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  • 遺言書情報証明書とは?取得方法や使い方を解説

    遺言書情報証明書とは?取得方法や使い方を解説

    「将来のために遺言を残したい」と思ったら、まずは遺言書に関連する基礎知識を身につけましょう。今回は遺言書情報証明書について解説します。具体的な内容や、活用方法・取得方法を紹介。後々のトラブルリスクを避けるためにも、ぜひチェックしてみてください。 自筆証書遺言書保管制度とは? 自筆証書遺言書保管制度とは? 遺言書情報証明書は、「自筆証書遺言書保管制度」に関連する証明書です。令和2年7月よりスタートした新しい制度で、自筆証書遺言書に関するトラブルを予防する目的で設立されました。 遺言形式には、以下の3つが存在しています。 ・自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言 この中で、もっとも手軽に残せるのが自筆証書遺言です。いくつかの条件を満たす必要があるものの、自筆証書遺言は「自分だけの力でいつでも好きな場所で作成できる遺言書形式」です。終活ブームの今、指南書をもとに自力で自筆証書遺言を残そうとする方も多いのではないでしょうか。 しかし自筆証書遺言には、自力作成できるからこそのデメリットも。具体的には、以下のようなポイントが挙げられるでしょう。 ・自宅で保管している最中に紛失してしまう・自宅で保管中に内容を改ざんされてしまう・自身が亡くなったあとに、遺言書を発見してもらえない・最初から最後まで専門家の目に触れないことで、法的な要件を満たせていない どれも遺言書の役割を果たさない、非常に重大なトラブルだと言えます。 自筆証書遺言書保管制度は、自力で作成した遺言書を法務局で保管。これらのトラブルを予防できます。自宅ではない場所で保管すれば、改ざん・紛失リスクはありません。遺言内容に不満を持つ親族の手で、勝手に処分されてしまうような恐れもないでしょう。 また保管時には、専門家による外形的なチェックを受けられます。遺言内容に関するアドバイスは受けられないものの、作成した自筆証書遺言書が法的に有効な形で整えられているかどうか、確認してもらえます。自筆証書遺言を残すのであれば、ぜひ積極的に利用したい制度と言えるでしょう。 遺言書情報証明書とは? 遺言書情報証明書とは、自筆証書遺言書保管制度によって保管された遺言書の情報を、証明するための書類です。遺言を残した人が亡くなったあと、相続人がその内容を確認するために請求します。 遺言書情報証明書に記されるのは、以下のような情報です。 ・遺言者の氏名・出生年月日・住所よび本籍・遺言書の作成年月日・保管開始日・遺言書が保管されている保管所の名称・遺言書の保管番号・遺言書の画像情報 遺言書情報証明書には、法務局で保管されている遺言書の内容を画像データとして記載されています。証明書を取得すれば、亡くなった人がどのような内容の遺言を残していたのか確認できるでしょう。 遺言書情報証明書は、各種相続手続きを進めるために使います。遺言書と言えば「原本を持って手続きを進める」と思いがちですが、自筆証書遺言書保管制度を活用した場合は異なります。保管制度を利用した場合、遺言書の原本が相続人の手元に返却されることはありません。よって、その後のすべての手続きを遺言書情報証明書で進めていくのです。その効力は遺言書原本と変わりないため、安心してください。 保管制度を活用した場合、自筆証書遺言書であっても、裁判所による検認手続きは必要ありません。相続スタート後に遺言書情報証明書を取得すれば、そのままスムーズに相続手続きを進めていけます。 遺言書情報証明書の取得方法は? 遺言書情報証明書の取得方法は? 遺言書情報証明書は、取得したい人からの申し出によって交付されます。取得を希望できるのは、以下の条件に当てはまる方々です。 ・相続人・受遺者・遺言執行者・相続人や受遺者の親権者や成年後見等の法定代理人 遺言者情報証明書は、誰にでも自由に公開されるわけではありません。あくまでも、遺言書の内容に関わる人のみに取得が認められています。取得までの具体的な流れは、以下を参考にしてみてください。 1.交付請求場所を選択する2.遺言書情報証明書の交付請求書を作成する3.必要書類を揃える4.交付請求場所にて予約をとり、交付請求を行う5.証明書を受け取る 遺言書情報証明書は、遺言書そのものではなく画像データとして交付されます。このため、実際に遺言書が保管されている保管所以外からでも請求が可能。日本全国どこからでも、自分の都合の良い場所から該当データを取得できます。 交付請求書は、最寄りの法務局窓口のほか、ウェブサイトからのダウンロードも可能です。必要事項を記入し、書類を作成してください。交付請求書とともに必要になるのは、以下のような書類です。 ・遺言者の戸籍謄本(出生から死亡までの連続するもの)・相続人の戸籍謄本(全員分)・相続人の3ヶ月以内に発行された住民票(全員分) このほか、受遺者や遺言執行者が証明書の請求手続きをする場合には、請求する人の住民票が必要です。併せて準備しておきましょう。 遺言書情報証明書の請求手続きは、郵送もしくは直接出向いて行います。遺言書保管所にて手続きする場合、事前予約が必須です。予約がないまま訪れても対応してもらえないため、注意してください。手続きそのものは即日処理されますが、ある程度の時間がかかるもの。できるだけ待ち時間が発生しないよう、事前予約制度が導入されています。予約は専用ホームページもしくは電話、窓口にて行えます。 予約は、請求手続きを行う本人の手で行わなくてはいけません。また予約できる期間は30日先までです。当日予約はできないため、注意してください。 遺言書情報証明書は、相続人それぞれが必要とするケースも多いでしょう。たとえば、共に相続人となっている兄弟姉妹がそれぞれで遺言書情報証明書を必要とする場合、予約はそれぞれでとる必要があります。請求者1人につき1件の予約をするようにしてください。 手続きする際には、請求者の本人確認のため、顔写真付きの官公署から発行された身分証明書が必要です。発行手数料は、証明書1通につき1,400円。こちらも忘れずに準備しておきましょう。 郵送で手続きする場合、必要書類と返信用封筒をセットにして、遺言書保管所に送付すればOKです。発行手数料は収入印紙で納付してください。 遺言書情報証明書を知り将来のために活用を 遺言書情報証明書は、自筆証書遺言書保管制度と深く関わる書類です。その意味や取得方法をあらかじめ知っておくことで、将来の終活や相続手続きにも役立つでしょう。自筆証書遺言書保管制度は、遺言書をより確実に残すために有効な制度です。遺言書に関連する知識を深め、ぜひ活用してみてください。

  • 公正証書遺言作成に必要な書類・資料とは?取得方法もあわせて紹介!

    公正証書遺言作成に必要な書類・資料とは?取得方法もあわせて紹介!

    自筆証書遺言よりも、確実性が高い公正証書遺言。最近では、「遺言書が原因でトラブルにならないように」との思いから、公正証書遺言を選択する方も増えてきています。とはいえ、公正証書遺言を作成するためには、さまざまな書類・資料を用意しなければいけません。具体的にどういった資料が必要になるのか、収拾方法とともに紹介します。 公正証書遺言とは? まずは公正証書遺言の基本についておさらいしておきましょう。 公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言形式のこと。遺言を残したい人は、2名の証人を前に、公証人に対して遺言内容を言葉で伝えます。その内容を確認した公証人が、「遺言書」という体裁に整えて保管。自筆証書遺言とは違い、遺言書の作成を専門家にお任せできるため、法的ミスが発生しないというメリットがあります。 自筆証書遺言を自宅で保管する場合、「家族である相続人が手続き開始前に発見し、改ざん・破棄する」といったトラブルも考えられるでしょう。公正証書遺言であれば、このようなリスクはないのです。自身の遺言をより確実に管理できるでしょう。いざ相続手続きをスタートする際にも、家庭裁判所による検認は必要ありません。メリットも多い遺言方式と言えます。 公正証書遺言を残すのに必要な資料とは? 公正証書遺言を残すのに必要な資料とは? 一方で、公正証書遺言にもデメリットはあります。その一つが、「遺言を残すためにさまざまな資料をそろえ、公証役場に提出しなければならない」という点です。求められる資料は、以下のとおりです。 ★1.本人に関する書類や資料 公正証書遺言を残すためには、本人であることを示すための資料が必要です。具体的には、以下のようなものを準備してください。 ・遺言を残す人の印鑑登録証明書もしくは所定の本人確認書類・遺言を残す人の実印・遺言を残す人の戸籍謄本 印鑑登録証明書を使用する場合、発効後3カ月以内のものを準備しましょう。その他の身分証明書を本人確認書類として使う場合、官公庁発行の顔写真付きのものを選択してください。運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどが当てはまります。戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で発行できます。役場に出向けばその場で発行してもらえますし、遠方の場合は郵送での請求も可能。こちらも発行後3カ月以内の書類が必要です。 ★2.財産を受け継ぐ人に関する資料 次に準備したいのは、財産を受け継ぐ人の情報を示すための資料です。法定相続人に財産を相続させたい場合と、法定相続人以外に譲りたい場合で用意する書類が異なるので、注意しましょう。 法定相続人に相続させたい場合に必要になるのは、「遺言者本人と相続人の関係がわかる戸籍謄本」です。発行から3カ月以内という条件があります。法定相続人の場合、遺言を残す人の戸籍謄本に、その人との関係が記されているケースも多いでしょう。この場合、法定相続人分の戸籍謄本をわざわざ準備する必要はありません。 一方で法定相続人以外を指名して財産を渡したい場合、財産を受け継ぐ人(受贈者)の住所・氏名・生年月日がわかる書類を用意しましょう。発行から3カ月以内の住民票を用意するのが一番ですが、保険証のコピー等でも対応可能。これらの書類が準備できない場合でも、必要な情報をまとめたメモ書き等で対応してもらえる可能性があります。公証役場にて相談するのがおすすめです。 ★3.相続財産に含まれる不動産に関する資料 相続財産に不動産が含まれる場合、その情報が記された資料が必要です。 ・登記事項証明書・固定資産税評価証明書 登記事項証明書には、不動産に関する詳細情報が記載されています。不動産がある場所の法務局にて請求しましょう。窓口で直接請求するほか、オンラインでの請求も可能。発行された書類は、自宅に郵送してもらえます。 固定資産税評価証明書は、遺言公正証書の作成手数料を計算するために使われます。不動産のある市税事務所や市区町村役場にて取得できますが、毎年発行される納税通知書の課税明細書でも代用可能です。 ★4.相続財産に含まれる有価証券や預貯金に関する資料 相続財産に有価証券や預貯金が含まれる場合は、以下の資料を準備しましょう。 ・通帳のコピー・取引状況報告書のコピー これらの情報は、種別や金額をまとめた資料でも代用できます。また財産を明示せずに遺言を残す場合も、公正証書遺言の作成手数料を計算するために必要です。概算で構いませんので準備しておきましょう。 ★5.証人に関する資料 公正証書遺言を残すためには、証人を2人用意する必要があります。証人が決まったら、以下の資料を準備してください。 ・証人予定者の氏名・住所・生年月日・職業を記したメモ・印鑑(認印可) 遺言作成当日には、証人2人の身分証明書を持参してもらいましょう。自動車運転免許証や保険証などが認められています。証人を2人用意できない場合は、公証役場で手数料を払い、準備してもらえます。この場合、自分で資料を用意する必要はありません。 すべての書類をそろえるのに必要な手数料は、数百円から数千円程度です。それほど大きな負担にはならないため、安心してください。 公正証書遺言作成には手数料が必要 公正証書遺言を作成するためには、各種書類だけではなく、手数料も用意しなければいけません。手数料の金額は相続財産の総額によって違ってきますが、2万円~5万円程度になるケースが多いようです。公証役場で証人を用意してもらう場合は、この費用にプラスして、証人用の手数料を支払う必要があります。 ちなみに、自筆証書遺言の作成には手数料は発生しません。作成した遺言を法務局で保管してもらう場合のみ、相応の手数料が発生するものの、自宅で保管するなら「紙代とインク代」程度で遺言を作成できるでしょう。 とはいえ、遺言書としての効果をより確実に持たせたいのであれば、手数料を支払ってでも公正証書遺言を選択するのがおすすめです。各種書類とともに、事前に用意しておきましょう。 公正証書遺言作成に必要な資料を知って準備しよう 公正証書遺言作成に必要な資料を知って準備しよう 公正証書遺言を作成するためには、さまざまな資料を用意する必要があります。自筆証書遺言と比較すると手間がかかるものの、より確実に遺言を残したいなら、積極的に検討してみてください。法的な知識が少ない方、初めて遺言を残す方にもおすすめです。 自分の場合どのような資料が必要になるのかは、公証役場でも説明してもらえます。自分が考えている遺言内容に基づいて、まずは相談してみましょう。その上で、できるだけ早く必要な書類・資料を集めてみてください。スムーズに手続きを進めていけるのではないでしょうか。

