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  • 不動産の遺産分割はどうすれば良い?4つの方法と注意点

    不動産の遺産分割はどうすれば良い?4つの方法と注意点

    遺産分割の中でも、どうすれば良いのか悩みがちなのが「不動産」です。親族間トラブルを避けるためには、どう分ければ良いのでしょうか。4つの方法とそれぞれの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。相続人同士、納得して手続きできる方法を見つけましょう。 1.不動産をそのままの形で「現物分割」 1.不動産をそのままの形で「現物分割」 現物分割とは、不動産をそのままの形で相続する方法を指します。どう分けるのかによって、さまざまなパターンが考えられるでしょう。 ・相続人のうち1人だけが、家や土地をそのまま受け継ぐ・相続人の人数で土地を分筆し、それぞれの名義とする このほかにも、複数の相続人の中から2~3人のみが、分筆した土地を受け継ぐというケースも考えられます。相続対象となる不動産が複数ある場合には、誰がどの不動産を受け継ぐのか検討することになるでしょう。 ちなみに土地の分筆とは、もともとは1つの土地を法的に分ける作業を指します。分筆すればそれぞれで登記が可能ですから、理論上は「不動産を現金のようにしてきっちり分ける」ことも可能となるでしょう。ただし、分筆には各地で特別なルールが課せられている可能性も。中には「分筆不可」というケースもありますから、相続手続きの前にはしっかりとリサーチしておきましょう。 「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」場合、相続手続きはいたってシンプルです。ただし相続財産の中でも、不動産は高額になりがち。現金や預金といったその他の遺産が豊富にあればバランスを取りやすいですが、そうではない場合、不公平感が生じてしまう恐れもあります。不動産を相続する人に対して「ずるい」という感情が生まれれば、遺産分割協議がなかなかまとまらない可能性もあるでしょう。 2.そのほかの相続人に代償を支払う「代償分割」 先ほどお伝えした「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」という場合の、不公平感を軽減できるのが「代償分割」です。家や土地を受け継ぐ相続人は1人ですが、その1人がその他の相続人に対して代償金を支払い、相続の公平性を保ちます。 たとえば親名義の不動産で長男夫婦が同居していた場合、親の亡き後、長男夫婦が自宅に住み続けるためには、家や土地を相続する必要があるでしょう。仮に長男以外に次男・三男がいたとしたら、それぞれに相応のお金を支払います。不動産の価値が3,000万円なら、次男と三男それぞれの取り分は1,000万円ずつ。これを長男が、自分の財布から出すことになります。 代償分割のデメリットは、不動産を受け継ぐ人の金銭的負担が大きくなってしまう点です。経済的に余裕があれば良いですが、そうではない場合、「そもそも代償分割を選択できない」という可能性もあります。 一方で、マイホームでそのまま暮らしつつ、その他の相続人との間で公平に財産を分け合える点はメリットと言えるでしょう。相続対象の土地が分筆不可能であっても、代償分割なら相続人同士の争いごとが起きる可能性は低くなります。 3.不動産を売却してお金に換える「換価分割」 換価分割は、不動産を売却してお金に換えた上で、そのお金を相続人同士で分け合うスタイルを指します。マイホームは手元に残らないものの、相続人同士で平等に分配できるというメリットが期待できるでしょう。 不動産を換価分割する場合、相続手続きがスタートした後に、できるだけ早く手続きを進めていくことが大切です。対象の不動産がすぐに売れるとは限りませんし、時間に余裕がなくなれば、安い金額で手放さなくてはならなくなる可能性も高いでしょう。換価分割の場合、「不動産をできるだけ高く売ること」が重要なポイントに。そのための工夫は、ぜひ取り入れてみてください。 不動産を売却するためにはさまざまな手数料が発生します。相続時には、売却益から手数料を差し引いた上で、各相続人が自身の取り分を受け取ります。仮に不動産が3,000万円で売れたとしても、そのすべてが相続の対象になるわけではありません。手数料が300万円なら、残りの2,700万円を法定相続割合に応じて分配しましょう。 この方法であれば、代償分割とは違い、金銭的な余裕はなくても不動産を公平に分配できます。全員が「現金で受け取る」ため、差が生じにくく揉めごとに発展しにくいと言えるでしょう。ただし不動産を手元に残せないため、「被相続人が暮らしていた思い出の家や土地」を手放すことになります。同居していた親族がいれば、引越しを余儀なくされてしまうでしょう。 換価分割する場合には、遺産分割協議書にその旨と分配割合を記載するようにしてください。記載がないと、税金が二重に課せられてしまう恐れがあります。また誰がどういった形で登記し、売却手続きを進めていくのかについても考えなくてはいけません。そのあたりさえクリアできれば、全員が納得して進めやすい分割方法と言えるでしょう。 4.複数名義で引き継ぐ「共有分割」 不動産そのものを残したい一方で、不平等な分配は望まず、また代償分割も難しい場合に、選択肢として考えられるのが「共有」です。こちらの分割方法では、不動産を分割したり売却したりすることはありません。あくまでもそのままの形で引き継ぎ、相続人同士が複数人で不動産を所有します。 この場合、それぞれの持ち分は法定相続割合によって決められます。不動産の形はそのままに、「とりあえず今のままの形を維持できる」という点で、優れた分割方法と言えるでしょう。 ただし、一つの不動産を複数人で所有すれば、後々のトラブルにつながりやすくなります。たとえば物件のリフォームや売却を希望する場合でも、全員の許可が必要になるでしょう。また今回は相続人であった人が、いずれ被相続人になることも考えなくてはいけません。当然、共有分割した不動産の持ち分も相続財産に数えられますから、物件を取り巻く状況はさらに複雑になってしまいます。 一時的にはメリットがあっても、将来的に見ればトラブルの種。できる限り、その他3つの方法での分割を検討してみてください。 不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を 不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を 不動産相続で、どう分ければ良いのか悩む方は多いものです。一概にどれが正解とは言えませんから、自分たちにとってより良い方法を検討してみてください。 どれを選ぶべきか悩んだときには、専門家に相談したり、実際に不動産査定を受けてみたりするのもおすすめです。不動産相続の注意点や、相続対象となる物件の価値がわかれば、これから先どうしたいのか、相続人としての選択肢も見えてくるのではないでしょうか。

  • 「養子縁組」は遺産の相続税対策になる?仕組みや方法・注意点を解説

    「養子縁組」は遺産の相続税対策になる?仕組みや方法・注意点を解説

    平成27年1月実施の法改正により、相続税の基礎控除額が大幅に減額されました。これにより、相続税を支払わなくてはならない人の数も増加。だからこそ、相続税対策の重要性も増してきています。相続税対策の具体的な方法をリサーチしている方にとって、選択肢の一つになり得るのが「養子縁組」です。養子縁組が相続税対策になる理由や、実践する際の注意点を解説します。 養子縁組が相続税対策になる理由は? 養子縁組が相続税対策になる理由は? 養子縁組や相続税対策になる理由は、相続税の基礎控除額が決定される仕組みにあります。相続税は、受け継ぐ遺産の金額が基礎控除内におさまっていれば課税されません。基礎控除額を求める式は以下のとおりです。 【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】 このように、相続税の基礎控除額は法定相続人の数によって左右されます。仮に法定相続人が配偶者と子どもの合計2人であった場合、基礎控除額は4,200万円です。一方で法定相続人が10人いれば、9,000万円まで相続税が課税されない計算になります。 養子縁組は、法定相続人を増やす行為です。養子にも実子と同じように相続権が認められています。仮に養子縁組で法定相続人が2人増えれば、それだけで「相続税の基礎控除額も1,200万円アップする」というわけです。 また生命保険金や死亡退職金にも、相続人の数で金額が変わる非課税枠が用意されています。 生命保険金の非課税枠 → 【500万円×法定相続人の数】死亡退職金の非課税枠 → 【500万円×法定相続人の数】 すべてを活用した場合、養子による節税効果は非常に高いと言えるでしょう。 また仮に、養子縁組をしても相続税が発生してしまうとしても、相続人が増えれば1人当たりの相続財産の金額は減ります。すると相続税が課税される税率が低く抑えられるため、節税につながるというわけです。 相続税対策で養子縁組をする場合の注意点4つ 養子縁組で相続税対策をする仕組みは、いたってシンプルです。とはいえ、実際にこの方法で相続税対策を行った結果、トラブルに巻き込まれたり落とし穴にはまってしまったりするケースも少なくありません。4つの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★1.養子縁組で相続税対策できる人数には制限がある 上で説明したとおり、養子縁組による節税効果は十分にあります。とはいえ、「だったらどんどん養子を増やせばいい!」というわけにはいきません。法定相続人に含められる養子の数には制限があるからです。被相続人に実子がいる場合、法定相続人に含められる養子の数は「1人」です。実子がいない場合は「2人」まで認められています。 ただし養子を「特別養子縁組」で迎え入れていた場合、こちらのルールは適用されません。 特別養子縁組の場合、 ・子どもが15歳までであること・子どもの福祉のために必要であると認められること・裁判所の許可が得られること など、厳格な条件を満たす必要があります。 特別養子縁組で迎え入れた子どもは、実親との法律上の親子関係を解消し、新たに養親との間に親子関係を結ぶことに。血縁上は養親であっても、法律上は親子関係が認められているため、たとえ養子が3人以上いたとしても全員が法定相続人になれるというわけです。 ★2.養子は実子と同じように遺留分を請求できる 相続税対策を目的に養子縁組を行う場合、注意しなければならないのが、養子の相続分についてです。税金対策だけを目的にするなら、「養子を迎え入れて基礎控除額や非課税枠をアップさせたうえで、すべての財産を実子に残せるよう遺言を残せばよい」と思うかもしれません。 しかし法定相続人となった養子には、その他の相続人と同様に「遺産を相続する権利」が認められています。たとえ「実子にすべての財産を譲る」という遺言を残したとしても、養子には遺留分を請求する権利が認められているのです。遺留分をめぐってトラブルに発展する可能性があります。 ★3.相続税が2割加算される可能性がある 相続税の節税のために養子縁組をした結果、相続税が加算されてしまうケースもあります。それが、「孫を養子にして、祖父母から孫へと直接遺産を受け継ぐ場合」です。祖父母から父母、そして孫へと受け継がれる場合、相続税が2回発生する可能性があります。孫を祖父母の養子にして直接相続させれば、相続税を1回分節約できるでしょう。 とはいえこの方法は不公平なもの。相続税を2割加算することで、公平性を維持しています。知らないまま手続きすると「想像以上に相続税が高かった!」という事態に陥りかねませんから、注意してください。 ★4.その他の相続人の理解を得られない可能性がある 養子縁組で相続人を増やせば、相続税の負担は減らせるかもしれません。しかしそのほかの相続人たちにとっては、自分自身の取り分が減るということ。特に「遺産相続のために形式だけ養子になった」という場合、理解を得られない可能性があります。 このケースで特に多いのは、「同居する子どもの配偶者」を養子にして法定相続人にするケースです。同居する子どもの配偶者に生前非常にお世話になったとしても、法律上は法定相続人に含まれません。「より確実に遺産を受け取ってもらえるように」との思いで養子縁組するケースがあります。 とはいえ、同居していない子どもにとっては、「自身の取り分が減る」ということ。納得できない可能性も十分にあるでしょう。同居中の子ども夫婦と、兄弟姉妹夫婦の間で、相続をきっかけとした親族間トラブルに発展してしまう恐れがあります。 相続税対策の養子縁組でトラブルを起こさないために 相続税対策の養子縁組でトラブルを起こさないために 相続税対策に養子縁組をすれば、一定の効果が期待できるでしょう。とはいえ、しっかり検討しないまま決めてしまうと、思わぬトラブルを招いてしまう可能性も。まずは一度、相続に関する専門知識を有する専門家に相談するのがおすすめです。税理士を探し、アドバイスをもらいましょう。 相続税対策の方法は、養子縁組だけではありません。養子縁組以外の方法を選んだ方が、より効率的に相続税対策ができる可能性もあるでしょう。またそれ以前に、相続税の特例や控除を使えば、「わざわざ特別な対策を採らなくても、相続税の負担なく財産を引き継げる」というケースも存在しています。 その他の方法も検討したうえで「やはり養子縁組を」と思う場合には、その他の相続人に対する、丁寧な説明が必須です。なぜ養子縁組をするのか、なぜ養子にも財産を残したいのかが明らかになれば、遺産分割について納得したうえで受け入れられる相続人も多いはずです。相続税対策で養子縁組を選ぶのであれば、特に慎重に話を進めていってください。

  • 婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    夫婦が離婚する場合に、行われるのが財産分与です。婚姻中に築き上げた財産を分け合うことを指しますが、「何をどこまで財産分与するのか?」で悩む方は少なくありません。今回紹介するのは、「婚姻中に親から相続した遺産」の取り扱いについてです。財産分与の対象になるケースやならないケース、頭に入れておきたい基礎知識を解説します。 相続した遺産は基本的に「特有財産」 相続した遺産は基本的に「特有財産」 財産分与について、まず頭に入れておきたいのが以下の2つです。 ・共有財産・特有財産 共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産のこと。一方で特有財産とは、夫婦どちらかのみに帰属している財産を指します。 たとえば、結婚している最中に増えた貯金や、購入した不動産は共有財産に含まれるでしょう。これらの共有財産は、離婚によって夫婦それぞれに分与されます。一方で特有財産は、財産分与の対象にはなりません。たとえ婚姻中に得た財産であっても、配偶者とは無関係であり、「形成されるのに夫婦間の協力はなかった」と判断されるためです。 婚姻中に自身の親が亡くなり、遺産を受け継いだ場合、その財産は「特有財産」と判断されます。よって、遺産相続後に離婚することになっても、基本的に財産分与の対象には含まれません。財産分与の話は、夫婦間で「何が共有財産にあたるのか?」を確認した上で、遺産相続とは別に進めていく必要があるでしょう。 ちなみに、特有財産に含まれるのは、相続した遺産だけではありません。 ・独身時代に貯めたお金・自身の親から援助された住宅資金・別居後に取得した財産 これらの財産も特有財産と判断されるため、財産分与の対象外となります。 遺産相続で得た財産も「共有財産」とみなされる可能性がある? 遺産相続で得た財産も、状況によっては共有財産とみなされるケースもあります。この場合、もちろん遺産も財産分与の対象となるため注意しましょう。具体的には、「遺産相続で得た財産が、配偶者の協力のもとで価値が向上した場合」がこちらにあたります。 たとえば、遺産相続で受け継いだお金を運用し、その金額が大幅にアップしている場合、「遺産に対して配偶者の貢献がある」とみなされる可能性があります。住宅を受け継ぎ、リフォーム等でその価値が向上している場合も含まれるでしょう。配偶者の貢献がどの程度あるのかによって、財産分与の割合は違ってきます。法律で明確な基準が設定されているわけではないため、状況に応じて、事例ごとに判断されるでしょう。 また遺産相続で得た財産が、夫婦の共有財産と混ざってしまっている場合にも注意が必要です。すでに「家計の一部」として、生活費が出たり入ったりしていれば、やはりそれも共有財産としてみなされてしまう可能性があります。財産分与を望まないのであれば、遺産として受け継いだお金を生活費の口座に入れておくのは危険です。 何をどこまで共有財産とみなすのかは、財産分与をする際に揉めやすいポイントです。遺産相続と財産分与、両者に関連したトラブルを避けるためには、共有財産と特有財産、それぞれの性質を理解した上で適切に管理する必要があるでしょう。 相続財産を財産分与しなくても良い具体的な事例とは? 相続した財産が財産分与の対象になるのかどうか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、相続した財産が財産分与の対象にならないケースを2つ具体的に紹介します。ぜひ参考にしてみてください。 ★相続した遺産を共有口座で管理していた場合 まだ離婚を検討していない時期、一方が相続した財産を、夫婦共有の口座で管理するケースは決して珍しくありません。この場合、「夫婦共有口座のお金であること」を理由に、財産分与の対象になるのでは?と不安に思う方も多いのではないでしょうか。 相続した遺産を共有口座にて管理していた場合でも、「遺産として受け継いだ分の特有財産」と判別できる状態であれば、財産分与の対象にはなりません。あくまでも「夫婦の生活費と混ざっておらず、特有財産として独立した存在である」と示せることが重要です。遺産相続分がどれだけなのか、きちんと把握できる状態であれば、共有口座かどうかは問題にはなりません。 ★相続した不動産で暮らしていた場合 夫婦どちらかが相続した家で暮らしていた場合、ただ暮らしていただけであれば、「配偶者の貢献によって価値が上昇した」とは考えられません。よって、財産分与の対象にはならないと考えられます。相続後にリフォームや大規模修繕を行っている場合を除き、財産分与の対象にする必要はないでしょう。 遺産の財産分与を希望する場合は? ここまで解説してきたとおり、遺産相続で受け継いだ遺産は、基本的に財産分与の対象にはなりません。相続手続きが婚姻期間中に行われた場合でも、この原則には変わりがないという点を、頭に入れておきましょう。 一方で、「遺産相続と財産分与の基本を知ってはいるが、相続した遺産も財産分与の対象にしたい」という方もいるのではないでしょうか。この場合、夫婦間の合意のもとで、一方の特有財産である遺産を、財産分与の対象として加えることも可能です。 特有財産を財産分与の対象外とするのは、民法の基本。しかし夫婦間の合意のもとで財産分与について決定する場合、その対象や割合については、原則にかかわらず、夫婦間で自由に決定できるという特徴があります。 「せっかく自分が受け継いだ遺産を財産分与するなんて…」と感じるケースも多いでしょうが、夫婦が離婚に至るまでの事情はさまざまです。「一刻も早く離婚したいのに、財産分与について揉めて、なかなか話が進んでいかない…」という場合には、遺産として受け継いだ分も含めて財産分与することで、手続きをスムーズに進めていける可能性もあるでしょう。 自分にとって何を優先したいのか、はっきりさせた上で手続きを進めていくのがおすすめです。 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 婚姻期間中に遺産を相続した場合、その財産は夫婦どちらかのみに帰属する「特有財産」と判断されます。離婚する場合でも、基本的に財産分与の対象には含まれないため、まずは安心してください。 ただし相続後の遺産の取り扱い方や、管理方法によっては財産分与の対象と判断されてしまうケースもあります。万が一の場合に備え、「特有財産である」ことを明確にして、維持・管理していくと良いでしょう。 また離婚する際の状況によっては、遺産も含めて財産分与した方が良いケースもあります。自分にとってのメリット・デメリットが気になったら、ぜひ一度専門家に相談してみてください。相続した遺産と財産分与について、適切なアドバイスを受けられるのではないでしょうか。

