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遺産相続と財産分与の違いは?離婚する際の相続財産の扱い方

遺産相続と財産分与の違いは?離婚する際の相続財産の扱い方

遺産相続と財産分与の違いは?離婚する際の相続財産の扱い方

遺産相続について考え始めた際に、気になるのが「財産分与」との違いについてです。どちらも大切な「財産」に関わる行動ですから、適切な知識を身につけておきましょう。

今回は、知っているようで知らない遺産相続と財産分与の違いについて、離婚と遺産相続の関係性などを詳しく解説します。気になる情報をチェックしてみてください。

遺産相続と財産分与の違いとは?

遺産相続と財産分与は、似ている言葉のように思われがちですが、実際の意味は全く異なります。どちらも「財産を分け合う」という意味では共通しているのですが、言葉が使われるシーンは大きく異なっているのです。

遺産相続とは、身近な人(被相続人)が亡くなった際に、相続権を持つ人々(相続人)が財産を受け継ぐことを言います。相続人の数は、状況によって異なるもの。「配偶者と子ども(たち)」というスタイルがもっとも一般的ではあるものの、生前の家族の形によっては、被相続人の両親や、甥や姪が相続人になる可能性もあるでしょう。遺産分割協議などを経て、どのように財産を分割するのか決定されます。

一方で、財産分与とは夫婦が離婚する場面で使われる言葉です。婚姻期間には、夫婦が協力してさまざまな財産を築き上げるでしょう。いざ離婚するとなれば、これまで「共有財産」として扱ってきたものを、夫と妻それぞれで分け合わなければいけません。この「離婚する夫婦間の財産の分割」のことを、財産分与と言います。もちろん、両親や甥や姪が関わってくることはありません。

遺産相続には「遺産」という言葉が入っているため、「人が亡くなったときに行うもの」というイメージが強いのではないでしょうか。一方で財産分与に「離婚」をイメージさせる言葉は入っていないため、その意味を直観的に把握するのは困難です。

つい「父親が亡くなったので財産分与したい」といった表現をしてしまいがちですが、意味が全く通じなくなってしまうという点を、頭に入れておきましょう。

遺産相続で受け取った財産は財産分与の対象になる?

遺産相続で受け取った財産は財産分与の対象になる?

遺産相続と財産分与、それぞれの意味を正しく理解したところで、気になるのが両者の関係性についてです。遺産相続で財産を受け取ったあとに離婚が決まれば、その財産も財産分与しなければならないのか、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、遺産相続で受け取った財産は基本的に財産分与の対象にはなりません。遺産相続が婚姻中に行われた場合でも、「夫婦が共同して築き上げた財産である」とは認められないからです。

そもそも、婚姻中の夫婦の財産には、

・共有財産

・特有財産

の2種類があります。

共有財産とは、「夫婦の協力のもとで築き上げた財産である」と認められるもののこと。たとえば、婚姻中に購入した家具や不動産、夫婦が協力して貯めた貯蓄などが当てはまります。

不動産や貯蓄などは、形式上どちらか一方の名義になっているケースも多いですが、そのままどちらか一方の財産になってしまうわけではありません。退職金についても、すでに支払われている場合や近々支払われる予定のものは、共有財産として扱われます。

一方で特有財産とは、夫婦それぞれが所有する個人的な財産を指します。結婚前にそれぞれが個人で貯めたお金は、この特有財産と判断され、財産分与の対象外と判断されるでしょう。別居後に作った財産も、特有財産に含まれます。

遺産相続で受け取るお金も、夫、もしくは妻が個人で所有する財産と考えられます。実際に離婚となって財産分与する場合でも、「遺産を含めた特有財産を除いた上で、共有財産分を夫婦で分け合う」というスタイルになるでしょう。

遺産相続と財産分与の例外的措置とは?

ここまでお伝えしてきたとおり、遺産相続で得た財産は、財産分与の対象にはなりません。しかし中には、例外的なケースもあります。

遺産相続からある程度の時間が経過したあとに離婚する場合、配偶者との協力のもとで、受け継いだ遺産が形を変えていることもあるかと思います。受け継いだ財産そのものは特有財産でも、夫婦が協力して価値が増えたり、維持されていたりした場合には、財産分与の対象と判断されるケースがあるのです。

この場合に気になるのは、「いったいどのくらいが財産分与の対象になるのか?」という点でしょう。そもそも財産分与の対象になるのか、どの程度分与されるのかに、明確なルールは存在していません。配偶者の貢献度がどの程度あったのかを軸に、臨機応変に判断されます。

遺産相続後の財産分与で心配な点がある場合は、できるだけ早めに専門家に相談するのがおすすめです。財産分与の問題点やリスクを把握した上で、今後どう行動していくべきか、指針を示してもらえるでしょう。

離婚後の遺産相続はどうなる?問題が複雑化しやすい理由は?

離婚後の遺産相続はどうなる?問題が複雑化しやすい理由は?

先ほどは、遺産相続後に離婚するパターンを解説しました。では反対に、離婚してから遺産相続が発生する場合、どのような注意点があるのでしょうか。

離婚してからの遺産相続で問題が発生しやすいのは、「子どもがいる夫婦が離婚し、その後元夫婦のどちらかが亡くなる」というパターンです。この場合、元配偶者に相続権はありませんが、子どもは相続権を持つため法定相続人の一人に数えられます。

たとえば、亡くなった人が離婚後に別の家庭を築いていた場合、現在の配偶者と子どもも、当然法定相続人になります。現在の家族にとっては、「前の家族の子どもに遺産を分け与えることで、自分たちの取り分が少なくなる」という仕組みですから、揉め事に発展しやすいのも当然だと言えるでしょう。

とはいえ、法定相続人であっても、必ず遺産を受け取れるわけではありません。元配偶者が遺言書を残していて、「自身の財産の全てを新しい妻と子どもに譲る」といった内容が確認された場合、そちらの方が優先されます。元配偶者の子どもは遺留分を請求し、受け取る流れになるでしょう。

離婚後の遺産相続であっても、新しい家庭さえなければ、そこまで大きく話がこじれてしまうようなケースは珍しいかもしれません。一方で、すでに新たな家庭を築いている場合、現配偶者と元配偶者、そしてそれぞれの子どもたちが円満な関係を築けているとは限らないでしょう。むしろ、「まったく関係がない」「どちらかというと険悪」といったケースの方が多いはずです。遺産相続で揉め事が起こらないよう、しっかりと準備を整えておく必要があるでしょう。

遺産相続と財産分与、それぞれの意味を知って適切な行動を

遺産相続と財産分与は、まったく異なるシーンで使われる言葉です。どちらも大切な「財産」に関わる行動ですから、それぞれの意味を知って、その都度適切な対応を心掛けましょう。

遺産相続と財産分与が重なると、さまざまな問題へと発展してしまうケースもあります。ときには専門家の手も借りつつ、問題を事前に回避できるよう意識してみてくださいね。

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