  • 兄弟姉妹は相続にどう関連する?遺言書を残すメリットを知ろう

    兄弟姉妹は相続にどう関連する?遺言書を残すメリットを知ろう

    終活の一環として、考えておきたいのが「相続」についてです。「どうせ大した財産はないから…」と油断していると、思わぬ親族間トラブルに発展する可能性も。特に「被相続人の兄弟姉妹」について、相続とどう関連するのか知っておきましょう。相続に関する兄弟姉妹の基礎知識と、遺言書の内容や作成するメリットについてまとめます。 相続に兄弟姉妹が関わるケースとは? 相続に兄弟姉妹が関わるケースとは? 相続トラブルを回避するため、まず頭に入れておきたいのが法定相続人の範囲についてです。法定相続人とは、民法で定められた「被相続人の財産を受け継ぐ権利を持っている人」のこと。一定範囲内の血族のうち、優先順位の高い人から法定相続人になれる仕組みです。 「自分が亡くなったあと財産を受け継ぐ人」と言えば、自身の配偶者や子どもをイメージする方も多いのではないでしょうか?しかし法定相続人になる可能性がある人は、それだけではありません。状況によっては、自身の兄弟姉妹、そしてその子どもたちが法定相続人になる可能性もあるのです。 相続が発生した際に、必ず相続人になるのが「被相続人の配偶者」です。一方で、それ以外の血族は、以下の順位に基づいて相続人になるかどうかが判断されます。 第1順位 被相続人の子ども(もしくは代襲相続人)第2順位 被相続人の親など(直系尊属)第3順位 被相続人の兄弟姉妹(もしくは代襲相続人) 第1順位から第3順位までは、「もっとも順位が高い人のみ」が相続人になれます。つまり、兄弟姉妹が相続人になるのは以下のようなケースです。 ・両親や祖父母がすでに亡くなっていて、被相続人に子どもがいない・被相続人の両親・祖父母・子どもがすでに亡くなっていて、孫もいない・第1順位と第2順位に当てはまる人がいても、その全員が相続放棄をした 被相続人の両親・祖父母・子どもがすでに亡くなっている場合でも、孫がいれば、子どもの代襲相続人として相続権を持ちます。このため、兄弟姉妹が相続人になることはありません。同順位の相続人のすべてが相続放棄を選択した場合、相続権は次の順位へと回されます。この場合、子どもや親が生存していても、兄弟姉妹が相続人になる可能性があるでしょう。 このように、兄弟姉妹と相続は、決して無関係ではありません。特に昨今は、子どもを持たない選択をする夫婦も増えてきています。相続順位が兄弟姉妹にまで回る可能性がある点を踏まえて、さまざまな準備を整えていくことが大切です。 兄弟姉妹が相続人になる場合の注意点とは? 終活の一環として相続について考える場合、「すでに両親や祖父母が亡くなっている」というケースも多いでしょう。この場合、自身に子どもや孫がいなければ、兄弟姉妹が相続人になる可能性は高いと考えられます。兄弟姉妹が相続人になると想定される場合、以下の点に注意しましょう。 ★1.配偶者に全財産を残せない 子どもがいない夫婦の場合、「自分が亡くなったあとは配偶者に全財産を譲りたい」と考える方も多いはずです。しかし先ほどもお伝えしたとおり、子どもや親がいなければ、兄弟姉妹が法定相続人に。自分の兄弟姉妹が遺産の分割を希望した場合、配偶者はそれを受け入れざるを得ないのです。 ちなみに、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、配偶者が遺産の4分の3、兄弟姉妹が遺産の4分の1を受け取る権利を持ちます。「遺産のほとんどが不動産」という場合、兄弟姉妹に遺産を分割するため、売却せざるを得ない可能性も。たとえそれが、夫婦にとっての終の棲家であっても状況は変わりません。配偶者が、住む場所を失うリスクもあるでしょう。 ★2.戸籍収集が大変になる 兄弟姉妹への遺産分割に問題がない場合でも、手続きのために必要な戸籍収集は、決して簡単ではありません。子どもや親が相続人になるケースと比較して、難易度はアップします。 兄弟姉妹が相続人になる場合、第1順位や第2順位に当てはまる人が存在しないことを証明するための書類が必要です。具体的には、被相続人の戸籍のすべてや、両親の戸籍謄本の一式を準備する必要があるでしょう。兄弟姉妹の中にすでに亡くなっている人がいる場合、その人の分の戸籍謄本一式も必要になります。 ★3.相続税が高い 兄弟姉妹が相続人となって財産を受け継ぐ場合、相続税は20%割り増しになります。遺産分割に納得していても、相続税が原因でトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。 遺言書を残すメリットとは? 兄弟姉妹が相続人になる場合、遺言書を残すメリットは以下のとおりです。 ・配偶者に全財産を相続させるよう指定できる・兄弟姉妹の相続税負担に配慮した遺産分割を指定できる 兄弟姉妹が相続人になる場合の大きな特徴は、「遺留分を請求する権利を持たない」という点です。遺留分とは、遺産のうち最低限相続できると定められている取り分のこと。たとえ遺留分が侵害されても、それを請求する権利は、兄弟姉妹に認められていないのです。つまり、法的に有効な遺言書にて「自身の配偶者に全財産を譲る」という文言を残しておけば、兄弟姉妹に財産を受け継ぐ権利は発生しません。自身が亡くなったあとの配偶者の生活を守れるでしょう。 ある程度年齢を重ねていると、兄弟姉妹としての関係性が希薄になっているケースは多いものです。配偶者と兄弟姉妹の間の話し合いが、スムーズに進むとは限らないでしょう。遺言書があれば、遺産分割協議を行う必要はなく、親族間トラブルが発生する恐れもありません。 また遺言書であれば、相続税負担に配慮する形で、誰に何を残すのか指定できます。兄弟姉妹への配慮とともに、大切に思う気持ちも伝えやすくなります。自分自身が気持ちよく旅立つためにも、できる準備は整えておくのがおすすめです。 兄弟姉妹と相続への関わりを知り具体的な準備を整えよう 兄弟姉妹と相続への関わりを知り具体的な準備を整えよう 自身が亡くなったあと、誰が財産を相続するのか、事前に考えておきましょう。兄弟姉妹が相続人になる場合、「関係が薄い兄弟姉妹よりも、生活をともにしてきた配偶者に全財産を残したい」と思うのは当然のこと。この場合、遺言書を残しておくのがおすすめです。シンプルな内容でも、十分に効果を発揮してくれます。自身が亡くなったあとの配偶者の生活を守りやすくなりますし、余計なトラブルでストレスを抱えるような恐れもありません。 実際の遺言書の内容については、弁護士や司法書士といった専門家に相談しつつ、決定するのがおすすめです。実際に誰が相続人になる可能性が高いのか、またどういった点に配慮して遺言書を残すべきなのか、的確にアドバイスしてもらえるでしょう。専門家の協力のもとで、自身の希望を叶える遺言書を用意してみてください。

  • 親の死後に発見されたビデオメッセージ…扱い方と注意点は?

    親の死後に発見されたビデオメッセージ…扱い方と注意点は?

    自身の最期の想いをしっかりと伝えるため、終活に取り組む方も増えてきています。遺書やビデオメッセージを残して亡くなる方も多いのではないでしょうか。今回は、親がビデオメッセージを残して亡くなった場合の、扱い方や注意点について解説します。「どうすれば良いのだろう」と悩んだときには、ぜひ参考にしてみてください。 まずはビデオメッセージを確認してみよう 親の死後、ビデオメッセージが残されていることがわかったら、まずはその内容を確認してみましょう。「自分の死後に、その想いを確認してもらうために」という理由で、ビデオメッセージを残す方は増えてきています。自筆証書遺言のように「内容を確認する前に検認手続きが必要になる」ということはありませんから、自分たちの好きなタイミングで確認して大丈夫です。 とはいえ、故人が残したビデオメッセージを、長期間放置するのはおすすめできません。終活の一環としてビデオメッセージを残している場合、葬儀への希望や連絡を取って欲しい人、自身が残す財産についてなど、重要な情報が含まれているケースも多いからです。できるだけ早く確認し、ビデオメッセージを残した人の希望を叶えられるよう準備しましょう。 ビデオメッセージに「遺言書」としての法的拘束力はない ビデオメッセージの内容を確認したところ、財産相続に関わる遺言書のような内容が見つかるケースもあるでしょう。この場合に重要なのは、「ビデオメッセージに遺言書としての効力はない」という事実です。 紙に書いただけの遺言書と、本人は直接語りかけているビデオメッセージを比較すると、「ビデオメッセージの方が自身の想いを伝えやすいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし遺言書とは、非常に強い法的拘束力を持つもの。間違いなく運用されるよう、厳しいルールが定められているのです。残念ながらビデオメッセージは、遺言書のルールをクリアしていません。 もしビデオメッセージに財産相続にまつわる内容が収録されていたら、遺言書が残されていないかどうか探してみましょう。ビデオメッセージには遺言書のような効力がない事実を知った上で、「遺言書の内容を補完する目的」でビデオメッセージを残す方もいます。この場合、法的に有効な遺言書が見つかれば、その内容のとおりに遺産を分割できるでしょう。自宅はもちろん、公証役場にも確認してみてください。エンディングノートが残されていれば、遺言書についても記載されている可能性があります。 遺言書が残されていない場合、遺産分割協議を行いましょう。法定相続人全員で、遺産をどう分割するか協議するための機会です。ビデオメッセージに法的拘束力はないとはいえ、相続人全員が納得しているのであれば、被相続人の遺志を相続に反映できます。一方で、1人でも納得できない人がいれば、ビデオメッセージどおりの遺産分割は不可能です。話がまとまらなければ、法定相続割合に従って遺産を分けることになるでしょう。 親からのビデオメッセージ、活用方法は? 親からのビデオメッセージ、活用方法は? 遺言書のような法的拘束力がないとはいえ、親からのビデオメッセージは生前の想いを届けてくれる特別なツールです。ぜひ以下のような場面で活用してみてください。 ★お葬式にて 亡くなった親が残してくれたビデオメッセージは、生前の姿を楽しませてくれるもの。身近な人が故人に関するエピソードを披露するのも良いですが、その人が実際に動き、話している姿を収録したビデオは、特別な意味を持つでしょう。 お葬式で流されるビデオメッセージは、近年「エンディングムービー」として人気を集めています。故人の人となりを知ってもらうため、またありし日の姿を思い描いてもらうために、ひと役買ってくれるはずです。葬儀の際の演出として、ぜひ活用してみてください。映像をきっかけに、思い出話も広がるでしょう。 ★遺産分割協議にて ビデオメッセージに法的拘束力はありませんが、遺産分割協議の際に、参加者全員で確認するのもおすすめです。たとえ法的な意味はなくても、故人がどのように考えていたのか、知るためのヒントとして活用できるでしょう。 たとえば「相続人のうち、1人だけに全財産を譲る」という内容の遺言を聞いたとき、財産を相続できない相続人がすぐに納得するのは難しいでしょう。しかし故人には、故人がそう決めただけの理由があったはず。ビデオメッセージを通じてその理由に触れられれば、遺言の内容を納得して受け入れやすくなるのではないでしょうか。 遺産分割協議は、親族間のトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。ビデオメッセージで親の言葉を直接耳にすることで、トラブル予防効果も期待できます。 ★故人を思い出すきっかけとして ビデオメッセージの良いところは、何度でも繰り返し楽しめる点です。親が亡くなってすぐの時期は、葬儀や埋葬でバタバタしがち。「悲しみに浸る間もない」というのが正直なところです。 さまざまな手続きが終わり、ほっと一息つく頃になると、急に寂しさが襲ってくることも。こんなときには、ぜひビデオメッセージを見返してみてください。ビデオの中では、生前と変わりない元気な姿や表情を見せ、懐かしい声を聞かせてくれるはずです。あれこれと思い出すきっかけになるでしょう。 ビデオメッセージは、兄弟姉妹が集まったときに流すのもおすすめです。家族写真で過去を振り返るのも良いですが、動いている姿はよりいっそう記憶を刺激してくれるでしょう。大切な家族と、懐かしい思い出話に花を咲かせてみてください。 親からのビデオメッセージの注意点は? 親からのビデオメッセージを見つけた際の注意点は、「親の本音」を冷静に受け止めるということです。特に相続に関する内容が含まれている場合、「自分にとっては到底納得できない」と思う可能性もあるでしょう。ビデオメッセージをきっかけに、モヤモヤした感情を抱くこともあるかもしれません。 とはいえ、親の本音に対して感情的にぶつかっても、話は前に進みません。親の考えは親の考えとして受け止めた上で、自分自身がどう考え行動するのかを決定してみてください。ビデオメッセージの特徴を頭に入れた上で、納得できる道を探るのがおすすめです。 ビデオメッセージを見つけたら冷静な対応を ビデオメッセージを見つけたら冷静な対応を 亡くなった親が残したビデオメッセージを見つけたら、ぜひ冷静に対処してみてください。相続に関する内容については、正式な遺言書が残されているかどうかで、対応が変わってきます。ビデオメッセージに込められた親の想いを理解しつつ、これから先についてもしっかりと検討しましょう。故人を思い出すためのツールとしても、ぜひ役立ててみてください。

  • 公正証書遺言を自力で作成したい!流れと注意点を解説

    公正証書遺言を自力で作成したい!流れと注意点を解説

    自筆証書遺言よりも、より確実に最期の意思を届けられる公正証書遺言。弁護士や司法書士に作成をサポートしてもらうケースも多いですが、費用節約のため「自分でやりたい!」という方もいるのではないでしょうか。公正証書遺言を自力で作成するためのポイントを、わかりやすく解説します。 そもそも公正証書遺言とは? そもそも公正証書遺言とは? 公正証書遺言とは、遺言を残したい人が公証人の前で内容を伝え、それをもとに公証人が遺言書を作成するという、遺言書普通遺言方式の一つです。自筆証書遺言とは違って、遺言内容を自分で記す必要はありません。自分の口で伝えるだけで、専門家が正式な書類に仕上げてくれるというメリットがあります。 公正証書遺言の場合、「遺言書の形式が一定のルールを満たしていないため、法的に無効になる」といった事態はまず起こりえないでしょう。終活ブームの今、自筆証書遺言を残す方も増えてきていますが、「より確実な遺言書を」と願う方々には公正証書遺言の方が人気です。 公正証書遺言を残すために欠かせない公証人は、長年、裁判官や検察官として実務を行ってきたような、いわゆる「法律のプロ」が担当しています。また公正証書遺言の場合、自身が亡くなったあと、相続人となった家族が「検認」の手続きをする必要はありません。 「自筆証書遺言よりも面倒…」といった理由で敬遠されてしまうケースもありますが、メリットも多い遺言形式です。ぜひ自分で作成する方法をチェックして、挑戦してみてください。 公正証書遺言作成の流れ ではさっそく、公正証書遺言を作成するための流れについて確認していきましょう。 1.公証役場に連絡し、相談のための予約を取る2.予約の日時に公証役場を訪れ、公証人と遺言内容について確認する3.必要書類をそろえて、公証役場に提出する4.遺言を作成する日程を決める5.遺言作成日に、証人2人とともに公証役場を訪れる6.公証人に遺言内容を伝える7.遺言者と証人が内容を確認し、署名押印する8.公証人が署名押印して、遺言書の完成 公正証書遺言を作成する場合、公証人との間での事前打ち合わせが必要です。スケジュールに余裕を持って、話を進めていきましょう。また公正証書遺言を残す際に必要な書類は以下のとおりです。 ・本人の印鑑証明書・戸籍謄本・本人確認資料(※顔写真入り)・受遺者の住民票(※法定相続人以外に財産を残したい場合)・固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書(※遺産に不動産が含まれている場合)・登記簿謄本(※遺産財産に不動産が含まれている場合)・証人に関する資料(氏名・住所・生年月日・職業を記載)・証人の認印 公正証書遺言を残すために必要な書類は、どういった内容の遺言書を残すのかによっても違ってきます。自分の場合はどの書類を用意すれば良いのか、遺言内容の打ち合わせをする際に、公証人に確認しておきましょう。 また公正証書遺言を残すためには、公証役場に手数料を支払わなくてはいけません。金額は遺言を残したい財産の総額によって違ってきます。具体的な金額については、以下を参考にしてみてください。 100万円以下 → 5,000円100万円~200万円以下 → 7,000円200万円~500万円以下 → 11,000円500万円~1,000万円以下 → 17,000円1,000万円~3,000万円以下 → 23,000円3,000万円~5,000万円以下 → 29,000円5,000万円~1億円以下 → 43,000円※財産が1億円以下の場合、手数料(遺言加算)11,000円が追加。※財産が1億円を超えた場合は5,000万円ごとに13,000円を追加。※3億円を超えた場合は5,000万円ごとに11,000円が追加。※10億円を超えた場合は5,000万円ごとに8,000円が追加。 仮に4,000万円の財産に関する遺言書を作成した場合、公証役場に支払う手数料は29,000円+11,000円(遺言加算)=40,000円です。また遺言で複数の相続人を指定する場合、相続人別に手数料が発生するので注意しましょう。同じ4,000万円の財産を相続人2人にそれぞれ3,000万円と1,000万円渡したい場合、手数料は23,000円+17,000円+11,000円(遺言加算)=51,000円です。 自分で公正証書遺言を作成する際の注意点3つ 自分で公正証書遺言を作成する場合、以下の3つのポイントに注意してください。 ★証人2人は誰でも良いわけではない 公正証書遺言を残すためには、証人を2人用意しなければいけません。未成年者や推定相続人、遺言で財産を受け取る予定の人や公証人の身近な人は証人になれないため、注意しましょう。遺言の内容を耳にする立場ですから、信頼できる相手を見つけることが重要です。 自分で証人を用意できない場合、公証役場にお願いして紹介してもらうことも可能です。この場合、証人1人につき10,000円~20,000円の御礼を支払う必要があります。 ★公証人は遺言の内容にアドバイスしてくれるわけではない 公正証書遺言を残すためには、事前に公証人との間で、相談する必要があります。とはいえこちらは、あくまでも遺言の「形式」や「法律」に関する確認です。遺言の具体的な内容について、相談に乗ってもらえるわけではありません。 たとえば、 ・親族間トラブルを回避するためにはどうすれば良いのか?・誰にどの財産を譲れば良いのか?・相続税は発生するのか? このような内容についての相談は不可能です。 公証人の仕事は、あくまでも法的に有効な遺言書を残すこと。たとえ遺言内容に誤りや不都合があったとしても、法的に問題なければ、そのまま遺言書として残されるでしょう。法的に有効な遺言書が持つ効力は非常に大きいですから、自身の死後、結果として本来の意図とは異なる形で遺産分配が行われてしまう恐れもあります。 自力で公正証書遺言を作成する場合、相続や法律に関する基礎知識は、事前にしっかりと身につけておきましょう。 ★遺留分への配慮が重要 「公正証書遺言を残したい」と思う方の中には、「自身の死後、親族間で争いが起きるのを回避したい」という方も多いはずです。余計なトラブルを回避するためには、ぜひ遺留分にも配慮した内容を心掛けてみてください。 たとえ公正証書遺言に、「相続人の1人のみに全財産を譲る」と記したとしても、その他の法定相続人には遺留分を請求できる権利があります。最初から遺留分を踏まえた内容を記しておけば、トラブルが発生するリスクを少なくできるでしょう。 公正証書遺言は必要に応じて専門家に相談を 公正証書遺言は必要に応じて専門家に相談を 公正証書遺言は、自力作成も可能です。とはいえ、その内容については自分自身で決定し、必要な手続きを進めていかなくてはいけません。専門家に依頼すれば、コストはかかりますが自身の意思を遺言内容に反映させやすくなるでしょう。メリット・デメリットを踏まえて、自分にとってベストな作成方法を検討してみてください。

