「小規模企業共済」とは?受け取り方法やタイミング・注意点など

投稿 更新
Category:
家族

contents section

「小規模企業共済」とは?受け取り方法やタイミング・注意点など
シェアボタン
この記事は約10分で読めます。

小規模企業共済法に基づいて運用される「小規模企業共済」は、自営業者や経営者等にとっての「退職金制度」のようなものとして認知されています。具体的にどういった制度で、どういったメリット・デメリットがあるのでしょうか。
受け取り方法やおすすめのタイミング、あらかじめ知っておきたい注意点などをわかりやすくまとめます。

小規模企業共済とは?メリット・デメリットを解説

サラリーマンとして会社に勤める人の多くは、勤め先を辞める際に「退職金」を手にします。ある程度まとまった金額の退職金は、その後の生活を支える金銭的な要と言えるでしょう。

しかし退職金とは、誰もが当たり前にもらえるお金ではありません。自営業として仕事をしている人や、自分自身で会社を経営している人、退職金制度を運営するのが難しい小規模企業に勤めている人にとって、退職時にある程度まとまった金額を手にするのは、決して簡単なことではないのです。

こうした人々の退職後の生活を支えるため、用意されているのが小規模企業共済制度です。運営元は国の機関である中小機構。加入者それぞれが掛け金を積み立てていくことで、廃業時や退職時にまとまった金額を受け取れる仕組みになっています。

掛け金の月額は、1,000円から7万円までの範囲内であれば、500円単位で自由に設定可能です。支払った掛け金は、全額所得控除の対象にできる点も、非常に大きなメリットと言えるでしょう。たとえば、毎月最高額の7万円ずつ積み立てた場合、1年間で84万円の所得控除を受けられます。また掛け金は、加入後に自由に増減可能なため、経営状況に沿った運用が可能です。

一方で小規模企業共済にもデメリットはあります。掛け金納付月数が12カ月に満たない場合、共済金等が一部受け取り不可能と判断される可能性も。また加入年数が20年未満の場合、受け取る金額が掛け金の合計額を下回る、いわゆる「元本割れ」の状態になってしまいます。加入状況によっては、かえって損をする可能性もあるという点を、頭に入れておきましょう。

小規模企業共済の受け取り方法とタイミング

小規模企業共済の受け取り方法とタイミング
小規模企業共済の受け取り方法とタイミング

小規模企業共済では、受け取り方法を自分自身で決定できます。具体的には、

・一括
・分割
・一括と分割の併用

の3つの種類から選択することになるでしょう。選択した受け取り方法によって、課税方式が変わってくるので注意してください。

小規模企業共済を一括で受け取る場合、受け取ったお金は「退職所得」として扱われます。退職所得には、勤続年数に応じた退職所得控除額が定められており、勤続年数20年以下であれば「40万円×勤続年数」が控除。一方で、勤続20年以上の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」が控除される仕組みです。小規模企業共済で受け取った金額から退職所得控除額を引き、さらにそれを2分の1にすると、課税退職所得金額が求められます。ここに所得税率を掛け合わせ、控除額を引いたら、実際の納税額を求められるでしょう。

一方で、小規模企業共済を分割で受け取る場合、受け取るお金は「公的年金等の雑所得」として扱われます。そのほかの公的年金と合わせて各種控除を行い、控除しきれなかった分に対して、課税される仕組みです。一括と分割を併用する場合については、一括受け取り分については「退職所得」として、分割受け取り分については「公的年金等の雑所得」として扱われます。

ちなみに、小規模企業共済に「満期」や「満額」といった概念は存在しません。

・個人事業を廃止した
・経営する株式会社を解散した
・小規模企業共済に加入する企業の役員を退職した

このようなタイミングで共済を解約し、解約手当金を受け取る制度です。解約タイミングによって、受け取る金額が変わってくる点に注意しましょう。

現在受け取れる共済金(解約手当金)がいくらになるのかは、中小機構の「定型書類の自動発送サービス」にてチェックできます。「042-567-3308」に電話して共済契約者番号を入力し、「共済金等試算表」の書類番号である「998」を指定しましょう。約1週間でシミュレーション結果が自宅に届きます。

小規模企業共済の受け取り方法は?

小規模企業共済の共済金を受け取るためには、以下の手続きが必要となります。個人事業を廃業した場合の手続きの流れを解説します。

★1.書類を用意する

小規模企業共済の共済金を受け取るためには、必要書類を準備した上で、決められた手続きを取る必要があります。まずは以下の書類を準備しましょう。

・個人事業の廃業届
・印鑑登録証明書
・マイナンバー確認書類
・共済金等請求書
・退職所得申告書
・共済契約締結証書

個人事業の廃業届は、税務署に届け出た際の書類のコピーを用意してください。廃業年月日が明確に記載されていること、また税務署の受付印が押されていることが条件となります。印鑑登録証明書は、コピーではなく原本を。3ヶ月以内に発行されたものが必要です。

共済金等請求書や退職所得申告書については、中小機構ホームページよりダウンロード可能です。共済契約締結証書は契約時に発行される書類ですが、紛失した場合は中小機構から発行された、共済契約者番号を確認できる書類で代用可能です。