  • 遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    子育てがひと段落すると、自分たちの老後について漠然とした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。遺産に関する不安も、その中の一つです。「将来のトラブルリスクを回避するため、具体的な対策をスタートしたい」と思いつつ、まず何からすれば良いのかわからない…と悩む方も少なくありません。法律に関連するお悩みの相談先として有名なのが「法テラス」ですが、遺産についても相談できるのでしょうか?法テラスでできることや、利用するメリットについて解説します。 そもそも法テラスとは? そもそも法テラスとは? 法テラスの正式名称は、日本司法支援センターと言います。国が設立した機関で、「法的トラブルを抱えている方に解決の道を示すための総合案内所」という役割を担っています。 法的なトラブルを抱えてしまった際に、「誰に相談すれば良いのかわからない…」「法律によって解決できる道があるのかどうかさえはっきりしない」と感じる方は少なくありません。法律による支援にたどり着けないまま、どんどん状況を悪化させてしまう方も多いものです。だからこそ法テラスでは、以下のような業務を行っています。 ・トラブル解決のための情報提供・問題を解決するための具体的な相談窓口・無料法律相談の提供や弁護士・司法書士費用等の立て替え 日常生活の中、何らかのトラブルを抱えてしまった場合でも、まずは一度法テラスに相談するのがおすすめです。トラブルを解決するため、具体的にどういった手段を検討できるのか、専門家によるアドバイスを受けられるでしょう。より具体的なサポートをしてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらうことも可能です。 また一定の収入・資産要件を満たしている人向けに、無料で法律相談を実施したり、専門家費用を立て替えたりする制度も用意されています。法テラスは基本無料で利用できる機関なので、ぜひ活用してみてください。 法テラスを活用して遺言や遺産に関する疑問を解消 遺産や遺言には、法律が深く関わってきます。法律の知識がないまま自己流で終活を進めた場合、後々トラブルにつながってしまう可能性も。さまざまな不安を解消するため、また法的な基礎知識を身につけるため、ぜひ法テラスを活用してみてください。法テラスで相談できる内容の具体例は、以下のとおりです。 ★将来の遺産相続のために遺言書を残したい 終活ブームの今、「遺産相続にまつわるトラブルを防ぐためには遺言書が有効」という情報は広く知れ渡っています。しかし本当にトラブルを防ぎたいなら、単純に「遺言を残しておけばOK」とだけ考えるのは危険。「法律知識をもとに、適切な形で残された法的に有効な遺言書」を用意しておく必要があります。遺留分や法定相続人の範囲など…適切な知識がないまま遺言を残しても、かえってトラブルを招く結果になってしまうでしょう。 法テラスに相談すれば、正しい形で遺言を残すために必要な、法制度に関する情報を提供してもらえます。また「自分だけでは不安…」という場合には、より具体的な相談を受け付けてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらえるでしょう。専門家に相談しつつ、自分にあった遺言書を残せるはずです。 ★両親の遺産を相続する際に、親族間で争いが起きている 子育てがひと段落する年代は、自分自身が相続人になる機会も多い時期です。両親の遺産を相続する際に、すでに親族間で争いが起きてしまっているような場合も、法テラスにて相談が可能。相続に関する法律知識を提供してもらえるほか、自身の代理人となって動いてくれる、弁護士の紹介も受けられます。 親族間で直接やりとりすると、遺産相続問題は泥沼化してしまう恐れも。第三者である専門家の手を借りることで、話し合いをスムーズに進めていける可能性も高まるでしょう。 ★相続放棄をしたいが、何からすれば良いのかわからない 相続放棄の手続きは、相続が発生してから、一定期間内に適切に行わなければいけません。まず自分が何をするべきなのか、いつまでにどういった手続きを終えなければならないのか、法テラスにて相談に乗ってもらえます。もちろんこの場合も、専門家事務所の紹介を受けることが可能。相続放棄以外にも、「親が亡くなり、借金を代わりに返済するよう言われてしまった…」といった状況でも、適切に対処できるでしょう。 法テラスを利用するメリット3つ 初めての法律相談を、ためらう方は少なくありません。法テラスを利用するメリットを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★基本無料で気軽に相談できる 法テラスへの相談は、基本無料で利用できます。個別の事例に対して、具体的なアドバイスはもらえませんが、法律に関する基本的な情報提供を受けることは可能。相談は何度でもできますから、法律に関する知識を、少しずつ深めていけるのではないでしょうか。 法テラスへの相談は匿名でできますし、また電話やメール、直接相談など、さまざまな相談形式が整っています。自分に合った相談スタイルで気軽に利用できる点が、メリットだと言えます。 ★相続に強い専門家につないでもらえる 遺産相続に関する各種手続きを専門家にサポートしてもらう場合、依頼先の専門家は、「遺産や相続に強い人」を選ぶ必要があります。もともとのツテでもない限り、誰に相談すれば良いのか悩む方も多いでしょう。法テラスに状況を伝えて相談窓口を紹介してもらえば、相続問題に強い専門家とつながれるはずです。 「自分で相談先事務所を選べない」という点は、法テラスを利用するデメリットとも言われています。一方で、「相続問題に強い専門家を自分自身で見つけ出す自信がない…」という場合には、非常に大きなメリットとなるでしょう。 ★無料相談や費用の立て替え制度を利用できる 法テラスには、収入や保有資産が少ない方に対する扶助制度も用意されています。「遺産相続について困っているが、収入がなく、専門家にサポートを依頼するのが難しい…」といった場合でも、法テラスなら無料相談や費用の立て替えに応じてもらえます。 法テラスの民事扶助制度の利用を希望する場合、収入や資産に関する要件を満たしていることを示すための書類が必要です。まずは一度、法テラスの相談窓口に問い合わせをしてみてください。自身が要件を満たしているか、またどのような書類を用意すれば良いのか、具体的な情報をもらえるでしょう。 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産や相続、遺言に関するお悩み事を抱えている際に、誰に相談すれば良いかわからず、悩んでしまう方は少なくありません。法テラスなら、誰でも無料で気軽に相談できますから、ぜひ活用してみてください。法律に関する情報を提供してもらったり、相談先窓口を紹介してもらったりすれば、これから自分が何をするべきか、具体的に見えてくるのではないでしょうか。

  • 公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    近年、「遺言書を残して遺産トラブルを回避しよう」と考える方が増えてきています。自身が残した遺産を巡って、大切な人たちが争うとしたら…これほど悲しいことはありません。なんとかして回避したいと思うのは、当然だと言えるでしょう。 しかし実際には、故人が失くした遺言書をきっかけに、さらなるトラブルが発生してしまう事例も存在しています。遺産トラブルを防ぐのに有効なスタイル、「公正証書遺言」について、わかりやすく解説します。 なぜ遺言書を残しても遺産トラブルが発生するの? 終活を意識し始め、各種情報サイトをチェックしてみると、「遺産トラブルを予防するためには遺言書が有効」という情報を目にする機会も多いのではないでしょうか。確かに遺言書が残されていれば、故人の思いに沿った相続が可能に。親族間のトラブルを予防するため、一定の効果が期待できるでしょう。 しかし実際には、遺言書が残されていても、遺産トラブルに発展してしまう事例は決して少なくありません。その理由は以下のとおりです。 ★1.遺言書が法的に有効と認められないから 遺言書にはいくつかのタイプがあり、いつでも好きなときに、自分の手で書き残せるものもあります。しかしこの場合、遺言書に必要な要件を満たしておらず、「法的に無効」と判断されてしまうケースも少なくありません。 遺言書が残されていても、法的に有効だと認められなければ意味がありません。相続人はあらためて遺産分割協議を行い、遺産相続の詳細を決定しなければならないのです。遺言書で遺産を多くもらえるように指定されていた人は、当然「故人の遺志」を尊重するよう求めるでしょう。一方で、その他の人は法定相続分に沿った手続きを求める可能性が高いです。法的に無効な遺言書によって、故人の遺志を確認できてしまうが故のトラブルだと言えるでしょう。 ★2.遺言書に記された内容が遺留分を侵害しているから 法的に認められる形で遺言書が残されていた場合でも、油断は禁物です。その内容によっては、やはり親族間のトラブルが発生してしまう恐れがあります。中でも注意しなければならないのが、遺留分についてでしょう。 遺留分とは、相続人が相続財産の中から最低限相続できる財産のこと。たとえ「全財産を○○に譲る」という内容が残されていたとしても、その他の相続人は遺留分を請求できます。最低限の財産を相続できるとはいえ、「いったいなぜこのような遺言が残されたのか?」という点で、トラブルが発生する恐れもあります。 ★3.遺言書に本人の意思が反映されているとは限らないから 被相続人が自分一人で作成し、自宅で保管されていた遺言書の場合、その内容の信ぴょう性がもとで、トラブルに発展するケースもあります。 ・認知能力が低下した状況で、誰かに書かされたのではないか?・すでに内容が改ざんされているのではないか? もしも本当に、遺言の強制や誘導、改ざんといった事実があれば、そこに故人の遺志は反映されていないことに。その信ぴょう性を巡って、騒動に発展する事例も決して少なくありません。 公正証書遺言とは?トラブル回避に有効な理由 上で説明したようなトラブルは、遺言の残し方に工夫することで予防できます。ぜひ公正証書遺言に注目してみてください。 公正証書遺言とは、公証人関与のもとで遺言書を作成する方法を言います。作成段階から専門家に手を貸してもらえば、 ・遺言書が法的に無効と判断されるリスクを防ぐ・遺言の内容についても事前に専門家に相談に乗ってもらえる・あとで内容が改ざんされる恐れがない といったメリットが発生します。遺言書にはさまざまな種類がありますが、公正証書遺言は「もっとも確実性の高い遺言」と言われているのです。 公正証書遺言は、第三者である「公証人」が作成します。出来上がった遺言書は、公文書として扱われ、いざ遺言が執行される瞬間まで厳重に管理されるでしょう。遺言を残した時点での故人の「意思」が、争点になる可能性も低くなります。 ただし公正証書遺言を作成するためには、相応の手数料を支払う必要があります。また作成までには、それなりの時間がかかってしまうでしょう。遺言書を残したいと思ったら、できるだけ早く行動に移すよう注意してくださいね。 公正証書遺言の残し方や費用を解説 公正証書遺言の残し方や費用を解説 ではここからは、実際に公正証書遺言を残すための流れや費用をチェックしていきましょう。公正証書遺言を作成するための手順は、以下のとおりです。 1.公証人との間で事前打ち合わせを行う2.証人になってくれる人を2人探す3.証人2人と共に公証役場に行き、遺言書を作成する4.同じ内容の公正証書遺言を3通作成し、1通を公証役場に保管する 公正証書遺言を作成する場合に、最初にやらなければならないのが公証人との打ち合わせです。公証役場に出向いたからといって、その場ですぐに遺言を作成できるわけではありません。遺言に残す内容など、事前の打ち合わせを済ませておきましょう。 また証人には、未成年や将来相続人になると推定される人は指定できません。また公証人の配偶者や、四親等以内の血族も指定できないというルールがあります。 信用できる人物2人に依頼するのが一番ですが、手間を省きたいなら専門家に依頼するのもおすすめです。事前打ち合わせや公証役場での手続きについても、専門家がしっかりとサポートしてくれるでしょう。遺留分についても、トラブルになりにくい遺言の残し方をアドバイスしてもらえるはずです。 公証役場では、公証人の本人確認や遺言内容の確認、公証人の筆記・読み聞かせといった手続きが行われます。遺言者と証人2名、さらに公証人が署名捺印することで、正式な遺言として認められるでしょう。 公証役場での手続きに必要な時間は、およそ30分前後です。また公正証書遺言を作成するためには、公証役場に手数料を支払わなければいけません。遺言の価格に応じて手数料の金額が変わってくるため、注意してください。 財産が100万円以下であれば手数料は5,000円です。一方で財産の価額が5,000万より上で1億円以下の場合の手数料は4万3,000円です。自身の財産の金額に合わせて、どれだけ必要になるのかあらかじめチェックしておきましょう。 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産相続について、「まさか我が家でトラブルなんて…」と考える方は少なくありません。しかし実際には、相続に関して割り切れない思いを抱く人は多いもの。非常に根の深い、親族間トラブルの原因になる可能性もあるのです。将来のトラブルを予防するために、ぜひ公正証書遺言についても検討してみてください。 作成時に手間はかかっても、「法律的にほぼ確実な遺言書が残せる」というメリットは非常に大きいと言えるでしょう。トラブル回避を目的に遺言書を残すのであれば、ぜひ積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