  • 「遺言書情報証明書」とは?記載内容や使い方・請求方法まで

    「遺言書情報証明書」とは?記載内容や使い方・請求方法まで

    令和2年より、自筆証書遺言を法務局に保管できる「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしています。この制度を利用するなら、ぜひ「遺言書情報証明書」についても、基礎知識を学んでおきましょう。遺言書情報証明書とはどのような書類で、相続手続きにおいてどう使えば良いのでしょうか。必要になった場合の請求方法まで、詳しく紹介します。 遺言書情報証明書とは? 遺言書情報証明書とは? 遺言書情報証明書とは、遺言書の内容を証明できる重要書類の一つです。証明書には、以下のような情報が含まれています。 ・遺言者の氏名・出生年月日・住所および本籍(または国籍等)・遺言書が作成された年月日・遺言書の保管された年月日・遺言書が保管されている遺言書保管所・保管番号・受遺者の氏名と住所(※受遺者がいる場合のみ)・遺言執行者の氏名と住所(※遺言執行者がいる場合のみ)・遺言書の画像情報(※目録を含む) つまり、遺言書情報証明書を取得すれば、遺言書に記された情報を把握できるというわけです。 令和2年の自筆証書遺言書保管制度のスタートにより、遺言書情報証明書にも注目が集まっています。というのも、遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合、相続人は遺言書の原本を目にする機会がないため。画像データとして保管されていた遺言書の内容を遺言書情報証明書として取得し、各種相続手続きを進めていくことになります。 「遺言書が原本ではなくても相続手続きが可能なのか?」と不安を感じる方もいるでしょうが、遺言書情報証明書であれば大丈夫です。銀行に持ち込んで被相続人の預金を解約することも、不動産の相続登記を行うことも可能になります。 遺言書情報証明書のメリット まだまだ新しい制度のため、「遺言書情報証明書がなぜ必要なのかよくわからない…」と感じる方も多いのではないでしょうか。遺言書情報証明書を利用するメリットについてお伝えします。 遺言書開封時の検認が必要ない 自筆証書遺言で遺言書が残されている場合、相続が発生しても、すぐにその内容を確認できません。偽造や変造を防ぐため、家庭裁判所にて「検認」と呼ばれる手続きが必要になります。検認とは、遺言書の内容を裁判所で最初に確認し、問題がないことを証明するためのもの。遺言書の公平性や正確性を保つために欠かせない手続きではありますが、「申し立てから検認の完了まで、時間がかかってしまう」というデメリットがあります。 被相続人が同じ自筆証書遺言を残していた場合でも、法務局に預け、相続人が遺言書情報証明書を取得する形式であれば、検認は必要ありません。法務局から入手した証明書をその場ですぐに確認し、その内容のもと、具体的な相続手続きをスタートできるでしょう。 自筆証書遺言書保管制度で法務局に預けられた遺言書は、実際に相続が発生するまで、遺言者以外はその内容を確認できない仕組みになっています。保存された画像データを提示する遺言書情報証明書であれば、偽造や変造の恐れはありません。よって検認手続きが不要となるわけです。被相続人にとっては、より正確な遺言書を残せるというメリットがありますし、相続人にとっては相続手続きの手間を省けるというメリットが発生します。 全国どこからでも交付請求ができる ここまでお伝えしてきたとおり、遺言書情報証明書は、遺言書の原本から作られた画像データです。その情報は、日本全国どの遺言書保管所からでも手続きが可能で、楽に取得できるでしょう。わざわざ遠方まで出向く必要もありませんし、相続人にとって利便性の高い保管所を選択することも可能です。こちらも、相続手続きの手間削減につながるでしょう。 3.自筆証書遺言書保管制度のメリットも多い遺言書情報証明書は、自筆証書遺言書保管制度に付随する証明書です。自筆証書遺言書保管制度を利用するメリットも、決して少なくありません。 たとえば自筆証書遺言書保管制度を使えば、遺言者が亡くなった際に、遺言書の存在をあらかじめ指定しておいた相続人等に通知できます。自筆証書遺言の場合、せっかく遺言書を残しても、発見されないまま終わってしまうというケースも存在しています。通知があれば、このようなリスクはなくなるでしょう。 また実際に遺言書を作成して法務局に保管する際には、窓口にて遺言書の形式ルールチェックを受けられます。遺言書のルールが守られておらず、法的に無効と判断される恐れがある場合、アドバイスをもとに訂正できるでしょう。遺言の内容そのものへのアドバイスではありませんが、遺言書無効リスクを低減できるはずです。 これらのメリットを頭に入れて、ぜひ遺言書情報証明書および自筆証書遺言書保管制度の活用について検討してみてください。 遺言書情報証明書を取得するための流れ 遺言書情報証明書を相続人が取得できるようになるのは、遺言者が亡くなったあとです。生存中は、遺言書の存在を知っていても証明書の取得はできませんので注意してください。取得手続きは、以下の流れで進めていきます。 1.交付請求を行う遺言書保管所を決定する2.必要事項を記載し、交付請求書を作成する3.希望する遺言書保管所を予約する4.予約日時に遺言書保管書へ行き、交付請求書と必要書類を提出する5.証明書を受け取る 交付請求を行う遺言書保管所は、日本全国どこでも選べます。ただし実際に保管所に出向いて請求手続きを行う場合、事前予約が必須。「わざわざ時間を合わせるのが難しい」という場合には、郵送での手続きを選んでみてください。この場合、予約も訪問も必要ありません。 遺言書情報証明書を交付してもらうために必要な書類は、以下のとおりです。 ・遺言者の死亡を確認できる書類(戸籍謄本等)・請求者の住民票の写し・法定相続情報一覧図の写し・相続人である事実が確認できる戸籍謄本や法人の代表者事項証明書など・身分証明書(顔写真付き)・手数料(1通につき800円) 法定相続情報一覧図の写しがない場合は、遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の住民票の写しを用意しましょう。二度手間にならないよう、必要な書類についてあらかじめしっかりと確認した上で、手続きを進めてください。 遺言書情報証明書を取得して相続手続きをスムーズに 遺言書情報証明書を取得して相続手続きをスムーズに 遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用して遺言を残していた場合、相続手続きを進めるためには遺言書情報証明書を取得する必要があります。取得時には手間と時間、そして手数料が発生しますが、検認手続きは不要に。そのまま相続手続きを進めていけます。基本的な知識を身につけた上で、制度を活用してみてください。

  • 妻に残すビデオメッセージは意味がないって本当?正しく遺言を残すために

    妻に残すビデオメッセージは意味がないって本当?正しく遺言を残すために

    スマートフォンで誰でも手軽にビデオメッセージを残せるようになった今、「自身の最期の思いを映像で届けたい」と考えるからも増えてきています。特に長年連れ添った妻に対するメッセージは、「形式的な遺言書ではあじけない…」と感じる方も多いようです。とはいえ、「妻に残すビデオメッセージには意味がない」という意見を見かけるのも事実。ビデオメッセージや遺言が持つ意味、そして正しい形式について確認しておきましょう。 妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない 妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない ビデオメッセージでは、画像を見ている人に対して、自身の言葉で直接語りかけられます。自身の口から発せられる言葉や、その表情や雰囲気など、さまざまな情報をダイレクトに届けられるでしょう。しかし残念ながら、ビデオメッセージに法的な効力は発生しません。ビデオメッセージの中で、たとえ本人が「妻に全財産を相続させたい」と発言したとしても、そこに法的な拘束力は存在しないのです。妻以外の相続人がその内容を認めなければ、自身の遺志を相続に反映させるのは難しいでしょう。 そもそも遺言書とは、自身が亡くなったあとの相続について、希望を伝えるための正式な書類です。法的に有効な形で遺言書が残されていた場合、その内容は他の何よりも優先されます。たとえば、法定相続人以外を相続人として指定したり、法定相続分に囚われない相続割合を指定したりすることも可能に。しかし、このような強い効力を持つ書類だからこそ、「法的に有効」と認められるためにはさまざまな条件をクリアする必要があるのです。残念ながら、ビデオメッセージではその条件をクリアできません。 インターネットで「遺言」について調べてみると、「妻や家族に遺言としてビデオメッセージを残しても、意味がない」という意見を目にする機会もあるでしょう。これは、その法的根拠に注目した意見だと言えます。自身のメッセージに法的拘束力を持たせたいのであれば、ビデオメッセージではなく、正式な形式で作成された遺言書を活用してみてください。 ビデオメッセージは相続トラブル予防に効果的 先ほどもお伝えしたとおり、妻に残すビデオメッセージに法的な意味はありません。しかし、以下のような側面から見ると、ビデオメッセージの作成は非常に効果的です。 ・親族間の相続トラブルを予防したい・直接伝えられなかった素直な気持ちを届けたい・自身の死後、必要な情報をわかりやすく伝えたい ビデオメッセージの有用性として、もっとも注目されているのが相続トラブルの予防効果です。遺言書の内容を補完するための情報として、ぜひビデオメッセージを活用してみてください。 遺言書においては、被相続人の遺志を最大限に反映した内容を記すことが可能。とはいえ、遺言内容によっては、親族間で不満が噴出してしまう可能性もあるでしょう。「妻に全財産を相続させる」という内容を記した場合、遺産を受け取れない相続人が出てくるはずです。遺言書の内容に沿って遺産分割した場合でも、その後の関係性に溝が生じてしまうケースは少なくありません。 ここで活躍するのが、ビデオメッセージです。なぜそのような内容の遺言を残したのか、自身の言葉で直接語り掛けましょう。遺言書とは違い、ビデオメッセージなら、自分の言葉で素直な思いを届けられます。たとえ自身に不利な内容の遺言であっても、「そこに込められた思いや理由が明らかになれば納得しやすい」と感じる方は多いものです。ぜひ映像の強みを最大限に活用してみてください。 また相手が妻となると、「お互いに照れくさくて、なかなか素直な気持ちを伝えられていない」という方も多いのではないでしょうか。最後に残すビデオメッセージは、素直な思いを残すチャンスでもあります。直接言うのが恥ずかしい言葉も、ぜひ素直に語りかけてみてください。自分が亡くなったあとの、妻の生活を支える力になってくれるでしょう。 最後に、「必要な情報をわかりやすく伝えられる」という意味でも、ビデオメッセージは非常に効果的です。人が亡くなったあと、さまざまな雑務が発生するもの。そのために必要な情報を、ぜひビデオメッセージで残しておいてください。貴重品が保管されている場所や、連絡してほしい相手、遺言書のありかなど、手紙では伝えにくい点も、言葉でならわかりやすく伝えられるはずです。 このように、法的な拘束力はなくても、ビデオメッセージを残すことには意味があります。遺言書が「法律面」で自身の死後の手続きをサポートしてくれる存在なら、ビデオメッセージは「感情面」で遺族を支える柱になってくれるでしょう。それぞれが持つ意味をしっかりと把握した上で、状況に合わせて併用するのがおすすめです。 ビデオメッセージの作成方法・残し方は? 妻や家族に残すビデオメッセージは、自身の好きなスタイルで作成できます。自分のスマートフォンを使って撮影するだけでも、心のこもったメッセージになるでしょう。より本格的なメッセージを作成したい場合には、プロに依頼するのもおすすめです。カメラ写りや編集にまでこだわった、特別な「作品」として残せるでしょう。自分で作成する場合と比較してコストは高くなってしまいますが、プロのアドバイスを受けられるというメリットもあります。 実際にビデオメッセージを作成したら、ぜひその残し方にも気を配ってみてください。せっかくビデオメッセージを作成しても、自身の死後、動画が発見されなければ意味がありません。確実に動画を見てもらえるよう、以下の方法を検討してみてください。 ・自身が亡くなったあと、指定先に動画を転送してくれるサービスを利用する・わかりやすい場所に動画を保存し、エンディングノート等でそのありかを伝える・作成からお届けまで、ワンストップサービスを提供してくれる業者を利用する どの方法にもメリットとデメリットがあります。ぜひ、自身の思いをより確実に届けるための対策を取り入れてみてください。 妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を 妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を 「妻に残すビデオメッセージに意味がない」という意見を目にすると、「だとしたら残しても残さなくても同じ」「遺言書だけで十分」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、自身の言葉と表情で直接思いを届けられるビデオメッセージが持つメリットは、決して少なくありません。たとえ法的な意味はなくても、遺言書とともに活用し、親族間の相続トラブル予防のために役立てることをおすすめします。 ビデオメッセージの残し方や保管方法もさまざまです。まずはどのような形でどんなメッセージを残したいか、考えるところからスタートしてみてください。終活の一歩と言えるでしょう。

