遺産相続をもっと楽に!「法定相続情報証明制度」を紹介

投稿 更新
Category:
遺産

contents section

遺産相続をもっと楽に!「法定相続情報証明制度」を紹介
シェアボタン
この記事は約10分で読めます。

遺産相続の手続きを進めていくうえで、「書類の提出が大変」と悩む方は少なくありません。相続手続きの負担を軽減するためには、ぜひ「法定相続情報証明制度」を活用してみてください。

具体的にどういった制度でどのような場面で使えるのか、わかりやすく解説します。制度を利用する場合のデメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

法定相続情報証明制度とは?

法定相続情報証明制度とは?
法定相続情報証明制度とは?

法定相続情報証明制度は、2017年からスタートした新しい制度です。これまでは、各種相続手続きを行うたびに、⼾籍謄本の束を提出する必要がありました。亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本となると、大量になってしまうケースも少なくありません。相続人と手続きをする部署、双方の負担を削減するために、「法定相続情報⼀覧図の写し」が交付されるようになったのです。

戸籍謄本等と相続関係の一覧図を法務局に提出すると、それをもとに登記官が一覧図に認証文を付した写しを交付してくれます。これまで「戸籍謄本の束」を持ち歩かなくてはならなかったのが、一覧図の写しのみで事足りるように。また法定相続情報証明は必要に応じて何枚でも交付してもらえるため、複数の手続きを同時に進めていくことも可能です。

これまでは「銀行Aで手続きをしたのちに、書類の返却を待って銀行Bの手続きに進む」といった手順が必要でした。法定相続情報証明制度を利用すれば、不動産の相続登記や銀行口座の解約、相続税の申告など、さまざまな相続手続きをスムーズに進めていけるでしょう。このほかにも、保険金の請求や保険の名義変更手続き、有価証券や自動車関連の名義手続きにも利用できる可能性があります。

相続財産に複数の不動産が含まれている場合や、財産の種類が多い場合でも、相続人の手間は最小限にできます。現役世代の方が相続人として各種手続きを進めていく場合、「銀行に行くために何度も仕事を休まなくてはならない」といった事態にもなりかねません。法定相続情報証明制度を使って複数の手続きを一度に進めれば、仕事を休んで動く時間も最小限にできるのではないでしょうか。

法定相続情報証明制度の利用方法は?

では法定相続情報証明制度は、どのように利用すれば良いのでしょうか。具体的な手順は、以下を参考にしてみてください。

制度を利用するためには、まず市役所などで以下の書類を収集します。

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・住民票(除票)の写し
・相続人の戸籍謄本
・住民票の写し
・法定相続情報一覧図の保管の申出書

相続人と被相続人の情報をもとに、法定相続情報一覧図を作成。申出書には、申出人の住所・氏名・連絡先のほか、被相続人との続柄や利用目的、必要な通数といった情報を記載します。申し出の日付も忘れずに記入しておきましょう。

必要な書類を準備したら、法務局で手続きします。以下のいずれかの条件を満たしている法務局で、手続きしてください。

・被相続人の本籍地を管轄する法務局
・被相続人の最後の住所地を管轄する法務局
・申出人の住所地を管轄する法務局
・被相続人名義の不動産の所在地を管轄する法務局

基本的には、被相続人もしくは申出人に関連する法務局ですから、間違わないようにしましょう。法務局に提出した書類は、登記官が確認したうえで返却されます。内容に誤りがないことが確認されたら、法定相続情報証明が交付されます。

法定相続情報証明交付の申し出は、法定相続人もしくは代理人が行います。自分で手続きしたり、必要書類を作成したりする余裕がない場合は専門家に依頼することも可能。 弁護⼠や司法書⼠、税理士や行政書士のほか、⼟地家屋調査⼠や社会保険労務⼠、弁理士などに依頼できる可能性があるので、ぜひ身近な場所で探してみてください。戸籍謄本等の取得から書類提出までワンストップで対応してくれる専門家に依頼すれば、ほとんど手間もかからないでしょう。

法定相続情報証明制度のデメリットとは?

法定相続情報証明制度のデメリットとは?
法定相続情報証明制度のデメリットとは?

遺産相続の手間を省くためにスタートした法定相続情報証明制度。積極的に活用したいところですが、実際にはデメリットもあります。利用を検討する場合は、ぜひこちらもチェックしてみてください。

★ 法定相続情報一覧図を作成しなければならない

法定相続情報証明制度を利用するためには、申し出時に法定相続情報一覧図を作成しなければいけません。こちらは基本的に、申出人が自分で作成するもの。決まったルールに則って、正確に作成するよう求められます。それなりの手間がかかってしまうでしょう。

専門家に依頼すれば一覧図作成もお任せできますが、専門家報酬が発生します。手間やコストが増えてしまう点が、一つ目のデメリットだと言えます。

★実際に相続手続きをスタートできるまでに時間がかかる

法定相続情報証明の写しは、申し出後にその場ですぐに発行されるわけではありません。申し出から1~2週間後に受け取ることになるでしょう。

必要書類を受け取ることさえできれば、その後の相続手続きはスムーズに進めていけます。一方で、手続きをスタートできるまでに相応の時間がかかるという点もデメリットです。