  • 遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    40代~50代になると、いつか発生するであろう「相続」について、気になる方も多いのではないでしょうか。実家の親が亡くなれば、子どもはほぼ確実に法定相続人に数えられます。いざ相続が発生しても、「具体的に何をどう手続きすれば良いかわからない…」と悩む方は少なくありません。 遺産相続の手続きは、具体的にどう進めていけば良いのでしょうか。自分で手続きする場合の流れや注意点について解説します。 遺産相続とは?大まかな流れ 遺産相続とは、亡くなった人が所有していた財産を、相続人で分け合う手続きを言います。具体的にどういった流れになるのか、把握しておきましょう。遺産相続の流れは、「故人が遺言書を残しているかどうか?」によって、大きく違ってきます。 遺言書が残っている場合と、残っていない場合、それぞれについて大まかな流れをチェックしてみましょう。 ★遺言書が残されている場合 故人の遺言書が見つかった場合の流れは、以下のとおりです。 1.必要に応じて家庭裁判所にて検認の手続きをする2.遺言書の中身を確認する3.遺言書の内容に沿って、遺産を分割する4.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書とは、故人の最期の思いを記した正式な書類です。法的効力を持つ正式な遺言書であれば、そこに記された内容に沿って相続手続きを進めていくのが基本。たとえ遺言書に記されていた内容が法定相続分とは異なっていても、遺言書の方が優先されます。 親族間で協議する必要がないため、争いごとを避けられる可能性も高いでしょう。また相続が発生してから、慌てて相続財産の調査をする必要もありません。 ただし遺言書が自宅で発見された「自筆証書遺言」の場合、家庭裁判所による「検認」と呼ばれる手続きが必要です。封がしてあるものを勝手に開けて中身を確認してしまうと、偽造や変造を疑われる原因に。5万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意してください。 遺言書の検認には、家庭裁判所への申し立てが必要です。以下の必要書類を揃えて手続きしてください。 ・申立書・遺言者の戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本(出生時から死亡時までのすべてを揃えて提出)・相続人の戸籍謄本(全員分) 検認には、少なくても1ヶ月以上の時間が必要になります。検認が必要な遺言書が発見されたら、できるだけ素早く申し立てを行いましょう。 ちなみに、残されていた遺言が公正証書遺言であったり、自筆証書遺言であっても法務局にて保管されていたりした場合には、検認は不要です。偽造や変造の疑いがないため、すぐに内容を確認し、その後の手続きを進めていけます。 ★遺言書が残されていない場合 遺言書が残されていない場合は、遺産相続について、相続人が協力して決定する必要があります。こちらの場合の大まかな流れは以下のとおりです。 1.相続人に関する調査を行い、確定する2.相続財産に関する調査を行い、確定する3.遺産分割協議を行う4.協議の内容に基づき、遺産分割協議書を作成する5.遺産分割協議書に基づいて、遺産を分割する6.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書が残されていない場合、「誰が相続人になるのか?」「何が相続対象に含まれるのか?」を明らかにするところからスタートします。必要に応じて、専門家の手を借りることも検討してみてください。こうして調査された内容をもとに、遺産分割協議を行います。誰が何を相続するのか、この協議にて確定しましょう。あとはその内容に基づいて相続を完了させます。 言葉にすると非常にシンプルですが、実際には遺産分割協議がまとまらない事例や、話がこじれて訴訟にまで発展してしまう事例も少なくありません。ひとつひとつの問題を、丁寧に解決していく必要があるでしょう。 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産相続の手続きを自分で進めていく場合、注意したいポイントのひとつが、相続放棄についてです。相続する財産の状況によっては、放棄した方が良いのかどうか、ぜひ冷静に検討してみてください。 遺産相続では、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も対象になります。相続する遺産を調査した結果、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いようであれば、相続放棄を検討した方が良いでしょう。相続放棄には、「相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内」という期限が存在しています。 遺言書の検認手続きや遺言書が残されていない場合の財産の調査は、相続放棄する可能性についても考慮した上で、時間に余裕を持って進めていくのがおすすめです。 相続放棄の手続きも、家庭裁判所にて進めていきます。申し立てが認められれば、「最初から相続人ではなかった」と法律的にも認められるでしょう。 ただし相続放棄すれば、これから先も含めて、すべての財産を相続する権利を一切失うことになります。また、もし自分よりも低順位の相続人がいれば、相続人は次の順位へと移っていくでしょう。こちらも考慮する必要があります。 遺産分割協議書の作成方法は? 遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書に記します。自分で手続きする場合、以下の点に注意してください。 ・相続人や財産を、正確に記載・相続人全員分の、実印での捺印が必要 遺産分割協議書は、預貯金の解約や相続登記などで使用する正式な書類です。内容が不十分であれば、後々トラブルに発展する可能性も。協議で決まった内容を、正確に記載してください。また相続人全員分の実印が必要になる点も、早めに確認しておきましょう。 忘れてはいけない相続税の申告 相続手続きが完了したあとに、忘れてはいけないのが相続税の申告についてです。相続税の申告には、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があります。申告が必要な場合には、忘れないように注意しましょう。 相続する財産の総額が、相続税の基礎控除額に収まる場合は、相続税を申告する必要はありません。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求められます。 【相続税の基礎控除額 =3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】 亡くなった配偶者の遺産を受け継ぐ場合など、基礎控除額に収まらない場合でも、相続税が発生しないケースは多々あります。ただしこの場合、「相続税を申告した結果、ゼロ円になった」と判断されるため、申告手続きそのものは必要になるため、注意してください。 相続財産の調査の段階で、「相続税の基礎控除額を超えそうだ」と判断した場合、相続税の申告についても余裕を持って進めていきましょう。 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 比較的シンプルな遺産相続であれば、自分自身で手続きを進めていくことは十分に可能です。それぞれの手続きの期限を意識しつつ、ひとつずつ確実にこなしていきましょう。一方で、以下のような場合は、専門家の手を借りることをおすすめします。 ・仕事が忙しく、平日昼間に動けない・面倒な手続きが苦手・遺産分割協議で揉める可能性が高い 自分で進めていく場合には、ぜひ今回紹介した情報を参考にしてみてくださいね。

  • 「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    ひと言で「遺産」と言ってもその実態はさまざまで、状況によっては「できれば受け取りたくない…」と考える方もいるでしょう。こんなとき、あらかじめ知っておきたいのが遺産を放棄するための手続きについてです。 このコラムでは、遺産を放棄するための手続き、「遺産放棄」について詳しく解説します。混同されやすい「相続放棄」との違いについても紹介するので、ぜひ今後の参考にしてみてください。 遺産放棄(財産放棄)とは具体的にどういうこと? 遺産放棄(財産放棄)とは、相続権を持っているにもかかわらず、「遺産を相続しない」という立場を表明することを言います。被相続人が亡くなり相続がスタートすると、まずは遺言書の有無が確認されるでしょう。遺言がなければ、その遺産は遺産分割協議によって、どう分けられるのか決定されます。この遺産分割協議にて、「財産を相続しない」と表明すれば、それが遺産放棄(財産放棄)に当たります。 遺産放棄は、法律で明確に定められた手続きではありません。よって事前に特別な準備をする必要もなく、その他の相続人に自身の決意を伝えればOKです。遺産分割協議でその希望が受け入れられれば、無事に遺産を放棄できるでしょう。 また遺産放棄を宣言したからといって、相続人としての立場を失うわけではありません。他の相続人との話し合いにはなるものの、「この遺産は放棄したいが、こちらだけは相続したい」など、柔軟な対応も可能です。後になって新たな遺産が見つかったときにも、またあらためて、相続人としての立場で話し合いに参加できるでしょう。 相続放棄との違いは? 遺産を受け取らない道を考えたとき、もう一つ検討したい道が「相続放棄」です。遺産放棄とよく似た言葉ではありますが、両者の意味合いは大きく異なります。それぞれの意味を正しく把握して、自身の思いに沿った方を選択しましょう。 相続放棄とは、相続人としての権利、つまり相続権そのものを放棄するための法的手続きです。法的にも自身の立場を明確にするため、一定期間内に家庭裁判所にて、必要な手続きを済ませる必要があります。家庭裁判所にて相続放棄が認められれば、その人は「最初から相続人ではなかった」とみなされるでしょう。相続順位は次の人に回され、今後何があっても、相続人としての権利を主張することはできなくなります。 相続放棄の手続きができる期間は、「相続を知った日から3ヶ月間」です。この期間を過ぎると、相続放棄の手続きは選択できなくなりますから、十分に注意してください。 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 遺産放棄が他の相続人に自身の意思を伝えるだけでOKであるのに対して、相続放棄するためには、家庭裁判所への申し立てが必須です。「どちらにしても財産を受け取らないのだから、より簡単な遺産放棄で十分なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、この考えは非常に危険です。 なぜなら、被相続人が残す「遺産」とは、常にプラスであるとは限らないからです。万が一、マイナスの財産が相続財産に含まれれば、遺産放棄の意思表明だけでは不十分です。債権者は、相続人に対しても借金を返済するよう求める権利が認められています。法律的にも「自分は相続人ではない」と明らかにしなければ、被相続人の代わりに、自身が借金を背負ってしまうでしょう。 いくら「自分は遺産を受け取っていないので」と説明しても、債権者には通用しません。法律をもとに動いている債権者の取り立ては、そのまま継続してしまいます。 プラスの財産とマイナスの財産の両方が残されている場合には、遺産放棄で十分なのか、それとも相続放棄の手続きを取らなければならないのか、特に慎重に判断する必要があります。遺産分割協議においても、「どうせ財産を相続しないから」と安易に考えるのは辞めましょう。どの遺産を誰がどのように引き継ぐのかを明らかにした上で、自身の立場を明確にするのがおすすめです。 遺産放棄を選んだ方が良いケースとは? 遺産放棄にも相続放棄にも、メリットとデメリットの両方があります。相続放棄のメリットは、相続人としての権利を放棄したという事実を、法的にも認められる点です。一方で、柔軟な対応が難しいというデメリットがあります。以下のようなケースでは、相続放棄よりも遺産放棄を選んだ方が、メリットが大きくなると予想されます。ぜひじっくり検討してみてください。 ★1.基本的には遺産を放棄しつつ、一部のみ受け取りたい場合 遺言書が残されていない場合の遺産相続では、法定相続分に沿って遺産を分配します。しかし、常に遺産を等分に分けられるとは限りません。特に、遺産に土地や建物といった不動産が含まれている場合、相続割合は非常に複雑になるでしょう。 たとえば、「不動産は要らないが、現金だけは受け取りたい」という場合、遺産放棄が有効です。不動産についてのみ遺産放棄をして、その他の財産については受け取りましょう。遺産放棄の手続きを上手に活用すれば、親族間の余計なトラブルを防止できる可能性があります。 ★2.将来的にさらに遺産が発見される可能性がある場合 被相続人が亡くなったあと、一定期間経ってから新たな遺産が発見されるケースもあります。この場合、最初の相続で相続放棄の手続きをすると、後で見つかった遺産についても相続する権利を失ってしまうでしょう。 「今現在明らかになっている遺産は受け取らない」と決めていても、将来的に状況が変化する可能性はゼロではありません。わざわざ相続放棄をするメリットがないのであれば、遺産放棄に留めておくのがおすすめです。将来遺産が発見された場合に、あらためて相続するのか、遺産放棄をするのか、それとも相続放棄をするのか、その時点の状況を考慮して決断できるでしょう。 ★3.相続権を次の順位に回したくない場合 相続放棄をしても遺産放棄をしても、「自分が遺産を受け取らない」という結果に変わりはありません。しかし「誰が相続人になるのか?」という視点で考えると、2つの手続きには非常に大きな差があるのです。 遺産放棄を選択する場合、自分自身が相続人として、「遺産を受け取らない」と決断することに。相続権は、当然自分のもとに残ります。一方で相続放棄をすれば、相続権は次の順位へと移っていきます。相続順位が移り、相続人の範囲が広がれば、さらなるトラブルを引き起こしてしまうケースもあるでしょう。 こうしたトラブルを防ぎたい場合も、「相続人の立場のまま遺産だけを受け取らない」遺産放棄には、意味があります。 今回紹介した3つのケースは、どれも「相続財産に負債が含まれていない場合」を想定しています。まずは負債がないかどうかを確認し、その上で、遺産放棄するべきかどうか、検討してみてくださいね。 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 自身の終活について考え始める時期は、身近な人からの相続について考え始めるべき時期でもあります。「遺産を受け取らない」という選択肢についても、ぜひ慎重に検討してみてください。 遺産放棄と相続放棄は、言葉は似ていますが、もたらす結果は大きく違ってきます。それぞれの基礎知識を身につけた上で、自分にとって必要な手続きを選択するのがおすすめです。

  • 兄弟姉妹の立場で遺産は受け取れる?知っておくべき注意点も

    兄弟姉妹の立場で遺産は受け取れる?知っておくべき注意点も

    自身の老後について考え始めたら、遺産や相続について正しい知識を身につけるところからスタートしましょう。相続とは、いつやってくるかわからないもの。きちんとした知識を持っていれば、いざそのときに慌てなくて済むでしょう。 遺産と言えば「親から受け継ぐもの」というイメージを抱いている人も多いかもしれませんが、状況によっては兄弟姉妹の遺産を受け取るケースもあります。兄弟姉妹の立場で、どうなった場合に遺産が受け取れるのか、わかりやすく解説します。 相続の基本!相続順位について学ぼう 相続の基本!相続順位について学ぼう 被相続人が亡くなったとき、その財産は相続人へと受け継がれていきます。故人と血縁関係にある人が相続人なるイメージですが、現実には「血縁関係にある人すべて」が相続人になれるわけではありません。相続には「相続順位」が定められており、この順位がもっとも高い人が相続人になれるのです。 被相続人が亡くなった際に、無条件で相続人になれるのは「配偶者」です。故人に夫や妻、法律上の配偶者がいれば、どのような状況であっても相続人として認められます。相続順位が定められているのは、この配偶者以外の相続人についてです。 相続順位がもっとも高いのは、故人の子どもです。子どもが複数人いれば、全員が相続人になります。相続順位2位は、故人の両親。そして第3順位に当てはまるのが、故人の兄弟姉妹です。相続順位1位から3位の人々は、常に相続人になれるわけではありません。相続順位が高い方から順番が回り、当てはまる人が見つかった段階で、それ以降の順位の人には相続権が発生しない仕組みになっています。 兄弟姉妹が亡くなった際に、故人が結婚していて子どもを設けている場合、配偶者とその子どもが財産を受け継ぐでしょう。故人の兄弟姉妹が相続人になるケースとして考えられるのは、「故人に子どもがおらず、両親もすでに亡くなっている場合」です。 ちなみに、故人には子どもがいたものの、すでにその子どもが亡くなっている場合、相続権は子どもの子ども、つまり孫へと受け継がれます。この場合も、故人の両親や兄弟姉妹が財産を相続することはできません。第2順位の父母が亡くなっている場合、祖父母に相続権が発生します。兄弟姉妹に相続権が発生するものの、すでに亡くなっている場合はその子どもたち、つまり故人にとっての甥や姪が相続権を持ちます。 兄弟姉妹が法定相続人になった場合の相続割合は? 兄弟姉妹の立場で相続人になると決定した場合、どのくらいの財産を受け継ぐのか気になる方もいるでしょう。兄弟姉妹が相続人となるケースは、以下の2パターンしかありません。 ・故人の配偶者と共に、兄弟姉妹が相続人になる・兄弟姉妹のみが相続人になる 下のケースは非常にシンプルで、相続人となる兄弟姉妹ですべての財産を受け継ぎます。兄弟姉妹が複数人いる場合には、財産をそれぞれで等分することになるでしょう。 一方で、故人に配偶者がいる場合、相続財産の4分の3を配偶者が受け継ぎます。兄弟姉妹の法定相続分は全体の4分の1で、相続人が複数人いる場合には、その4分の1をさらに等分に分けてください。 兄弟姉妹が法定相続人になる場合に覚えておきたい3つのポイント 兄弟姉妹が法定相続人になる場合に覚えておきたい3つのポイント 兄弟姉妹が法定相続人になるケースは、決して少なくありません。兄弟姉妹が亡くなった際には、法定相続人になる可能性があるという点を、頭に入れておきましょう。兄弟姉妹の立場で、頭に入れておきたいポイントを3つ紹介します。 ★1.子どもや親が相続放棄する可能性がある 上で解説したとおり、亡くなった兄弟姉妹に配偶者や子どもがいれば、兄弟姉妹の立場で法定相続人になるケースは少ないでしょう。その時点で、「自分には関係ないこと」と捉えてしまう方も多いのではないでしょうか。ここに注意が必要です。 遺産相続とは、プラスの財産のみを受け継ぐ行為ではありません。もし故人が負債を抱えていたとしたら、そのマイナスの財産も相続財産としてみなされるでしょう。この場合、相続順位第1位である故人の子どもたちや、第2位の父母が、そろって相続放棄の手続きを取る可能性も。相続放棄の手続きを取った相続人は「最初からいないもの」として扱われ、相続順位は次に回されます。つまり、第3順位である兄弟姉妹が、相続人になる可能性もあるのです。 相続放棄の手続きには、期限が設定されています。「自分には関係ないだろう」と思い込み、手続きのチャンスを逃さないよう注意してください。 ★2.故人の兄弟姉妹の代襲相続は一代のみ 代襲相続とは、相続権を持つ人がすでに亡くなっていた場合に、その相続権が下の世代(もしくは上の世代)にどんどん受け継がれていくことを言います。 故人の子どもが亡くなっていれば、その子どもが、その子どもも亡くなっていればまたその子どもに相続権が発生します。第2順位の両親についても同様で、両親が亡くなっていればそのまた両親、さらにその先の両親と、どんどん遡っていくのです。その範囲は定められておらず、該当する人が存在するなら、どこまででも辿っていけるという特徴があります。 ただし兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続は一代のみと決められています。兄弟姉妹が亡くなっていれば甥や姪が相続権を持ちますが、すでに甥や姪が亡くなっている場合、その子どもに相続権が渡ることはありません。 ★3.兄弟姉妹に遺留分は認められない もう一点忘れてはいけないのが、遺留分に関する注意点です。遺留分とは、法定相続人が相続できる最低限度の相続分のこと。たとえば故人が遺言書で「○○に全財産を譲る」と言った内容を残していても、法定相続人であれば、遺留分だけは確保できるという特徴があります。 兄弟姉妹の立場で法定相続人になる場合、遺留分は認められていません。故人の遺言は法定相続よりも優先されますから、「配偶者に全財産を譲る」といった内容が残されていれば、兄弟姉妹が遺産を受け取ることはできないのです。 トラブルになりやすいポイントですから、事前に頭に入れておきましょう。 兄弟姉妹が財産を相続する場合の特徴を知ってトラブルを防ごう 兄弟姉妹の立場で、被相続人の遺産を受け取れる可能性はあります。故人に子どもがおらず、すでに両親も亡くなっている場合、相続権が回ってくる可能性が高いと言えるでしょう。 しかし実際に兄弟姉妹の立場で法定相続人になる場合、相続人の範囲が広がり、トラブルに悩まされるケースも少なくありません。相続に関する基礎知識をきちんと身につけ、トラブルを避けられるように準備しておきましょう。相続順位を知っておくだけでも、事前の心構えができるはずです。