  • 生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

    生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

    相続税対策のため、遺産にまつわる親族間トラブルを避けるため、有効だと言われているのが「生前贈与」です。具体的にどのような制度で、どういったメリットが期待できるのでしょうか。注意点も踏まえて解説します。遺言による遺贈との違いや、どちらにするべきか悩んだ場合の考え方も紹介。相続に関する不安を解消するため、ぜひ参考にしてみてください。 そもそも生前贈与とは?3つのメリット解説 生前贈与とは、将来相続財産になる見込みの遺産を、生前に贈与することを言います。贈与をする側と受ける側が贈与契約を結び、財産をやりとりする方法です。生前贈与のメリットは、以下を参考にしてみてください。 ★メリット1「自身の意思を明確にできる」 先ほどもお伝えしたとおり、生前贈与とは、自身が生きている間に相手を指定し、自分の財産を受け取ってもらう方法です。自身の意思を明確に示せるため、死後に発生する相続よりも、親族間トラブルが発生しにくいというメリットがあります。たとえば、「よく世話をしてくれている長男の嫁に財産を残してやりたい」といった場面においても、自らの口で状況を説明可能。その他の親族にも、納得してもらいやすいでしょう。 また遺言書を残さないまま亡くなってしまった場合、被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つのは、法定相続人のみです。先ほどの「長男の嫁」や「孫」、「内縁の妻」など、相続権を持たない人に財産を残すことが難しくなってしまいます。 生前贈与なら、このような縛りは発生しません。誰にどれだけの財産を受け継いでほしいのか、自身の意思で判断できます。 ★メリット2「相続税対策に有効である」 被相続人が亡くなった際に、相続人に対して課せられるのが相続税です。相続財産の総額が一定以上になれば、税金を支払わなくてはいけません。生前贈与で事前に財産を渡しておけば、その分相続財産は減らせるでしょう。相続税を少なくする節税効果が見込めるのです。 もちろん、生前贈与の場合も、一定金額以上を超えれば贈与税が発生します。贈与税の基礎控除額は毎年110万円。この範囲内で生前贈与を繰り返していけば、贈与税を発生させず、相続税を減らす効果が期待できるでしょう。1年に110万円でも、10年継続できれば1,100万円になります。この110万円という控除額は「1人当たり」の数字ですから、生前贈与する相手が増えれば、その分相続財産を減らすスピードも速くなるはずです。 ★メリット3「自分の好きなタイミングで財産を渡せる」 相続の場合、財産を渡せるのは自身の死後となります。残念ながら、そのタイミングを自分自身で決定するのは難しいでしょう。その点生前贈与であれば、自分の住金タイミングで実行できるというメリットがあります。 たとえば、 ・孫の進学費用のため・子どものマイホーム資金援助として・お祝い金として など、お金が必要になったタイミングで援助してあげられるでしょう。孫の進学費用や住宅資金援助といった目的の場合、非課税で渡せる金額も大きくなります。 生前贈与の行い方と注意点 生前贈与の行い方と注意点 上で解説したとおり、生前贈与にはさまざまなメリットがあります。しかし実際に行う際には、いくつか注意点もあるので頭に入れておきましょう。生前贈与の具体的なやり方とともに紹介します。 ★1.誰にどのような目的でいくら贈与するのか決定する 生前贈与を決めたら、まずは誰にどのような目的で、いくら贈与するのかを決定しましょう。相手との関係性や目的、そして金額によって、利用できる非課税制度が違ってきます。相手と目的が決まったら、ぜひ利用できる制度がないかどうか確認してみてください。その上で、「非課税で贈与できるぎりぎりの金額」を狙ってみるのもおすすめです。 ★2.贈与税の課税方式を決定する 一定金額を超えた贈与契約に対して発生する贈与税。その課税方式は2パターン用意されており、自分自身で選択できます。 1つめのパターンは「暦年贈与」。1年間で贈与された金額の合計から基礎控除額(110万円)を引いて、超過分に対して贈与税が課せられる方式です。2つめのパターンは「相続時精算課税制度」と言い、2,500万円までを限度に贈与税が非課税になるかわりに、相続が発生した際に相続税が発生する仕組みです。 どちらにもメリット・デメリットがあるため、贈与する側・される側にとって、より良い方式を選んでください。 ★3.贈与契約書を作成する 贈与そのものは「あげる」「もらう」といった行為のみで完結しますが、財産の移動に関する証明がなければ、税務署に対して適切に説明できません。税務署からの指摘にしっかりとした説明ができなければ、余計なトラブルを招いてしまう恐れがあります。いつ誰が誰にどんな財産を贈与したのか、契約書にして残しておきましょう。 ★4.状況に応じて贈与税の申告を行う 贈与を受けた側は、状況に応じて贈与税の申告を行います。暦年贈与で110万円を超える贈与を受けたときや、相続時精算課税制度を選択した場合は、忘れないように申告してください。 ★生前贈与の注意点 生前贈与で暦年贈与を選択した場合、「死亡日より前の3年間に行われた暦年贈与は、相続税の対象に含まれる」というルールがあります。生前贈与加算と呼ばれるルールで、亡くなるタイミングによっては、生前贈与のメリットがなくなってしまう恐れもあるでしょう。こちらについても、ぜひ頭に入れておいてください。 遺言による遺贈と生前贈与、迷ったときはどうすれば良い? 遺言による遺贈と生前贈与は、どちらも「相続に自分の意思を反映させるための方法」と言えます。どちらが良いのか悩む方もいるでしょうが、両方をうまく組み合わせていくのがおすすめです。 現金や有価証券といった財産は、比較的生前贈与に向いています。誰に何をどの程度分配するのか決まっているのであれば、ぜひ生前贈与も積極的に検討してみてください。一方で土地やマイホームといった不動産は、暦年贈与の基礎控除を利用するのが難しく、生前贈与には注意が必要と言えるでしょう。 遺贈と生前贈与は、どちらの方が優れているというわけではありません。悩んだときには、遺産の性質に合わせて、専門家に相談しながら検討していくのがおすすめです。 生前贈与について正しく知り活用を 生前贈与について正しく知り活用を 生前贈与をうまく使えば、相続に関する各種トラブルを軽減できる可能性があります。終活について検討し始めたら、ぜひ生前贈与についても考えてみてください。「遺書」だけではなく、生前贈与まで視野に入れることで、「誰にどう財産を残すのか?」という視点は広がるはずです。ぜひ後悔のない相続について、検討してみてください。

  • 親が亡くなり遺言が見つかった!相続の進め方を解説

    親が亡くなり遺言が見つかった!相続の進め方を解説

    終活ブームの今、遺言書を残して亡くなる方も多くなっています。とはいえ、いざ自分の親が亡くなり、遺言書が発見された場合にどう行動すれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。 今回は遺言書が残されている場合の相続の進め方について解説します。何からすれば良いのかわからない…というときには、ぜひ参考にしてみてください。 まずは「開封」に注意! 遺言書とは、被相続人の最期の思いが詰まった書類です。法的拘束力を持ち、相続人は遺言書の内容に沿って、相続手続きを進めていくことになります。そんな遺言書には、以下のような種類があります。それぞれで取り扱い方法が異なりますから、注意しましょう。 ・自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言 自筆証書遺言の場合、自宅で発見されるケースも少なくありません。身近な人が亡くなりバタバタしている中で、「少しでも早く内容を確認したい!」と思う方も多いのではないでしょうか。しかし封がしてある自筆証書遺言を勝手に開封すると、5万円以下の過料が科される恐れがあります。また「内容を改ざんしたのでは…」と疑われるきっかけにもなりかねないでしょう。 中身を確認するために、必要になるのが家庭裁判所による「検認」の手続きです。検認とは、遺言書の偽造や改ざんを防ぐためのシステムです。未開封の状態で、いったん家庭裁判所に提出しなければいけません。裁判所に指定された日時に、あらためて行われる検認に立ち会いましょう。 検認後に発行される「検認済証明書」は、この先の相続手続きを進めていくために必須です。手続きには少し時間がかかるため、遺言書を発見したら、できるだけ早く家庭裁判所への申し立てを行ってください。 ちなみに、同じ遺言でも公正証書遺言であれば、家庭裁判所による検認の必要はありません。また自筆証書遺言の場合でも、「自筆証書遺言書保管制度」を使い法務局内で保管されていたものであれば、やはり検認は必要ありません。 遺言執行者を確認しよう 遺言執行者を確認しよう 遺言書の内容を確認できたら、まずチェックしたいのが遺言執行者についてです。遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するための手続きを進めていく人のこと。遺言書で指定されていたら、まずはその人が役割を担ってくれるか確かめなければいけません。特に指定されていない場合は、家庭裁判所に選任してもらえます。 家庭裁判所に選任してもらう場合でも、相続人が信頼できる遺言執行者を指定できます。「家庭裁判所に勝手に指定されたくない」という場合には、事前に許可をもらった上で、信頼できる相手を遺言執行者として指定できるよう準備しておきましょう。法律上の知識が必要で、相応の責任を求められるため、士業を営む専門家に依頼するのがおすすめです。 遺言執行者が決定したら、その事実を相続人に通知します。いよいよここから、相続の具体的な手続きがスタートします。 遺言執行者による遺言の執行 遺言執行者が決まったら、遺言書の内容に沿って手続きが進められていきます。具体的には、 ・相続財産の引き渡しや管理・相続財産に関係する書類の引き渡しや管理・妨害している者がいれば、その排除・遺言執行に必要な訴訟行為・遺言に基づく財産の処分や売買など といった作業が含まれます。遺言執行者を士業の専門家に依頼した場合、その指示にしたがって手続きを進めていけば大丈夫です。スムーズに遺言を執行できるでしょう。 自分たちで遺言を執行する場合の手続きとは? 遺書の内容が遺贈や遺産分割方法の指定のみで、非常にシンプルな形式の場合、必ずしも遺言執行者は必要ありません。この場合、遺言で指定された内容に沿って、相続人全員が協力して手続きを進めていくことになります。遺言をもとに相続人それぞれの相続割合を明らかにして、遺産の分配を実行しましょう。 必要であれば、登記申請や金銭の取り立ても行います。相続財産を不法に占有している人がいれば明け渡しを求め、移転するよう請求してください。遺言書のとおりに遺産を分配できれば、相続手続きは完了です。 遺言書が見つかった場合の注意点3つ 遺言書が見つかった場合の注意点3つ 遺言書を残す目的のひとつは、相続に関する親族間トラブルの予防です。とはいえ、遺言書が残されていればそれですべて安心というわけではないので、注意してください。具体的な注意点を3つ紹介します。 ★遺言書は本当に有効か? 親が亡くなり遺言書が発見されたとしても、常にその内容が有効とは限りません。遺言書の内容に沿って相続手続きを進めていく前に、その中身が法律的に見て本当に有効なのかどうかを判断しましょう。 専門家のサポートのもとで作られている公正証書遺言の場合、法的効力を持たない恐れはほぼないでしょう。一方で自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、書式や内容の不具合が原因で「法的効力を持たない」と判断される事例も少なくありません。 不意に遺言が見つかったら、その内容が気になるのは当然のこと。しかし実際には、内容だけではなく「本当に遺言書としての効力を持っている書類なのか?」を確かめる必要があります。 万が一、残された遺言書に法的効力がないと判断された場合、その内容も無効に。相続人全員で遺産分割協議を行い、相続手続きを進めていくことになります。 ★遺言書に記載されていない財産はないか? 遺言書が法的に有効だと判断される場合でも、すべての相続財産がもれなく記載されているとは限りません。この場合、遺言書に記載されていない相続財産について、遺産分割協議が必要になります。 ★遺言の内容に納得できない場合はどうなる? 遺言書が法的に有効な形で残されていれば、被相続人はその相続に自身の遺志を最大限反映できます。法定相続分を無視して、特定の人にのみ財産を相続させることもできるでしょう。また本来であれば相続権を持たない人が、財産を相続することもできます。 とはいえ、法定相続とは異なる内容の遺言であればあるほど、「その内容に納得できない…」と感じる人が出てくる可能性もあるでしょう。残念ながら、正しい形で残された遺言の内容は、相続人には覆せません。 ただし兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺留分が認められています。これは、法律で最低限保障されている相続分のこと。遺言書のとおりに遺産が分配された場合でも、遺留分が侵害されていれば請求の上で取り戻せるでしょう。弁護士に相談の上で、適切に対処してください。 遺言書が見つかったらまずは落ち着いて行動を 親が亡くなり遺言書が発見されたら、驚く方も多いのではないでしょうか。勝手に開封するのではなく、まずは落ち着いて行動しましょう。 遺言書を家庭裁判所で検認してもらうためには、1ヶ月以上の時間が必要です。だからといって相続手続きに定められている各種期限が延長されるわけでないので、注意してください。できるだけ早めに、必要な手続きを進めていきましょう。

  • 初めての遺言作成ならぜひ検討を!遺言にまつわる便利なサービス

    初めての遺言作成ならぜひ検討を!遺言にまつわる便利なサービス

    子育てがひと段落すると、自分たち夫婦の未来が気になるものです。「そろそろ老後の準備を始めようかな…」と思っている方におすすめなのが、遺言の作成です。自身の最期のメッセージを大切な人たちに届け、また自身の思いを相続に反映させられるでしょう。 終活ブームを迎えている今、遺言作成をサポートしてくれる便利なサービスが多数登場しています。初めての遺言作成で利用したいサービスを紹介するので、ぜひチェックしてみてください。 デジタル遺言サービス デジタル遺言サービス デジタル遺言サービスとは、近年特に注目されているサービスのひとつです。自身の遺言をオンライン上に残しておき、タイミングと相手を事前に指定。自身が設定した条件を満たした段階で、相手のもとにメッセージを届けられます。法的拘束力は持たないものの、自身の思いをより手軽に伝えるための方法として、高く注目されています。 デジタル遺言サービスを利用するメリットは、以下のとおりです。 ・自宅のパソコンやスマートフォンから、いつでも手軽に遺言を残せる・内容を変更する際の手間がかからない・動画でメッセージを伝えられる・オンライン上のログイン情報の管理がしやすい 終活を検討し始めたばかりの方にとって、「遺言は具体的に」と言われても、何をどうすれば良いか戸惑うケースも多いのではないでしょうか。デジタル遺言サービスなら、いつでもどこでも、好きなときに手軽に遺言を残せます。「やっぱり内容を変更したい」と思ったときでも、自分で手間なく作業できるでしょう。自身の思いをまとめるのにも役立つはずです。 また各種SNSやオンラインバンキングなど、自分に万が一のことがあったときのため、「ログイン情報をまとめておきたい」と思う方にも役立ちます。デジタル遺言サービスは、こうした情報の管理・伝達とも相性が良いでしょう。 一方で、デジタル遺言サービスにもデメリットはあります。先ほどもお伝えしたとおり、法的な効力を持たないため、オンライン上に保管されたメッセージが正式な「遺言書」として認められるわけではないのです。デジタル遺言サービスを通じて、正式な遺言書を残したいと思ったときには、また別のサービスの利用が必要になるでしょう。 デジタル遺言サービスには、無料で利用できるものも少なくありません。将来的に正式な遺言書を残したくなった場合に、作成をサポートする機能を備えているところもありますから、自身のニーズに合わせて利用先を検討してみてください。 遺言書案文イメージの無料作成サービス 遺言書案文イメージの無料作成サービス 「どうせなら法的拘束力を持った遺言書を作成したいが、わざわざ専門家に相談するのはちょっと…」と思う方におすすめなのが、遺言書案文イメージの無料作成サービスです。オンライン上で遺言内容に関する質問に回答していくと、その内容を反映した案文イメージを作成。イメージをもとに自身の手で清書すれば、自筆証書遺言が作成できます。 自筆証書遺言とは、遺言作成者が自筆で残す遺言書のこと。自分一人で、自宅でも作成できる遺言書として、近年注目を集めています。費用がかからない点も、自筆証書遺言のメリットと言えるでしょう。 一方で、専門家の手を経ずに作成できるため、内容の不備によるトラブルがあとを絶たないのも事実です。自筆証書遺言の有効性が認められなければ、メッセージとして残せはしても、法的な効力は持たせられません。相続に自身の遺志を反映させるのも難しくなってしまうでしょう。 遺言書案文イメージの無料作成サービスを使えば、自身の希望に沿った内容の案文イメージを手軽に入手できます。あとは自分自身の手で書き写すだけですから、ミスが発生するリスクも少なくなるでしょう。難しいことを考えなくても自筆証書遺言を作れるというメリットもあります。法定相続人の遺留分チェックを受けられるサービスを利用すれば、「親族間に憤りや悲しみを残さない遺言書内容」を作成しやすくなるでしょう。 ただしあくまでも無料サービスのため、対応できる範囲には限界があります。比較的シンプルな内容の遺言には対応できても、そうではない場合、自身の思いを反映させるのが難しくなってしまう恐れも。遺言書作成の初期段階で、自身の思いをはっきりさせるためのステップとして活用するのもおすすめです。 専門家事務所による遺言作成支援サービス 複雑な内容の遺言書を、より確実な形で残したいと思う場合には、専門家の手を借りるのが一番です。遺言書の作成支援サービスは、司法書士事務所や行政書士事務所、弁護士事務所や信託銀行などでも提供されています。 専門家事務所の遺言作成支援サービスを利用した場合、以下のようなサポートを受けられるでしょう。 ・相続財産の調査・法定相続人に関する調査・個別の状況を把握した相談・遺言内容のチェック・遺言書の保管・遺言の執行 実際にどういったサポートを受けられるのかは、依頼先の専門家事務所によって異なります。サービス内容によって専門家報酬の金額は変わってきますから、正式依頼前にしっかりとチェックしておきましょう。 コストはかかりますが、「できるだけ素早く、確実な遺言を残しておきたい」と思う方にはぴったりのサービスです。遺言書作成に強い専門家を探してみてください。 国が提供するサービスにも注目してみよう! 初めて遺言を作成するなら、ぜひ国が提供しているサービスにも注目してみてください。法務局では2020年7月より、自筆証書遺言書保管制度をスタートしています。自分で作成した自筆証書遺言を、法務局にて保管してもらえるサービスです。 自宅で手軽に残せる自筆証書遺言ですが、 ・長い保管期間中に内容を改ざんされてしまう・相続が発生しても発見されない といったリスクがあります。作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらえば、改ざんや紛失の恐れはなく、また相続開始と共により確実に相続人のもとへ届けられるでしょう。また相続が発生した際に、家庭裁判所の検認が不要であるというメリットもあります。 こちらのサービスを利用するためには保管申請手数料として3,900円支払う必要がありますが、原本は遺言者死亡後50 年間、またその画像データは遺言者死亡後150年間と、長期にわたって確実に保管され続けます。自筆証書遺言を検討するなら、安心安全のためにも、ぜひこちらのサービスもセットで検討してみてください。 便利なサービスも活用して初めての遺言作成を! 初めての遺言作成では、何をどうすれば良いかわからない方も多いはず。最初の一歩を踏み出すためには、今回紹介した便利サービスを利用するのもおすすめです。情報を整理し、自身の思いを見つめ直すきっかけにもなるのではないでしょうか。無料で利用できるサービスも多いので、ぜひ検討してみてくださいね。

