財産を渡しておけば、その分相続財産は減らせるでしょう。相続税を少なくする節税効果が見込めるのです。

もちろん、生前贈与の場合も、一定金額以上を超えれば贈与税が発生します。贈与税の基礎控除額は毎年110万円。この範囲内で生前贈与を繰り返していけば、贈与税を発生させず、相続税を減らす効果が期待できるでしょう。1年に110万円でも、10年継続できれば1,100万円になります。この110万円という控除額は「1人当たり」の数字ですから、生前贈与する相手が増えれば、その分相続財産を減らすスピードも速くなるはずです。

★メリット3「自分の好きなタイミングで財産を渡せる」

相続の場合、財産を渡せるのは自身の死後となります。残念ながら、そのタイミングを自分自身で決定するのは難しいでしょう。その点生前贈与であれば、自分の住金タイミングで実行できるというメリットがあります。

たとえば、

・孫の進学費用のため
・子どものマイホーム資金援助として
・お祝い金として

など、お金が必要になったタイミングで援助してあげられるでしょう。孫の進学費用や住宅資金援助といった目的の場合、非課税で渡せる金額も大きくなります。

生前贈与の行い方と注意点

生前贈与の行い方と注意点

上で解説したとおり、生前贈与にはさまざまなメリットがあります。しかし実際に行う際には、いくつか注意点もあるので頭に入れておきましょう。生前贈与の具体的なやり方とともに紹介します。

★1.誰にどのような目的でいくら贈与するのか決定する

生前贈与を決めたら、まずは誰にどのような目的で、いくら贈与するのかを決定しましょう。相手との関係性や目的、そして金額によって、利用できる非課税制度が違ってきます。相手と目的が決まったら、ぜひ利用できる制度がないかどうか確認してみてください。その上で、「非課税で贈与できるぎりぎりの金額」を狙ってみるのもおすすめです。

★2.贈与税の課税方式を決定する

一定金額を超えた贈与契約に対して発生する贈与税。その課税方式は2パターン用意されており、自分自身で選択できます。

1つめのパターンは「暦年贈与」。1年間で贈与された金額の合計から基礎控除額(110万円)を引いて、超過分に対して贈与税が課せられる方式です。2つめのパターンは「相続時精算課税制度」と言い、2,500万円までを限度に贈与税が非課税になるかわりに、相続が発生した際に相続税が発生する仕組みです。

どちらにもメリット・デメリットがあるため、贈与する側・される側にとって、より良い方式を選んでください。

★3.贈与契約書を作成する

贈与そのものは「あげる」「もらう」といった行為のみで完結しますが、財産の移動に関する証明がなければ、税務署に対して適切に説明できません。税務署からの指摘にしっかりとした説明ができなければ、余計なトラブルを招いてしまう恐れがあります。いつ誰が誰にどんな財産を贈与したのか、契約書にして残しておきましょう。

★4.状況に応じて贈与税の申告を行う

贈与を受けた側は、状況に応じて贈与税の申告を行います。暦年贈与で110万円を超える贈与を受けたときや、相続時精算課税制度を選択した場合は、忘れないように申告してください。

★生前贈与の注意点

生前贈与で暦年贈与を選択した場合、「死亡日より前の3年間に行われた暦年贈与は、相続税の対象に含まれる」というルールがあります。生前贈与加算と呼ばれるルールで、亡くなるタイミングによっては、生前贈与のメリットがなくなってしまう恐れもあるでしょう。こちらについても、ぜひ頭に入れておいてください。

遺言による遺贈と生前贈与、迷ったときはどうすれば良い?

遺言による遺贈と生前贈与は、どちらも「相続に自分の意思を反映させるための方法」と言えます。どちらが良いのか悩む方もいるでしょうが、両方をうまく組み合わせていくのがおすすめです。

現金や有価証券といった財産は、比較的生前贈与に向いています。誰に何をどの程度分配するのか決まっているのであれば、ぜひ生前贈与も積極的に検討してみてください。一方で土地やマイホームといった不動産は、暦年贈与の基礎控除を利用するのが難しく、生前贈与には注意が必要と言えるでしょう。

遺贈と生前贈与は、どちらの方が優れているというわけではありません。悩んだときには、遺産の性質に合わせて、専門家に相談しながら検討していくのがおすすめです。

生前贈与について正しく知り活用を

生前贈与について正しく知り活用を

生前贈与をうまく使えば、相続に関する各種トラブルを軽減できる可能性があります。終活について検討し始めたら、ぜひ生前贈与についても考えてみてください。「遺書」だけではなく、生前贈与まで視野に入れることで、「誰にどう財産を残すのか?」という視点は広がるはずです。ぜひ後悔のない相続について、検討してみてください。

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