  • 生前贈与の「相続時精算課税」とは?遺産を受け取る際の注意点やデメリットも解説

    生前贈与の「相続時精算課税」とは?遺産を受け取る際の注意点やデメリットも解説

    将来の相続税負担を和らげるため、生前贈与を検討する方も多いでしょう。生きている間に財産を子どもや孫に渡してしまえば、相続財産を減少させ、相続税が発生するリスクも少なくできます。 とはいえ、生前贈与を行う場合に、考慮しなければならないのが「贈与税」についてです。生前贈与をしても贈与税が課せられないと言われる「相続時精算課税」をわかりやすく解説します。遺産を受け取る際の注意点やデメリットについても、注目してみましょう。 相続時精算課税とは? 相続時精算課税とは? 生前贈与で相続時精算課税を検討する場合、まず「相続時精算課税とは具体的にどのような制度なのか?」という点について、正しい知識を身につけておく必要があります。相続時精算課税とは、贈与税の課税方式の一つです。 生きている人から別の人に財産を贈与した際に、課せられるのが贈与税です。「相続税を減少させるために生前贈与を」と考える方も多いですが、この場合、相続税ではなく贈与税が課せられてしまいます。こうした仕組みにある意味で「逃げ道」を提案してくれているのが、相続時精算課税というシステムなのです。 相続時精算課税制度を使った場合、特別控除額2,500万円までの範囲であれば、生前贈与を受けた時点で贈与税は発生しません。ただし生前贈与を行った人が亡くなれば、過去に生前贈与された財産も相続財産にプラスして、相続税を計算する必要があります。 たとえば合計で1億円の財産を持つ父親Aさんが、相続時精算課税制度を使い、息子Bさんに2,500万円を生前贈与したとします。息子Bさんは2,500万円を受け取った時点で贈与税を支払う必要はありませんが、将来Aさんが亡くなったときには、受け継ぐ財産に生前贈与分をプラスして、相続税を求めなくてはいけません。生前贈与後の財産に変動がなければ、相続発生時点で7,500万円の遺産を受け取り、生前贈与分を含めた1億円で計算された相続税を納めることになります。 相続時精算課税制度を使えるのは、生前贈与をする年の1月1日時点で60歳以上の方のみ。また生前贈与を受ける人は、贈与者の直系卑属である推定相続人もしくは孫のうち、贈与を受ける年の1月1日時点で20歳以上の方のみです。 相続時精算課税制度の注意点とは? 相続時精算課税制度は、一度の多くのお金を贈与できる、非常に便利なシステムと言えるでしょう。たとえば、「子どもや孫が事業を始めるため、援助したい」「住宅取得等資金の特例の範囲を超えて、住宅購入資金を援助したい」といった場合に、強みを発揮してくれます。とはいえ、相続時精算課税制度を利用した場合、税金が免除されるわけではありません。あくまでも「本来支払うべき税金を、先送りにしているだけ」と捉えてください。 また贈与税の課税方式の選択は、1度だけしかできません。1度でも相続時精算課税制度を選択して生前贈与を行えば、その後の贈与も、すべて相続時精算課税制度を利用したものと判断されます。2,500万円というのは生涯を通じた累計非課税枠であり、贈与額がこの数字を超えてしまえば、超えた分に対して20%の贈与税が課せられます。 たとえば60歳のときに相続時精算課税制度を利用して生前贈与を行ったとしたら、その後20年以上にわたって、贈与額を少しずつ積み重ねていく可能性も。その先の資金援助プランも見据えて、利用を検討するべき制度と言えるでしょう。 相続時精算課税では「年110万円まで」の非課税枠が使えない! 相続時精算課税では「年110万円まで」の非課税枠が使えない! 相続時精算課税制度のデメリットとして、必ず頭に入れておきたいのが、「年110万円まで非課税で贈与できる制度は2度と使えない」という点です。そもそも「年110万円まで非課税で贈与できる」というのは、贈与税の暦年課税制度に設定された基礎控除によるもの。相続時精算課税制度を利用するということは、2度と暦年課税制度を利用しないのと同意ですから、110万円までの非課税枠も失われてしまいます。 実際に、相続時精算課税制度を使って贈与をしたのちに、その事実を忘れて110万円までの贈与を行ってしまう事例は少なくありません。相続時精算課税制度を使って2,000万円を贈与した後に、その事実を忘れて年間110万円ずつ贈与を行った場合、わずか5年後には贈与税の支払いを求められるでしょう。 また暦年課税制度を利用していた場合、年間110万円までは相続税も贈与税もかからない計算になります。一方で相続時精算課税制度を選択した場合、年間の贈与額が110万円以内であっても、その分は将来的に相続税の対象になってしまうのです。「相続税の負担を和らげる」という目的で利用する場合、かえって逆効果になってしまう可能性もあるという点が、非常に大きなデメリットと言えます。 土地の生前贈与にも注意が必要 相続時精算課税制度のデメリットで、もう1点頭に入れておきたいのが「土地の生前贈与」についてです。相続時精算課税制度を使えば、不動産の生前贈与も可能。ただしこの場合、相続税で認められている「小規模宅地等の特例」の利用はできません。 小規模宅地の特例とは、亡くなった人が使用していた宅地等のうち、一定部分までであれば相続税評価額を80%まで減額できる制度のこと。この特例を使えば、土地や自宅に関しては、非常に少ない負担で相続できる可能性が高いでしょう。しかし相続時精算課税制度を利用した場合、減額されない価格で相続税が計算されます。余計な負担が発生する可能性があるのです。 こちらのデメリットも頭に入れた上で、相続時精算課税制度を利用した不動産の贈与については、慎重に検討する必要があるでしょう。税負担の軽減という目的だけを考えるなら、相続時精算課税による贈与財産からは除外するのがおすすめです。 相続税が0円なら利用のメリットは大! 相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」という基礎控除額が定められています。この範囲内であれば、相続税が課せられることはありません。もちろんこの基礎控除は、相続時精算課税制度を利用した場合でも適用されます。 「単なる税金の先送り」とも言われる相続時精算課税制度ですが、法定相続人が1人で合計3,500万円の遺産を受け継ぐケースでは、「非課税で早く大金を受け取れる」というメリットが発生する可能性も。相続時精算課税制度を利用して先に2,500万円を受け取っても、残りの財産が1,000万円なら、相続税は課せられません。 相続時精算課税制度を利用しない場合、 ・被相続人が亡くなった段階で3,500万円を受け取る・2,500万円の生前贈与を受ける時点で、相応の贈与税を支払う のいずれかを選択せざるを得ないでしょう。相続時精算課税制度によって、「税金の負担なく早い段階で親の遺産を引き継ぎ、活用する」という第3の選択肢が生まれるのです。 自分にとってのメリット・デメリットを検討し慎重な決断を 生前贈与を行う際の相続時精算課税制度を利用する際には、メリットもあればデメリットもあります。自分にとってはどちらの方が大きいのか、冷静に判断する必要があるでしょう。 ・本当に今大金を受け取る必要があるのか?・その他の非課税制度(住宅資金や教育資金)は利用できないか? これらの点も踏まえて、ぜひ慎重に検討してみてくださいね。

  • 遺産の独り占めはよくあるトラブル!3つの対処法と予防のポイントは?

    遺産の独り占めはよくあるトラブル!3つの対処法と予防のポイントは?

    遺産相続に関するトラブルで、耳にする機会も多いのが「独り占め」です。相続人のうちの1人が財産を独占してしまったら、その他の相続人にとっては、到底納得できる状況とは言えないでしょう。 では実際に独り占めトラブルが発生してしまった際に、私たちはどう対処するべきなのでしょうか。3つの方法と、そもそも独り占めトラブルを起こさないための予防法をお伝えします。 遺産の独り占めが起きる理由 遺産の独り占めが起きる理由 相続が発生する前は、「相続人の誰かが財産を独り占めするなんて、想像もできない…」と思う方も多いのかもしれません。しかし実際には、遺産の独り占めは「よくあるトラブル」の一つ。決して珍しくないのです。では、そもそもなぜ遺産の独り占めという状況が生まれてしまうのでしょうか?理由として考えられるのは、以下の2つの状況です。 ★遺言書に「○○にすべての財産を譲る」という記載がある場合 被相続人が遺言書に、「特定の相続人のみにすべての財産を譲る」と記載していた場合、遺産の独り占めは可能になります。法的に有効な遺言書に記載された内容は、何よりも優先されるべき事項だからです。相続人の意志というよりは、被相続人の意志によるものと捉え、受け入れる必要があるでしょう。 ★同居中の家族が遺産分割協議に応じない場合 遺言書がない場合でも、被相続人と同居していた相続人によって、財産を独り占めされてしまうケースもあります。同居家族であれば、預金口座に残されたお金やその他の財産についても、別の相続人よりも詳しく把握しているでしょう。また自宅が被相続人名義であれば、遺産分割協議によって住む場所を失う事態にもなりかねません。 ・不動産分割に関する協議に一切応じない ・遺産を勝手に使い込む このような状況で、独り占めが発生するケースもあります。 もしも遺産を独り占めされてしまったら…対処法3つ もしも本当に遺産を独り占めされてしまったら、できるだけ早く具体的な行動をとる必要があります。3つの対処法を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★遺言書が有効なのか確かめる 遺言書によって独り占めが発生している場合、何よりも先に確認しておきたいのが「遺言書の有効性」についてです。近年の終活ブームに伴って、増えている自筆証書遺言では、遺言書に必要な要件を満たせていないことが原因で、無効と判断される事例も少なくありません。遺言書そのものが無効であれば、「○○にすべての財産を譲る」といった内容も無効に。一から遺産分割協議を行う必要があり、独り占めを阻止できるでしょう。 また、たとえ遺言書の必要要件を満たしていても、自宅で保管されていた遺言書の場合、偽造されている可能性や内容を変えられている可能性も捨てきれません。あらゆる可能性を考慮しながら、遺言書そのものについてチェックしてみてください。チェックポイントがよくわからない場合には、弁護士などの専門家に相談するのもおすすめです。 ★遺留分を請求する 「○○にすべての財産を譲る」という内容の遺言書が有効であると認められた場合、相続人1人の独り占めが可能になります。とはいえ、その他の相続人には「遺留分を請求する権利」が認められていますから、必要な手続きを進めていきましょう。 遺留分とは、法定相続人に認められている遺産の最低限の取り分のこと。たとえば法定相続人が配偶者のみの場合は1/2が、配偶者と子どもの場合はそれぞれ1/4ずつが遺留分として認められます。たとえ遺言書で独り占めを認めていても、遺留分を請求すれば、実質的に独り占めを阻止できるでしょう。 ただし遺留分の請求権が認められているのは、 ・配偶者や子供などの直系卑属 ・両親などの直系尊属 のみです。兄弟姉妹の立場で法定相続人になった場合、残念ながら請求できません。 ★家庭裁判所に申し立てる 有効な遺言書がないにもかかわらず、遺産の独り占めトラブルが発生している場合、最初は説得にあたるケースがほとんどでしょう。説得に耳を貸し、遺産分割協議に応じてくれるようであれば、問題はありません。より深刻なのは、そうした説得でも効果が見られない場合です。 この場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。調停委員による説得や遺産分割審判による分割方法の決定など、法律的な側面からより公正な遺産分割をサポートしてくれるでしょう。 またすでに遺産が使い込まれている場合、まずは銀行に連絡して口座をストップしてもらいましょう。被相続人が亡くなったあとの出入金記録を確認し、使い込みの有無をチェックしてください。その記録をもとに遺産分割調停に臨むことで、使い込まれた財産分も取り返せる可能性があります。本当に使い込まれているのか、またどの程度取り返せるのかは、個々の状況によって異なります。経験豊富な弁護士に相談すると良いでしょう。 そもそも遺産の独り占めを防ぐためには? 遺産の独り占めは、さまざまなトラブルを招きかねません。その他の相続人との間に深い亀裂が生じる恐れもありますし、最終的に裁判になれば、トラブルが年単位で続いていく可能性もあるでしょう。こうしたトラブルを避けるためには、ぜひ以下のような対策を心掛けてみてください。 ★遺言書は正しく、相続人感情に配慮した形で残す 遺言書は被相続人の遺志を伝えるためのものです。余計なトラブルを防ぐためには、まず「法律的に有効な形で遺言書を残す」ことを意識してください。またその内容についても注意が必要です。 先ほどもお伝えしたとおり、相続人の1人に独り占めさせるような形の遺言を残したとしても、その他の法定相続人には遺留分の請求が認められています。最初から遺留分に配慮した内容にしておけば、独り占めにはならず、余計なトラブルを回避できる可能性も高まるでしょう。また遺産分配が公平ではない理由についても、丁寧な説明を心掛けると、より自分の気持ちを届けやすくなります。 ★同居中の相続人とその他の相続人とが円満な関係性を築く 遺言書の有無にかかわらず、遺産の独り占めは同居中の相続人によって行われるケースが目立ちます。これには、「被相続人の面倒は全部自分が見て来た」という自負や犠牲の気持ちが関係していると思われます。 同居中の家族だけが介護を担当するのではなく、周囲の相続人が積極的に関わりサポートすれば、独り占めトラブルが発生する可能性は低くなります。 遺産の独り占めトラブルは早めの相談が鍵 遺産の独り占めトラブルは早めの相談が鍵 万が一遺産の独り占めトラブルが発生してしまったら、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。遺言書の有効性や独り占めの正当性について、法律の専門家として状況を判断してくれるでしょう。また独り占めしている相続人との交渉役も担ってもらえます。 相続トラブルで弁護士なんて…と思う方もいるかもしれませんが、話がこじれれば、問題はより大きく深くなっていきます。法律の力も借りつつ、少しでもスッキリと解決できる道を探ってみてください。