  • 遺言書情報証明書とは?取得方法や使い方を解説

    「将来のために遺言を残したい」と思ったら、まずは遺言書に関連する基礎知識を身につけましょう。今回は遺言書情報証明書について解説します。具体的な内容や、活用方法・取得方法を紹介。後々のトラブルリスクを避けるためにも、ぜひチェックしてみてください。 自筆証書遺言書保管制度とは? 自筆証書遺言書保管制度とは? 遺言書情報証明書は、「自筆証書遺言書保管制度」に関連する証明書です。令和2年7月よりスタートした新しい制度で、自筆証書遺言書に関するトラブルを予防する目的で設立されました。 遺言形式には、以下の3つが存在しています。 ・自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言 この中で、もっとも手軽に残せるのが自筆証書遺言です。いくつかの条件を満たす必要があるものの、自筆証書遺言は「自分だけの力でいつでも好きな場所で作成できる遺言書形式」です。終活ブームの今、指南書をもとに自力で自筆証書遺言を残そうとする方も多いのではないでしょうか。 しかし自筆証書遺言には、自力作成できるからこそのデメリットも。具体的には、以下のようなポイントが挙げられるでしょう。 ・自宅で保管している最中に紛失してしまう・自宅で保管中に内容を改ざんされてしまう・自身が亡くなったあとに、遺言書を発見してもらえない・最初から最後まで専門家の目に触れないことで、法的な要件を満たせていない どれも遺言書の役割を果たさない、非常に重大なトラブルだと言えます。 自筆証書遺言書保管制度は、自力で作成した遺言書を法務局で保管。これらのトラブルを予防できます。自宅ではない場所で保管すれば、改ざん・紛失リスクはありません。遺言内容に不満を持つ親族の手で、勝手に処分されてしまうような恐れもないでしょう。 また保管時には、専門家による外形的なチェックを受けられます。遺言内容に関するアドバイスは受けられないものの、作成した自筆証書遺言書が法的に有効な形で整えられているかどうか、確認してもらえます。自筆証書遺言を残すのであれば、ぜひ積極的に利用したい制度と言えるでしょう。 遺言書情報証明書とは? 遺言書情報証明書とは、自筆証書遺言書保管制度によって保管された遺言書の情報を、証明するための書類です。遺言を残した人が亡くなったあと、相続人がその内容を確認するために請求します。 遺言書情報証明書に記されるのは、以下のような情報です。 ・遺言者の氏名・出生年月日・住所よび本籍・遺言書の作成年月日・保管開始日・遺言書が保管されている保管所の名称・遺言書の保管番号・遺言書の画像情報 遺言書情報証明書には、法務局で保管されている遺言書の内容を画像データとして記載されています。証明書を取得すれば、亡くなった人がどのような内容の遺言を残していたのか確認できるでしょう。 遺言書情報証明書は、各種相続手続きを進めるために使います。遺言書と言えば「原本を持って手続きを進める」と思いがちですが、自筆証書遺言書保管制度を活用した場合は異なります。保管制度を利用した場合、遺言書の原本が相続人の手元に返却されることはありません。よって、その後のすべての手続きを遺言書情報証明書で進めていくのです。その効力は遺言書原本と変わりないため、安心してください。 保管制度を活用した場合、自筆証書遺言書であっても、裁判所による検認手続きは必要ありません。相続スタート後に遺言書情報証明書を取得すれば、そのままスムーズに相続手続きを進めていけます。 遺言書情報証明書の取得方法は? 遺言書情報証明書の取得方法は? 遺言書情報証明書は、取得したい人からの申し出によって交付されます。取得を希望できるのは、以下の条件に当てはまる方々です。 ・相続人・受遺者・遺言執行者・相続人や受遺者の親権者や成年後見等の法定代理人 遺言者情報証明書は、誰にでも自由に公開されるわけではありません。あくまでも、遺言書の内容に関わる人のみに取得が認められています。取得までの具体的な流れは、以下を参考にしてみてください。 1.交付請求場所を選択する2.遺言書情報証明書の交付請求書を作成する3.必要書類を揃える4.交付請求場所にて予約をとり、交付請求を行う5.証明書を受け取る 遺言書情報証明書は、遺言書そのものではなく画像データとして交付されます。このため、実際に遺言書が保管されている保管所以外からでも請求が可能。日本全国どこからでも、自分の都合の良い場所から該当データを取得できます。 交付請求書は、最寄りの法務局窓口のほか、ウェブサイトからのダウンロードも可能です。必要事項を記入し、書類を作成してください。交付請求書とともに必要になるのは、以下のような書類です。 ・遺言者の戸籍謄本(出生から死亡までの連続するもの)・相続人の戸籍謄本(全員分)・相続人の3ヶ月以内に発行された住民票(全員分) このほか、受遺者や遺言執行者が証明書の請求手続きをする場合には、請求する人の住民票が必要です。併せて準備しておきましょう。 遺言書情報証明書の請求手続きは、郵送もしくは直接出向いて行います。遺言書保管所にて手続きする場合、事前予約が必須です。予約がないまま訪れても対応してもらえないため、注意してください。手続きそのものは即日処理されますが、ある程度の時間がかかるもの。できるだけ待ち時間が発生しないよう、事前予約制度が導入されています。予約は専用ホームページもしくは電話、窓口にて行えます。 予約は、請求手続きを行う本人の手で行わなくてはいけません。また予約できる期間は30日先までです。当日予約はできないため、注意してください。 遺言書情報証明書は、相続人それぞれが必要とするケースも多いでしょう。たとえば、共に相続人となっている兄弟姉妹がそれぞれで遺言書情報証明書を必要とする場合、予約はそれぞれでとる必要があります。請求者1人につき1件の予約をするようにしてください。 手続きする際には、請求者の本人確認のため、顔写真付きの官公署から発行された身分証明書が必要です。発行手数料は、証明書1通につき1,400円。こちらも忘れずに準備しておきましょう。 郵送で手続きする場合、必要書類と返信用封筒をセットにして、遺言書保管所に送付すればOKです。発行手数料は収入印紙で納付してください。 遺言書情報証明書を知り将来のために活用を 遺言書情報証明書は、自筆証書遺言書保管制度と深く関わる書類です。その意味や取得方法をあらかじめ知っておくことで、将来の終活や相続手続きにも役立つでしょう。自筆証書遺言書保管制度は、遺言書をより確実に残すために有効な制度です。遺言書に関連する知識を深め、ぜひ活用してみてください。

  • 公正証書遺言作成に必要な書類・資料とは?取得方法もあわせて紹介!

    自筆証書遺言よりも、確実性が高い公正証書遺言。最近では、「遺言書が原因でトラブルにならないように」との思いから、公正証書遺言を選択する方も増えてきています。とはいえ、公正証書遺言を作成するためには、さまざまな書類・資料を用意しなければいけません。具体的にどういった資料が必要になるのか、収拾方法とともに紹介します。 公正証書遺言とは? まずは公正証書遺言の基本についておさらいしておきましょう。 公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言形式のこと。遺言を残したい人は、2名の証人を前に、公証人に対して遺言内容を言葉で伝えます。その内容を確認した公証人が、「遺言書」という体裁に整えて保管。自筆証書遺言とは違い、遺言書の作成を専門家にお任せできるため、法的ミスが発生しないというメリットがあります。 自筆証書遺言を自宅で保管する場合、「家族である相続人が手続き開始前に発見し、改ざん・破棄する」といったトラブルも考えられるでしょう。公正証書遺言であれば、このようなリスクはないのです。自身の遺言をより確実に管理できるでしょう。いざ相続手続きをスタートする際にも、家庭裁判所による検認は必要ありません。メリットも多い遺言方式と言えます。 公正証書遺言を残すのに必要な資料とは? 公正証書遺言を残すのに必要な資料とは? 一方で、公正証書遺言にもデメリットはあります。その一つが、「遺言を残すためにさまざまな資料をそろえ、公証役場に提出しなければならない」という点です。求められる資料は、以下のとおりです。 ★1.本人に関する書類や資料 公正証書遺言を残すためには、本人であることを示すための資料が必要です。具体的には、以下のようなものを準備してください。 ・遺言を残す人の印鑑登録証明書もしくは所定の本人確認書類・遺言を残す人の実印・遺言を残す人の戸籍謄本 印鑑登録証明書を使用する場合、発効後3カ月以内のものを準備しましょう。その他の身分証明書を本人確認書類として使う場合、官公庁発行の顔写真付きのものを選択してください。運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどが当てはまります。戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で発行できます。役場に出向けばその場で発行してもらえますし、遠方の場合は郵送での請求も可能。こちらも発行後3カ月以内の書類が必要です。 ★2.財産を受け継ぐ人に関する資料 次に準備したいのは、財産を受け継ぐ人の情報を示すための資料です。法定相続人に財産を相続させたい場合と、法定相続人以外に譲りたい場合で用意する書類が異なるので、注意しましょう。 法定相続人に相続させたい場合に必要になるのは、「遺言者本人と相続人の関係がわかる戸籍謄本」です。発行から3カ月以内という条件があります。法定相続人の場合、遺言を残す人の戸籍謄本に、その人との関係が記されているケースも多いでしょう。この場合、法定相続人分の戸籍謄本をわざわざ準備する必要はありません。 一方で法定相続人以外を指名して財産を渡したい場合、財産を受け継ぐ人(受贈者)の住所・氏名・生年月日がわかる書類を用意しましょう。発行から3カ月以内の住民票を用意するのが一番ですが、保険証のコピー等でも対応可能。これらの書類が準備できない場合でも、必要な情報をまとめたメモ書き等で対応してもらえる可能性があります。公証役場にて相談するのがおすすめです。 ★3.相続財産に含まれる不動産に関する資料 相続財産に不動産が含まれる場合、その情報が記された資料が必要です。 ・登記事項証明書・固定資産税評価証明書 登記事項証明書には、不動産に関する詳細情報が記載されています。不動産がある場所の法務局にて請求しましょう。窓口で直接請求するほか、オンラインでの請求も可能。発行された書類は、自宅に郵送してもらえます。 固定資産税評価証明書は、遺言公正証書の作成手数料を計算するために使われます。不動産のある市税事務所や市区町村役場にて取得できますが、毎年発行される納税通知書の課税明細書でも代用可能です。 ★4.相続財産に含まれる有価証券や預貯金に関する資料 相続財産に有価証券や預貯金が含まれる場合は、以下の資料を準備しましょう。 ・通帳のコピー・取引状況報告書のコピー これらの情報は、種別や金額をまとめた資料でも代用できます。また財産を明示せずに遺言を残す場合も、公正証書遺言の作成手数料を計算するために必要です。概算で構いませんので準備しておきましょう。 ★5.証人に関する資料 公正証書遺言を残すためには、証人を2人用意する必要があります。証人が決まったら、以下の資料を準備してください。 ・証人予定者の氏名・住所・生年月日・職業を記したメモ・印鑑(認印可) 遺言作成当日には、証人2人の身分証明書を持参してもらいましょう。自動車運転免許証や保険証などが認められています。証人を2人用意できない場合は、公証役場で手数料を払い、準備してもらえます。この場合、自分で資料を用意する必要はありません。 すべての書類をそろえるのに必要な手数料は、数百円から数千円程度です。それほど大きな負担にはならないため、安心してください。 公正証書遺言作成には手数料が必要 公正証書遺言を作成するためには、各種書類だけではなく、手数料も用意しなければいけません。手数料の金額は相続財産の総額によって違ってきますが、2万円~5万円程度になるケースが多いようです。公証役場で証人を用意してもらう場合は、この費用にプラスして、証人用の手数料を支払う必要があります。 ちなみに、自筆証書遺言の作成には手数料は発生しません。作成した遺言を法務局で保管してもらう場合のみ、相応の手数料が発生するものの、自宅で保管するなら「紙代とインク代」程度で遺言を作成できるでしょう。 とはいえ、遺言書としての効果をより確実に持たせたいのであれば、手数料を支払ってでも公正証書遺言を選択するのがおすすめです。各種書類とともに、事前に用意しておきましょう。 公正証書遺言作成に必要な資料を知って準備しよう 公正証書遺言作成に必要な資料を知って準備しよう 公正証書遺言を作成するためには、さまざまな資料を用意する必要があります。自筆証書遺言と比較すると手間がかかるものの、より確実に遺言を残したいなら、積極的に検討してみてください。法的な知識が少ない方、初めて遺言を残す方にもおすすめです。 自分の場合どのような資料が必要になるのかは、公証役場でも説明してもらえます。自分が考えている遺言内容に基づいて、まずは相談してみましょう。その上で、できるだけ早く必要な書類・資料を集めてみてください。スムーズに手続きを進めていけるのではないでしょうか。

