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子供がいない夫婦の相続トラブル…配偶者を守るための事前準備とは?

子供がいない夫婦の相続トラブル…配偶者を守るための事前準備とは?

子供がいない夫婦の相続トラブル…配偶者を守るための事前準備とは?

子供がいない夫婦の場合、将来の相続トラブルをイメージするのは難しいかもしれません。「残された方がすべて受け継ぐだけ」と思っている方も多いのではないでしょうか?

しかし実際には、子供がいない夫婦にとっても、相続トラブルは他人事ではありません。その理由と、トラブルを予防するためのポイントについて解説します。ぜひ参考にしてみてください。

子供がいない夫婦にも相続トラブルが発生する理由

子供がいない夫婦にも相続トラブルが発生する理由、それは「相続順位」にあります。人が亡くなったとき、相続人になれるのは配偶者と血族相続人です。配偶者が必ず相続人になるのに対して、血族相続人は、相続順位に沿って、誰が財産を受け継ぐのかが決定されます。

血族相続人の中でも、もっとも相続順位が高いのは、被相続人の「子供」です。もしもすでに子供が亡くなっている場合、その子供、つまり被相続人にとっての「孫」が、被相続人の配偶者と共に財産を受け継ぎます。被相続人の配偶者と子供(もしくは孫)が財産を受け継ぐという、非常にシンプルな形の相続になるでしょう。

一方で、子供がいない夫婦の場合、配偶者と共に財産を受け継ぐ血族相続人は、誰になるのでしょうか?被相続人からみて「子供」の次に順位が高いのは、「親」や「祖父母」です。親や祖父母がすでに亡くなっている場合、被相続人の兄弟姉妹が血族相続人になります。

兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子供が代襲相続人になります。つまり、被相続人にとっての「甥」や「姪」が、配偶者と共に自身の財産を相続する可能性もあるということです。

たとえば夫が亡くなったときに、妻の立場で、共に築き上げた財産を受け継ぐのは当たり前だと感じる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、夫の兄弟姉妹やその子供に相続権が発生する可能性もあるのです。

相続人の数が増えれば増えるほど、妻の立場で受け取れる財産は少なくなってしまいます。これこそが、子供がいない夫婦においても、相続トラブルが発生する理由です。

特に注意が必要な2つのケース

子供がいない夫婦の相続において、特にトラブルが発生しやすいのは、以下の2つのケースです。自身に当てはまるものがないか、事前に確認しておきましょう。

★血族相続人との関係が悪い・薄い

子供がいない夫婦が直面しやすい相続トラブルの一つが、血族相続人との話し合いの遅延です。夫婦の子供が血族相続人にならない場合、亡くなった夫や妻の親や兄弟姉妹、その子供たちが血族相続人になります。もともと関係が悪い、あまり付き合いがないといった場合、相続に関する話がまとまらないリスクがあるでしょう。

たとえば夫が亡くなったとき、妻は義両親や義兄弟姉妹などと、たった一人で相続に関する話し合いを進めなくてはいけません。配偶者の立場であっても、相続に関する話し合いを、自身の要望に添って進めていけるとは限らないのです。

また、「そもそも配偶者の兄弟姉妹(もしくはその子供)と連絡を取ったことがない」というケースもあるでしょう。相続人の調査や確定も簡単ではなく、時間ばかりが過ぎてしまう可能性もあります。

★相続する財産に「不動産」が含まれている

相続財産に家や土地が含まれている場合も、トラブルになりやすいため注意してください。なぜなら不動産は、現金と違ってきっちり分けられないから。揉め事の原因になるケースも多くみられます。

たとえば、夫名義のマイホームで妻と一緒に暮らしていた場合で考えてみましょう。夫が亡くなれば、マイホームは相続財産の一部になります。遺産分割協議の内容によっては、妻は慣れ親しんだ家を処分しなければならない可能性もあるのです。

マイホームを売却して現金化し、配偶者と血族相続人で分け合うのがもっともシンプルな方法ですが、妻は住む家を失うことになるでしょう。

マイホームの価値を計算し、血族相続人が受け取るべき分の財産を、妻が現金で支払う方法もありますが、妻の負担は重くなります。不動産の価値が高ければ、「現金を用意できず、結局マイホームを手放さざるを得なかった…」という事態も起こり得るでしょう。

配偶者の生活を守るためにも、事前にしっかりと対策をしておくことが大切です。

配偶者にすべての財産を残すためにはどうすればいい?