  • 不動産の遺産分割はどうすれば良い?4つの方法と注意点

    遺産分割の中でも、どうすれば良いのか悩みがちなのが「不動産」です。親族間トラブルを避けるためには、どう分ければ良いのでしょうか。4つの方法とそれぞれの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。相続人同士、納得して手続きできる方法を見つけましょう。 1.不動産をそのままの形で「現物分割」 1.不動産をそのままの形で「現物分割」 現物分割とは、不動産をそのままの形で相続する方法を指します。どう分けるのかによって、さまざまなパターンが考えられるでしょう。 ・相続人のうち1人だけが、家や土地をそのまま受け継ぐ・相続人の人数で土地を分筆し、それぞれの名義とする このほかにも、複数の相続人の中から2~3人のみが、分筆した土地を受け継ぐというケースも考えられます。相続対象となる不動産が複数ある場合には、誰がどの不動産を受け継ぐのか検討することになるでしょう。 ちなみに土地の分筆とは、もともとは1つの土地を法的に分ける作業を指します。分筆すればそれぞれで登記が可能ですから、理論上は「不動産を現金のようにしてきっちり分ける」ことも可能となるでしょう。ただし、分筆には各地で特別なルールが課せられている可能性も。中には「分筆不可」というケースもありますから、相続手続きの前にはしっかりとリサーチしておきましょう。 「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」場合、相続手続きはいたってシンプルです。ただし相続財産の中でも、不動産は高額になりがち。現金や預金といったその他の遺産が豊富にあればバランスを取りやすいですが、そうではない場合、不公平感が生じてしまう恐れもあります。不動産を相続する人に対して「ずるい」という感情が生まれれば、遺産分割協議がなかなかまとまらない可能性もあるでしょう。 2.そのほかの相続人に代償を支払う「代償分割」 先ほどお伝えした「相続人のうち、1人だけがそのままの形で家や土地を受け継ぐ」という場合の、不公平感を軽減できるのが「代償分割」です。家や土地を受け継ぐ相続人は1人ですが、その1人がその他の相続人に対して代償金を支払い、相続の公平性を保ちます。 たとえば親名義の不動産で長男夫婦が同居していた場合、親の亡き後、長男夫婦が自宅に住み続けるためには、家や土地を相続する必要があるでしょう。仮に長男以外に次男・三男がいたとしたら、それぞれに相応のお金を支払います。不動産の価値が3,000万円なら、次男と三男それぞれの取り分は1,000万円ずつ。これを長男が、自分の財布から出すことになります。 代償分割のデメリットは、不動産を受け継ぐ人の金銭的負担が大きくなってしまう点です。経済的に余裕があれば良いですが、そうではない場合、「そもそも代償分割を選択できない」という可能性もあります。 一方で、マイホームでそのまま暮らしつつ、その他の相続人との間で公平に財産を分け合える点はメリットと言えるでしょう。相続対象の土地が分筆不可能であっても、代償分割なら相続人同士の争いごとが起きる可能性は低くなります。 3.不動産を売却してお金に換える「換価分割」 換価分割は、不動産を売却してお金に換えた上で、そのお金を相続人同士で分け合うスタイルを指します。マイホームは手元に残らないものの、相続人同士で平等に分配できるというメリットが期待できるでしょう。 不動産を換価分割する場合、相続手続きがスタートした後に、できるだけ早く手続きを進めていくことが大切です。対象の不動産がすぐに売れるとは限りませんし、時間に余裕がなくなれば、安い金額で手放さなくてはならなくなる可能性も高いでしょう。換価分割の場合、「不動産をできるだけ高く売ること」が重要なポイントに。そのための工夫は、ぜひ取り入れてみてください。 不動産を売却するためにはさまざまな手数料が発生します。相続時には、売却益から手数料を差し引いた上で、各相続人が自身の取り分を受け取ります。仮に不動産が3,000万円で売れたとしても、そのすべてが相続の対象になるわけではありません。手数料が300万円なら、残りの2,700万円を法定相続割合に応じて分配しましょう。 この方法であれば、代償分割とは違い、金銭的な余裕はなくても不動産を公平に分配できます。全員が「現金で受け取る」ため、差が生じにくく揉めごとに発展しにくいと言えるでしょう。ただし不動産を手元に残せないため、「被相続人が暮らしていた思い出の家や土地」を手放すことになります。同居していた親族がいれば、引越しを余儀なくされてしまうでしょう。 換価分割する場合には、遺産分割協議書にその旨と分配割合を記載するようにしてください。記載がないと、税金が二重に課せられてしまう恐れがあります。また誰がどういった形で登記し、売却手続きを進めていくのかについても考えなくてはいけません。そのあたりさえクリアできれば、全員が納得して進めやすい分割方法と言えるでしょう。 4.複数名義で引き継ぐ「共有分割」 不動産そのものを残したい一方で、不平等な分配は望まず、また代償分割も難しい場合に、選択肢として考えられるのが「共有」です。こちらの分割方法では、不動産を分割したり売却したりすることはありません。あくまでもそのままの形で引き継ぎ、相続人同士が複数人で不動産を所有します。 この場合、それぞれの持ち分は法定相続割合によって決められます。不動産の形はそのままに、「とりあえず今のままの形を維持できる」という点で、優れた分割方法と言えるでしょう。 ただし、一つの不動産を複数人で所有すれば、後々のトラブルにつながりやすくなります。たとえば物件のリフォームや売却を希望する場合でも、全員の許可が必要になるでしょう。また今回は相続人であった人が、いずれ被相続人になることも考えなくてはいけません。当然、共有分割した不動産の持ち分も相続財産に数えられますから、物件を取り巻く状況はさらに複雑になってしまいます。 一時的にはメリットがあっても、将来的に見ればトラブルの種。できる限り、その他3つの方法での分割を検討してみてください。 不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を 不動産の遺産分割で悩んだら専門家に相談を 不動産相続で、どう分ければ良いのか悩む方は多いものです。一概にどれが正解とは言えませんから、自分たちにとってより良い方法を検討してみてください。 どれを選ぶべきか悩んだときには、専門家に相談したり、実際に不動産査定を受けてみたりするのもおすすめです。不動産相続の注意点や、相続対象となる物件の価値がわかれば、これから先どうしたいのか、相続人としての選択肢も見えてくるのではないでしょうか。

  • 「養子縁組」は遺産の相続税対策になる?仕組みや方法・注意点を解説

    平成27年1月実施の法改正により、相続税の基礎控除額が大幅に減額されました。これにより、相続税を支払わなくてはならない人の数も増加。だからこそ、相続税対策の重要性も増してきています。相続税対策の具体的な方法をリサーチしている方にとって、選択肢の一つになり得るのが「養子縁組」です。養子縁組が相続税対策になる理由や、実践する際の注意点を解説します。 養子縁組が相続税対策になる理由は? 養子縁組が相続税対策になる理由は? 養子縁組や相続税対策になる理由は、相続税の基礎控除額が決定される仕組みにあります。相続税は、受け継ぐ遺産の金額が基礎控除内におさまっていれば課税されません。基礎控除額を求める式は以下のとおりです。 【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】 このように、相続税の基礎控除額は法定相続人の数によって左右されます。仮に法定相続人が配偶者と子どもの合計2人であった場合、基礎控除額は4,200万円です。一方で法定相続人が10人いれば、9,000万円まで相続税が課税されない計算になります。 養子縁組は、法定相続人を増やす行為です。養子にも実子と同じように相続権が認められています。仮に養子縁組で法定相続人が2人増えれば、それだけで「相続税の基礎控除額も1,200万円アップする」というわけです。 また生命保険金や死亡退職金にも、相続人の数で金額が変わる非課税枠が用意されています。 生命保険金の非課税枠 → 【500万円×法定相続人の数】死亡退職金の非課税枠 → 【500万円×法定相続人の数】 すべてを活用した場合、養子による節税効果は非常に高いと言えるでしょう。 また仮に、養子縁組をしても相続税が発生してしまうとしても、相続人が増えれば1人当たりの相続財産の金額は減ります。すると相続税が課税される税率が低く抑えられるため、節税につながるというわけです。 相続税対策で養子縁組をする場合の注意点4つ 養子縁組で相続税対策をする仕組みは、いたってシンプルです。とはいえ、実際にこの方法で相続税対策を行った結果、トラブルに巻き込まれたり落とし穴にはまってしまったりするケースも少なくありません。4つの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★1.養子縁組で相続税対策できる人数には制限がある 上で説明したとおり、養子縁組による節税効果は十分にあります。とはいえ、「だったらどんどん養子を増やせばいい!」というわけにはいきません。法定相続人に含められる養子の数には制限があるからです。被相続人に実子がいる場合、法定相続人に含められる養子の数は「1人」です。実子がいない場合は「2人」まで認められています。 ただし養子を「特別養子縁組」で迎え入れていた場合、こちらのルールは適用されません。 特別養子縁組の場合、 ・子どもが15歳までであること・子どもの福祉のために必要であると認められること・裁判所の許可が得られること など、厳格な条件を満たす必要があります。 特別養子縁組で迎え入れた子どもは、実親との法律上の親子関係を解消し、新たに養親との間に親子関係を結ぶことに。血縁上は養親であっても、法律上は親子関係が認められているため、たとえ養子が3人以上いたとしても全員が法定相続人になれるというわけです。 ★2.養子は実子と同じように遺留分を請求できる 相続税対策を目的に養子縁組を行う場合、注意しなければならないのが、養子の相続分についてです。税金対策だけを目的にするなら、「養子を迎え入れて基礎控除額や非課税枠をアップさせたうえで、すべての財産を実子に残せるよう遺言を残せばよい」と思うかもしれません。 しかし法定相続人となった養子には、その他の相続人と同様に「遺産を相続する権利」が認められています。たとえ「実子にすべての財産を譲る」という遺言を残したとしても、養子には遺留分を請求する権利が認められているのです。遺留分をめぐってトラブルに発展する可能性があります。 ★3.相続税が2割加算される可能性がある 相続税の節税のために養子縁組をした結果、相続税が加算されてしまうケースもあります。それが、「孫を養子にして、祖父母から孫へと直接遺産を受け継ぐ場合」です。祖父母から父母、そして孫へと受け継がれる場合、相続税が2回発生する可能性があります。孫を祖父母の養子にして直接相続させれば、相続税を1回分節約できるでしょう。 とはいえこの方法は不公平なもの。相続税を2割加算することで、公平性を維持しています。知らないまま手続きすると「想像以上に相続税が高かった!」という事態に陥りかねませんから、注意してください。 ★4.その他の相続人の理解を得られない可能性がある 養子縁組で相続人を増やせば、相続税の負担は減らせるかもしれません。しかしそのほかの相続人たちにとっては、自分自身の取り分が減るということ。特に「遺産相続のために形式だけ養子になった」という場合、理解を得られない可能性があります。 このケースで特に多いのは、「同居する子どもの配偶者」を養子にして法定相続人にするケースです。同居する子どもの配偶者に生前非常にお世話になったとしても、法律上は法定相続人に含まれません。「より確実に遺産を受け取ってもらえるように」との思いで養子縁組するケースがあります。 とはいえ、同居していない子どもにとっては、「自身の取り分が減る」ということ。納得できない可能性も十分にあるでしょう。同居中の子ども夫婦と、兄弟姉妹夫婦の間で、相続をきっかけとした親族間トラブルに発展してしまう恐れがあります。 相続税対策の養子縁組でトラブルを起こさないために 相続税対策の養子縁組でトラブルを起こさないために 相続税対策に養子縁組をすれば、一定の効果が期待できるでしょう。とはいえ、しっかり検討しないまま決めてしまうと、思わぬトラブルを招いてしまう可能性も。まずは一度、相続に関する専門知識を有する専門家に相談するのがおすすめです。税理士を探し、アドバイスをもらいましょう。 相続税対策の方法は、養子縁組だけではありません。養子縁組以外の方法を選んだ方が、より効率的に相続税対策ができる可能性もあるでしょう。またそれ以前に、相続税の特例や控除を使えば、「わざわざ特別な対策を採らなくても、相続税の負担なく財産を引き継げる」というケースも存在しています。 その他の方法も検討したうえで「やはり養子縁組を」と思う場合には、その他の相続人に対する、丁寧な説明が必須です。なぜ養子縁組をするのか、なぜ養子にも財産を残したいのかが明らかになれば、遺産分割について納得したうえで受け入れられる相続人も多いはずです。相続税対策で養子縁組を選ぶのであれば、特に慎重に話を進めていってください。

  • 婚姻中に親から相続した遺産は離婚時に財産分与の対象になる?知っておきたい基礎知識

    夫婦が離婚する場合に、行われるのが財産分与です。婚姻中に築き上げた財産を分け合うことを指しますが、「何をどこまで財産分与するのか?」で悩む方は少なくありません。今回紹介するのは、「婚姻中に親から相続した遺産」の取り扱いについてです。財産分与の対象になるケースやならないケース、頭に入れておきたい基礎知識を解説します。 相続した遺産は基本的に「特有財産」 相続した遺産は基本的に「特有財産」 財産分与について、まず頭に入れておきたいのが以下の2つです。 ・共有財産・特有財産 共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産のこと。一方で特有財産とは、夫婦どちらかのみに帰属している財産を指します。 たとえば、結婚している最中に増えた貯金や、購入した不動産は共有財産に含まれるでしょう。これらの共有財産は、離婚によって夫婦それぞれに分与されます。一方で特有財産は、財産分与の対象にはなりません。たとえ婚姻中に得た財産であっても、配偶者とは無関係であり、「形成されるのに夫婦間の協力はなかった」と判断されるためです。 婚姻中に自身の親が亡くなり、遺産を受け継いだ場合、その財産は「特有財産」と判断されます。よって、遺産相続後に離婚することになっても、基本的に財産分与の対象には含まれません。財産分与の話は、夫婦間で「何が共有財産にあたるのか?」を確認した上で、遺産相続とは別に進めていく必要があるでしょう。 ちなみに、特有財産に含まれるのは、相続した遺産だけではありません。 ・独身時代に貯めたお金・自身の親から援助された住宅資金・別居後に取得した財産 これらの財産も特有財産と判断されるため、財産分与の対象外となります。 遺産相続で得た財産も「共有財産」とみなされる可能性がある? 遺産相続で得た財産も、状況によっては共有財産とみなされるケースもあります。この場合、もちろん遺産も財産分与の対象となるため注意しましょう。具体的には、「遺産相続で得た財産が、配偶者の協力のもとで価値が向上した場合」がこちらにあたります。 たとえば、遺産相続で受け継いだお金を運用し、その金額が大幅にアップしている場合、「遺産に対して配偶者の貢献がある」とみなされる可能性があります。住宅を受け継ぎ、リフォーム等でその価値が向上している場合も含まれるでしょう。配偶者の貢献がどの程度あるのかによって、財産分与の割合は違ってきます。法律で明確な基準が設定されているわけではないため、状況に応じて、事例ごとに判断されるでしょう。 また遺産相続で得た財産が、夫婦の共有財産と混ざってしまっている場合にも注意が必要です。すでに「家計の一部」として、生活費が出たり入ったりしていれば、やはりそれも共有財産としてみなされてしまう可能性があります。財産分与を望まないのであれば、遺産として受け継いだお金を生活費の口座に入れておくのは危険です。 何をどこまで共有財産とみなすのかは、財産分与をする際に揉めやすいポイントです。遺産相続と財産分与、両者に関連したトラブルを避けるためには、共有財産と特有財産、それぞれの性質を理解した上で適切に管理する必要があるでしょう。 相続財産を財産分与しなくても良い具体的な事例とは? 相続した財産が財産分与の対象になるのかどうか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ここでは、相続した財産が財産分与の対象にならないケースを2つ具体的に紹介します。ぜひ参考にしてみてください。 ★相続した遺産を共有口座で管理していた場合 まだ離婚を検討していない時期、一方が相続した財産を、夫婦共有の口座で管理するケースは決して珍しくありません。この場合、「夫婦共有口座のお金であること」を理由に、財産分与の対象になるのでは?と不安に思う方も多いのではないでしょうか。 相続した遺産を共有口座にて管理していた場合でも、「遺産として受け継いだ分の特有財産」と判別できる状態であれば、財産分与の対象にはなりません。あくまでも「夫婦の生活費と混ざっておらず、特有財産として独立した存在である」と示せることが重要です。遺産相続分がどれだけなのか、きちんと把握できる状態であれば、共有口座かどうかは問題にはなりません。 ★相続した不動産で暮らしていた場合 夫婦どちらかが相続した家で暮らしていた場合、ただ暮らしていただけであれば、「配偶者の貢献によって価値が上昇した」とは考えられません。よって、財産分与の対象にはならないと考えられます。相続後にリフォームや大規模修繕を行っている場合を除き、財産分与の対象にする必要はないでしょう。 遺産の財産分与を希望する場合は? ここまで解説してきたとおり、遺産相続で受け継いだ遺産は、基本的に財産分与の対象にはなりません。相続手続きが婚姻期間中に行われた場合でも、この原則には変わりがないという点を、頭に入れておきましょう。 一方で、「遺産相続と財産分与の基本を知ってはいるが、相続した遺産も財産分与の対象にしたい」という方もいるのではないでしょうか。この場合、夫婦間の合意のもとで、一方の特有財産である遺産を、財産分与の対象として加えることも可能です。 特有財産を財産分与の対象外とするのは、民法の基本。しかし夫婦間の合意のもとで財産分与について決定する場合、その対象や割合については、原則にかかわらず、夫婦間で自由に決定できるという特徴があります。 「せっかく自分が受け継いだ遺産を財産分与するなんて…」と感じるケースも多いでしょうが、夫婦が離婚に至るまでの事情はさまざまです。「一刻も早く離婚したいのに、財産分与について揉めて、なかなか話が進んでいかない…」という場合には、遺産として受け継いだ分も含めて財産分与することで、手続きをスムーズに進めていける可能性もあるでしょう。 自分にとって何を優先したいのか、はっきりさせた上で手続きを進めていくのがおすすめです。 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 相続した遺産と財産分与について適切な知識を身につけておこう 婚姻期間中に遺産を相続した場合、その財産は夫婦どちらかのみに帰属する「特有財産」と判断されます。離婚する場合でも、基本的に財産分与の対象には含まれないため、まずは安心してください。 ただし相続後の遺産の取り扱い方や、管理方法によっては財産分与の対象と判断されてしまうケースもあります。万が一の場合に備え、「特有財産である」ことを明確にして、維持・管理していくと良いでしょう。 また離婚する際の状況によっては、遺産も含めて財産分与した方が良いケースもあります。自分にとってのメリット・デメリットが気になったら、ぜひ一度専門家に相談してみてください。相続した遺産と財産分与について、適切なアドバイスを受けられるのではないでしょうか。

  • 遺産に関する相談は「法テラス」にお任せ!何ができる?メリットは?