  • 兄弟姉妹は相続にどう関連する?遺言書を残すメリットを知ろう

    終活の一環として、考えておきたいのが「相続」についてです。「どうせ大した財産はないから…」と油断していると、思わぬ親族間トラブルに発展する可能性も。特に「被相続人の兄弟姉妹」について、相続とどう関連するのか知っておきましょう。相続に関する兄弟姉妹の基礎知識と、遺言書の内容や作成するメリットについてまとめます。 相続に兄弟姉妹が関わるケースとは? 相続に兄弟姉妹が関わるケースとは? 相続トラブルを回避するため、まず頭に入れておきたいのが法定相続人の範囲についてです。法定相続人とは、民法で定められた「被相続人の財産を受け継ぐ権利を持っている人」のこと。一定範囲内の血族のうち、優先順位の高い人から法定相続人になれる仕組みです。 「自分が亡くなったあと財産を受け継ぐ人」と言えば、自身の配偶者や子どもをイメージする方も多いのではないでしょうか?しかし法定相続人になる可能性がある人は、それだけではありません。状況によっては、自身の兄弟姉妹、そしてその子どもたちが法定相続人になる可能性もあるのです。 相続が発生した際に、必ず相続人になるのが「被相続人の配偶者」です。一方で、それ以外の血族は、以下の順位に基づいて相続人になるかどうかが判断されます。 第1順位 被相続人の子ども(もしくは代襲相続人)第2順位 被相続人の親など(直系尊属)第3順位 被相続人の兄弟姉妹(もしくは代襲相続人) 第1順位から第3順位までは、「もっとも順位が高い人のみ」が相続人になれます。つまり、兄弟姉妹が相続人になるのは以下のようなケースです。 ・両親や祖父母がすでに亡くなっていて、被相続人に子どもがいない・被相続人の両親・祖父母・子どもがすでに亡くなっていて、孫もいない・第1順位と第2順位に当てはまる人がいても、その全員が相続放棄をした 被相続人の両親・祖父母・子どもがすでに亡くなっている場合でも、孫がいれば、子どもの代襲相続人として相続権を持ちます。このため、兄弟姉妹が相続人になることはありません。同順位の相続人のすべてが相続放棄を選択した場合、相続権は次の順位へと回されます。この場合、子どもや親が生存していても、兄弟姉妹が相続人になる可能性があるでしょう。 このように、兄弟姉妹と相続は、決して無関係ではありません。特に昨今は、子どもを持たない選択をする夫婦も増えてきています。相続順位が兄弟姉妹にまで回る可能性がある点を踏まえて、さまざまな準備を整えていくことが大切です。 兄弟姉妹が相続人になる場合の注意点とは? 終活の一環として相続について考える場合、「すでに両親や祖父母が亡くなっている」というケースも多いでしょう。この場合、自身に子どもや孫がいなければ、兄弟姉妹が相続人になる可能性は高いと考えられます。兄弟姉妹が相続人になると想定される場合、以下の点に注意しましょう。 ★1.配偶者に全財産を残せない 子どもがいない夫婦の場合、「自分が亡くなったあとは配偶者に全財産を譲りたい」と考える方も多いはずです。しかし先ほどもお伝えしたとおり、子どもや親がいなければ、兄弟姉妹が法定相続人に。自分の兄弟姉妹が遺産の分割を希望した場合、配偶者はそれを受け入れざるを得ないのです。 ちなみに、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、配偶者が遺産の4分の3、兄弟姉妹が遺産の4分の1を受け取る権利を持ちます。「遺産のほとんどが不動産」という場合、兄弟姉妹に遺産を分割するため、売却せざるを得ない可能性も。たとえそれが、夫婦にとっての終の棲家であっても状況は変わりません。配偶者が、住む場所を失うリスクもあるでしょう。 ★2.戸籍収集が大変になる 兄弟姉妹への遺産分割に問題がない場合でも、手続きのために必要な戸籍収集は、決して簡単ではありません。子どもや親が相続人になるケースと比較して、難易度はアップします。 兄弟姉妹が相続人になる場合、第1順位や第2順位に当てはまる人が存在しないことを証明するための書類が必要です。具体的には、被相続人の戸籍のすべてや、両親の戸籍謄本の一式を準備する必要があるでしょう。兄弟姉妹の中にすでに亡くなっている人がいる場合、その人の分の戸籍謄本一式も必要になります。 ★3.相続税が高い 兄弟姉妹が相続人となって財産を受け継ぐ場合、相続税は20%割り増しになります。遺産分割に納得していても、相続税が原因でトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。 遺言書を残すメリットとは? 兄弟姉妹が相続人になる場合、遺言書を残すメリットは以下のとおりです。 ・配偶者に全財産を相続させるよう指定できる・兄弟姉妹の相続税負担に配慮した遺産分割を指定できる 兄弟姉妹が相続人になる場合の大きな特徴は、「遺留分を請求する権利を持たない」という点です。遺留分とは、遺産のうち最低限相続できると定められている取り分のこと。たとえ遺留分が侵害されても、それを請求する権利は、兄弟姉妹に認められていないのです。つまり、法的に有効な遺言書にて「自身の配偶者に全財産を譲る」という文言を残しておけば、兄弟姉妹に財産を受け継ぐ権利は発生しません。自身が亡くなったあとの配偶者の生活を守れるでしょう。 ある程度年齢を重ねていると、兄弟姉妹としての関係性が希薄になっているケースは多いものです。配偶者と兄弟姉妹の間の話し合いが、スムーズに進むとは限らないでしょう。遺言書があれば、遺産分割協議を行う必要はなく、親族間トラブルが発生する恐れもありません。 また遺言書であれば、相続税負担に配慮する形で、誰に何を残すのか指定できます。兄弟姉妹への配慮とともに、大切に思う気持ちも伝えやすくなります。自分自身が気持ちよく旅立つためにも、できる準備は整えておくのがおすすめです。 兄弟姉妹と相続への関わりを知り具体的な準備を整えよう 兄弟姉妹と相続への関わりを知り具体的な準備を整えよう 自身が亡くなったあと、誰が財産を相続するのか、事前に考えておきましょう。兄弟姉妹が相続人になる場合、「関係が薄い兄弟姉妹よりも、生活をともにしてきた配偶者に全財産を残したい」と思うのは当然のこと。この場合、遺言書を残しておくのがおすすめです。シンプルな内容でも、十分に効果を発揮してくれます。自身が亡くなったあとの配偶者の生活を守りやすくなりますし、余計なトラブルでストレスを抱えるような恐れもありません。 実際の遺言書の内容については、弁護士や司法書士といった専門家に相談しつつ、決定するのがおすすめです。実際に誰が相続人になる可能性が高いのか、またどういった点に配慮して遺言書を残すべきなのか、的確にアドバイスしてもらえるでしょう。専門家の協力のもとで、自身の希望を叶える遺言書を用意してみてください。

  • 親の死後に発見されたビデオメッセージ…扱い方と注意点は?

    自身の最期の想いをしっかりと伝えるため、終活に取り組む方も増えてきています。遺書やビデオメッセージを残して亡くなる方も多いのではないでしょうか。今回は、親がビデオメッセージを残して亡くなった場合の、扱い方や注意点について解説します。「どうすれば良いのだろう」と悩んだときには、ぜひ参考にしてみてください。 まずはビデオメッセージを確認してみよう 親の死後、ビデオメッセージが残されていることがわかったら、まずはその内容を確認してみましょう。「自分の死後に、その想いを確認してもらうために」という理由で、ビデオメッセージを残す方は増えてきています。自筆証書遺言のように「内容を確認する前に検認手続きが必要になる」ということはありませんから、自分たちの好きなタイミングで確認して大丈夫です。 とはいえ、故人が残したビデオメッセージを、長期間放置するのはおすすめできません。終活の一環としてビデオメッセージを残している場合、葬儀への希望や連絡を取って欲しい人、自身が残す財産についてなど、重要な情報が含まれているケースも多いからです。できるだけ早く確認し、ビデオメッセージを残した人の希望を叶えられるよう準備しましょう。 ビデオメッセージに「遺言書」としての法的拘束力はない ビデオメッセージの内容を確認したところ、財産相続に関わる遺言書のような内容が見つかるケースもあるでしょう。この場合に重要なのは、「ビデオメッセージに遺言書としての効力はない」という事実です。 紙に書いただけの遺言書と、本人は直接語りかけているビデオメッセージを比較すると、「ビデオメッセージの方が自身の想いを伝えやすいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし遺言書とは、非常に強い法的拘束力を持つもの。間違いなく運用されるよう、厳しいルールが定められているのです。残念ながらビデオメッセージは、遺言書のルールをクリアしていません。 もしビデオメッセージに財産相続にまつわる内容が収録されていたら、遺言書が残されていないかどうか探してみましょう。ビデオメッセージには遺言書のような効力がない事実を知った上で、「遺言書の内容を補完する目的」でビデオメッセージを残す方もいます。この場合、法的に有効な遺言書が見つかれば、その内容のとおりに遺産を分割できるでしょう。自宅はもちろん、公証役場にも確認してみてください。エンディングノートが残されていれば、遺言書についても記載されている可能性があります。 遺言書が残されていない場合、遺産分割協議を行いましょう。法定相続人全員で、遺産をどう分割するか協議するための機会です。ビデオメッセージに法的拘束力はないとはいえ、相続人全員が納得しているのであれば、被相続人の遺志を相続に反映できます。一方で、1人でも納得できない人がいれば、ビデオメッセージどおりの遺産分割は不可能です。話がまとまらなければ、法定相続割合に従って遺産を分けることになるでしょう。 親からのビデオメッセージ、活用方法は? 親からのビデオメッセージ、活用方法は? 遺言書のような法的拘束力がないとはいえ、親からのビデオメッセージは生前の想いを届けてくれる特別なツールです。ぜひ以下のような場面で活用してみてください。 ★お葬式にて 亡くなった親が残してくれたビデオメッセージは、生前の姿を楽しませてくれるもの。身近な人が故人に関するエピソードを披露するのも良いですが、その人が実際に動き、話している姿を収録したビデオは、特別な意味を持つでしょう。 お葬式で流されるビデオメッセージは、近年「エンディングムービー」として人気を集めています。故人の人となりを知ってもらうため、またありし日の姿を思い描いてもらうために、ひと役買ってくれるはずです。葬儀の際の演出として、ぜひ活用してみてください。映像をきっかけに、思い出話も広がるでしょう。 ★遺産分割協議にて ビデオメッセージに法的拘束力はありませんが、遺産分割協議の際に、参加者全員で確認するのもおすすめです。たとえ法的な意味はなくても、故人がどのように考えていたのか、知るためのヒントとして活用できるでしょう。 たとえば「相続人のうち、1人だけに全財産を譲る」という内容の遺言を聞いたとき、財産を相続できない相続人がすぐに納得するのは難しいでしょう。しかし故人には、故人がそう決めただけの理由があったはず。ビデオメッセージを通じてその理由に触れられれば、遺言の内容を納得して受け入れやすくなるのではないでしょうか。 遺産分割協議は、親族間のトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。ビデオメッセージで親の言葉を直接耳にすることで、トラブル予防効果も期待できます。 ★故人を思い出すきっかけとして ビデオメッセージの良いところは、何度でも繰り返し楽しめる点です。親が亡くなってすぐの時期は、葬儀や埋葬でバタバタしがち。「悲しみに浸る間もない」というのが正直なところです。 さまざまな手続きが終わり、ほっと一息つく頃になると、急に寂しさが襲ってくることも。こんなときには、ぜひビデオメッセージを見返してみてください。ビデオの中では、生前と変わりない元気な姿や表情を見せ、懐かしい声を聞かせてくれるはずです。あれこれと思い出すきっかけになるでしょう。 ビデオメッセージは、兄弟姉妹が集まったときに流すのもおすすめです。家族写真で過去を振り返るのも良いですが、動いている姿はよりいっそう記憶を刺激してくれるでしょう。大切な家族と、懐かしい思い出話に花を咲かせてみてください。 親からのビデオメッセージの注意点は? 親からのビデオメッセージを見つけた際の注意点は、「親の本音」を冷静に受け止めるということです。特に相続に関する内容が含まれている場合、「自分にとっては到底納得できない」と思う可能性もあるでしょう。ビデオメッセージをきっかけに、モヤモヤした感情を抱くこともあるかもしれません。 とはいえ、親の本音に対して感情的にぶつかっても、話は前に進みません。親の考えは親の考えとして受け止めた上で、自分自身がどう考え行動するのかを決定してみてください。ビデオメッセージの特徴を頭に入れた上で、納得できる道を探るのがおすすめです。 ビデオメッセージを見つけたら冷静な対応を ビデオメッセージを見つけたら冷静な対応を 亡くなった親が残したビデオメッセージを見つけたら、ぜひ冷静に対処してみてください。相続に関する内容については、正式な遺言書が残されているかどうかで、対応が変わってきます。ビデオメッセージに込められた親の想いを理解しつつ、これから先についてもしっかりと検討しましょう。故人を思い出すためのツールとしても、ぜひ役立ててみてください。

  • 公正証書遺言を自力で作成したい!流れと注意点を解説

    自筆証書遺言よりも、より確実に最期の意思を届けられる公正証書遺言。弁護士や司法書士に作成をサポートしてもらうケースも多いですが、費用節約のため「自分でやりたい!」という方もいるのではないでしょうか。公正証書遺言を自力で作成するためのポイントを、わかりやすく解説します。 そもそも公正証書遺言とは? そもそも公正証書遺言とは? 公正証書遺言とは、遺言を残したい人が公証人の前で内容を伝え、それをもとに公証人が遺言書を作成するという、遺言書普通遺言方式の一つです。自筆証書遺言とは違って、遺言内容を自分で記す必要はありません。自分の口で伝えるだけで、専門家が正式な書類に仕上げてくれるというメリットがあります。 公正証書遺言の場合、「遺言書の形式が一定のルールを満たしていないため、法的に無効になる」といった事態はまず起こりえないでしょう。終活ブームの今、自筆証書遺言を残す方も増えてきていますが、「より確実な遺言書を」と願う方々には公正証書遺言の方が人気です。 公正証書遺言を残すために欠かせない公証人は、長年、裁判官や検察官として実務を行ってきたような、いわゆる「法律のプロ」が担当しています。また公正証書遺言の場合、自身が亡くなったあと、相続人となった家族が「検認」の手続きをする必要はありません。 「自筆証書遺言よりも面倒…」といった理由で敬遠されてしまうケースもありますが、メリットも多い遺言形式です。ぜひ自分で作成する方法をチェックして、挑戦してみてください。 公正証書遺言作成の流れ ではさっそく、公正証書遺言を作成するための流れについて確認していきましょう。 1.公証役場に連絡し、相談のための予約を取る2.予約の日時に公証役場を訪れ、公証人と遺言内容について確認する3.必要書類をそろえて、公証役場に提出する4.遺言を作成する日程を決める5.遺言作成日に、証人2人とともに公証役場を訪れる6.公証人に遺言内容を伝える7.遺言者と証人が内容を確認し、署名押印する8.公証人が署名押印して、遺言書の完成 公正証書遺言を作成する場合、公証人との間での事前打ち合わせが必要です。スケジュールに余裕を持って、話を進めていきましょう。また公正証書遺言を残す際に必要な書類は以下のとおりです。 ・本人の印鑑証明書・戸籍謄本・本人確認資料(※顔写真入り)・受遺者の住民票(※法定相続人以外に財産を残したい場合)・固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書(※遺産に不動産が含まれている場合)・登記簿謄本(※遺産財産に不動産が含まれている場合)・証人に関する資料(氏名・住所・生年月日・職業を記載)・証人の認印 公正証書遺言を残すために必要な書類は、どういった内容の遺言書を残すのかによっても違ってきます。自分の場合はどの書類を用意すれば良いのか、遺言内容の打ち合わせをする際に、公証人に確認しておきましょう。 また公正証書遺言を残すためには、公証役場に手数料を支払わなくてはいけません。金額は遺言を残したい財産の総額によって違ってきます。具体的な金額については、以下を参考にしてみてください。 100万円以下 → 5,000円100万円~200万円以下 → 7,000円200万円~500万円以下 → 11,000円500万円~1,000万円以下 → 17,000円1,000万円~3,000万円以下 → 23,000円3,000万円~5,000万円以下 → 29,000円5,000万円~1億円以下 → 43,000円※財産が1億円以下の場合、手数料(遺言加算)11,000円が追加。※財産が1億円を超えた場合は5,000万円ごとに13,000円を追加。※3億円を超えた場合は5,000万円ごとに11,000円が追加。※10億円を超えた場合は5,000万円ごとに8,000円が追加。 仮に4,000万円の財産に関する遺言書を作成した場合、公証役場に支払う手数料は29,000円+11,000円(遺言加算)=40,000円です。また遺言で複数の相続人を指定する場合、相続人別に手数料が発生するので注意しましょう。同じ4,000万円の財産を相続人2人にそれぞれ3,000万円と1,000万円渡したい場合、手数料は23,000円+17,000円+11,000円(遺言加算)=51,000円です。 自分で公正証書遺言を作成する際の注意点3つ 自分で公正証書遺言を作成する場合、以下の3つのポイントに注意してください。 ★証人2人は誰でも良いわけではない 公正証書遺言を残すためには、証人を2人用意しなければいけません。未成年者や推定相続人、遺言で財産を受け取る予定の人や公証人の身近な人は証人になれないため、注意しましょう。遺言の内容を耳にする立場ですから、信頼できる相手を見つけることが重要です。 自分で証人を用意できない場合、公証役場にお願いして紹介してもらうことも可能です。この場合、証人1人につき10,000円~20,000円の御礼を支払う必要があります。 ★公証人は遺言の内容にアドバイスしてくれるわけではない 公正証書遺言を残すためには、事前に公証人との間で、相談する必要があります。とはいえこちらは、あくまでも遺言の「形式」や「法律」に関する確認です。遺言の具体的な内容について、相談に乗ってもらえるわけではありません。 たとえば、 ・親族間トラブルを回避するためにはどうすれば良いのか?・誰にどの財産を譲れば良いのか?・相続税は発生するのか? このような内容についての相談は不可能です。 公証人の仕事は、あくまでも法的に有効な遺言書を残すこと。たとえ遺言内容に誤りや不都合があったとしても、法的に問題なければ、そのまま遺言書として残されるでしょう。法的に有効な遺言書が持つ効力は非常に大きいですから、自身の死後、結果として本来の意図とは異なる形で遺産分配が行われてしまう恐れもあります。 自力で公正証書遺言を作成する場合、相続や法律に関する基礎知識は、事前にしっかりと身につけておきましょう。 ★遺留分への配慮が重要 「公正証書遺言を残したい」と思う方の中には、「自身の死後、親族間で争いが起きるのを回避したい」という方も多いはずです。余計なトラブルを回避するためには、ぜひ遺留分にも配慮した内容を心掛けてみてください。 たとえ公正証書遺言に、「相続人の1人のみに全財産を譲る」と記したとしても、その他の法定相続人には遺留分を請求できる権利があります。最初から遺留分を踏まえた内容を記しておけば、トラブルが発生するリスクを少なくできるでしょう。 公正証書遺言は必要に応じて専門家に相談を 公正証書遺言は必要に応じて専門家に相談を 公正証書遺言は、自力作成も可能です。とはいえ、その内容については自分自身で決定し、必要な手続きを進めていかなくてはいけません。専門家に依頼すれば、コストはかかりますが自身の意思を遺言内容に反映させやすくなるでしょう。メリット・デメリットを踏まえて、自分にとってベストな作成方法を検討してみてください。