★2.必要書類に記入し提出する

必要書類を用意したら、自身の情報を記入していきましょう。記入が求められるのは共済金等請求書と退職所得申告書ですが、どちらもホームページに記入例が公開されています。ぜひ参考にしてみてください。

必要書類が揃ったら、中小機構の窓口へと送付しましょう。共済金等請求書には、事前に受取口座のある金融機関で確認印を押してもらう必要がある点にだけ、注意してください。

★3.審査と受け取り

中小機構の窓口に書類が到着したら、申請内容に対して審査が行われます。申請内容に不備や問題がないことが確認されれば、指定口座へと共済金が振り込まれます。申請から受け取りまでは、約3週間を見ておきましょう。

受け取り方法までイメージして小規模企業共済の活用を

受け取り方法までイメージして小規模企業共済の活用を
受け取り方法までイメージして小規模企業共済の活用を

自営業として仕事をしている人や、中小企業を経営している人にとって、小規模企業共済は非常に助かる制度です。ぜひ受け取り方法までしっかりとイメージして、活用を検討してみてください。

ここまで解説してきたとおり、小規模企業共済という制度にはメリットもあればデメリットもあります。自分にとってはどちらの方が大きくなりそうか、事前に確認しておくと良いでしょう。気になる点があれば、まずは中小機構の共済相談室を利用してみるのもおすすめですよ。不安を解消し、自身の老後のために何ができるのか、より具体的に検討できるのではないでしょうか。

Category:
家族
シェアボタン

この記事を書いた人

writer

profile img

大嶋 晃

司法書士 プロフィール 福島県白河市生まれ。 旅行会社勤務の後、2012年司法書士試験合格、2014年に独立開業。 東京司法書士会千代田支部所属。 身近な街の法律家として親切丁寧な対応を心掛け、幅広い相続案件に取り組む。 不動産名義変更相談窓口「https://www.meigihenkou-soudan.jp/

related post

関連記事

  • 相続人以外が遺言で財産を受け取った場合の税金は?注意点も解説

    相続人以外が遺言で財産を受け取った場合の

    自身の遺産を誰に相続させるのかを考えたとき、「相続人以外を指定したい」と思うこともあるのではないでしょうか。この場合、注意しなければならないのが税金についてです。遺言で相続人以外に財産を受け継がせる方法や、その場合の税金について、注意点を踏まえて解説します。 遺言書で指定すれば「遺贈」が可能に 人が亡くなった際に、その財産は法定相続人が受け継ぎます。法定相続人には、配偶者や子どものほ

  • 預貯金の相続はどう行うべき?手続きや分割の注意点を知ろう

    預貯金の相続はどう行うべき?手続きや分割

    遺産相続で、比較的わかりやすいと言われているのが預貯金の相続です。とはいえ、いざ相続がスタートすると、何をどう手続きすれば良いのか悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、預貯金の相続をどのように行えば良いのか、わかりやすく解説します。注意点を踏まえて、滞りなく相続手続きを進めていきましょう。 預貯金の相続とは? 預貯金の相続とは、亡くなった人が保有していた預貯金を、

  • 相続に強い税理士の選び方を解説!ポイントを知って失敗を防ごう

    相続に強い税理士の選び方を解説!ポイント

    相続税が発生する場合、申告から納税までの手続きをより確実に進めていくため、税理士に依頼するのがおすすめです。とはいえ、依頼先の税理士事務所をどう選ぶべきか、悩む方も多いのではないでしょうか?今回は相続に強い税理士の選び方について解説します。4つのポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 1.相続に強い税理士である 1.相続に強い税理士である 相続税の申告や納税のサポ

  • 大切な人への最後の贈り物―葬式と遺産相続の準備

    大切な人への最後の贈り物―葬式と遺産相続

    葬式と遺産相続は大切な人への最後の贈り物です。遺族にとっては心の整理が必要な時期でもありますが、準備を進めることで愛する人への感謝と敬意を示すことができます。本記事では、心に残る葬式の演出と遺産相続のポイントについて解説します。大切な人への思いを込めた最後のお別れをするために、葬式と遺産相続の準備を始めましょう。 1: 心に残る葬式の演出 心に残る葬式の演出について見ていきましょう。

  • 遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!

    子育てがひと段落すると、自分たちの老後について漠然とした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。遺産に関する不安も、その中の一つです。「将来のトラブルリスクを回避するため、具体的な対策をスタートしたい」と思いつつ、まず何からすれば良いのかわからない…と悩む方も少なくありません。法律に関連するお悩みの相談先として有名なのが「法テラス」ですが、遺産についても相談できるのでしょうか?法テラスでできる

  • 遺産に関する資料はどう収集すれば良いの?開示してもらえない場合の対処法も

    遺産に関する資料はどう収集すれば良いの?

    遺産相続手続きを適切に進めていくために、欠かせないのが情報収集です。遺産にまつわるさまざまな資料を集め、遺産分割協議を行い、実際に手続きを行っていく必要があるでしょう。 とはいえ、初めて資料を収集する際には、具体的に何をどうすれば良いのか戸惑う方も多いのではないでしょうか。遺産に関する資料を開示してもらえない場合の対処法も解説します。 遺産に関する情報収集は「自分で」が基本 被

コトダマのバナー