    子育てがひと段落すると、自分たちの老後について漠然とした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。遺産に関する不安も、その中の一つです。「将来のトラブルリスクを回避するため、具体的な対策をスタートしたい」と思いつつ、まず何からすれば良いのかわからない…と悩む方も少なくありません。法律に関連するお悩みの相談先として有名なのが「法テラス」ですが、遺産についても相談できるのでしょうか?法テラスでできることや、利用するメリットについて解説します。 そもそも法テラスとは? そもそも法テラスとは? 法テラスの正式名称は、日本司法支援センターと言います。国が設立した機関で、「法的トラブルを抱えている方に解決の道を示すための総合案内所」という役割を担っています。 法的なトラブルを抱えてしまった際に、「誰に相談すれば良いのかわからない…」「法律によって解決できる道があるのかどうかさえはっきりしない」と感じる方は少なくありません。法律による支援にたどり着けないまま、どんどん状況を悪化させてしまう方も多いものです。だからこそ法テラスでは、以下のような業務を行っています。 ・トラブル解決のための情報提供・問題を解決するための具体的な相談窓口・無料法律相談の提供や弁護士・司法書士費用等の立て替え 日常生活の中、何らかのトラブルを抱えてしまった場合でも、まずは一度法テラスに相談するのがおすすめです。トラブルを解決するため、具体的にどういった手段を検討できるのか、専門家によるアドバイスを受けられるでしょう。より具体的なサポートをしてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらうことも可能です。 また一定の収入・資産要件を満たしている人向けに、無料で法律相談を実施したり、専門家費用を立て替えたりする制度も用意されています。法テラスは基本無料で利用できる機関なので、ぜひ活用してみてください。 法テラスを活用して遺言や遺産に関する疑問を解消 遺産や遺言には、法律が深く関わってきます。法律の知識がないまま自己流で終活を進めた場合、後々トラブルにつながってしまう可能性も。さまざまな不安を解消するため、また法的な基礎知識を身につけるため、ぜひ法テラスを活用してみてください。法テラスで相談できる内容の具体例は、以下のとおりです。 ★将来の遺産相続のために遺言書を残したい 終活ブームの今、「遺産相続にまつわるトラブルを防ぐためには遺言書が有効」という情報は広く知れ渡っています。しかし本当にトラブルを防ぎたいなら、単純に「遺言を残しておけばOK」とだけ考えるのは危険。「法律知識をもとに、適切な形で残された法的に有効な遺言書」を用意しておく必要があります。遺留分や法定相続人の範囲など…適切な知識がないまま遺言を残しても、かえってトラブルを招く結果になってしまうでしょう。 法テラスに相談すれば、正しい形で遺言を残すために必要な、法制度に関する情報を提供してもらえます。また「自分だけでは不安…」という場合には、より具体的な相談を受け付けてくれる専門家や相談窓口を紹介してもらえるでしょう。専門家に相談しつつ、自分にあった遺言書を残せるはずです。 ★両親の遺産を相続する際に、親族間で争いが起きている 子育てがひと段落する年代は、自分自身が相続人になる機会も多い時期です。両親の遺産を相続する際に、すでに親族間で争いが起きてしまっているような場合も、法テラスにて相談が可能。相続に関する法律知識を提供してもらえるほか、自身の代理人となって動いてくれる、弁護士の紹介も受けられます。 親族間で直接やりとりすると、遺産相続問題は泥沼化してしまう恐れも。第三者である専門家の手を借りることで、話し合いをスムーズに進めていける可能性も高まるでしょう。 ★相続放棄をしたいが、何からすれば良いのかわからない 相続放棄の手続きは、相続が発生してから、一定期間内に適切に行わなければいけません。まず自分が何をするべきなのか、いつまでにどういった手続きを終えなければならないのか、法テラスにて相談に乗ってもらえます。もちろんこの場合も、専門家事務所の紹介を受けることが可能。相続放棄以外にも、「親が亡くなり、借金を代わりに返済するよう言われてしまった…」といった状況でも、適切に対処できるでしょう。 法テラスを利用するメリット3つ 初めての法律相談を、ためらう方は少なくありません。法テラスを利用するメリットを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★基本無料で気軽に相談できる 法テラスへの相談は、基本無料で利用できます。個別の事例に対して、具体的なアドバイスはもらえませんが、法律に関する基本的な情報提供を受けることは可能。相談は何度でもできますから、法律に関する知識を、少しずつ深めていけるのではないでしょうか。 法テラスへの相談は匿名でできますし、また電話やメール、直接相談など、さまざまな相談形式が整っています。自分に合った相談スタイルで気軽に利用できる点が、メリットだと言えます。 ★相続に強い専門家につないでもらえる 遺産相続に関する各種手続きを専門家にサポートしてもらう場合、依頼先の専門家は、「遺産や相続に強い人」を選ぶ必要があります。もともとのツテでもない限り、誰に相談すれば良いのか悩む方も多いでしょう。法テラスに状況を伝えて相談窓口を紹介してもらえば、相続問題に強い専門家とつながれるはずです。 「自分で相談先事務所を選べない」という点は、法テラスを利用するデメリットとも言われています。一方で、「相続問題に強い専門家を自分自身で見つけ出す自信がない…」という場合には、非常に大きなメリットとなるでしょう。 ★無料相談や費用の立て替え制度を利用できる 法テラスには、収入や保有資産が少ない方に対する扶助制度も用意されています。「遺産相続について困っているが、収入がなく、専門家にサポートを依頼するのが難しい…」といった場合でも、法テラスなら無料相談や費用の立て替えに応じてもらえます。 法テラスの民事扶助制度の利用を希望する場合、収入や資産に関する要件を満たしていることを示すための書類が必要です。まずは一度、法テラスの相談窓口に問い合わせをしてみてください。自身が要件を満たしているか、またどのような書類を用意すれば良いのか、具体的な情報をもらえるでしょう。 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産相続に関する困り事も法テラスに相談を 遺産や相続、遺言に関するお悩み事を抱えている際に、誰に相談すれば良いかわからず、悩んでしまう方は少なくありません。法テラスなら、誰でも無料で気軽に相談できますから、ぜひ活用してみてください。法律に関する情報を提供してもらったり、相談先窓口を紹介してもらったりすれば、これから自分が何をするべきか、具体的に見えてくるのではないでしょうか。

  • 公正証書遺言で遺産トラブルを回避しよう!残し方・費用・注意点など基礎知識を解説

    近年、「遺言書を残して遺産トラブルを回避しよう」と考える方が増えてきています。自身が残した遺産を巡って、大切な人たちが争うとしたら…これほど悲しいことはありません。なんとかして回避したいと思うのは、当然だと言えるでしょう。 しかし実際には、故人が失くした遺言書をきっかけに、さらなるトラブルが発生してしまう事例も存在しています。遺産トラブルを防ぐのに有効なスタイル、「公正証書遺言」について、わかりやすく解説します。 なぜ遺言書を残しても遺産トラブルが発生するの? 終活を意識し始め、各種情報サイトをチェックしてみると、「遺産トラブルを予防するためには遺言書が有効」という情報を目にする機会も多いのではないでしょうか。確かに遺言書が残されていれば、故人の思いに沿った相続が可能に。親族間のトラブルを予防するため、一定の効果が期待できるでしょう。 しかし実際には、遺言書が残されていても、遺産トラブルに発展してしまう事例は決して少なくありません。その理由は以下のとおりです。 ★1.遺言書が法的に有効と認められないから 遺言書にはいくつかのタイプがあり、いつでも好きなときに、自分の手で書き残せるものもあります。しかしこの場合、遺言書に必要な要件を満たしておらず、「法的に無効」と判断されてしまうケースも少なくありません。 遺言書が残されていても、法的に有効だと認められなければ意味がありません。相続人はあらためて遺産分割協議を行い、遺産相続の詳細を決定しなければならないのです。遺言書で遺産を多くもらえるように指定されていた人は、当然「故人の遺志」を尊重するよう求めるでしょう。一方で、その他の人は法定相続分に沿った手続きを求める可能性が高いです。法的に無効な遺言書によって、故人の遺志を確認できてしまうが故のトラブルだと言えるでしょう。 ★2.遺言書に記された内容が遺留分を侵害しているから 法的に認められる形で遺言書が残されていた場合でも、油断は禁物です。その内容によっては、やはり親族間のトラブルが発生してしまう恐れがあります。中でも注意しなければならないのが、遺留分についてでしょう。 遺留分とは、相続人が相続財産の中から最低限相続できる財産のこと。たとえ「全財産を○○に譲る」という内容が残されていたとしても、その他の相続人は遺留分を請求できます。最低限の財産を相続できるとはいえ、「いったいなぜこのような遺言が残されたのか?」という点で、トラブルが発生する恐れもあります。 ★3.遺言書に本人の意思が反映されているとは限らないから 被相続人が自分一人で作成し、自宅で保管されていた遺言書の場合、その内容の信ぴょう性がもとで、トラブルに発展するケースもあります。 ・認知能力が低下した状況で、誰かに書かされたのではないか?・すでに内容が改ざんされているのではないか? もしも本当に、遺言の強制や誘導、改ざんといった事実があれば、そこに故人の遺志は反映されていないことに。その信ぴょう性を巡って、騒動に発展する事例も決して少なくありません。 公正証書遺言とは?トラブル回避に有効な理由 上で説明したようなトラブルは、遺言の残し方に工夫することで予防できます。ぜひ公正証書遺言に注目してみてください。 公正証書遺言とは、公証人関与のもとで遺言書を作成する方法を言います。作成段階から専門家に手を貸してもらえば、 ・遺言書が法的に無効と判断されるリスクを防ぐ・遺言の内容についても事前に専門家に相談に乗ってもらえる・あとで内容が改ざんされる恐れがない といったメリットが発生します。遺言書にはさまざまな種類がありますが、公正証書遺言は「もっとも確実性の高い遺言」と言われているのです。 公正証書遺言は、第三者である「公証人」が作成します。出来上がった遺言書は、公文書として扱われ、いざ遺言が執行される瞬間まで厳重に管理されるでしょう。遺言を残した時点での故人の「意思」が、争点になる可能性も低くなります。 ただし公正証書遺言を作成するためには、相応の手数料を支払う必要があります。また作成までには、それなりの時間がかかってしまうでしょう。遺言書を残したいと思ったら、できるだけ早く行動に移すよう注意してくださいね。 公正証書遺言の残し方や費用を解説 公正証書遺言の残し方や費用を解説 ではここからは、実際に公正証書遺言を残すための流れや費用をチェックしていきましょう。公正証書遺言を作成するための手順は、以下のとおりです。 1.公証人との間で事前打ち合わせを行う2.証人になってくれる人を2人探す3.証人2人と共に公証役場に行き、遺言書を作成する4.同じ内容の公正証書遺言を3通作成し、1通を公証役場に保管する 公正証書遺言を作成する場合に、最初にやらなければならないのが公証人との打ち合わせです。公証役場に出向いたからといって、その場ですぐに遺言を作成できるわけではありません。遺言に残す内容など、事前の打ち合わせを済ませておきましょう。 また証人には、未成年や将来相続人になると推定される人は指定できません。また公証人の配偶者や、四親等以内の血族も指定できないというルールがあります。 信用できる人物2人に依頼するのが一番ですが、手間を省きたいなら専門家に依頼するのもおすすめです。事前打ち合わせや公証役場での手続きについても、専門家がしっかりとサポートしてくれるでしょう。遺留分についても、トラブルになりにくい遺言の残し方をアドバイスしてもらえるはずです。 公証役場では、公証人の本人確認や遺言内容の確認、公証人の筆記・読み聞かせといった手続きが行われます。遺言者と証人2名、さらに公証人が署名捺印することで、正式な遺言として認められるでしょう。 公証役場での手続きに必要な時間は、およそ30分前後です。また公正証書遺言を作成するためには、公証役場に手数料を支払わなければいけません。遺言の価格に応じて手数料の金額が変わってくるため、注意してください。 財産が100万円以下であれば手数料は5,000円です。一方で財産の価額が5,000万より上で1億円以下の場合の手数料は4万3,000円です。自身の財産の金額に合わせて、どれだけ必要になるのかあらかじめチェックしておきましょう。 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産トラブルは少なくない!公正証書遺言で回避しよう 遺産相続について、「まさか我が家でトラブルなんて…」と考える方は少なくありません。しかし実際には、相続に関して割り切れない思いを抱く人は多いもの。非常に根の深い、親族間トラブルの原因になる可能性もあるのです。将来のトラブルを予防するために、ぜひ公正証書遺言についても検討してみてください。 作成時に手間はかかっても、「法律的にほぼ確実な遺言書が残せる」というメリットは非常に大きいと言えるでしょう。トラブル回避を目的に遺言書を残すのであれば、ぜひ積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