  • 「遺言書情報証明書」とは?記載内容や使い方・請求方法まで

    令和2年より、自筆証書遺言を法務局に保管できる「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしています。この制度を利用するなら、ぜひ「遺言書情報証明書」についても、基礎知識を学んでおきましょう。遺言書情報証明書とはどのような書類で、相続手続きにおいてどう使えば良いのでしょうか。必要になった場合の請求方法まで、詳しく紹介します。 遺言書情報証明書とは? 遺言書情報証明書とは? 遺言書情報証明書とは、遺言書の内容を証明できる重要書類の一つです。証明書には、以下のような情報が含まれています。 ・遺言者の氏名・出生年月日・住所および本籍(または国籍等)・遺言書が作成された年月日・遺言書の保管された年月日・遺言書が保管されている遺言書保管所・保管番号・受遺者の氏名と住所(※受遺者がいる場合のみ)・遺言執行者の氏名と住所(※遺言執行者がいる場合のみ)・遺言書の画像情報(※目録を含む) つまり、遺言書情報証明書を取得すれば、遺言書に記された情報を把握できるというわけです。 令和2年の自筆証書遺言書保管制度のスタートにより、遺言書情報証明書にも注目が集まっています。というのも、遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合、相続人は遺言書の原本を目にする機会がないため。画像データとして保管されていた遺言書の内容を遺言書情報証明書として取得し、各種相続手続きを進めていくことになります。 「遺言書が原本ではなくても相続手続きが可能なのか?」と不安を感じる方もいるでしょうが、遺言書情報証明書であれば大丈夫です。銀行に持ち込んで被相続人の預金を解約することも、不動産の相続登記を行うことも可能になります。 遺言書情報証明書のメリット まだまだ新しい制度のため、「遺言書情報証明書がなぜ必要なのかよくわからない…」と感じる方も多いのではないでしょうか。遺言書情報証明書を利用するメリットについてお伝えします。 遺言書開封時の検認が必要ない 自筆証書遺言で遺言書が残されている場合、相続が発生しても、すぐにその内容を確認できません。偽造や変造を防ぐため、家庭裁判所にて「検認」と呼ばれる手続きが必要になります。検認とは、遺言書の内容を裁判所で最初に確認し、問題がないことを証明するためのもの。遺言書の公平性や正確性を保つために欠かせない手続きではありますが、「申し立てから検認の完了まで、時間がかかってしまう」というデメリットがあります。 被相続人が同じ自筆証書遺言を残していた場合でも、法務局に預け、相続人が遺言書情報証明書を取得する形式であれば、検認は必要ありません。法務局から入手した証明書をその場ですぐに確認し、その内容のもと、具体的な相続手続きをスタートできるでしょう。 自筆証書遺言書保管制度で法務局に預けられた遺言書は、実際に相続が発生するまで、遺言者以外はその内容を確認できない仕組みになっています。保存された画像データを提示する遺言書情報証明書であれば、偽造や変造の恐れはありません。よって検認手続きが不要となるわけです。被相続人にとっては、より正確な遺言書を残せるというメリットがありますし、相続人にとっては相続手続きの手間を省けるというメリットが発生します。 全国どこからでも交付請求ができる ここまでお伝えしてきたとおり、遺言書情報証明書は、遺言書の原本から作られた画像データです。その情報は、日本全国どの遺言書保管所からでも手続きが可能で、楽に取得できるでしょう。わざわざ遠方まで出向く必要もありませんし、相続人にとって利便性の高い保管所を選択することも可能です。こちらも、相続手続きの手間削減につながるでしょう。 3.自筆証書遺言書保管制度のメリットも多い遺言書情報証明書は、自筆証書遺言書保管制度に付随する証明書です。自筆証書遺言書保管制度を利用するメリットも、決して少なくありません。 たとえば自筆証書遺言書保管制度を使えば、遺言者が亡くなった際に、遺言書の存在をあらかじめ指定しておいた相続人等に通知できます。自筆証書遺言の場合、せっかく遺言書を残しても、発見されないまま終わってしまうというケースも存在しています。通知があれば、このようなリスクはなくなるでしょう。 また実際に遺言書を作成して法務局に保管する際には、窓口にて遺言書の形式ルールチェックを受けられます。遺言書のルールが守られておらず、法的に無効と判断される恐れがある場合、アドバイスをもとに訂正できるでしょう。遺言の内容そのものへのアドバイスではありませんが、遺言書無効リスクを低減できるはずです。 これらのメリットを頭に入れて、ぜひ遺言書情報証明書および自筆証書遺言書保管制度の活用について検討してみてください。 遺言書情報証明書を取得するための流れ 遺言書情報証明書を相続人が取得できるようになるのは、遺言者が亡くなったあとです。生存中は、遺言書の存在を知っていても証明書の取得はできませんので注意してください。取得手続きは、以下の流れで進めていきます。 1.交付請求を行う遺言書保管所を決定する2.必要事項を記載し、交付請求書を作成する3.希望する遺言書保管所を予約する4.予約日時に遺言書保管書へ行き、交付請求書と必要書類を提出する5.証明書を受け取る 交付請求を行う遺言書保管所は、日本全国どこでも選べます。ただし実際に保管所に出向いて請求手続きを行う場合、事前予約が必須。「わざわざ時間を合わせるのが難しい」という場合には、郵送での手続きを選んでみてください。この場合、予約も訪問も必要ありません。 遺言書情報証明書を交付してもらうために必要な書類は、以下のとおりです。 ・遺言者の死亡を確認できる書類(戸籍謄本等)・請求者の住民票の写し・法定相続情報一覧図の写し・相続人である事実が確認できる戸籍謄本や法人の代表者事項証明書など・身分証明書(顔写真付き)・手数料(1通につき800円) 法定相続情報一覧図の写しがない場合は、遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の住民票の写しを用意しましょう。二度手間にならないよう、必要な書類についてあらかじめしっかりと確認した上で、手続きを進めてください。 遺言書情報証明書を取得して相続手続きをスムーズに 遺言書情報証明書を取得して相続手続きをスムーズに 遺言者が自筆証書遺言書保管制度を利用して遺言を残していた場合、相続手続きを進めるためには遺言書情報証明書を取得する必要があります。取得時には手間と時間、そして手数料が発生しますが、検認手続きは不要に。そのまま相続手続きを進めていけます。基本的な知識を身につけた上で、制度を活用してみてください。

  • 妻に残すビデオメッセージは意味がないって本当?正しく遺言を残すために

    スマートフォンで誰でも手軽にビデオメッセージを残せるようになった今、「自身の最期の思いを映像で届けたい」と考えるからも増えてきています。特に長年連れ添った妻に対するメッセージは、「形式的な遺言書ではあじけない…」と感じる方も多いようです。とはいえ、「妻に残すビデオメッセージには意味がない」という意見を見かけるのも事実。ビデオメッセージや遺言が持つ意味、そして正しい形式について確認しておきましょう。 妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない 妻に残すビデオメッセージに「法的」な意味はない ビデオメッセージでは、画像を見ている人に対して、自身の言葉で直接語りかけられます。自身の口から発せられる言葉や、その表情や雰囲気など、さまざまな情報をダイレクトに届けられるでしょう。しかし残念ながら、ビデオメッセージに法的な効力は発生しません。ビデオメッセージの中で、たとえ本人が「妻に全財産を相続させたい」と発言したとしても、そこに法的な拘束力は存在しないのです。妻以外の相続人がその内容を認めなければ、自身の遺志を相続に反映させるのは難しいでしょう。 そもそも遺言書とは、自身が亡くなったあとの相続について、希望を伝えるための正式な書類です。法的に有効な形で遺言書が残されていた場合、その内容は他の何よりも優先されます。たとえば、法定相続人以外を相続人として指定したり、法定相続分に囚われない相続割合を指定したりすることも可能に。しかし、このような強い効力を持つ書類だからこそ、「法的に有効」と認められるためにはさまざまな条件をクリアする必要があるのです。残念ながら、ビデオメッセージではその条件をクリアできません。 インターネットで「遺言」について調べてみると、「妻や家族に遺言としてビデオメッセージを残しても、意味がない」という意見を目にする機会もあるでしょう。これは、その法的根拠に注目した意見だと言えます。自身のメッセージに法的拘束力を持たせたいのであれば、ビデオメッセージではなく、正式な形式で作成された遺言書を活用してみてください。 ビデオメッセージは相続トラブル予防に効果的 先ほどもお伝えしたとおり、妻に残すビデオメッセージに法的な意味はありません。しかし、以下のような側面から見ると、ビデオメッセージの作成は非常に効果的です。 ・親族間の相続トラブルを予防したい・直接伝えられなかった素直な気持ちを届けたい・自身の死後、必要な情報をわかりやすく伝えたい ビデオメッセージの有用性として、もっとも注目されているのが相続トラブルの予防効果です。遺言書の内容を補完するための情報として、ぜひビデオメッセージを活用してみてください。 遺言書においては、被相続人の遺志を最大限に反映した内容を記すことが可能。とはいえ、遺言内容によっては、親族間で不満が噴出してしまう可能性もあるでしょう。「妻に全財産を相続させる」という内容を記した場合、遺産を受け取れない相続人が出てくるはずです。遺言書の内容に沿って遺産分割した場合でも、その後の関係性に溝が生じてしまうケースは少なくありません。 ここで活躍するのが、ビデオメッセージです。なぜそのような内容の遺言を残したのか、自身の言葉で直接語り掛けましょう。遺言書とは違い、ビデオメッセージなら、自分の言葉で素直な思いを届けられます。たとえ自身に不利な内容の遺言であっても、「そこに込められた思いや理由が明らかになれば納得しやすい」と感じる方は多いものです。ぜひ映像の強みを最大限に活用してみてください。 また相手が妻となると、「お互いに照れくさくて、なかなか素直な気持ちを伝えられていない」という方も多いのではないでしょうか。最後に残すビデオメッセージは、素直な思いを残すチャンスでもあります。直接言うのが恥ずかしい言葉も、ぜひ素直に語りかけてみてください。自分が亡くなったあとの、妻の生活を支える力になってくれるでしょう。 最後に、「必要な情報をわかりやすく伝えられる」という意味でも、ビデオメッセージは非常に効果的です。人が亡くなったあと、さまざまな雑務が発生するもの。そのために必要な情報を、ぜひビデオメッセージで残しておいてください。貴重品が保管されている場所や、連絡してほしい相手、遺言書のありかなど、手紙では伝えにくい点も、言葉でならわかりやすく伝えられるはずです。 このように、法的な拘束力はなくても、ビデオメッセージを残すことには意味があります。遺言書が「法律面」で自身の死後の手続きをサポートしてくれる存在なら、ビデオメッセージは「感情面」で遺族を支える柱になってくれるでしょう。それぞれが持つ意味をしっかりと把握した上で、状況に合わせて併用するのがおすすめです。 ビデオメッセージの作成方法・残し方は? 妻や家族に残すビデオメッセージは、自身の好きなスタイルで作成できます。自分のスマートフォンを使って撮影するだけでも、心のこもったメッセージになるでしょう。より本格的なメッセージを作成したい場合には、プロに依頼するのもおすすめです。カメラ写りや編集にまでこだわった、特別な「作品」として残せるでしょう。自分で作成する場合と比較してコストは高くなってしまいますが、プロのアドバイスを受けられるというメリットもあります。 実際にビデオメッセージを作成したら、ぜひその残し方にも気を配ってみてください。せっかくビデオメッセージを作成しても、自身の死後、動画が発見されなければ意味がありません。確実に動画を見てもらえるよう、以下の方法を検討してみてください。 ・自身が亡くなったあと、指定先に動画を転送してくれるサービスを利用する・わかりやすい場所に動画を保存し、エンディングノート等でそのありかを伝える・作成からお届けまで、ワンストップサービスを提供してくれる業者を利用する どの方法にもメリットとデメリットがあります。ぜひ、自身の思いをより確実に届けるための対策を取り入れてみてください。 妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を 妻に残すビデオメッセージに意味はある!遺言とともに正しく活用を 「妻に残すビデオメッセージに意味がない」という意見を目にすると、「だとしたら残しても残さなくても同じ」「遺言書だけで十分」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、自身の言葉と表情で直接思いを届けられるビデオメッセージが持つメリットは、決して少なくありません。たとえ法的な意味はなくても、遺言書とともに活用し、親族間の相続トラブル予防のために役立てることをおすすめします。 ビデオメッセージの残し方や保管方法もさまざまです。まずはどのような形でどんなメッセージを残したいか、考えるところからスタートしてみてください。終活の一歩と言えるでしょう。