子供がいない夫婦の場合、「子供がいないからこそ、自身の死後の生活に、不安を残したくない」と感じる方も多いでしょう。できるだけ多くの財産を配偶者に残すため、具体的にはどのような対策を採れば良いのでしょうか?

3つの方法を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

★遺言書を残す

★遺言書を残す

配偶者にできるだけ多くの財産を残したい場合に、ぜひ活用したいのが遺言書です。正式な手続きを踏んで、法的に有効な遺言書を残しておけば、自身の意志に沿った方法で、財産を相続させられるでしょう。

たとえば、「配偶者に全財産を相続させる」という遺言を残しておけば、その内容に沿って相続が行われます。血族相続人から遺留分を請求される可能性もありますが、普通に相続させるよりも、多くの財産を配偶者に渡せます。

また遺留分を請求する権利を持つのは、被相続人の父母や祖父母のみ。遺留分の請求権を持たない兄弟姉妹(もしくはその子供)が血族相続人になった場合、配偶者がすべての財産を相続できます。

遺言書を作成する場合、以下の2点に注意しましょう。

・ありとあらゆる事態を想定して内容を決定すること

・専門家のサポートを受けること

せっかく遺言書を作成していても、それが有効と認められなければ意味がありません。遺言に強い専門家に、依頼してみてください。

★生前贈与を検討する

★生前贈与を検討する

相続対象になる遺産とは、亡くなった人が保有していた財産のこと。亡くなる前に、配偶者に対して贈与しておけば、相続財産には含まれません。当然、血族相続人との間でトラブルになる恐れもなくなるでしょう。

こちらは特に「マイホームを配偶者に残したい」という場合に有効な対策です。結婚してから20年以上が経過していれば、贈与税の配偶者控除の適用が可能に。夫婦間で居住用の不動産を贈与する場合、最高2,000万円までの贈与税控除を受けられます。

★生命保険に入る

万が一のときのための生命保険も、子供がいない夫婦の相続対策に有効な方法です。

受取人を配偶者にしておけば、配偶者が受け取る保険金は、「遺産」として扱われることはありません。

つまり、配偶者のために一定の現金を確保しつつ、その他の相続財産を血族相続人と分け合うスタイルになります。

相続トラブル回避に有効な「公正証書遺言」

先ほどお伝えしたとおり、子供がいない夫婦の相続トラブル回避のためには、法的に有効な遺言書を残すことが有効です。この場合、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を検討してみてください。

自分一人で自由に残せる自筆証書遺言とは違い、公正証書遺言は公証役場で公証人と証人に立ち会ってもらって作成する遺言形式です。手間もコストもかかりますが、専門家の手で確実に遺言書として残してもらえるため、自身の死後にトラブルが起きにくいというメリットがあります。

「公正証書遺言を残した」という事実は、配偶者にも事前にしっかりと伝えておきましょう。

有効な対策を組み合わせるのもおすすめ

子供がいない夫婦にも、相続トラブルは発生します。むしろ子供がいない分、血族相続人に関して、トラブルを抱え込む可能性も高いという点を頭に入れておきましょう。

今回は、相続対策として3つの方法を紹介しましたが、複数を組み合わせるのもおすすめです。自身の財産を把握し、配偶者との間で話し合いを進めていくところからスタートしてみてくださいね。

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