  • 遺産相続の手続きは自分で!具体的な進め方と注意点を解説

    40代~50代になると、いつか発生するであろう「相続」について、気になる方も多いのではないでしょうか。実家の親が亡くなれば、子どもはほぼ確実に法定相続人に数えられます。いざ相続が発生しても、「具体的に何をどう手続きすれば良いかわからない…」と悩む方は少なくありません。 遺産相続の手続きは、具体的にどう進めていけば良いのでしょうか。自分で手続きする場合の流れや注意点について解説します。 遺産相続とは?大まかな流れ 遺産相続とは、亡くなった人が所有していた財産を、相続人で分け合う手続きを言います。具体的にどういった流れになるのか、把握しておきましょう。遺産相続の流れは、「故人が遺言書を残しているかどうか?」によって、大きく違ってきます。 遺言書が残っている場合と、残っていない場合、それぞれについて大まかな流れをチェックしてみましょう。 ★遺言書が残されている場合 故人の遺言書が見つかった場合の流れは、以下のとおりです。 1.必要に応じて家庭裁判所にて検認の手続きをする2.遺言書の中身を確認する3.遺言書の内容に沿って、遺産を分割する4.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書とは、故人の最期の思いを記した正式な書類です。法的効力を持つ正式な遺言書であれば、そこに記された内容に沿って相続手続きを進めていくのが基本。たとえ遺言書に記されていた内容が法定相続分とは異なっていても、遺言書の方が優先されます。 親族間で協議する必要がないため、争いごとを避けられる可能性も高いでしょう。また相続が発生してから、慌てて相続財産の調査をする必要もありません。 ただし遺言書が自宅で発見された「自筆証書遺言」の場合、家庭裁判所による「検認」と呼ばれる手続きが必要です。封がしてあるものを勝手に開けて中身を確認してしまうと、偽造や変造を疑われる原因に。5万円以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意してください。 遺言書の検認には、家庭裁判所への申し立てが必要です。以下の必要書類を揃えて手続きしてください。 ・申立書・遺言者の戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本(出生時から死亡時までのすべてを揃えて提出)・相続人の戸籍謄本(全員分) 検認には、少なくても1ヶ月以上の時間が必要になります。検認が必要な遺言書が発見されたら、できるだけ素早く申し立てを行いましょう。 ちなみに、残されていた遺言が公正証書遺言であったり、自筆証書遺言であっても法務局にて保管されていたりした場合には、検認は不要です。偽造や変造の疑いがないため、すぐに内容を確認し、その後の手続きを進めていけます。 ★遺言書が残されていない場合 遺言書が残されていない場合は、遺産相続について、相続人が協力して決定する必要があります。こちらの場合の大まかな流れは以下のとおりです。 1.相続人に関する調査を行い、確定する2.相続財産に関する調査を行い、確定する3.遺産分割協議を行う4.協議の内容に基づき、遺産分割協議書を作成する5.遺産分割協議書に基づいて、遺産を分割する6.口座の解約や不動産の名義変更といった手続きを完了させる 遺言書が残されていない場合、「誰が相続人になるのか?」「何が相続対象に含まれるのか?」を明らかにするところからスタートします。必要に応じて、専門家の手を借りることも検討してみてください。こうして調査された内容をもとに、遺産分割協議を行います。誰が何を相続するのか、この協議にて確定しましょう。あとはその内容に基づいて相続を完了させます。 言葉にすると非常にシンプルですが、実際には遺産分割協議がまとまらない事例や、話がこじれて訴訟にまで発展してしまう事例も少なくありません。ひとつひとつの問題を、丁寧に解決していく必要があるでしょう。 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産の状況によっては相続放棄の検討も! 遺産相続の手続きを自分で進めていく場合、注意したいポイントのひとつが、相続放棄についてです。相続する財産の状況によっては、放棄した方が良いのかどうか、ぜひ冷静に検討してみてください。 遺産相続では、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も対象になります。相続する遺産を調査した結果、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いようであれば、相続放棄を検討した方が良いでしょう。相続放棄には、「相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内」という期限が存在しています。 遺言書の検認手続きや遺言書が残されていない場合の財産の調査は、相続放棄する可能性についても考慮した上で、時間に余裕を持って進めていくのがおすすめです。 相続放棄の手続きも、家庭裁判所にて進めていきます。申し立てが認められれば、「最初から相続人ではなかった」と法律的にも認められるでしょう。 ただし相続放棄すれば、これから先も含めて、すべての財産を相続する権利を一切失うことになります。また、もし自分よりも低順位の相続人がいれば、相続人は次の順位へと移っていくでしょう。こちらも考慮する必要があります。 遺産分割協議書の作成方法は? 遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書に記します。自分で手続きする場合、以下の点に注意してください。 ・相続人や財産を、正確に記載・相続人全員分の、実印での捺印が必要 遺産分割協議書は、預貯金の解約や相続登記などで使用する正式な書類です。内容が不十分であれば、後々トラブルに発展する可能性も。協議で決まった内容を、正確に記載してください。また相続人全員分の実印が必要になる点も、早めに確認しておきましょう。 忘れてはいけない相続税の申告 相続手続きが完了したあとに、忘れてはいけないのが相続税の申告についてです。相続税の申告には、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があります。申告が必要な場合には、忘れないように注意しましょう。 相続する財産の総額が、相続税の基礎控除額に収まる場合は、相続税を申告する必要はありません。相続税の基礎控除額は、以下の数式で求められます。 【相続税の基礎控除額 =3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数】 亡くなった配偶者の遺産を受け継ぐ場合など、基礎控除額に収まらない場合でも、相続税が発生しないケースは多々あります。ただしこの場合、「相続税を申告した結果、ゼロ円になった」と判断されるため、申告手続きそのものは必要になるため、注意してください。 相続財産の調査の段階で、「相続税の基礎控除額を超えそうだ」と判断した場合、相続税の申告についても余裕を持って進めていきましょう。 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 遺産相続の手続きは自分で可能!ただし専門家の手を借りた方が良い場合も 比較的シンプルな遺産相続であれば、自分自身で手続きを進めていくことは十分に可能です。それぞれの手続きの期限を意識しつつ、ひとつずつ確実にこなしていきましょう。一方で、以下のような場合は、専門家の手を借りることをおすすめします。 ・仕事が忙しく、平日昼間に動けない・面倒な手続きが苦手・遺産分割協議で揉める可能性が高い 自分で進めていく場合には、ぜひ今回紹介した情報を参考にしてみてくださいね。

  • 「遺産放棄」とは?相続放棄との違いを知ってしかるべき手続きを

    ひと言で「遺産」と言ってもその実態はさまざまで、状況によっては「できれば受け取りたくない…」と考える方もいるでしょう。こんなとき、あらかじめ知っておきたいのが遺産を放棄するための手続きについてです。 このコラムでは、遺産を放棄するための手続き、「遺産放棄」について詳しく解説します。混同されやすい「相続放棄」との違いについても紹介するので、ぜひ今後の参考にしてみてください。 遺産放棄(財産放棄)とは具体的にどういうこと? 遺産放棄(財産放棄)とは、相続権を持っているにもかかわらず、「遺産を相続しない」という立場を表明することを言います。被相続人が亡くなり相続がスタートすると、まずは遺言書の有無が確認されるでしょう。遺言がなければ、その遺産は遺産分割協議によって、どう分けられるのか決定されます。この遺産分割協議にて、「財産を相続しない」と表明すれば、それが遺産放棄(財産放棄)に当たります。 遺産放棄は、法律で明確に定められた手続きではありません。よって事前に特別な準備をする必要もなく、その他の相続人に自身の決意を伝えればOKです。遺産分割協議でその希望が受け入れられれば、無事に遺産を放棄できるでしょう。 また遺産放棄を宣言したからといって、相続人としての立場を失うわけではありません。他の相続人との話し合いにはなるものの、「この遺産は放棄したいが、こちらだけは相続したい」など、柔軟な対応も可能です。後になって新たな遺産が見つかったときにも、またあらためて、相続人としての立場で話し合いに参加できるでしょう。 相続放棄との違いは? 遺産を受け取らない道を考えたとき、もう一つ検討したい道が「相続放棄」です。遺産放棄とよく似た言葉ではありますが、両者の意味合いは大きく異なります。それぞれの意味を正しく把握して、自身の思いに沿った方を選択しましょう。 相続放棄とは、相続人としての権利、つまり相続権そのものを放棄するための法的手続きです。法的にも自身の立場を明確にするため、一定期間内に家庭裁判所にて、必要な手続きを済ませる必要があります。家庭裁判所にて相続放棄が認められれば、その人は「最初から相続人ではなかった」とみなされるでしょう。相続順位は次の人に回され、今後何があっても、相続人としての権利を主張することはできなくなります。 相続放棄の手続きができる期間は、「相続を知った日から3ヶ月間」です。この期間を過ぎると、相続放棄の手続きは選択できなくなりますから、十分に注意してください。 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 「相続放棄は面倒だから遺産放棄で十分!」は間違い 遺産放棄が他の相続人に自身の意思を伝えるだけでOKであるのに対して、相続放棄するためには、家庭裁判所への申し立てが必須です。「どちらにしても財産を受け取らないのだから、より簡単な遺産放棄で十分なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、この考えは非常に危険です。 なぜなら、被相続人が残す「遺産」とは、常にプラスであるとは限らないからです。万が一、マイナスの財産が相続財産に含まれれば、遺産放棄の意思表明だけでは不十分です。債権者は、相続人に対しても借金を返済するよう求める権利が認められています。法律的にも「自分は相続人ではない」と明らかにしなければ、被相続人の代わりに、自身が借金を背負ってしまうでしょう。 いくら「自分は遺産を受け取っていないので」と説明しても、債権者には通用しません。法律をもとに動いている債権者の取り立ては、そのまま継続してしまいます。 プラスの財産とマイナスの財産の両方が残されている場合には、遺産放棄で十分なのか、それとも相続放棄の手続きを取らなければならないのか、特に慎重に判断する必要があります。遺産分割協議においても、「どうせ財産を相続しないから」と安易に考えるのは辞めましょう。どの遺産を誰がどのように引き継ぐのかを明らかにした上で、自身の立場を明確にするのがおすすめです。 遺産放棄を選んだ方が良いケースとは? 遺産放棄にも相続放棄にも、メリットとデメリットの両方があります。相続放棄のメリットは、相続人としての権利を放棄したという事実を、法的にも認められる点です。一方で、柔軟な対応が難しいというデメリットがあります。以下のようなケースでは、相続放棄よりも遺産放棄を選んだ方が、メリットが大きくなると予想されます。ぜひじっくり検討してみてください。 ★1.基本的には遺産を放棄しつつ、一部のみ受け取りたい場合 遺言書が残されていない場合の遺産相続では、法定相続分に沿って遺産を分配します。しかし、常に遺産を等分に分けられるとは限りません。特に、遺産に土地や建物といった不動産が含まれている場合、相続割合は非常に複雑になるでしょう。 たとえば、「不動産は要らないが、現金だけは受け取りたい」という場合、遺産放棄が有効です。不動産についてのみ遺産放棄をして、その他の財産については受け取りましょう。遺産放棄の手続きを上手に活用すれば、親族間の余計なトラブルを防止できる可能性があります。 ★2.将来的にさらに遺産が発見される可能性がある場合 被相続人が亡くなったあと、一定期間経ってから新たな遺産が発見されるケースもあります。この場合、最初の相続で相続放棄の手続きをすると、後で見つかった遺産についても相続する権利を失ってしまうでしょう。 「今現在明らかになっている遺産は受け取らない」と決めていても、将来的に状況が変化する可能性はゼロではありません。わざわざ相続放棄をするメリットがないのであれば、遺産放棄に留めておくのがおすすめです。将来遺産が発見された場合に、あらためて相続するのか、遺産放棄をするのか、それとも相続放棄をするのか、その時点の状況を考慮して決断できるでしょう。 ★3.相続権を次の順位に回したくない場合 相続放棄をしても遺産放棄をしても、「自分が遺産を受け取らない」という結果に変わりはありません。しかし「誰が相続人になるのか?」という視点で考えると、2つの手続きには非常に大きな差があるのです。 遺産放棄を選択する場合、自分自身が相続人として、「遺産を受け取らない」と決断することに。相続権は、当然自分のもとに残ります。一方で相続放棄をすれば、相続権は次の順位へと移っていきます。相続順位が移り、相続人の範囲が広がれば、さらなるトラブルを引き起こしてしまうケースもあるでしょう。 こうしたトラブルを防ぎたい場合も、「相続人の立場のまま遺産だけを受け取らない」遺産放棄には、意味があります。 今回紹介した3つのケースは、どれも「相続財産に負債が含まれていない場合」を想定しています。まずは負債がないかどうかを確認し、その上で、遺産放棄するべきかどうか、検討してみてくださいね。 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 遺産放棄と相続放棄を知って適切な手続きを 自身の終活について考え始める時期は、身近な人からの相続について考え始めるべき時期でもあります。「遺産を受け取らない」という選択肢についても、ぜひ慎重に検討してみてください。 遺産放棄と相続放棄は、言葉は似ていますが、もたらす結果は大きく違ってきます。それぞれの基礎知識を身につけた上で、自分にとって必要な手続きを選択するのがおすすめです。

  • 兄弟姉妹の立場で遺産は受け取れる?知っておくべき注意点も

    自身の老後について考え始めたら、遺産や相続について正しい知識を身につけるところからスタートしましょう。相続とは、いつやってくるかわからないもの。きちんとした知識を持っていれば、いざそのときに慌てなくて済むでしょう。 遺産と言えば「親から受け継ぐもの」というイメージを抱いている人も多いかもしれませんが、状況によっては兄弟姉妹の遺産を受け取るケースもあります。兄弟姉妹の立場で、どうなった場合に遺産が受け取れるのか、わかりやすく解説します。 相続の基本!相続順位について学ぼう 相続の基本!相続順位について学ぼう 被相続人が亡くなったとき、その財産は相続人へと受け継がれていきます。故人と血縁関係にある人が相続人なるイメージですが、現実には「血縁関係にある人すべて」が相続人になれるわけではありません。相続には「相続順位」が定められており、この順位がもっとも高い人が相続人になれるのです。 被相続人が亡くなった際に、無条件で相続人になれるのは「配偶者」です。故人に夫や妻、法律上の配偶者がいれば、どのような状況であっても相続人として認められます。相続順位が定められているのは、この配偶者以外の相続人についてです。 相続順位がもっとも高いのは、故人の子どもです。子どもが複数人いれば、全員が相続人になります。相続順位2位は、故人の両親。そして第3順位に当てはまるのが、故人の兄弟姉妹です。相続順位1位から3位の人々は、常に相続人になれるわけではありません。相続順位が高い方から順番が回り、当てはまる人が見つかった段階で、それ以降の順位の人には相続権が発生しない仕組みになっています。 兄弟姉妹が亡くなった際に、故人が結婚していて子どもを設けている場合、配偶者とその子どもが財産を受け継ぐでしょう。故人の兄弟姉妹が相続人になるケースとして考えられるのは、「故人に子どもがおらず、両親もすでに亡くなっている場合」です。 ちなみに、故人には子どもがいたものの、すでにその子どもが亡くなっている場合、相続権は子どもの子ども、つまり孫へと受け継がれます。この場合も、故人の両親や兄弟姉妹が財産を相続することはできません。第2順位の父母が亡くなっている場合、祖父母に相続権が発生します。兄弟姉妹に相続権が発生するものの、すでに亡くなっている場合はその子どもたち、つまり故人にとっての甥や姪が相続権を持ちます。 兄弟姉妹が法定相続人になった場合の相続割合は? 兄弟姉妹の立場で相続人になると決定した場合、どのくらいの財産を受け継ぐのか気になる方もいるでしょう。兄弟姉妹が相続人となるケースは、以下の2パターンしかありません。 ・故人の配偶者と共に、兄弟姉妹が相続人になる・兄弟姉妹のみが相続人になる 下のケースは非常にシンプルで、相続人となる兄弟姉妹ですべての財産を受け継ぎます。兄弟姉妹が複数人いる場合には、財産をそれぞれで等分することになるでしょう。 一方で、故人に配偶者がいる場合、相続財産の4分の3を配偶者が受け継ぎます。兄弟姉妹の法定相続分は全体の4分の1で、相続人が複数人いる場合には、その4分の1をさらに等分に分けてください。 兄弟姉妹が法定相続人になる場合に覚えておきたい3つのポイント 兄弟姉妹が法定相続人になる場合に覚えておきたい3つのポイント 兄弟姉妹が法定相続人になるケースは、決して少なくありません。兄弟姉妹が亡くなった際には、法定相続人になる可能性があるという点を、頭に入れておきましょう。兄弟姉妹の立場で、頭に入れておきたいポイントを3つ紹介します。 ★1.子どもや親が相続放棄する可能性がある 上で解説したとおり、亡くなった兄弟姉妹に配偶者や子どもがいれば、兄弟姉妹の立場で法定相続人になるケースは少ないでしょう。その時点で、「自分には関係ないこと」と捉えてしまう方も多いのではないでしょうか。ここに注意が必要です。 遺産相続とは、プラスの財産のみを受け継ぐ行為ではありません。もし故人が負債を抱えていたとしたら、そのマイナスの財産も相続財産としてみなされるでしょう。この場合、相続順位第1位である故人の子どもたちや、第2位の父母が、そろって相続放棄の手続きを取る可能性も。相続放棄の手続きを取った相続人は「最初からいないもの」として扱われ、相続順位は次に回されます。つまり、第3順位である兄弟姉妹が、相続人になる可能性もあるのです。 相続放棄の手続きには、期限が設定されています。「自分には関係ないだろう」と思い込み、手続きのチャンスを逃さないよう注意してください。 ★2.故人の兄弟姉妹の代襲相続は一代のみ 代襲相続とは、相続権を持つ人がすでに亡くなっていた場合に、その相続権が下の世代(もしくは上の世代)にどんどん受け継がれていくことを言います。 故人の子どもが亡くなっていれば、その子どもが、その子どもも亡くなっていればまたその子どもに相続権が発生します。第2順位の両親についても同様で、両親が亡くなっていればそのまた両親、さらにその先の両親と、どんどん遡っていくのです。その範囲は定められておらず、該当する人が存在するなら、どこまででも辿っていけるという特徴があります。 ただし兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続は一代のみと決められています。兄弟姉妹が亡くなっていれば甥や姪が相続権を持ちますが、すでに甥や姪が亡くなっている場合、その子どもに相続権が渡ることはありません。 ★3.兄弟姉妹に遺留分は認められない もう一点忘れてはいけないのが、遺留分に関する注意点です。遺留分とは、法定相続人が相続できる最低限度の相続分のこと。たとえば故人が遺言書で「○○に全財産を譲る」と言った内容を残していても、法定相続人であれば、遺留分だけは確保できるという特徴があります。 兄弟姉妹の立場で法定相続人になる場合、遺留分は認められていません。故人の遺言は法定相続よりも優先されますから、「配偶者に全財産を譲る」といった内容が残されていれば、兄弟姉妹が遺産を受け取ることはできないのです。 トラブルになりやすいポイントですから、事前に頭に入れておきましょう。 兄弟姉妹が財産を相続する場合の特徴を知ってトラブルを防ごう 兄弟姉妹の立場で、被相続人の遺産を受け取れる可能性はあります。故人に子どもがおらず、すでに両親も亡くなっている場合、相続権が回ってくる可能性が高いと言えるでしょう。 しかし実際に兄弟姉妹の立場で法定相続人になる場合、相続人の範囲が広がり、トラブルに悩まされるケースも少なくありません。相続に関する基礎知識をきちんと身につけ、トラブルを避けられるように準備しておきましょう。相続順位を知っておくだけでも、事前の心構えができるはずです。