★「手続き不可」と判断されるケースもある

遺産相続の手続きは、多岐にわたります。法定相続情報証明書の発行を受けても、手続きのすべてで利用できるとは限らないでしょう。手続き場所によっては、やはり従来通りの手続きを求められる可能性も。苦労して一覧図を作成して証明書を受け取ったとしても、二度手間になってしまうかもしれません。

法定相続情報証明制度は、相続手続きの数が多い人ほどメリットが大きい制度と言えます。利用料は無料ですし、誰でも手軽に利用できるとはいえ、「自分にとってはメリットとデメリットのどちらが大きいのか?」を冷静に判断する必要があるでしょう。行わなければならない手続きの数が限られている場合、「あえて利用しない」と考えるのも賢い選択です。手続き数が3~4つを超える場合は、十分なメリットを期待できるでしょう。

遺産相続では法定相続情報証明制度の活用も視野に

子育てがひと段落した時期は、自身の終活について考え始める時期。またそれとともに、自分自身が「相続人」の立場で動く場面も増えてくる時期でもあります。相続手続きを少しでも楽にするため、法定相続情報証明制度の活用も視野に入れてみてください。

「制度を利用するべきかどうかさえ悩む…」という場合には、その点も含めて、一度専門家に相談してみるのもおすすめです。今後行うべき手続きの内容についても、第三者の視点で明確なアドバイスをもらえるのではないでしょうか。

Category:
遺産
シェアボタン

この記事を書いた人

writer

profile img

大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

related post

関連記事

  • 厚生年金が財産分与の対象になるって本当?離婚時の基礎知識

    厚生年金が財産分与の対象になるって本当?

    老後の生活を支えてくれる厚生年金。自身の将来を考える上で、非常に重要な年金だからこそ、実際に年金を受け取る前から正しい知識を身につけておくことが大切です。今回は、夫婦が離婚した場合の厚生年金の扱い方について解説します。「離婚したら厚生年金も財産分与の対象になると聞いたけれど…本当なのか?」といった疑問を、すっきり解消していきましょう。 厚生年金そのものは財産分与の対象にならない! 厚

  • 不動産相続の基礎知識|相続財産の評価方法を学ぼう

    不動産相続の基礎知識|相続財産の評価方法

    不動産を相続する際に、気になるのが相続税についてです。実際に相続税が発生するかどうかは、相続対象の不動産の評価額によって決定されます。とはいえ、不動産の評価額をどのように決めれば良いのか、悩む方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、不動産相続の基本として、評価方法の種類や特徴を解説します。ぜひ参考にしてみてください。 不動産を評価するための方法とは? 不動産を評価するための方法

  • 遺産相続のトラブルを回避しよう!受取人同士で揉めるポイントを解説

    遺産相続のトラブルを回避しよう!受取人同

    遺産相続には、トラブルも付き物です。ほとんどの人は「できれば円満に手続きを終えたい…」と思っているでしょうが、遺産の受取人同士ですれ違いが生じてしまうケースも決して少なくありません。 遺産相続のトラブルを回避するためには、受取人同士が揉めるポイントを知り、あらかじめ準備を進めておくのがおすすめです。特に揉めやすいポイントと、「争族」を避けるためのコツを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてく

  • 学資保険への加入…受取人は誰にするべき?損しないために税金知識を身につけよう

    学資保険への加入…受取人は誰にするべき?

    子どもの将来の進学に備えて加入するのが「学資保険」です。実際に加入する際には、「受取人を誰に指定するべきか?」という点で悩む方も多いのではないでしょうか。 学資保険の受取人には、各種「税金」が関わってきます。基本的な知識を身につけた上で、誰を受取人にするのか検討してみてください。 学資保険の「契約者」「被保険者」「受取人」とは? 学資保険の「契約者」「被保険者」「受取人」とは?

  • 相続人以外が遺言で財産を受け取った場合の税金は?注意点も解説

    相続人以外が遺言で財産を受け取った場合の

    自身の遺産を誰に相続させるのかを考えたとき、「相続人以外を指定したい」と思うこともあるのではないでしょうか。この場合、注意しなければならないのが税金についてです。遺言で相続人以外に財産を受け継がせる方法や、その場合の税金について、注意点を踏まえて解説します。 遺言書で指定すれば「遺贈」が可能に 人が亡くなった際に、その財産は法定相続人が受け継ぎます。法定相続人には、配偶者や子どものほ

  • 終活は何歳から始める?前向きな気持ちでできる進め方と注意点について

    終活は何歳から始める?前向きな気持ちでで

    終活は何歳から始める?前向きな気持ちでできる進め方と注意点について 誰にも必ず訪れる、人生最後の日。穏やかにその日を迎えるため、最近では多くの方が「終活」を行うようになりました。しかし、終活で取り組んでおきたい事柄は多岐に渡り、一朝一夕でできるものばかりではありません。 そこでこの記事では、終活を始めるのにメリットのある年齢や、終活でしておくべきことについてご説明します。残されたご家族

コトダマのバナー