  • 生前贈与のメリットとは?遺言による遺贈と迷ったときの基礎知識

    相続税対策のため、遺産にまつわる親族間トラブルを避けるため、有効だと言われているのが「生前贈与」です。具体的にどのような制度で、どういったメリットが期待できるのでしょうか。注意点も踏まえて解説します。遺言による遺贈との違いや、どちらにするべきか悩んだ場合の考え方も紹介。相続に関する不安を解消するため、ぜひ参考にしてみてください。 そもそも生前贈与とは?3つのメリット解説 生前贈与とは、将来相続財産になる見込みの遺産を、生前に贈与することを言います。贈与をする側と受ける側が贈与契約を結び、財産をやりとりする方法です。生前贈与のメリットは、以下を参考にしてみてください。 ★メリット1「自身の意思を明確にできる」 先ほどもお伝えしたとおり、生前贈与とは、自身が生きている間に相手を指定し、自分の財産を受け取ってもらう方法です。自身の意思を明確に示せるため、死後に発生する相続よりも、親族間トラブルが発生しにくいというメリットがあります。たとえば、「よく世話をしてくれている長男の嫁に財産を残してやりたい」といった場面においても、自らの口で状況を説明可能。その他の親族にも、納得してもらいやすいでしょう。 また遺言書を残さないまま亡くなってしまった場合、被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つのは、法定相続人のみです。先ほどの「長男の嫁」や「孫」、「内縁の妻」など、相続権を持たない人に財産を残すことが難しくなってしまいます。 生前贈与なら、このような縛りは発生しません。誰にどれだけの財産を受け継いでほしいのか、自身の意思で判断できます。 ★メリット2「相続税対策に有効である」 被相続人が亡くなった際に、相続人に対して課せられるのが相続税です。相続財産の総額が一定以上になれば、税金を支払わなくてはいけません。生前贈与で事前に財産を渡しておけば、その分相続財産は減らせるでしょう。相続税を少なくする節税効果が見込めるのです。 もちろん、生前贈与の場合も、一定金額以上を超えれば贈与税が発生します。贈与税の基礎控除額は毎年110万円。この範囲内で生前贈与を繰り返していけば、贈与税を発生させず、相続税を減らす効果が期待できるでしょう。1年に110万円でも、10年継続できれば1,100万円になります。この110万円という控除額は「1人当たり」の数字ですから、生前贈与する相手が増えれば、その分相続財産を減らすスピードも速くなるはずです。 ★メリット3「自分の好きなタイミングで財産を渡せる」 相続の場合、財産を渡せるのは自身の死後となります。残念ながら、そのタイミングを自分自身で決定するのは難しいでしょう。その点生前贈与であれば、自分の住金タイミングで実行できるというメリットがあります。 たとえば、 ・孫の進学費用のため・子どものマイホーム資金援助として・お祝い金として など、お金が必要になったタイミングで援助してあげられるでしょう。孫の進学費用や住宅資金援助といった目的の場合、非課税で渡せる金額も大きくなります。 生前贈与の行い方と注意点 生前贈与の行い方と注意点 上で解説したとおり、生前贈与にはさまざまなメリットがあります。しかし実際に行う際には、いくつか注意点もあるので頭に入れておきましょう。生前贈与の具体的なやり方とともに紹介します。 ★1.誰にどのような目的でいくら贈与するのか決定する 生前贈与を決めたら、まずは誰にどのような目的で、いくら贈与するのかを決定しましょう。相手との関係性や目的、そして金額によって、利用できる非課税制度が違ってきます。相手と目的が決まったら、ぜひ利用できる制度がないかどうか確認してみてください。その上で、「非課税で贈与できるぎりぎりの金額」を狙ってみるのもおすすめです。 ★2.贈与税の課税方式を決定する 一定金額を超えた贈与契約に対して発生する贈与税。その課税方式は2パターン用意されており、自分自身で選択できます。 1つめのパターンは「暦年贈与」。1年間で贈与された金額の合計から基礎控除額(110万円)を引いて、超過分に対して贈与税が課せられる方式です。2つめのパターンは「相続時精算課税制度」と言い、2,500万円までを限度に贈与税が非課税になるかわりに、相続が発生した際に相続税が発生する仕組みです。 どちらにもメリット・デメリットがあるため、贈与する側・される側にとって、より良い方式を選んでください。 ★3.贈与契約書を作成する 贈与そのものは「あげる」「もらう」といった行為のみで完結しますが、財産の移動に関する証明がなければ、税務署に対して適切に説明できません。税務署からの指摘にしっかりとした説明ができなければ、余計なトラブルを招いてしまう恐れがあります。いつ誰が誰にどんな財産を贈与したのか、契約書にして残しておきましょう。 ★4.状況に応じて贈与税の申告を行う 贈与を受けた側は、状況に応じて贈与税の申告を行います。暦年贈与で110万円を超える贈与を受けたときや、相続時精算課税制度を選択した場合は、忘れないように申告してください。 ★生前贈与の注意点 生前贈与で暦年贈与を選択した場合、「死亡日より前の3年間に行われた暦年贈与は、相続税の対象に含まれる」というルールがあります。生前贈与加算と呼ばれるルールで、亡くなるタイミングによっては、生前贈与のメリットがなくなってしまう恐れもあるでしょう。こちらについても、ぜひ頭に入れておいてください。 遺言による遺贈と生前贈与、迷ったときはどうすれば良い? 遺言による遺贈と生前贈与は、どちらも「相続に自分の意思を反映させるための方法」と言えます。どちらが良いのか悩む方もいるでしょうが、両方をうまく組み合わせていくのがおすすめです。 現金や有価証券といった財産は、比較的生前贈与に向いています。誰に何をどの程度分配するのか決まっているのであれば、ぜひ生前贈与も積極的に検討してみてください。一方で土地やマイホームといった不動産は、暦年贈与の基礎控除を利用するのが難しく、生前贈与には注意が必要と言えるでしょう。 遺贈と生前贈与は、どちらの方が優れているというわけではありません。悩んだときには、遺産の性質に合わせて、専門家に相談しながら検討していくのがおすすめです。 生前贈与について正しく知り活用を 生前贈与について正しく知り活用を 生前贈与をうまく使えば、相続に関する各種トラブルを軽減できる可能性があります。終活について検討し始めたら、ぜひ生前贈与についても考えてみてください。「遺書」だけではなく、生前贈与まで視野に入れることで、「誰にどう財産を残すのか?」という視点は広がるはずです。ぜひ後悔のない相続について、検討してみてください。

  • 親が亡くなり遺言が見つかった!相続の進め方を解説

    終活ブームの今、遺言書を残して亡くなる方も多くなっています。とはいえ、いざ自分の親が亡くなり、遺言書が発見された場合にどう行動すれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。 今回は遺言書が残されている場合の相続の進め方について解説します。何からすれば良いのかわからない…というときには、ぜひ参考にしてみてください。 まずは「開封」に注意! 遺言書とは、被相続人の最期の思いが詰まった書類です。法的拘束力を持ち、相続人は遺言書の内容に沿って、相続手続きを進めていくことになります。そんな遺言書には、以下のような種類があります。それぞれで取り扱い方法が異なりますから、注意しましょう。 ・自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言 自筆証書遺言の場合、自宅で発見されるケースも少なくありません。身近な人が亡くなりバタバタしている中で、「少しでも早く内容を確認したい!」と思う方も多いのではないでしょうか。しかし封がしてある自筆証書遺言を勝手に開封すると、5万円以下の過料が科される恐れがあります。また「内容を改ざんしたのでは…」と疑われるきっかけにもなりかねないでしょう。 中身を確認するために、必要になるのが家庭裁判所による「検認」の手続きです。検認とは、遺言書の偽造や改ざんを防ぐためのシステムです。未開封の状態で、いったん家庭裁判所に提出しなければいけません。裁判所に指定された日時に、あらためて行われる検認に立ち会いましょう。 検認後に発行される「検認済証明書」は、この先の相続手続きを進めていくために必須です。手続きには少し時間がかかるため、遺言書を発見したら、できるだけ早く家庭裁判所への申し立てを行ってください。 ちなみに、同じ遺言でも公正証書遺言であれば、家庭裁判所による検認の必要はありません。また自筆証書遺言の場合でも、「自筆証書遺言書保管制度」を使い法務局内で保管されていたものであれば、やはり検認は必要ありません。 遺言執行者を確認しよう 遺言執行者を確認しよう 遺言書の内容を確認できたら、まずチェックしたいのが遺言執行者についてです。遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するための手続きを進めていく人のこと。遺言書で指定されていたら、まずはその人が役割を担ってくれるか確かめなければいけません。特に指定されていない場合は、家庭裁判所に選任してもらえます。 家庭裁判所に選任してもらう場合でも、相続人が信頼できる遺言執行者を指定できます。「家庭裁判所に勝手に指定されたくない」という場合には、事前に許可をもらった上で、信頼できる相手を遺言執行者として指定できるよう準備しておきましょう。法律上の知識が必要で、相応の責任を求められるため、士業を営む専門家に依頼するのがおすすめです。 遺言執行者が決定したら、その事実を相続人に通知します。いよいよここから、相続の具体的な手続きがスタートします。 遺言執行者による遺言の執行 遺言執行者が決まったら、遺言書の内容に沿って手続きが進められていきます。具体的には、 ・相続財産の引き渡しや管理・相続財産に関係する書類の引き渡しや管理・妨害している者がいれば、その排除・遺言執行に必要な訴訟行為・遺言に基づく財産の処分や売買など といった作業が含まれます。遺言執行者を士業の専門家に依頼した場合、その指示にしたがって手続きを進めていけば大丈夫です。スムーズに遺言を執行できるでしょう。 自分たちで遺言を執行する場合の手続きとは? 遺書の内容が遺贈や遺産分割方法の指定のみで、非常にシンプルな形式の場合、必ずしも遺言執行者は必要ありません。この場合、遺言で指定された内容に沿って、相続人全員が協力して手続きを進めていくことになります。遺言をもとに相続人それぞれの相続割合を明らかにして、遺産の分配を実行しましょう。 必要であれば、登記申請や金銭の取り立ても行います。相続財産を不法に占有している人がいれば明け渡しを求め、移転するよう請求してください。遺言書のとおりに遺産を分配できれば、相続手続きは完了です。 遺言書が見つかった場合の注意点3つ 遺言書が見つかった場合の注意点3つ 遺言書を残す目的のひとつは、相続に関する親族間トラブルの予防です。とはいえ、遺言書が残されていればそれですべて安心というわけではないので、注意してください。具体的な注意点を3つ紹介します。 ★遺言書は本当に有効か? 親が亡くなり遺言書が発見されたとしても、常にその内容が有効とは限りません。遺言書の内容に沿って相続手続きを進めていく前に、その中身が法律的に見て本当に有効なのかどうかを判断しましょう。 専門家のサポートのもとで作られている公正証書遺言の場合、法的効力を持たない恐れはほぼないでしょう。一方で自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、書式や内容の不具合が原因で「法的効力を持たない」と判断される事例も少なくありません。 不意に遺言が見つかったら、その内容が気になるのは当然のこと。しかし実際には、内容だけではなく「本当に遺言書としての効力を持っている書類なのか?」を確かめる必要があります。 万が一、残された遺言書に法的効力がないと判断された場合、その内容も無効に。相続人全員で遺産分割協議を行い、相続手続きを進めていくことになります。 ★遺言書に記載されていない財産はないか? 遺言書が法的に有効だと判断される場合でも、すべての相続財産がもれなく記載されているとは限りません。この場合、遺言書に記載されていない相続財産について、遺産分割協議が必要になります。 ★遺言の内容に納得できない場合はどうなる? 遺言書が法的に有効な形で残されていれば、被相続人はその相続に自身の遺志を最大限反映できます。法定相続分を無視して、特定の人にのみ財産を相続させることもできるでしょう。また本来であれば相続権を持たない人が、財産を相続することもできます。 とはいえ、法定相続とは異なる内容の遺言であればあるほど、「その内容に納得できない…」と感じる人が出てくる可能性もあるでしょう。残念ながら、正しい形で残された遺言の内容は、相続人には覆せません。 ただし兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺留分が認められています。これは、法律で最低限保障されている相続分のこと。遺言書のとおりに遺産が分配された場合でも、遺留分が侵害されていれば請求の上で取り戻せるでしょう。弁護士に相談の上で、適切に対処してください。 遺言書が見つかったらまずは落ち着いて行動を 親が亡くなり遺言書が発見されたら、驚く方も多いのではないでしょうか。勝手に開封するのではなく、まずは落ち着いて行動しましょう。 遺言書を家庭裁判所で検認してもらうためには、1ヶ月以上の時間が必要です。だからといって相続手続きに定められている各種期限が延長されるわけでないので、注意してください。できるだけ早めに、必要な手続きを進めていきましょう。

  • 初めての遺言作成ならぜひ検討を!遺言にまつわる便利なサービス

    子育てがひと段落すると、自分たち夫婦の未来が気になるものです。「そろそろ老後の準備を始めようかな…」と思っている方におすすめなのが、遺言の作成です。自身の最期のメッセージを大切な人たちに届け、また自身の思いを相続に反映させられるでしょう。 終活ブームを迎えている今、遺言作成をサポートしてくれる便利なサービスが多数登場しています。初めての遺言作成で利用したいサービスを紹介するので、ぜひチェックしてみてください。 デジタル遺言サービス デジタル遺言サービス デジタル遺言サービスとは、近年特に注目されているサービスのひとつです。自身の遺言をオンライン上に残しておき、タイミングと相手を事前に指定。自身が設定した条件を満たした段階で、相手のもとにメッセージを届けられます。法的拘束力は持たないものの、自身の思いをより手軽に伝えるための方法として、高く注目されています。 デジタル遺言サービスを利用するメリットは、以下のとおりです。 ・自宅のパソコンやスマートフォンから、いつでも手軽に遺言を残せる・内容を変更する際の手間がかからない・動画でメッセージを伝えられる・オンライン上のログイン情報の管理がしやすい 終活を検討し始めたばかりの方にとって、「遺言は具体的に」と言われても、何をどうすれば良いか戸惑うケースも多いのではないでしょうか。デジタル遺言サービスなら、いつでもどこでも、好きなときに手軽に遺言を残せます。「やっぱり内容を変更したい」と思ったときでも、自分で手間なく作業できるでしょう。自身の思いをまとめるのにも役立つはずです。 また各種SNSやオンラインバンキングなど、自分に万が一のことがあったときのため、「ログイン情報をまとめておきたい」と思う方にも役立ちます。デジタル遺言サービスは、こうした情報の管理・伝達とも相性が良いでしょう。 一方で、デジタル遺言サービスにもデメリットはあります。先ほどもお伝えしたとおり、法的な効力を持たないため、オンライン上に保管されたメッセージが正式な「遺言書」として認められるわけではないのです。デジタル遺言サービスを通じて、正式な遺言書を残したいと思ったときには、また別のサービスの利用が必要になるでしょう。 デジタル遺言サービスには、無料で利用できるものも少なくありません。将来的に正式な遺言書を残したくなった場合に、作成をサポートする機能を備えているところもありますから、自身のニーズに合わせて利用先を検討してみてください。 遺言書案文イメージの無料作成サービス 遺言書案文イメージの無料作成サービス 「どうせなら法的拘束力を持った遺言書を作成したいが、わざわざ専門家に相談するのはちょっと…」と思う方におすすめなのが、遺言書案文イメージの無料作成サービスです。オンライン上で遺言内容に関する質問に回答していくと、その内容を反映した案文イメージを作成。イメージをもとに自身の手で清書すれば、自筆証書遺言が作成できます。 自筆証書遺言とは、遺言作成者が自筆で残す遺言書のこと。自分一人で、自宅でも作成できる遺言書として、近年注目を集めています。費用がかからない点も、自筆証書遺言のメリットと言えるでしょう。 一方で、専門家の手を経ずに作成できるため、内容の不備によるトラブルがあとを絶たないのも事実です。自筆証書遺言の有効性が認められなければ、メッセージとして残せはしても、法的な効力は持たせられません。相続に自身の遺志を反映させるのも難しくなってしまうでしょう。 遺言書案文イメージの無料作成サービスを使えば、自身の希望に沿った内容の案文イメージを手軽に入手できます。あとは自分自身の手で書き写すだけですから、ミスが発生するリスクも少なくなるでしょう。難しいことを考えなくても自筆証書遺言を作れるというメリットもあります。法定相続人の遺留分チェックを受けられるサービスを利用すれば、「親族間に憤りや悲しみを残さない遺言書内容」を作成しやすくなるでしょう。 ただしあくまでも無料サービスのため、対応できる範囲には限界があります。比較的シンプルな内容の遺言には対応できても、そうではない場合、自身の思いを反映させるのが難しくなってしまう恐れも。遺言書作成の初期段階で、自身の思いをはっきりさせるためのステップとして活用するのもおすすめです。 専門家事務所による遺言作成支援サービス 複雑な内容の遺言書を、より確実な形で残したいと思う場合には、専門家の手を借りるのが一番です。遺言書の作成支援サービスは、司法書士事務所や行政書士事務所、弁護士事務所や信託銀行などでも提供されています。 専門家事務所の遺言作成支援サービスを利用した場合、以下のようなサポートを受けられるでしょう。 ・相続財産の調査・法定相続人に関する調査・個別の状況を把握した相談・遺言内容のチェック・遺言書の保管・遺言の執行 実際にどういったサポートを受けられるのかは、依頼先の専門家事務所によって異なります。サービス内容によって専門家報酬の金額は変わってきますから、正式依頼前にしっかりとチェックしておきましょう。 コストはかかりますが、「できるだけ素早く、確実な遺言を残しておきたい」と思う方にはぴったりのサービスです。遺言書作成に強い専門家を探してみてください。 国が提供するサービスにも注目してみよう! 初めて遺言を作成するなら、ぜひ国が提供しているサービスにも注目してみてください。法務局では2020年7月より、自筆証書遺言書保管制度をスタートしています。自分で作成した自筆証書遺言を、法務局にて保管してもらえるサービスです。 自宅で手軽に残せる自筆証書遺言ですが、 ・長い保管期間中に内容を改ざんされてしまう・相続が発生しても発見されない といったリスクがあります。作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらえば、改ざんや紛失の恐れはなく、また相続開始と共により確実に相続人のもとへ届けられるでしょう。また相続が発生した際に、家庭裁判所の検認が不要であるというメリットもあります。 こちらのサービスを利用するためには保管申請手数料として3,900円支払う必要がありますが、原本は遺言者死亡後50 年間、またその画像データは遺言者死亡後150年間と、長期にわたって確実に保管され続けます。自筆証書遺言を検討するなら、安心安全のためにも、ぜひこちらのサービスもセットで検討してみてください。 便利なサービスも活用して初めての遺言作成を! 初めての遺言作成では、何をどうすれば良いかわからない方も多いはず。最初の一歩を踏み出すためには、今回紹介した便利サービスを利用するのもおすすめです。情報を整理し、自身の思いを見つめ直すきっかけにもなるのではないでしょうか。無料で利用できるサービスも多いので、ぜひ検討してみてくださいね。

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