  • 生前贈与の「相続時精算課税」とは?遺産を受け取る際の注意点やデメリットも解説

    将来の相続税負担を和らげるため、生前贈与を検討する方も多いでしょう。生きている間に財産を子どもや孫に渡してしまえば、相続財産を減少させ、相続税が発生するリスクも少なくできます。 とはいえ、生前贈与を行う場合に、考慮しなければならないのが「贈与税」についてです。生前贈与をしても贈与税が課せられないと言われる「相続時精算課税」をわかりやすく解説します。遺産を受け取る際の注意点やデメリットについても、注目してみましょう。 相続時精算課税とは? 相続時精算課税とは? 生前贈与で相続時精算課税を検討する場合、まず「相続時精算課税とは具体的にどのような制度なのか?」という点について、正しい知識を身につけておく必要があります。相続時精算課税とは、贈与税の課税方式の一つです。 生きている人から別の人に財産を贈与した際に、課せられるのが贈与税です。「相続税を減少させるために生前贈与を」と考える方も多いですが、この場合、相続税ではなく贈与税が課せられてしまいます。こうした仕組みにある意味で「逃げ道」を提案してくれているのが、相続時精算課税というシステムなのです。 相続時精算課税制度を使った場合、特別控除額2,500万円までの範囲であれば、生前贈与を受けた時点で贈与税は発生しません。ただし生前贈与を行った人が亡くなれば、過去に生前贈与された財産も相続財産にプラスして、相続税を計算する必要があります。 たとえば合計で1億円の財産を持つ父親Aさんが、相続時精算課税制度を使い、息子Bさんに2,500万円を生前贈与したとします。息子Bさんは2,500万円を受け取った時点で贈与税を支払う必要はありませんが、将来Aさんが亡くなったときには、受け継ぐ財産に生前贈与分をプラスして、相続税を求めなくてはいけません。生前贈与後の財産に変動がなければ、相続発生時点で7,500万円の遺産を受け取り、生前贈与分を含めた1億円で計算された相続税を納めることになります。 相続時精算課税制度を使えるのは、生前贈与をする年の1月1日時点で60歳以上の方のみ。また生前贈与を受ける人は、贈与者の直系卑属である推定相続人もしくは孫のうち、贈与を受ける年の1月1日時点で20歳以上の方のみです。 相続時精算課税制度の注意点とは? 相続時精算課税制度は、一度の多くのお金を贈与できる、非常に便利なシステムと言えるでしょう。たとえば、「子どもや孫が事業を始めるため、援助したい」「住宅取得等資金の特例の範囲を超えて、住宅購入資金を援助したい」といった場合に、強みを発揮してくれます。とはいえ、相続時精算課税制度を利用した場合、税金が免除されるわけではありません。あくまでも「本来支払うべき税金を、先送りにしているだけ」と捉えてください。 また贈与税の課税方式の選択は、1度だけしかできません。1度でも相続時精算課税制度を選択して生前贈与を行えば、その後の贈与も、すべて相続時精算課税制度を利用したものと判断されます。2,500万円というのは生涯を通じた累計非課税枠であり、贈与額がこの数字を超えてしまえば、超えた分に対して20%の贈与税が課せられます。 たとえば60歳のときに相続時精算課税制度を利用して生前贈与を行ったとしたら、その後20年以上にわたって、贈与額を少しずつ積み重ねていく可能性も。その先の資金援助プランも見据えて、利用を検討するべき制度と言えるでしょう。 相続時精算課税では「年110万円まで」の非課税枠が使えない! 相続時精算課税では「年110万円まで」の非課税枠が使えない! 相続時精算課税制度のデメリットとして、必ず頭に入れておきたいのが、「年110万円まで非課税で贈与できる制度は2度と使えない」という点です。そもそも「年110万円まで非課税で贈与できる」というのは、贈与税の暦年課税制度に設定された基礎控除によるもの。相続時精算課税制度を利用するということは、2度と暦年課税制度を利用しないのと同意ですから、110万円までの非課税枠も失われてしまいます。 実際に、相続時精算課税制度を使って贈与をしたのちに、その事実を忘れて110万円までの贈与を行ってしまう事例は少なくありません。相続時精算課税制度を使って2,000万円を贈与した後に、その事実を忘れて年間110万円ずつ贈与を行った場合、わずか5年後には贈与税の支払いを求められるでしょう。 また暦年課税制度を利用していた場合、年間110万円までは相続税も贈与税もかからない計算になります。一方で相続時精算課税制度を選択した場合、年間の贈与額が110万円以内であっても、その分は将来的に相続税の対象になってしまうのです。「相続税の負担を和らげる」という目的で利用する場合、かえって逆効果になってしまう可能性もあるという点が、非常に大きなデメリットと言えます。 土地の生前贈与にも注意が必要 相続時精算課税制度のデメリットで、もう1点頭に入れておきたいのが「土地の生前贈与」についてです。相続時精算課税制度を使えば、不動産の生前贈与も可能。ただしこの場合、相続税で認められている「小規模宅地等の特例」の利用はできません。 小規模宅地の特例とは、亡くなった人が使用していた宅地等のうち、一定部分までであれば相続税評価額を80%まで減額できる制度のこと。この特例を使えば、土地や自宅に関しては、非常に少ない負担で相続できる可能性が高いでしょう。しかし相続時精算課税制度を利用した場合、減額されない価格で相続税が計算されます。余計な負担が発生する可能性があるのです。 こちらのデメリットも頭に入れた上で、相続時精算課税制度を利用した不動産の贈与については、慎重に検討する必要があるでしょう。税負担の軽減という目的だけを考えるなら、相続時精算課税による贈与財産からは除外するのがおすすめです。 相続税が0円なら利用のメリットは大! 相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」という基礎控除額が定められています。この範囲内であれば、相続税が課せられることはありません。もちろんこの基礎控除は、相続時精算課税制度を利用した場合でも適用されます。 「単なる税金の先送り」とも言われる相続時精算課税制度ですが、法定相続人が1人で合計3,500万円の遺産を受け継ぐケースでは、「非課税で早く大金を受け取れる」というメリットが発生する可能性も。相続時精算課税制度を利用して先に2,500万円を受け取っても、残りの財産が1,000万円なら、相続税は課せられません。 相続時精算課税制度を利用しない場合、 ・被相続人が亡くなった段階で3,500万円を受け取る・2,500万円の生前贈与を受ける時点で、相応の贈与税を支払う のいずれかを選択せざるを得ないでしょう。相続時精算課税制度によって、「税金の負担なく早い段階で親の遺産を引き継ぎ、活用する」という第3の選択肢が生まれるのです。 自分にとってのメリット・デメリットを検討し慎重な決断を 生前贈与を行う際の相続時精算課税制度を利用する際には、メリットもあればデメリットもあります。自分にとってはどちらの方が大きいのか、冷静に判断する必要があるでしょう。 ・本当に今大金を受け取る必要があるのか?・その他の非課税制度(住宅資金や教育資金)は利用できないか? これらの点も踏まえて、ぜひ慎重に検討してみてくださいね。

  • 遺産の独り占めはよくあるトラブル!3つの対処法と予防のポイントは?

    遺産相続に関するトラブルで、耳にする機会も多いのが「独り占め」です。相続人のうちの1人が財産を独占してしまったら、その他の相続人にとっては、到底納得できる状況とは言えないでしょう。 では実際に独り占めトラブルが発生してしまった際に、私たちはどう対処するべきなのでしょうか。3つの方法と、そもそも独り占めトラブルを起こさないための予防法をお伝えします。 遺産の独り占めが起きる理由 遺産の独り占めが起きる理由 相続が発生する前は、「相続人の誰かが財産を独り占めするなんて、想像もできない…」と思う方も多いのかもしれません。しかし実際には、遺産の独り占めは「よくあるトラブル」の一つ。決して珍しくないのです。では、そもそもなぜ遺産の独り占めという状況が生まれてしまうのでしょうか?理由として考えられるのは、以下の2つの状況です。 ★遺言書に「○○にすべての財産を譲る」という記載がある場合 被相続人が遺言書に、「特定の相続人のみにすべての財産を譲る」と記載していた場合、遺産の独り占めは可能になります。法的に有効な遺言書に記載された内容は、何よりも優先されるべき事項だからです。相続人の意志というよりは、被相続人の意志によるものと捉え、受け入れる必要があるでしょう。 ★同居中の家族が遺産分割協議に応じない場合 遺言書がない場合でも、被相続人と同居していた相続人によって、財産を独り占めされてしまうケースもあります。同居家族であれば、預金口座に残されたお金やその他の財産についても、別の相続人よりも詳しく把握しているでしょう。また自宅が被相続人名義であれば、遺産分割協議によって住む場所を失う事態にもなりかねません。 ・不動産分割に関する協議に一切応じない ・遺産を勝手に使い込む このような状況で、独り占めが発生するケースもあります。 もしも遺産を独り占めされてしまったら…対処法3つ もしも本当に遺産を独り占めされてしまったら、できるだけ早く具体的な行動をとる必要があります。3つの対処法を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。 ★遺言書が有効なのか確かめる 遺言書によって独り占めが発生している場合、何よりも先に確認しておきたいのが「遺言書の有効性」についてです。近年の終活ブームに伴って、増えている自筆証書遺言では、遺言書に必要な要件を満たせていないことが原因で、無効と判断される事例も少なくありません。遺言書そのものが無効であれば、「○○にすべての財産を譲る」といった内容も無効に。一から遺産分割協議を行う必要があり、独り占めを阻止できるでしょう。 また、たとえ遺言書の必要要件を満たしていても、自宅で保管されていた遺言書の場合、偽造されている可能性や内容を変えられている可能性も捨てきれません。あらゆる可能性を考慮しながら、遺言書そのものについてチェックしてみてください。チェックポイントがよくわからない場合には、弁護士などの専門家に相談するのもおすすめです。 ★遺留分を請求する 「○○にすべての財産を譲る」という内容の遺言書が有効であると認められた場合、相続人1人の独り占めが可能になります。とはいえ、その他の相続人には「遺留分を請求する権利」が認められていますから、必要な手続きを進めていきましょう。 遺留分とは、法定相続人に認められている遺産の最低限の取り分のこと。たとえば法定相続人が配偶者のみの場合は1/2が、配偶者と子どもの場合はそれぞれ1/4ずつが遺留分として認められます。たとえ遺言書で独り占めを認めていても、遺留分を請求すれば、実質的に独り占めを阻止できるでしょう。 ただし遺留分の請求権が認められているのは、 ・配偶者や子供などの直系卑属 ・両親などの直系尊属 のみです。兄弟姉妹の立場で法定相続人になった場合、残念ながら請求できません。 ★家庭裁判所に申し立てる 有効な遺言書がないにもかかわらず、遺産の独り占めトラブルが発生している場合、最初は説得にあたるケースがほとんどでしょう。説得に耳を貸し、遺産分割協議に応じてくれるようであれば、問題はありません。より深刻なのは、そうした説得でも効果が見られない場合です。 この場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。調停委員による説得や遺産分割審判による分割方法の決定など、法律的な側面からより公正な遺産分割をサポートしてくれるでしょう。 またすでに遺産が使い込まれている場合、まずは銀行に連絡して口座をストップしてもらいましょう。被相続人が亡くなったあとの出入金記録を確認し、使い込みの有無をチェックしてください。その記録をもとに遺産分割調停に臨むことで、使い込まれた財産分も取り返せる可能性があります。本当に使い込まれているのか、またどの程度取り返せるのかは、個々の状況によって異なります。経験豊富な弁護士に相談すると良いでしょう。 そもそも遺産の独り占めを防ぐためには? 遺産の独り占めは、さまざまなトラブルを招きかねません。その他の相続人との間に深い亀裂が生じる恐れもありますし、最終的に裁判になれば、トラブルが年単位で続いていく可能性もあるでしょう。こうしたトラブルを避けるためには、ぜひ以下のような対策を心掛けてみてください。 ★遺言書は正しく、相続人感情に配慮した形で残す 遺言書は被相続人の遺志を伝えるためのものです。余計なトラブルを防ぐためには、まず「法律的に有効な形で遺言書を残す」ことを意識してください。またその内容についても注意が必要です。 先ほどもお伝えしたとおり、相続人の1人に独り占めさせるような形の遺言を残したとしても、その他の法定相続人には遺留分の請求が認められています。最初から遺留分に配慮した内容にしておけば、独り占めにはならず、余計なトラブルを回避できる可能性も高まるでしょう。また遺産分配が公平ではない理由についても、丁寧な説明を心掛けると、より自分の気持ちを届けやすくなります。 ★同居中の相続人とその他の相続人とが円満な関係性を築く 遺言書の有無にかかわらず、遺産の独り占めは同居中の相続人によって行われるケースが目立ちます。これには、「被相続人の面倒は全部自分が見て来た」という自負や犠牲の気持ちが関係していると思われます。 同居中の家族だけが介護を担当するのではなく、周囲の相続人が積極的に関わりサポートすれば、独り占めトラブルが発生する可能性は低くなります。 遺産の独り占めトラブルは早めの相談が鍵 遺産の独り占めトラブルは早めの相談が鍵 万が一遺産の独り占めトラブルが発生してしまったら、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。遺言書の有効性や独り占めの正当性について、法律の専門家として状況を判断してくれるでしょう。また独り占めしている相続人との交渉役も担ってもらえます。 相続トラブルで弁護士なんて…と思う方もいるかもしれませんが、話がこじれれば、問題はより大きく深くなっていきます。法律の力も借りつつ、少しでもスッキリと解決できる道を探ってみてください。

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