死亡共済金の受取人は誰になる?トラブル予防のために準備しておきたいこと

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死亡共済金の受取人は誰になる?トラブル予防のために準備しておきたいこと
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万が一のときのために加入する共済。死亡時には、死亡共済金が受け取れる商品も少なくありません。

「実際に共済への加入を検討している」「共済に加入している家族が亡くなった」場合に、知っておきたいのが「死亡共済金の受取人」についてです。いったい誰が受け取ることになるのかを事前に把握しておくと共に、トラブル予防のための対策を実施しましょう。

死亡共済金の受取人とは?

死亡共済金の受取人とは?
死亡共済金の受取人とは?


共済には、さまざまなタイプの商品があります。たとえば、病気やケガを理由に共済金を受け取る場合、受取人は契約者本人に。ただし死亡共済金の場合は、契約者本人が受け取ることはできません。あらかじめ定められたルールに則って、以下の中からもっとも優先順位が高い人が、受け取る仕組みになっています。

1.加入者の配偶者(婚姻届の提出あり)
2.同一世帯に属する加入者の子
3.同一世帯に属する加入者の孫
4.同一世帯に属する加入者の父母
5.同一世帯に属する加入者の祖父母
6.同一世帯に属する加入者の兄弟姉妹
7.加入者のその他の子
8.加入者のその他の孫
9.加入者のその他の父母
10.加入者のその他の祖父母
11.加入者のその他の兄弟姉妹
12.加入者の甥姪

つまり、共済に加入していた人に法律上の配偶者がいれば、死亡共済金は自然にその配偶者のもとに支払われます。配偶者がいない、すでに亡くなっている場合には、同居中の子や孫へと、順序が移っていくというわけです。

死亡共済金は残された家族の生活を支えるためのお金であり、受取人優先順位からもわかるとおり、「同一世帯に属しているか否か」が重要視されています。実際には現在同居していなくても、その理由が「修学・療養・勤務」といった事情であれば、「同一世帯に属するもの」として判断されます。また同一順位が複数人いる場合には、平等に分配される仕組みです。

順位を無視して特定の誰かに受け取ってほしい場合は?


自分に万が一のことがあったとき、残された家族の生活を支えるために…という目的から、「受取人の順位が上位ではない人に死亡共済金を受け取ってほしい」と思うケースもあるでしょう。このような場合には、「死亡共済金受取人指定」の制度を活用してください。

死亡共済金受取人指定とは、その名前のとおり、死亡共済金を受け取る人を、あらかじめ加入者が指定しておける制度のこと。もしこの制度で受取人が指定されていれば、上記の順位を無視して、共済金を受け取れます。ただし死亡共済金受取人として指定できる人にも、一定のルールが設けられているケースがほとんどです。

・契約者の親族
・反社会的勢力に属していない人

内縁関係にある人や同性婚のパートナーを共済金の受取人として指定できるかどうかは、共済商品によって事情が異なるため、契約時にしっかりと確認しておきましょう。内縁関係にある場合、「法的な配偶者がいないこと」などを条件に、受取人指定が認められるケースもあります。また同性パートナーについても、一定の事情を伝えた上で、日常生活上密接な関わりがあると認められれば受取人になれる可能性があるでしょう。

どちらの場合も、事前準備が欠かせませんから、まずは組合側へと問い合わせてみてください。後々のトラブルを防ぐためにも、また自身の遺志を反映させるためにも、早めの準備が鍵となります。

死亡共済金の受け取りが相続問題に発展する可能性も?


死亡共済金は、加入者が亡くなったあとの、家族の生活をサポートしてくれるでしょう。しかし残念ながら、この死亡共済金が原因で相続トラブルに発展してしまう恐れもあります。2つの事例を解説します。

★兄弟間の不公平な相続について


先ほどもお伝えしたとおり、死亡共済金は受取人の指定が可能。たとえば、兄弟姉妹のうち1人だけが死亡共済金の受取人に指定されている場合、その他の兄弟姉妹から、その不公平さに文句が出る可能性があります。

なぜなら、受取人が指定された死亡共済金は、受取人に固有の財産とみなされるから。死亡共済金をすべて1人で受け取った上で、その他の財産についても、その他の兄弟と同じ分だけ受け取れる可能性があるというわけです。あまりに大きすぎる差に、深い亀裂が生じてしまうケースも少なくありません。

死亡共済金の受取で相続トラブルを発生させないためには、受取人を指定する段階で、過度に不公平な状況にならないよう注意する必要があるでしょう。

★相続放棄と死亡共済金の受け取りについて


こちらは反対に、死亡共済金の受取指定をしなかった場合のトラブル事例です。

遺産相続とは、プラスの財産もマイナスの財産も、すべてひっくるめて受け取るか、放棄するのかを選ぶ仕組み。たとえば、父親の財産を母親と子どもで受け継ぐ場合、不動産や預金といったプラスの財産のほか、借金などのマイナスの財産も対象になります。プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合には、相続放棄の手続きをとる必要があるでしょう。

もしも、

・死亡共済金の受取人が指定されていない
・受取人指定欄に、ただ「相続人」とだけ記載されている

といった状況の場合、死亡共済金は遺産の一部として扱われます。つまり、1,000万円の死亡共済金が支払われても、負債総額がそれ以上であれば相続するメリットはなくなってしまうというわけです。

先ほども説明したとおり、死亡共済金の受取人が指定されていれば、共済金は受取人に固有の財産とみなされます。遺産とは切り離して考えられますから、負債まみれの財産を相続放棄した場合でも、死亡共済金は受け取れるでしょう。

ただしこの場合も、相続人が複数人いる場合には注意が必要です。「相続人全員で相続放棄の手続きをしたが、実際には共済金で利益だけを得ている人がいる」という事態になってしまいます。こちらもトラブルの可能性について事前に考慮し、専門家への事前相談がおすすめです。

万が一のときのための共済金だからこそ事前準備が鍵

万が一のときのための共済金だからこそ事前準備が鍵
万が一のときのための共済金だからこそ事前準備が鍵


万が一のときのための共済金ですが、加入時に「死亡共済金を受け取るときのこと」を具体的にイメージするのは難しいかもしれません。なんとなく受取人を指定している、もしくは指定しないままにしているという方も多いのではないでしょうか。とはいえその「なんとなく」の決断が、万が一のときのトラブルにつながってしまう恐れもあります。

これから共済への加入を検討するなら、誰を受取人に指定するのか、しっかりと考えておきましょう。またすでに加入している場合は、現在の状況を確認するのがおすすめです。必要に応じて指定・変更しておけば、いざというときのトラブルも予防できるのではないでしょうか。

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大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

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